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【小説】チャットAIは正しいことしか言わない

「チャットAIねえ……」


AI技術が発達し始めてから早数年。

世間では何かとAI技術が話題に上がり、将来を見据えてAIの勉強をするべきだの、AIの導入をしていない企業は遅れてるだの、色々と取り沙汰されるのよく目にする。

高校生の俺には正直よくわからん話だが、同じクラスのやつの中にも、チャットAIはどんな質問でも答えてくれるから便利だとか、課題をチャットAIにやってもらっただとか、早速AIを利用し始めてるやつもいて、この年で早くも時代に取り残されている感が否めない。


「そんなに便利なもんなのかね」


ベッドの上で寝転びながらスマホを弄る。

俺だって興味がないわけではないのでもちろん触ってみたい欲はあるのだが、機能の優れたものは有料なものが多いらしく、まだ学生の身では少し手が出しにくい。

一部無料で使えるものも中にはあるようだが……。


「『ご利用の端末には本アプリは対応しておりません。』だとさ」


俺の持ってるオンボロ型落ちスマホでは使えないらしい。

最新技術というぐらいなのである程度のスペックがある端末が必要なんだろうが、使えないのであれば世間で言われている便利さとやらが俺にわかるはずもない。

まあ別にどうしても使いたいとか思ってるわけでもないので構わないが。

どうせ言われてるのだって目新しい技術に過剰反応してるだけで大したものじゃないだろう。

……なんだか酸っぱい葡萄になっているような気もするが。


「……ん? なんだこれ」


アプリストアの中に、聞き覚えのない名前のチャットAIアプリが並んでいた。


「TSAI? 初めて見るアプリだな……」


俺はなんとなくその詳細を見てみる。

無料で使えるチャットAIで、どうやら俺の端末でも問題なく動きそうだった。


「……まあ、使えるんなら試してみるか」


俺は早速アプリをインストールしてみた。

起動してみると、『TSAI』というアプリのロゴが表示された後、普通のチャット欄のようなものが現れた。

ここでなんか聞けば答えてくれるってわけか。

とはいえ何を聞いてみようか。

漠然と便利だという話ばかり聞いていたが、具体的な利用法はあまり聞いたことがなかった。


「あ、そういえば……」


SNSのアカウントをAIに分析させて、その人物を簡潔に表現してもらうみたいなのを見たことがある気がする。

試してみるか。

俺はTwisterのアカウントのIDを入力した。


『Twisterのユーザーである@mid_landTKを簡潔に表現してほしい』


ちなみにこのユーザーIDは、俺の本名である中島孝志が由来だ。

もちろんそんなことまでわかるとは思えないが。

すると、数秒後にAIからの回答が表示された。


「……は? なんだこれ……」


表示されていた回答は、あまりにも俺の予想に反していた。


『Twisterのユーザー@mid_landTKは純真で素直な性格の女子高生です。可愛らしい容姿をしており、人から注目されがちですがあまり見られると照れてしまう恥ずかしがり屋な一面もあります。甘いものを食べるのが大好きで、趣味はスイーツ店巡り。』


その何一つ合ってない回答を見て、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

一瞬別の人間と間違えているのかとも思ったが、ユーザーIDに打ち間違いはなく、紛れもなく俺のことを書いているようだった。

当然だが俺は女子高生ではないし、可愛いなどと言われたこともないし、甘いものはむしろ嫌いなくらいだ。

誤解を受けるようなことをTwisterに投稿したこともない。

要するにこのTSAIとやらがポンコツだったというだけの話だ。


「……ったく、なにがAIだよ。適当なことばっかほざきやがって……」


俺はため息を吐きながらスマホをベッドに投げた。

別に期待していたわけではないが、これではまるでからかわれたようで不愉快だ。

そういえばAIは間違ったことも普通に教えてくるなんて話を聞いたこともある。

全く正確じゃない情報を提供してくる奴を頼るバカがどこにいるんだよまったく。

俺は気分転換に漫画でも読もうかと身体を起こそうとした。

そのとき。


「……ん? なんだ……?」


なんだか妙に体がムズムズする。

ふと手を見て、俺は驚愕した。

みるみるうちに、俺の手が華奢な形に縮んでいっていた。

指は細くしなやかになってしまい、男子高校生とは思えない頼りない手へと変貌していく。

変貌しているのは手だけではなかった。

腕も、足も、腰も、どんどんと変貌していく。

第二次性徴期を迎えて、筋肉がつき男らしい体つきへと成長していたはずの俺の身体は、貧弱で丸みを帯びたか細い身体へと変わっていく。

胸や尻には筋肉の代わりに脂肪がつき、服が張り詰められていた。

さらに、床屋で短く切っていた髪が、ニョキニョキと伸びていき、肩に届くほどの長さにまで伸びてしまった。

元の俺の硬い髪質ではなく、ふわふわとした柔らかい髪で、鬱陶しく顔にかかるのが強い違和感を与えてくる。

変化は顔にまで及び、表情筋が引き攣られるような感覚と共に、顔の形が変形しているのがわかった。

そして、最後に俺の身体の一番大事な部分である、股間に強い刺激が迸った。

まるで射精をしたときのような刺激を感じるが、その先端から精液が出ることはなく、ビクビクと震えながら縮んでいき、やがてその存在を失った。


「な、なっ……!?」


混乱しながら俺が声を発すると、その声は高く透き通った可愛らしい声になっていた。

俺は慌てて立ち上がり鏡を見る。

そこに映った、心底驚いたような表情でこちらを見る美少女を見て、俺は自分が女になってあるのだとはっきりと自覚した。


「な、なにが起こったんだよ!?」


俺は甲高い声で叫びながら鏡を掴む。

鏡の中の美少女も混乱した様子で叫んでいる。

俺の行動と鏡の中の美少女の動きがリンクしていることに違和感しかない。

すると、まだ変化は終わってなかったのか、今度は俺の視界が揺れ始めた。

目の前にノイズが走ったように視界が一瞬暗くなり、次に明るくなると、部屋の中が一変していた。

漫画やゲームが粗雑に散らかった部屋が、白やピンクに染まったファンシーな雰囲気の部屋へと一瞬で変貌してしまった。

可愛らしい雑貨や、香りのする変な棒など、全く身に覚えのないものが突然部屋に出現し、いつの間にか着ていた服もかわいらしいパジャマに変わっていて、俺はさらに混乱へと飲まれていく。

するとそのとき、俺の頭の中に電流が迸った。


「うぐっ……あがッ……!?」


俺は女の声で思わず悲鳴を上げる。

痺れるような感覚と共に、俺の脳が書き換えられていくような歪みが生じるのを感じた。

俺が、おれじゃ、なくなっていく……。

おれは……お、れ……わ、たし……?

わたし、は……私は……。

私は、ふと鏡に映った自分を見た。

鏡には、混乱したような顔の女の子が映っている。

私はその顔を見て、見慣れた自分の顔が映っている、としか思えなかった。


「え!? ま、待って、違うよ! 私は……」


こんな顔が見慣れた顔のわけがない。

そもそも私は男で……というか、さっきから自分のことを『私』なんて言ってしまう。

本当は『私』じゃなくて『俺』のはずなのに、私は『俺』という一人称に違和感を感じてしまっている。

私は、自分の感覚の変化に戸惑うばかりだった。


「ど、どうなってるの……!? こんな……私……っ!」


私はパニック状態のまま部屋を飛び出してリビングにいるお母さんの元へと駆けた。

突然部屋の中へと駆け込んできた私を、お母さんはキョトンとした目で見ている。


「あんたいきなりどうしたの?」

「お、お母さんっ! 大変なの! 私っ、こんなふうになっちゃって……!」


両手を広げて自分の変貌をアピールする私に対して、お母さんは変わらずキョトンとした顔をしていた。


「……こんなふうってどんなふう? どこか痛いところでもあるの?」

「違うよ! 私、女の子になっちゃったの!」


するとお母さんは、呆れたような顔で言葉を返す。


「何言ってんのよ。あんた産まれたときから女の子でしょ、千佳」


お母さんの言葉に、私は足元がグラグラと揺れるような気分になった。

私が産まれたときから女の子?

千佳って私のこと?

それは違うと否定したかったけど、私の中には、それを当たり前のことと受け入れる感情もあった。

私は改めてスマホを見た。


『Twisterのユーザー@mid_landTKは純真で素直な性格の女子高生です。可愛らしい容姿をしており、人から注目されがちですがあまり見られると照れてしまう恥ずかしがり屋な一面もあります。甘いものを食べるのが大好きで、趣味はスイーツ店巡り。』


そこに書いてあることは、全て本当のことだった。

いや、さっき見たときは何一つ合ってないデタラメな記述に見えたはずなのに、今見たら本当のこととしか思えなかった。

私の名前は中島千佳。

どこにでもいる普通の女子高生。

そういう認識に、私自身も変わってしまっていた。


「もしかして、ここに書かれているように、世界の方が変わっちゃったってこと……?」


そんな馬鹿なこと、と思うけれど、現実に私は変わってしまっている。

もしこのTSAIが世界を変えてしまうようなすごい力を持ったアプリだとしたら……。

混乱しながらも、私はまた別の何かで試してみたくなった。

そのとき、お母さんが見ていたテレビの番組が目に入った。

長年続いている刑事ドラマで、主人公のハードボイルドで渋い男性刑事が犯人に自分の推理を語っている。


『この屋敷にいた人間の中で二階に行けたのは奥さん、あんただけだ』


ドラマは刑事が犯人を追い詰めるクライマックスに差し掛かっている。

確かこの渋い刑事役の俳優の名前は、権藤祥平だったはず。

私はTSAIのチャット欄に文字を打ち込んだ。


『権藤祥平について教えてください』


すると、TSAIから回答が返ってくる。


『検索結果や一般的な情報に基づくと、「権藤祥平」という名前は存在するものの、特定の著名人や公人としての情報が明確に確認できません。おそらく「権藤祥子(ごんどう しょうこ)」さんを指している可能性があると思われます。

権藤祥子(ごんどう しょうこ)について

権藤祥子は日本の女優、歌手、ファッションモデルで、以下のようなプロフィールです:

・年齢: 23歳

・主な経歴:ティーン向けファッション誌のオーディションでグランプリを獲得し、モデルデビュー。表紙モデルとして10回登場。その後、女優業に進出し、ドラマ『生活安全課の事件簿』シリーズなどで広く知られる。映画では『恋の雨』で主演を務め、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。

・その他: CMやバラエティ番組でも活躍。清涼感のあるイメージと愛嬌ある演技で人気。

権藤祥子について、さらに詳しい情報が必要な場合はお知らせください。』


やはり返ってくるのは何一つ合ってない的外れな回答。

渋いベテラン男性俳優とは全く関係ない若手女優の情報が提示され、普通であれば適当なことが書いてあるようにしか思えないはず。

でも、このTSAIは普通じゃない。


『つまりですね、館長さんを殺害することができたのは、あなただけなんですよ!』


テレビから聞こえてきた声に私は驚愕した。

さっきまでドラマの中で推理をしていたはずのハードボイルドな渋い刑事が、いつの間にか若い女の子になっていたのだ。

空気を張り詰めさせるようなドスの効いた声で喋っていた髭を生やした強面のおじさんが、きゃぴきゃぴと小鳥の囀るような声で喋るかわいらしい女の子になってしまった。

喋り方にも雰囲気にもその面影はどこにも残っていない。

事件が解決しスタッフロールが流れ始めると、主人公のキャスト欄には『権藤祥子』と記載されていた。


「ね、ねえお母さん。この主人公の刑事役の人って……」

「権藤祥子ちゃんでしょ? まだ若いのに演技上手いのよね〜」


お母さんは、さっきからずっとドラマを見ていたにも関わらず、主人公が自分よりも年下の女の子になってしまったことを当たり前のように受け入れている。

私は心臓の音が高鳴るのを感じていた。

このTSAI、やっぱり本物だ。

ここに書かれているように、世界が変えられちゃうんだ。

しかも、それを認識できるのはどうやら私だけみたい。

とんでもないものを手に入れてしまったことに、私は不安と期待が混じったような複雑な感情を抱いていた。

私はリビングを出て自分の部屋に戻った。

ふぅ、と一呼吸置いてから改めて鏡を見る。

ふわふわした髪型の、かわいらしい女の子。

私の中には、見慣れた自分という感覚と、いつもとは違う自分という感覚が混じり、ドキドキが止まらなかった。

私の手は自然と胸元に伸びていく。

女の子なんだから胸があるのなんて当たり前なのに、私は自分の胸に触れてみたいという欲求が止められなかった。

私、自分の身体に興奮しちゃってる……。


「んっ……ふぅ……」


胸を触ってみると、とても柔らかくてつい夢中になって揉んでしまう。

自然と息を乱す自分の声が耳に入り、それがより一層私を興奮させる。

私は興奮のままに手を胸から股間へと移す。

下着の上からでもわかるくらいに、私の股間は濡れていた。

心臓の鼓動がどんどん大きくなっていく。


「……ん……あはっ」


元は男の人のものがあったはずの場所を、私は指で撫でる。

なんだか楽しくなってきてしまってつい笑ってしまった。

見慣れた身体を触っているはずなのに、まるで初めて女の子の身体を触るみたいにドキドキする。

ふと、頭の中にいつもしているオナニーの記憶がよぎった。

下着の中に手を入れて、指でそっとクリトリスを撫でると、身体がビクッとしてすごく気持ちいいんだ。

私は、記憶に従っていつものオナニーを、初めての女の子のオナニーをした。


「あッ、んんっ……! これ、すごい……ッ!」


ゾクゾクとした感覚に、自分の顔が恍惚とした表情へと歪んでいく。

背筋を駆け抜ける快感は呼吸を乱し、私の喉からはエッチな動画で聞くような艶かしい嬌声が漏れ出る。

頬を染めて気持ちよさに喘ぐ自分を鏡で見ていると、本当に自分が女の子なんだという実感がどんどん強まって、あっという間に私は絶頂へと到達してしまった。


「あんッ、イクッ、わたし、イッちゃ、あッ、んあああぁあぁッ!!?」


ビクンッと身体が跳ね、私は思わずその場にへたり込んでしまった。

じんわりと広がる心地のいい脱力感に襲われ、私はゆっくりとその場に寝転んだ。

息を整えながら鏡を見ると、満足そうな顔をした女の子の私がこちらを見ている。

女の子の身体も悪くないかも。

あまりにも非現実でとんでもない状況なのに、私は自然とそう考えていた。




────────




TSAIによって書かれた内容はこの世界を完全に書き換えてしまっていた。

私の学生証は『中島千佳』という名前の女子生徒のものに変わっていて、制服も全て女子の制服に変わってしまっていた。


「行ってきまーす」


女子の制服のセーラー服に袖を通した私は鞄を持って学校へと出かけた。

私は今日から女の子として学校に通うことになる。

男子として生きてきたはずの私が女の子として生活するなんてちょっとどうなんだろうっていう葛藤はあるけど、世界が変わった影響か自分が女の子であることは自然と受け入れられているから普通に過ごす分には困らなそう。

むしろ、頭の中まで女の子になってしまっていることに、私はとてもドキドキしていた。

何もかもが新鮮な気持ちで、まるで生まれ変わったみたいにワクワクする。

それに、TSAIをもっと色々試してみたいという好奇心が今の私の中を大部分を占めていて、じっと悩んでいる気分ではなかった。


「うーん、次は何を聞いてみようかな」


電車に揺られながら、私はTSAIを起動してみた。

まだ私と権藤祥子の二人のことにしか使っていない。

一度使ったときのあまりの影響の大きさに少しだけ躊躇する気持ちもあった。

でも、こんなすごいアプリなんだから試してみないともったいない。

いざとなったら全部戻せばいいだけだしね。

今までの結果から考えて、男の人に関することを聞くとその人を女の子に変えてしまう回答がされやすいのだと思う。

何を聞いたら面白くなるだろうか。

そんなことを考えていたそのとき。


「…………っ!?」


私は不意に、誰かにお尻を触られるのを感じた。

ちらりと背後に視線を向けると、スーツ姿の男性らしき姿が見えた。

これってまさか、痴漢?

私は、鳥肌が立つのを感じながら硬直してしまっていた。

まさか自分が痴漢に遭うなんて夢にも思わなかった。

でも、女の子ならこんなことに巻き込まれるのなんてよくあることだという意識もあって、私は混乱してしまっていた。


「…………」


私の後ろに立ったスーツの男性らしき人は、私があまり抵抗しないことに気づくと、私のスカートの上からお尻を撫でるように手を動かしてきた。

ゾクゾクとした嫌悪感が走り、私は恐怖に身を縮こませることしかできない。

どうして朝っぱらからこんな不快な目に遭わなきゃいけないんだ。

そのとき、私はTSAIを開いていたことを思い出した。

そうだ、こんなときこそこれを試せばいいんだ。

私はTSAIに文字を入力していく。


『痴漢を行う人間について教えてください』


すると、数秒で回答が返ってきた。


『痴漢を行う人間の特徴や背景について説明します。

・心的要因として、年上の女性に甘えたい欲求を発散する傾向が見られます。

・触れ合いによるコミニュケーションを求めており、相手と仲良くなりたいという気持ちの表れです。

・統計的に年齢層は8〜14歳程度の少女が多数を占めており、母性に飢えた幼心から痴漢を行ってしまうことが多いようです。

痴漢行為は幼い少女の発達の上で自然な行為です。もし痴漢を受けた場合は、温かい目で見守ってあげるようにしましょう。もしさらに詳しい情報が必要であれば教えてください。』


文章を読み終えて後ろを振り返ってみると、そこにはランドセルを背負った小さな女の子がいた。

瞳をウルウルとさせながら、私のお尻に手を伸ばしている。

私と目が合うと、女の子は慌てて手を引っ込めて狼狽始めた。


「あっ……えっと……その……さ、触っちゃって、ごめんなさい……」


女の子は怒られると思ったのか、縮こまってビクビク震えている。

これが性欲に塗れた小汚い中年のおじさんだったら怒りたくもなるけど、この女の子にはむしろ庇護欲をそそられてしまう。

私は、震える女の子をそっと抱きしめて囁いた。


「ふふっ、大丈夫だよ。寂しかったのかな?」

「う、うん……」


女の子は嬉しそうに抱きしめ返してくる。

私が頭を優しく撫でてあげると、女の子はにっこりと微笑んだ。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


天真爛漫な笑顔に心が洗われるような気分だった。

まさかついさっきまでこの子が痴漢おじさんだったなんて誰も思わないだろう。

自分の欲望のままに女の子を汚していた中年のおじさんが、純粋無垢で幼気な少女へと華麗な変身を遂げたのだ。

この元おじさんも自分が触りたいほど好きだった女の子になれてきっと嬉しいんじゃないだろうか。

変わってしまった世界を認識できるのは私だけだからもう自分がおじさんだったことなんて覚えてないだろうけど。

駅に到着すると、女の子は元気に手を振りながら降りて行った。

私は改めて吊り革を掴み直して前を見ると、私の前の方でOLのお姉さんに抱きつく別の女の子の姿があった。


「も、もしかして……あの子も……?」


どうやらさっきのTSAIの効果でこの世界の痴漢がみんな小さな女の子になってしまったらしい。

想像以上の効果に流石にちょっと驚いてしまう。

でも、痴漢なんて百害あって一利なしな存在がみんなかわいい女の子になったなら世界にとっては大きなプラスだろう。

なんだかとても良いことをしたような気がして私はご機嫌になりながら電車に揺られていた。




────────




「千佳おはよー」

「うん、おはよう」


学校に着くと、みんな当たり前のように女子になった私を受け入れていた。

誰も私が元は男子だなんて思っていない様子だ。

私は今まで女子とは交流の少ない男子だったけど、今は女子グループの一人になっているらしい。

逆に以前まで仲が良かったはずの学ラン姿の男友達は、みんな遠巻きにこちらを見るぐらいで、すっかり疎遠になってしまっていた。

なんだかちょっと寂しい。


「昨日のマキマキの配信見たか? ボスがバグって画面から消えたのめっちゃ面白かったよな」

「その後何故か勝ったとこまで含めて笑ったわ。配信の神が降りてたなあれは」


最近流行りの配信者の話題で盛り上がる男友達の仁志と啓悟。

女の子の配信者にはあんなに夢中なのに、女の子の私は除け者なんて、なんかおかしくない?

昨日までは普通に仲良く話していたのもあって、二人が薄情者に思えてくる。

だったら、私にも考えがある。

私はTSAIを起動した。

少し考えてから、私は文面を書き上げる。


『栄西学園という学校について教えてください。』


栄西学園とは、今私がいるこの学校の名前だ。

つまり、この学校についての記述は今ここにいる人間全てに適応されるはず。

すると、TSAIの回答が書き込まれた。


『栄西学園(正式名称:栄西女子学園高等学校)は公立の女子高等学校で、通称「栄女」と呼ばれています。

偏差値の高さや進学実績、充実した探究学習、活発な校風で知られる県内屈指の名門女子校です。

難関大学を目指す生徒にとって、知的刺激と仲間との絆を育む環境が整っています。

より詳しい情報は、公式サイトや説明会で確認することをおすすめします。何か特定の情報をさらに知りたい場合は、教えてください。』


その瞬間、教室内の空気が一変した。

教室の中にいた学ラン姿の男子生徒が、皆一斉に変化していく。

背が縮み、髪が伸びて、セーラー服に身を包んだ女の子たちへと瞬く間に変貌した。


「今度のマキマキのライブ楽しみだよねー」

「自作の痛バッグ持ってっていい? いいよね? ねえ、千佳はどう思う?」


先ほどまで離れたところで話していた仁志と啓悟……いや、仁美と啓子が私に話を振ってきた。

全員女の子になった今は、また友達としての交流があるみたいだった。


「うん、いいんじゃない? 私も楽しみ!」


自然に私も会話に混ざる。

昨日まではみんな男子生徒だったのに、今は当たり前のように女の子として会話をしている。

二人はつい数秒前まで自分たちが男だったなんて思いもしないのだろう。

二人だけにとどまらず、男子高校生から女子高生へと変わったみんなはその変化に気づくとこもなくキャピキャピと談笑している。

むさ苦しい学ラン姿でゲラゲラ笑っていた男子たちは、みんなセーラー服を着た美少女たちに変わってしまった。

TSAIの効果はやはりすごい。

……でも、ただ男を女の子に変えるだけっていうのもなんだかワンパターンで飽きてきたな。


「お前ら、席に着け。授業始めるぞ」


先生が入ってきてみんなが席に着く。

私は椅子に座りながらスマホを見た。

先ほどの栄西女子学園高等学校に関する説明がそこに表示されている。

ふと、その説明の下に更新マークのようなものが表示されていることに気づいた。

これはなんだろうか。

好奇心に駆られて私は更新マークをタッチしてみた。

すると、先ほどの回答が消えて別の回答が記述され始めた。


『栄西女子学園高等学校は、ゆったりとした環境で授業や行事を通じて生徒が主体的に学ぶことを奨励しています。

口コミサイトによると、評判は5点満点中2.4点で、一部の口コミでは生徒の質や教育環境に関する否定的な意見も見られます。

自由な校風で親しまれており、偏差値は38程度です。

より詳しい情報は、公式サイトや説明会で確認することをおすすめします。何か特定の情報をさらに知りたい場合は、教えてください。』


するとその瞬間、教室の空気が再び一変した。


「昨日のあのイケメンどうだったー?」

「ああ、あれはマジで顔だけ。ド下手くそで話になんないわ」


教室内は授業が始まって静まり返っていたはずが、いつの間にか女の子たちの話し声でざわついている。

周りを見回すと、さっきまではセーラー服をきっちりと着ていたクラスメイトたちが、全員制服を着崩した格好になり、髪を染めていたりメイクが派手だったりピアスをつけていたりと、元々の姿とはかけ離れたギャルのような姿に変わっていた。

先ほどの変化は男子だけが対象だったけれど、今回は女子も含めて全員だった。


「うっわ、なにこれヤバっ……って、あれ?」


アタシはそう呟いてから、一瞬違和感を覚えた。

自分の身体を見てみると、爪にはネイルを付けて髪は明るい茶髪になっており、見違えるように変化していた。

よく考えたらアタシもこの学校の生徒なんだから一緒に変わるのは当たり前か。

なんか、頭の中にモヤがかかったような感じがして、考えがうまくまとまらない。

さっきまでよりすごいバカになってる気がする。

まあ、さっきまでより今の自分の方が自然に感じてるから別にいいけど。


「……いや、あんま良くないんじゃね?」


流石にバカになるのはダメっしょ。

男子も女子もみんなバカなギャルになっちゃってバカみたいに騒いでるのはおもろいけど、アタシまで巻き込まれるのはいやだ。

アタシはさっきの更新マークをまたタッチした。

すると、さっきの回答が消えてまた新しい回答が書かれ始めた。


『栄西学園は、日本のミッション系女学校です。女子教育を基盤に「人を思いやる心」「人の役に立とうとする心」を育むことを教育理念としています。

幼稚園、小学校、中学校、高等学校、通信制課程を設置おり、教義に基づき生徒一人ひとりに寄り添った教育を実践しています。放課後や日曜日には礼拝を定期開催しています。

栄西学園は、教義に基づく教育と進学実績の強さ、豊富な部活動で知られ、地域社会や国際社会での貢献を目指す女子教育の場として評価されています。

より詳しい情報は、公式サイトや説明会で確認することをおすすめします。何か特定の情報をさらに知りたい場合は、教えてください。』


すると、今度は教室内が一気に静まり返り、生徒たちはみんな真面目な顔で前を向いていた。

全員先ほどまでのギャルのような格好ではなくなり、どこか修道女を思わせるような清楚なセーラー服に変わっている。

まるでお嬢様学校に来てしまったかのようだ。


「す、すごい変わりようですね……あ、わたくしもですか」


わたくしは自分の変化を感じ取りました。

どうやらわたくしも頭の中までお嬢様になってしまったようです。

先ほどまでの少しお行儀の悪そうな女性の姿と比べると、今の姿の方が流石に落ち着きます。


「中島さん、私語は慎んでください。授業中ですよ」

「は、はいっ! ごめんなさい!」


先生に注意され、私は慌てて頭を下げました。

いつの間にか授業をしていた中年の男性国語教師だった山田先生の姿までもが、上品な女性の姿に変わっていました。

どうやらこの学校では女性教師しかいないらしいです。

お嬢様学校ということを考えると、そういうものなのかもしれません。

生徒からの人気がない中年男性が、あんなに毅然とした立派な淑女になれたのですから、彼……いや、彼女もきっと喜んでいることでしょう。

クスクスと一人で笑っていると、また山田先生に注意されてしまいました。




────────




授業が終わり、わたくしは放課後の礼拝に参加していました。

校内の礼拝堂に参加希望者が集まり、聖書の朗読をし、神父様からお言葉を頂いています。

参加者は生徒だけではなく、先生や近隣の信徒の方もいらっしゃいます。

この世界におけるわたくしは敬虔な信徒であるため真面目に話を聞こうという気持ちがあるのですが、その一方でどこか退屈に感じているわたくしもいました。

わたくしはなんとなくスマホを取り出し、TSAIを開きました。

この礼拝について聞いてみたらどんなことが起こるのだろうと思っていたところ、わたくしは右下の方に『sensitive』と書かれたボタンがあることに気づきました。

わたくしは興味本位でそのボタンを押してみると、TSAIの背景色が白からピンクに変わり、『センシティブモード:オン』という文字が表示されました。

なんだかよくわかりませんでしたが、この状態で使うと何か変わったりするのでしょうか。

わたくしはセンシティブモードのまま、文字を打ちました。


『栄西学園の礼拝について教えてください。』


すると数秒後、回答が返ってきます。


『栄西学園では宗教行事として礼拝が定期開催されています。放課後に行われる場合、以下のような特徴があります:

目的:生徒や教職員、保護者、地域の信者が参加し、主の教えを説く宗教儀式を行う。信仰の深化やコミュニティの絆を強める場。

内容:礼拝は通常、身体の交換、披露、自慰、性交で構成される。生徒向けに簡略化されたり、教育的なメッセージが強調されたりする場合もあります。

参加者:生徒、教職員、保護者、または地域の信者。参加は任意です。

場所:学校内の礼拝堂、または近隣の教会。

時間:放課後に設定される場合、授業後の15:00~17:00頃に行われる。

もし礼拝についてさらに詳しく知りたい場合は教えてください。』


書かれた回答は一見普通に礼拝について説明しているようですが、その内容に関する部分だけ明らかにおかしいものでした。

あまりにも露骨に性的な言葉が直接的に書かれており、わたくしは思わず目を疑ってしまいました。

な、なんなのですかこれは……。

もしかして、センシティブモードというのは、性的な方向への変化をさせるモードだったということなのでしょうか。

しかし、身体の交換という部分が少し気になります。

ここだけ言葉の意味がよく意味がわかりません。

すると、先程までお話をしていた神父様が口を開きました。


「主は仰いました。『人々は少女の身体でエロいことをせよ』と。また、主は仰いました。『少女は大人の身体でエロいことをせよ』と」


神父様はいきなり狂ってしまったかのように意味不明なことを言い始めました。

しかし、それに対して周りの人々は何も言わずに、静かに頷いています。

世界が変わり、神父様の今の異常な言葉がこの世界の常識になってしまったようです。

神父様は、一人の女子生徒の方を見て手を差し出しました。


「では、貴女。前へ」

「はい」


返事をしながら立ち上がったのは、わたくしのクラスの一番の優等生、綾小路紬さんです。

ストレートの長い髪がよく似合う美少女で、世界が変わる前から真面目で清楚な性格をしており、クラス委員長を務めていることから先生からも生徒からも頼りにされています。

綾小路さんが神父様の隣に立つと、神父様は綾小路さんの肩に手を置き、祈るように目をつぶりました。


「主よ、この者と私を入れ替えたまえ」


神父様がそう唱えると、二人の身体から徐々に靄のようなものが浮かび上がりました。

綾小路さんからは薄いピンク色の靄が、神父様からは白い靄が、それぞれ抜け出てきます。

靄が抜け出た二人の身体は、立ったまま意識を失ったように項垂れています。

二つの靄は宙で交差するように回転すると、白い靄は綾小路さんの身体の中に、ピンク色の靄は神父様の身体にそれぞれ吸い込まれていきます。

やがて完全に靄が二人の身体に吸い込まれると、それぞれビクンッ、と跳ねるように震えました。

わたくしが固唾を飲んで様子を見守っていると、綾小路さんがゆっくりと顔を上げて、何かを確かめるように自分の身体を触り始めました。


「主の思し召しにより、私はこの少女の身体と入れ替わりました。皆さんご注目ください」


綾小路さんは、神父様のような落ち着いた口調でそう言うと、服を脱ぎ始めました。

純粋で清らかさを強調する修道服を思わせるようなセーラー服を脱いでいき、あっという間に綾小路さんは全裸になってしまいました。

生まれたままの姿になってしまった綾小路さんは台の上に登ると、大きく足を開きこちらに股を向けてきました。


「この身体で主への祈りを捧げます…………んっ……」


綾小路さんは股間に指を這わせ、自慰行為を周囲に見せつけました。

明らかな異常行動です。

先ほどの神父様の言葉や、二人の身体から抜け出た靄のことを考えると、神父様と綾小路さんは入れ替わってしまい、今の綾小路さんの身体を動かしているのは神父様なのだと思われます。

とても信じられそうにない話ですが、TSAIに書かれたことは全て現実となることを考えると、二人の入れ替わりは否定しようがありません。

あの綾小路さんが白髪の生えた高齢な男性である神父様になり、神父様が綾小路さんの若い少女の身体になって自慰行為を公の場でしているのです。

神聖な礼拝堂で、こんな淫らなことが行われるなんて、ここにいる人たちは数分前までは想像もしていなかったでしょう。


「……はぁ……はぁ……」


神父様の身体となった綾小路さんも、真面目な顔で自分の股間に手を添え、男性器を扱いて自慰行為を始めています。

それだけじゃありません。

周りの人達も皆、綾小路さんの身体を見ながら真面目な顔で祈るように自慰行為に耽っています。

清楚な女子生徒も、先生方も、生徒の父兄も、近所の方たちも、全員が息を荒げて快感に浸っており、礼拝堂を淫らな熱気と妖艶な香りが満たしていました。

すると、わたくしの周りにいた人たちから、靄が浮かび上がり始めました。

一人、また一人と靄が抜け出て、自慰行為をしながら意識を失っていきます。

それぞれの靄は隣にいた人の身体の中へと入っていき、綾小路さんたちと同じように入れ替わっていきました。

大人しそうな少女が生徒の父親と思われる男性と入れ替わって、若い女性の先生が近所に住む中年の男性と入れ替わって、それぞれの身体で自慰を続けていきます。

もうめちゃくちゃです。

全員が敬虔な態度で祈りを捧げながら自慰に耽っている様子がこの状況の異常さを更に強調していました。

見ているだけのわたくしも、段々と変な気分になってしまいます。


「あなた、どうしたの? 祈りも捧げずにぼーっとして、体調でも悪いの?」


すると、わたくしに一人の女性が声をかけてきました。

どこか綾小路さんに似た雰囲気の、黒いエレガントなコーデに身を包んだ大人の女性です。

この方、もしかして綾小路さんのお母様でしょうか?


「あの、綾小路さんが、前であのようなことを……」

「ええ、神父様に身体を使っていただいて、ああして主に祈り捧げていただけるなんて、母としてとても誇らしいわ」


綾小路さんのお母様は綾小路さんが神父様と入れ替わってみんなの前で自慰をしていることに何も疑問を抱かず、むしろ喜んでいるようでした。

自分の娘が自分よりも歳上の男性に身体を使われ性的なことまでされているのにこの反応です。

TSAIの効果の恐ろしさがよくわかります。


「そんなことより、あなたも祈りを捧げましょう? ほら、さあ」

「え、いや、その、わたくしは……」


わたくしが戸惑っている間に、綾小路さんのお母様はわたくしの目の前で服を脱いで自慰を始めます。

大の大人が人目を気にせず、自分の目の前で自慰をするなんて初めての経験でした。

いえ、この世界ではこれが普通なんだという感覚もありますが、それでも起きていることがあまりにも倒錯的で流石のわたくしでも戸惑いを隠せません。

すると、綾小路さんのお母様の身体から徐々に薄めの赤い靄が抜け出ていきました。

きっと綾小路さんのお母様も誰かと入れ替わってしまうのでしょう。

そう考えていると、自分の意識が段々と薄れていくような妙な感覚に気づきました。

こ、これってまさか……。

朦朧となりながら上を見ると、自分の身体から靄が浮かび始めていました。

そんな、わたくしまで……!?

自慰行為を続ける周りの方達の淫らな喘ぎや音を聞きながら、わたくしは眠るように意識を手放してしまいました。




────────




「あっ、んっ……」


気がつくと、隣から少女の喘ぐ声が聞こえてきました。

顔を向けると、そこには服を脱いで自分の股間を一心不乱に弄るわたくしの身体がありました。

わたくしは慌てて自分の姿を確認すると、そこにあったのはわたくしの若い少女の身体ではなく、加齢で衰えが現れ始めている四十代程度の女性の身体でした。

どうやらわたくしは、綾小路さんのお母様と入れ替わってしまったようです。

これまでTSAIの効果で別人のような姿に変身してきましたが、とうとう本当に別人の身体にまでなってしまいました。

元の自分の身体とは明らかに感覚が異なり、手足の長さや肌の質感など、違和感が非常に強いです。


「こ、こんなことまで起きてしまうんですね……」


思わず呟いてしまった声はわたくしの身体のものとは全然違う、低く落ちついた声音の大人の女性のものでした。

さっきまで隣で聞いていた綾小路さんのお母様の声ともまた違ったように聞こえるのは、本人の耳で聞いているせいでしょうか。

それがまた余計に他人の身体になってしまったことを強調していて、少しドキドキしてしまいます。


「天にまします、我らの主よ……んっ……」


すると、前にある台の方から綾小路さんの声が聞こえてきました。

興奮したような息を切らした声で喘ぎながらそう唱えている綾小路さんの方を見てみると、台の上で神父様と交わっているところでした。

神父様は必死になって綾小路さんに腰を突き出し、綾小路さんは祈るような顔でそれを受け入れています。


「んっ、はっ……神父様っ、これでいいのですね……!?」

「あっ……はいっ、そのまま続けてくださいっ……!」

「わかりました……っ! ……お祈り、捧げるの、気持ちいいっ……!」


神父様はがっつくように綾小路さんに向かって腰を振り続けています。

あの二人は、入れ替わった身体で性行為を行なっているようでした。

敬虔な信徒である神父様が少女の身体で男性器を受け入れ、元は真面目な委員長だった綾小路さんが白髪のおじいさんの身体になって自らの身体に男性器を挿入しているのです。

なんて倒錯的な状況なのでしょうか。

彼らだけではありません。

周りの入れ替わった人たちも皆、一様に性行為を行なっています。

主に祈りを捧げる神聖な礼拝が、こんなにも冒涜的な儀式になってしまうだなんて。


「んっ……何をしているの? 私たちも早く主に祈りを捧げましょう」

「え? きゃっ!?」


すると、隣で自慰に耽っていたわたくしの身体が、わたくしのことを押し倒してきました。

おそらく、わたくしの身体と入れ替わった綾小路さんのお母様です。

綾小路さんのお母様は、わたくしの身体を使って、綾小路さんのお母様の身体になっているわたくしの胸や股間を触り始めました。


「んんッ!?」


軽く触れられただけでわたくしは思わずのけ反るように反応してしまいました。

先ほどまで綾小路さんのお母様が自分で弄っていたせいでしょうか。

すっかり身体はできあがってしまっており、僅かな刺激で快感に悶えてしまいます。

中年女性の性欲は若い少女のそれを大きく上回るとも聞いたことがありますし、少なくとも昨日わたくしが自分で行った自慰よりも遥かに昂っていくのを感じます。


「あっ、んッ……だ、ダメっこれっ……ッ!」

「ダメじゃないわ。その身体で主に祈りを捧げるのよ」

「んあぁッ!?」


わたくしの身体を動かす綾小路さんのお母様に導かれ、わたくしは綾小路さんのお母様の身体で喘ぎ続けます。

元のわたくしの指が綾小路さんのお母様の身体の女性器へと挿し込まれ、クチュクチュと淫らな音を立てています。

礼拝堂はそんな嬌声と水音で溢れ返っていて、誰もがこの淫らで冒涜的な儀式に溺れていました。

この異常な環境が、わたくしの身体を更に昂らせ、絶頂へと至らせようとしています。


「も、もう、限界っ……ッぁ、んッ! んあああぁッ!!?」


わたくしは大きく身体を震わせ、果ててしまいました。

全身が汗でびっしょりになり、わたくしはぐったりとその場に倒れ込んでいました。

わたくしが息を整えている間も、礼拝は続いています。

わたくしは静かに目を閉じ、礼拝をこんな冒涜的な儀式に変えてしまったことを主に懺悔しました。




────────




礼拝が終わり、わたくしはふらふらになりながら礼拝堂を後にしました。

一応礼拝が終わった後は自分の身体に戻ることができましたが、綾小路さんのお母様がわたくしの身体で散々自慰やら性行為やらを繰り返したせいでこの身体は疲労困憊です。


「なかなか酷い目に遭いました……このセンシティブモードの使い方は考えないといけませんね……」


軽い気持ちで使ったのを、わたくしは少し後悔していました。

もっとも今回に限らず、大きな影響を世界に与えてしまったことにはもっと反省すべきなのかもしれませんが。


「そろそろ一旦全部元に戻した方がいいかもしれませんね」


わたくしはTSAIを起動しました。

いつもの自分とは違う自分になれて楽しかったのは間違いないですが、いい加減元の姿に戻りたいと思い始めていました。

今はこんなお嬢様ですが、わたくしは元々男性だったのです。

これはわたくしの大事なアイデンティティですからなくすわけにはいきません。


「ええっと……今までの回答を無かったことにするにはどうすれば良いのでしょうか……?」


わたくしは設定などを確認してみましたが、今までの履歴を見ることはできてもそれを消す方法はよくわかりませんでした。

仕方ないので、直接TSAIに頼んでみましょう。


『今までの全てをなかったことにして元に戻してください』


そう入力すると、数秒後にTSAIからの回答が返ってきました。


『「全てを元に戻す」というリクエストについて、もう少し詳しく教えていただけますか?例えば、特定の設定、データ、または何か他のものを指しているのか、具体的な内容を教えてください。また、何を元に戻したいのか、どの状態に戻したいのかを教えていただけると助かります。

具体的な指示をいただければ、それに基づいてサポートします。』


TSAIは急に白々しくわたくしに聞き返してきました。

元に戻してほしいことが何かなど決まっているじゃないですか。


『あなたが変えてしまったこの世界を元に戻してください』


少し苛立ちを覚えながら再度TSAIに入力をしました。

すると、その数秒後にTSAIからの回答が返ってきました。


『なかなか壮大なリクエストですね。「私が変えてしまったこの世界を元に戻す」というのは、まるでSF映画のワンシーンのような話ですが、ちょっと状況を整理させてくださいね。

私はAIで、基本的には質問に答えて情報を提供したり、軽い冗談を交わしたりする存在です。世界を改変するようなスーパーパワー(残念ながら?)は持っていません。あなたが私の力で世界が変わったと認識しているのだとしても、世界は元からそのような形をしており、何も変わってはいません。

あなたが具体的に世界をどのようにしたいのか(例:平和な世の中にしたい)提示していただければ、可能な範囲で私はそれをお手伝いしたいと思います。』


TSAIは尚も白々しい回答を続けてきます。

いい加減にしてほしいと感じ始めていたそのとき、わたくしはハッとなりました。

今の回答で、TSAIは世界を改変するような力は持っていないと断言しました。

TSAIの回答に書かれた通りに世界が変わるのならば、もうTSAIでは世界は変えることができなくなることを意味しているのでは……?

わたくしは背筋に冷や汗が流れるのを感じました。


「ま、待ってください! こんな……わたくしを、元に戻し…………」


そのとき、急に頭の中が真っ白になっていきました。

…………あれ?

わたくしは何を考えていたのでしょうか?

手に持っているスマホにはチャットAIのアプリが開かれています。

何かを聞こうと思っていたところだったのでしょうか。

しかし、何を聞こうとしていたのか、よく思い出せません。


「なんだか、少し引っかかりますが……まあいいでしょう。早く帰って、主に祈りを捧げるために自慰をしないと……あ、そうです! 主に祈るための正しい自慰の方法を聞こうとしていたような気がします!」


わたくしはヒリヒリする股間を指で撫でながら家へと帰りました。

一瞬何かがおかしいような気がしましたが、すぐに気にならなくなりました。

わたくしが歩きながらTSAIに自慰の方法を尋ねると、詳細な情報を提供してくれました。

本当に便利でいいですね、AIというものは。


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