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局部医務室 3話 【破壊描写有り】

 人体で一番重要な器官は〝脳〟だろう。  それゆえか分厚い頭蓋骨に包まれている。  しかし、その強固な頭蓋に守られている脳ですら、  格闘家の鍛え抜かれた足で蹴られれば只では済まない。  そして、  脳に匹敵するほど脆弱であり、  かつ重要な器官が男の股間には付いている。  〝睾丸〟  骨や筋肉に守られず、包んでいるのは薄い肉皮一枚のみ。  そんな代物(しろもの)が頭部よりも遥かに蹴りやすい  股間にブラ下がっているというのだ。  私はこの格闘施設で働き始めて実感した。  〝何でも有り〟の試合においてこれほど厄介な弱点もない。  まさに百害あって一利なし。    「ムッ…グゥゥッッ!!」  運ばれてきたヤスダ選手が芋虫のように丸まり、呻(うめ)いている。    重症患者用の診察台に横たわり、  彼が両手で押さえるパンツには大きなシミだ出来ている。  睾丸が潰れたことで〝中身〟が漏れ出したのか…  または、あまりの痛みに失禁したか…   「それじゃ麻酔を打つからナズちゃんは押さえてて」 「ハイ」  潰れた睾丸は摘出せねばならないが、  この場で陰嚢を切り開くのはリスクが高い。  私たちの役目はこの男を〝落ち着かせ〟、  速やかにこの格闘施設と繋がりのある病院へと搬送する事。 「ハァッ…ハァッ…アァァッウゥ!」 「ヤスダ選手!   今すぐ麻酔を打ちますので、少しの間ジッとしてて下さい」  睾丸を破壊されて気を失った選手はまだ幸運だ。  もっとも厄介なのは玉を潰されても意識が落ちず、  地獄のような苦しみの中で悶え続ける選手であり、  暴れ続ける肉体を制しながらの治療は容易ではない。 「グウゥッッ…」 「お、落ち着いてッ   お願いですから動かないで下さい!」     屈指のパワーファイターであるヤスダ選手が  たった一発の急所攻撃でこんなに苦しむなんて…  金的潰しの恐ろしさを再認識させられる。  肉体の一部を〝足の間に垂れ下げる〟という感覚は分からないが、  日常生活ですら不便を感じるだろうとは想像できる。  生まれてからずっと〝何も付いていない〟が当たり前の女だからか、  そんなモノが付いていたら自転車に乗るのにも邪魔になりそう  と思ってしまう。  少なくとも、私が今まで履いてきた下着とかは無理だろうなぁ… 「よ、よしッ 先生、今のうちに」 「えぇ!」  動きが緩んだ瞬間を狙い、先生が麻酔を数か所へ打っていく。  その精密さは流石だ。 「う…ぁ……」  数分後、やっと麻酔の効いたヤスダ選手が深い眠りへと落ちていく。  これで〝男の苦しみ〟とやらからも解放されただろう。  が、目を覚ました時には玉袋の中身が半分になっている訳だし、  今度は〝男の悲しみ〟に苛(さいな)まれるかもしれない。  まぁ、〝ふたつとも〟潰れちゃった選手に比べれば  男性機能が残っているだけマシというものだ。 「ふぅ… ようやく大人しくなったわね、  それじゃナズちゃん、衣服を脱がせて頂戴」 「あ、はい」  流石にこのまま搬送するわけにもいかないので、  汚れた衣服は取り去り、出来るだけ肉体も綺麗にしておかないと。 「では――」  と、私はハサミを持ち、パンツを横から切っていく。  パンツを脱がせる時、普通はずり降ろすのだが、  そうすると潰れた睾丸に擦れて痛みを与えてしまう。  さらに…想像もしたくない事だが〝もし袋(陰嚢)が破れていた場合〟  ちょっとした摩擦で激痛が走り、患者が目を覚ましてしまうため、  可能な限り患部を気遣わなくてはならない。 「…よし」  チョキチョキと切り終わり、慎重にパンツを取り除くと―― 「あっ!」  どうやら陰嚢は破れていないようなのでホッとしたが、  〝あっ〟と声を出したのは別の理由だ。 「あらら…やっぱり勃起してたのね♪」  そう、パンツがもっこり膨らんでいたため、  切り取る前から私も先生もうすうす気づいていたが、  ヤスダ選手の男根が真っ赤に充血していたのだ。 「……けっこう多いですよね、  睾丸が潰された後で勃起する選手って」           「それは〝遺伝子を残そうとする本能〟ね」 「あぁ、確かアレですよね、  男の人って死の恐怖を感じるとオチンチンが勃つっていう――」  聞いたことがある。  極度の恐怖体験をした者、瀕死の重傷を負った者など、  死ぬ前に子孫を残そうとする生存本能の一種だとか。  労働のし過ぎによる〝疲れマラ〟というのもあるが、  あんな感じで男性は死を感じると陰茎が勃起するらしい。 「そうそう♪  つまり遺伝子の詰まった睾丸のひとつを潰されたんだから、  男性機能消滅の危機感からフル勃起しちゃうのも当然かもね」 「…ですね」  〝オチンチンが勃つ〟  それはエッチなことを考えているくらいの認識だったが、  今日のように苦痛で勃起することもあれば、  〝朝勃ち〟みたいな勃起も存在する。  ホント、男性器って不思議……  などと考えながらも私は手を動かし続け、  ヤスダ選手の体を濡れたタオルで拭いていく。 「……ぅ……ぁ…」  麻酔で眠った患者は夢を見ないらしいが、  私が体を拭くとヤスダ選手から短い寝言が漏れて、  そのたびに大きく膨らんだペニスがびくびくと揺れ動く。  玉袋の片方がドス黒く変色していなければ  淫夢にうなされているよう見えるかもしれない。  触れたら破裂するのではと心配になるほど  赤くパンパンに膨れ上がった男根。  それでも、私は今からこの男根を〝落ち着かせ〟なければならない。  「体の方は綺麗になったから、  次は生殖器に残留している粘液の放出ね」 「ハイ、いきます!」  フル勃起したまま病院に送り出すわけにもいかないし、  このままでは搬送中に、または集中治療室で射精してしまうかもしれない。  そうなる前に、男根内部に渦巻く余分な精液を放出させるのだ。  しかし、射精させるといってもペニスをシゴく必用は無い。  温めた濡れタオルで優しく包むだけでいい。    ぱさっ……         きゅっ♡ 「あ……ぅっ」  痛むのか、気持ちいいのか、ヤスダ選手からまたしても声が漏れる。  と、同時にタオルの中でも遺伝子が漏れ出しだ。        ……どぴゅ             ……どびゅ  フル勃起しているわりには情けない、と言ったら失礼だが、  勢いの無い射精が起こり、血の混じった精液が力無く流れてくる。 「どう? 出てる?」 「はい、出てます、ドロドロって感じで」 「あらホント、タオルがうっすら赤く染まってきたわ」 「いつ見ても痛々しいですよね」 「そうね、私たち女じゃ〝玉の痛み〟は想像できないけど、  こうやって血を見せられるとその深刻さが伝わってくるわ」  シズハ先生に教わった事だが、  〝睾丸が潰れた後〟のペニスはいつも以上に感覚が鋭敏となっており、  勃起していた場合は優しく包むだけで精液を放出してしまうらしい。  〝緊急事態の勃起〟なのだから、  即座に遺伝子を放出するような状態になっている、とかかな? 「あぅ… おぉ…」  ヤスダ選手の喘ぎに似た寝言が終わる頃、  私の持つタオルの中は赤みがかった精液がタップリと。  ちょっとグロテスクだが〝男の象徴〟が最後の力を振り絞って出した  遺伝子だと思うと、このままゴミ箱に捨てるのもためらってしまう。  そう私は考えていたのだが、  どうやらまだまだ勉強が足りないようだ。 「――あれ?」  あれだけ出したのにまだ勃ってる――?    と、勃起したままのペニスに目を降ろした直後。  ヤスダ選手の〝遺伝子〟が飛び出したのだ。      どびゅッ! 「あぅっ!?」 「あら! まだ残ってたのね…  ナズちゃん大丈夫?」 「は、はい… 服にけっこうかかってしまいましたけど」  変な表現だが白衣が白く染められてしまった。 「でもこの精液はさっきのと違って血が混じってないですね」 「えぇ、どうやらそれが〝本命の遺伝子〟だったみたいだけど、  結局ムダ撃ち… いえ、  ナズちゃんみたいな可愛い娘にぶっかけることが出来たんだから、     潰れた玉も少しは浮かばれるんじゃない♪」 「そうだと、いいですね…ハハ…」  今更だけど、睾丸の中には何億って数の〝命の元〟が入っているんだなぁ。  それが〝ふたつ〟もあるなんて…  なんか陰嚢ってものすごい貴重なモノに見えてきた。  いや、実際に貴重なモノなんだけどさ… 「――あ!」  真上を向いていたペニスの頭(亀頭)が徐々に下がり、  今度こそ〝大人しく〟なってくれた。  ※ 「――はい、麻酔により現在は意識を失っておりますが、  その前はまともに注射が打てないほど苦しんでおりました」 「損傷個所は…〝右の睾丸〟ですか」 「そうです、試合中に相手選手が〝握り潰して〟いますので、  完全に破壊されていると見て間違いないでしょう」 「ふむ…この〝内容物の排出〟というのは?」 「あぁ、応急処置の最中に排出された精液の事です、  血の混入が視認できましたので潰れた睾丸内部に  溜まっていたものと思われます」  「なるほど…」  搬送車が到着し、シズハ先生ともう一人の白衣を着た女性が  ヤスダ選手の横で受け渡しの手続きをしている。  ヤスダ選手の局部には白い布が掛けられているだけなので  勃起がおさまってくれて本当に良かった。  びんびんとテントが張った横では  先生たちも真面目な話をしにくいだろうし。 「――後はお任せください」 「はい、お願いします」    とりあえず、これでひと安心。  けど、ヤスダ選手はこれから病院へと搬送されて、  治療のために大事な玉袋にメスを入れられるんだよねぇ。  確か今って大きな手術の時にはその現場が録画されていて、  後で本人が見ることも出来るって聞いたコトあるけど…  自分の金玉が切られるトコロとか絶対見たくないだろうね。 「どうしたのナズちゃん? 早く医務室へ戻るわよ」 「あ、ハイ!」    この日はもう金的を受ける選手はおらず、  睾丸を痛めて運び込まれてくる男はいなかった。  だがここは〝局部医務室〟  担当する箇所は股間…それも主に男性の。  ならば〝玉〟のみならず〝竿〟も私たちの受け持ちなのだ。  この日最後の患者の損傷部位は竿、つまり男根であった。 


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