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【Pedicure Strangler】序章 後編 

次の日の朝、いつものように学校に登校すると

教室に彩月の姿は無く、周りの生徒達は

彼女の事について頻りに噂話をしていた。

皆、落ち着かない様子だったり何が起こっているのか

分からない感じだったり、中には泣き崩れる女子もいた。




やがて朝のホームルームの時間になった。

開始時間から少し遅れて、教室に入ってきた

担任の教師の顔は深刻な顔をしていたが、

やがて黒板の前で重い口を開いた。







「……………おはよう、皆。

もう知ってる者もいるかも知れないが………。

今朝、うちのクラスの永塚彩月が亡くなった。

これから体育館で全校集会が行われるので

皆、移動の準備をするように」








──全校集会の話の内容は良く覚えていない。


この時点で判明したのは、昨日の放課後に

彩月は瀕死の状態で発見された事。

その後、病院に運ばれたが帰らぬ人となった事。



当分の間、学校では最終下校時刻を

午後7時から午後5時に変更し、

地元警察に学校付近のパトロールを重点的に

行うように要請、不審者を見かけたらすぐに

その場から離れて近くの教職員に知らせる……。



校長先生がそんな感じの内容をベラベラと

何度も繰り返しながら1時間近く喋り続けていた、

という事だけはハッキリと覚えている。






そして体育館から教室に戻る際、

ふと気になって廊下の窓から事件現場となった

家庭科室がある北校舎の方を眺めてみた。




家庭科室の窓には一面、青いシートのような物が

びっしりと目張りされていて何も見えない。

警察が現場を捜査している最中なのだろうか?




証拠は全て片付けた筈だ。

大丈夫、絶対にバレたりなんかしない。

大丈夫、大丈夫、大丈夫…………………………。




自分に言い聞かせてはみたが、

もし犯人とバレてしまったらと考えるだけで

ドクン、ドクン、と心臓の鼓動が早くなっていく。




「よぉ、ずっと俯いてるけどどうしたんだ〇〇?」




「えっ? あ、いや、何でもない」




「………隠す必要なんかねえよ。

俺には分かるんだ、お前の気持ちが……」




「……は?(おいまさかコイツ!?)」


「(まさか昨日、見られてたのか!?)」


「(ヤバいぞどうする!?)」




「…………俺もお前と同じでショックだよ。

信じられねぇよ………永塚が殺されたなんて………」





「あ………あぁ…………そう…………だな…………。

(んだよ!! 脅かすんじゃねえ紛らわしい!!)」




どうやら思い違いだったようだ。

話し掛けてきたのは、僕と同じクラスの男子だった。

以前から永塚に気があったようで、

僕も何度かコイツからどうすれば彼女のハートを

射止められるか、と恋愛相談を受けた事がある。




………正直言って、相談相手を間違えてると思うが。




廊下を歩きながら一言二言会話を交わすも

長続きせず、教室に辿り着くと僕達はそれぞれ

自分の席に戻ったきり、その日は一切会話しなかった。




集会を終えてからは自習となったが、

その途中で全校生徒に向けて真っ直ぐ寄り道せずに

下校するように校内放送が流れた。




「殺した………確かに僕が殺したんだ……彩月を………」




家に帰ってからも、あの時の事が頭から離れない。

病院に担ぎ込まれてから少しの間だけ彼女が

生きていたと聞いていたが、治療が上手くいかずに

そのまま死んでくれて本当に良かった。




もしあの状態から回復でもされたら、一巻の終わりだ。

だが彩月が仮に助かったとしても脳に重い障害が残り、

これから先、まともな会話ができない状態になる

だろうから心配する必要はないかも知れないが………。







────────────────────────







その晩、彩月が出てくる夢を見た。

夢といってもそれはまるで、映画やドラマを

テレビで見ているような、そんな感じの夢。

彼女は眼鏡、制服姿にトレンカソックスを履き、

爪先にはパープル系の色のラメ入りペディキュア。

あの時と瓜二つ、というよりそのままの服装だった。




そして何故か、僕の部屋で二人仲良くゲームをしたり

漫画を読んだりして楽しい時間を過ごしているようだ。





訳が分からない。

今まで彩月を自分の家に誘った事なんて、

一度も無いのに何がどうなってるんだ?





だが、楽しい時間はすぐに終わった。

会話の内容はよく覚えていないが、

彩月とつまらない事で言い争いになってしまった。




カッとなった僕が勢いよく彩月を突き飛ばし、

背後にあったベッドの上に背中から叩きつけられた。





「何すんのよ〇〇!!」




「うるせーんだよこのアマ!!」




「ヤダ離してよ!!

やめ゛っ!! ぐっ………………あ゛ぁァァっ!!」




馬乗りになって彩月の首を絞める僕と、

バタバタとベッドの上で暴れ回る彼女の両足。

やがて斜め上に足ピンさせながら、クネクネと

ペディキュアを塗った細長い足の指を捩らせる。





「げぎゅ…………ぉ………っ」




変な呻き声を上げてパタッと両足がベッドに落ちると

それっきり、彩月は動かなくなった。

まるで僕の性的嗜好を理解しているかのように、

アングルが彩月の遺体の足裏に切り替わる。




死して尚、爪先が微かにピクピクと痙攣している。

しばらくするとスカートの下半身が濡れて、

彩月は恥じらいもなくオシッコを漏らす。




舐め回すようなカメラアングルで、

頭から足裏まで全身を隈なく映し出されていく彩月。

そして………………。




「……っ………………さ………つき………………ううっ!!」




「………ハァーッ……ハァーッ…………はぁ…………?」



「夢………か………………あぁ………マジかよ………」




下半身のヌルッとした不快な感触と、

ツーンとした汗のような匂い。

気が付くと、現場から持ち去った彩月の上履きを

握りしめながら顔を突っ込んでいた。

どうやら無意識の間に、夢を見ながら

彩月の上履きで致してしまったようだ。



この上履き、家庭科室から逃げ出してから

気が付いた時には、いつの間にか僕の鞄の中に

ひっそりと紛れ込んでいた。

どうしてこんな物を持ち帰ってしまったのか、

僕自身にもよく分からなかった。





「あーもう………下着とパジャマ、洗濯しなきゃ」




その後、何度も彩月が出てくる夢を見た。

シチュエーションには多少の違いがあったが、

何れも、最終的には彩月の首を自分の両手や

ロープ、紐状の物で絞めて殺害する。

正直いって、毎日寝る時間が楽しみで仕方なかった。




そうしている内に、まだ完全とはいえないが

この夢をコントロール出来るようになった。

所謂、明晰夢というやつなのだろうか?




いまいちよく分からないし、

言葉では上手く言い表わせないのだが

あの日、僕が命を奪った彩月が僕の中に囚われ、

僕の夢の中のリアルな殺人劇の被害者にされ、

何度も何度も縊り殺されている………そんな気がした。




殺めた人間の魂を自分の中に取り込み、

自分の性的嗜好に沿った映像で何度も殺し続ける。

僕は人ならざる者になってしまったのか?





いやいや、そんな筈はない。

少なくともまだ、僕は人間だ。

自分の歪んだ欲望の為に、同級生を殺した以外は

至って普通の何処にでもいる高校生の男の子だ、と

自分に何度もそう言い聞かせた。




だが、見たい夢が見れるというのは最高だ。

まるで映画やドラマの監督になった気分だった。

プロの人に大金を支払ったり、テレビ局の偉い人に

なるために死ぬ気で努力しなくとも、

自分自身の夢で、自由に生み出せるなんて………。




だがその夢というのもワンパターンで、

何度も見ている内に飽きてくる。

被害者を彩月から別の誰かにしようと試みるが

上手くいかず、まるで夢自体がピンボケや

モザイク処理がかかった映像のようになってしまう。




しばらくの間、憂鬱な生活を送っていた

僕だったがある転機が訪れた………。





─────────────────────────





気がつけば、彩月の死から1年近く経過していた。

結局、犯人である僕に繋がる有力な手掛かりは

発見されず、未解決のまま事件は人々の記憶から

次第に消え失せようとしていた。




高校2年生になったが、彩月も同じクラスだった。

教室の席には1つだけ彼女の席があり、

花が活けられた花瓶、彩月の写真、彼女が生前に

愛用していた筆記用具等が机の上に供えられていた。




どうやら彩月の両親が学校に頼み込んだようで、

若くして、理不尽に命を奪われてしまった娘を

こういった形でも高校を卒業させてやりたい、

という両親だけでなく、クラスメイトや友人達の

沢山の願いが込められているのだろう。










………………馬鹿馬鹿しい。

彩月は皆に沢山悲しんでもらって、

暖かく見守られながら天国に旅立ったとでも?

そいつなら俺の夢の中でほぼ毎日、縊り殺されて

情けなく小便を漏らしてるんだぜ!!










……………などと、大声で叫んでやりたくなる。

当然、それをやったら一発でアウトなので、

例え拷問や脅迫されてもやる気は無いのだが。






─────────────────────────





そして、二度目の夏休みが終わり

9月の新学期を迎えたあくる日の放課後。

帰宅しようと昇降口で靴を履き替えている途中、

忘れ物に気付いて教室に戻り入口を開けると………。




中では一人の女子生徒が、彩月の席に座っていた。

よく見るとその生徒は彩月にそっくりで、

僕は彼女の幽霊が復讐の為に現れたのか、と思って

身構えると席に座っていた生徒がこちらに振り返った。






「あら? 戸締まりに来た学級委員の人?

ごめんなさいね、勝手に教室に入ったりして。

花瓶の水が無くなっててお花が少し萎れてたから、

新しい花を活けるついでに水も足しておいたの」




「?」




「え? 学級委員じゃない?

…………あぁ、ごめんなさい!

てっきりそうかと思ったんだけど違うのね。

………あ、自己紹介がまだだったわね。

私は3年A組の永塚亜月、この子の………姉よ」




そう言って彩月の写真に目線を向ける。

亜月は亡くなった妹に花を供えに来た様子だった。

そういやコイツには姉がいたんだったな。

……良かった、彩月の幽霊かと思って

寿命が縮みそうになったが思い違いだったようだ。




「あ、いや、いいんです先輩。

僕は忘れ物取りに来ただけですぐ帰りますんで、

どうぞごゆっくり………」




「ちょっと待って!

……あなた、ひょっとして〇〇君?」




「そうですけど………どうして分かったんです?」




「前に妹から貴方の事を聞いてたから、

もしかしたらと思ったんだけど………。

へぇ〜、そうだったの、貴方が〇〇君………。

妹が………お世話になったわね。

少し…………気分転換にお話しでもしない?」




「いやそんな………友達だなんて………」




「謙遜しなくてもいいのよ?

ほら…………私の隣の席に座ってくれない?」




「は…………はぁ、まぁ、今から急ぎの予定は

ないから構いませんけど………」




何故か亜月の頼みを断りきれず、

誘いに乗った僕は彼女の隣の席に座った。




「ありがとう、我が儘聞いてくれて……。

貴方と一度、じっくり話してみたかったから……。

彩月は〇〇君の事、ちょっと無愛想だけど

優しいお友達だって言ってたから…………」




「まさかそんな! ……冗談ですよね?」




「ううん、ホントよ。

亡くなる1ヶ月くらい前から、ウチで話をする時は

大半が貴方の話ばっかりだったから………。

………ごめんなさい、こんな話を突然されたら

年頃の男の子だもの、恥ずかしいよね?」




「いえ………あんな事件が起こって1年経つけど、

本当に…………胸が痛みます……………」




「……………………」




「警察は未だに犯人を逮捕できないでいますし。

同じクラスの仲間だったから………。

ホント、何でこんな事になったんだろうって。

そのうち、学校にひょっこり帰ってくるんじゃ

ないのかって噂するくらい皆、アイツが死んだって

事を受け入れられないみたいで………」




「………………………………」




彼女──亜月は黙ったままこちらを見ている。

マズい、怒らせてしまったか?

それとも僕が真犯人だと気付いているのか?




「………………あの、先輩?

僕、何か気に障るような事を言っちゃいましたか?」




「ううん、怒ってないわ。

……………ありがとう、貴方だけじゃなく

皆からそういう風に悼んでもらって………。

ああ見えて意外と寂しがり屋な子だったから、

彩月は本当に幸せ者ね……………。」




「…………」




「私もよ………まだ妹が死んだって、

受け入れられないままなの………………。

……………あの日の事、一生忘れられないわ。

事件の日に家庭科室で倒れてた彩月を見つけたのは、

実は私なの………」




「見つけた時にはもう、息してなかった………。

首を絞められた跡があって、オシッコまで漏らして

とっても……とっても苦しそうな顔だった………。

人間ってあんな歪んだ顔になるんだな、って………」




「すぐに近くにいた先生を引っ張ってきて、

私の携帯から通報して救急車も呼んだわ。

救急車が来るまでの間、彩月に心臓マッサージと

人工呼吸もしたんだけど………。

でも全然息を吹き返さなくって………」




「その後、運ばれた病院の集中治療室で

チューブを口から入れられた状態だったけど、

少しの間………彩月の意識が戻ったの。

すぐに彩月に駆け寄って、話し掛けたんだけど……」





─────────────────────────





『ぅ…………………ぁぁ…………ぅ………』




『あぁ………彩月!! 気が付いたのね!!

私が誰か分かる? 亜月よ! お姉ちゃんよ!?

本当に怖かったよね…………苦しかったよね……。

でもお医者様が助けてくれたからもう大丈夫よ!

ほら………こうして手、握っててあげる。

大丈夫………お姉ちゃんがついててあげるから………』




『お………ね………ゃ……………………ん…………』




『うん………お姉ちゃんよ………………。

大丈夫…………もう心配いらないわ…………』




『あ……………………ぅ…………ぅ………………………』




「手を握り返してお姉ちゃん、って

辿々しい言葉だったけど喋ってくれたの………。

でも、彩月はそれだけ言い残した直後に、

握ってた手から力が抜けていった………………。

彩月は目を瞑って………また意識を失ったの………」




『彩月っ!! 彩月ぃっ!!

そんなっ、嫌あぁぁぁぁっ!!』




「すぐにお医者様や看護師さん達が来て

電気ショックだとか、胸元からよく分からない

お注射を勢いよく突き刺したりして一生懸命、

治療してくださったのだけど………………。

彩月はもう……………目を覚ます事は無かった……」





『…………ご臨終です。

妹さん………よく頑張りましたね………。

最期にお姉さんと会話が出来て、本当に……』




『…………嘘よ…………彩月が死んだですって?

そんな訳無い!! まだ助かる筈よ!!

何やってんの早く彩月を助けなさいよ!!』




「私、パニック状態になってしまって、

お医者様の胸ぐらを思いっきり掴んで………。

生まれて始めて、他人に暴力を奮ってしまったの。

看護師さん達や後から来た両親に宥められて、

何とか落ち着いた後でお医者様にも謝ったわ」





─────────────────────────






「こういう事されるのは初めてじゃないし、

気にしてなんかいないよ、ってお医者様は

優しく慰めてくれたけどね……………」





「それからお葬式とか色々終わった後で………。

ショックとか疲労が溜まってたせいで

高熱が出て、1週間は学校を休んだわ………。





「ぅっ……………ひぐっ……………………、

また………思い出したら………………涙が………………」




「もう………この話はやめましょう先輩。

僕よりも……………先輩が一番辛いでしょうし、

いつまでも先輩が落ち込んでたら………、

きっと彩月も悲しむだろうと思うんです」





一体、何を言ってるんだ僕は。

彩月を殺した犯人の癖によくもまぁ、

ここまでいけしゃあしゃあと嘘がつけるものだ。




「……………そうね。

私がしっかりしなくちゃね………………。

何時までもメソメソしていられないわ。

………………あら、もうこんな時間!

ごめんなさいね、無駄話に付き合わせちゃって」




「構いませんよ、先輩。

さてと………僕もそろそろ帰ります」




「待って〇〇君。

せっかくだし、一緒に帰りましょうか?」




「僕と………ですか」




「イヤかしら?」




「い、いいえ、全然!

それじゃ……行きましょうか。

あまり長居してると先生とか学級委員に

注意されるでしょうからね」




「ふふっ、そうね!

……今日は本当にありがとう、〇〇君!」





そう言って優しく僕に微笑む亜月。

目元には少し涙が溜まっていて、

外から射し込む夕陽に照らされた彼女の笑顔は

何だかとても切ない感じがした。





その日以降、亜月との奇妙な関係が続いた。

恋人同士になって付き合ってる……というのか、

亡くなった彼女の妹の代わりになったというか……。




亜月曰く、最近は所属していた新体操部を

引退こそしてはいたのだが時折、夜中にこっそり

体育館に忍び込んでは、たった一人で

新体操の演技をしているそうだ。




『誰にも言わないで、〇〇君と私の秘密よ』

と言っていたが何故こんな事をするのかと亜月に

聞いてみると、どうやら高校卒業後は新体操部の

名門と称される□□大学に進学する予定で、

彩月の死を引き摺って不安定になった精神状態を

落ち着かせるにはどうしたら、と自分自身で

あれこれ考え、試行錯誤した末にこのような

校則違反の行為に手を染めるようになったそうだ。




話を聞いた後、僕は亜月と約束を交わした。

翌日、最終下校時刻を過ぎてから

体育館まで先輩の美しい演技を見に行く、と。




そして…………彼女を妹の所に旅立たせる為に。





─────────────────────────





一通り必要な道具を揃えた僕は

夜の暗闇に包まれた学校内に忍び込み、

体育館に向かうと事前の準備を整える。





そっと扉を開けると、亜月はピンク色の

競技用レオタードに着替えて、柔軟体操をしていた。


妹よりも豊満な乳房、ヒップライン。

そして綺麗な足の裏………。

それを見た途端、僕の股間が昂ぶっていく。




「あっ! 来てくれたんだ〇〇君!

丁度良かった、彼処に置いてある私のスマホと

競技用のリボンを取ってきてくれないかしら?」




「いいですけど、スマホはどうするんです?」




「スマホに入れてる音楽をかけるの。

本当は体育館の音響設備を使って、

最大音量でやりたい所なんだけど、ほら……」




「ああ、夜遅くですし、残ってる先生とか

近所の人に聞かれたら大変ですよね」




「ええ………そういうこと」





「……………はい、どうぞ」



「ありがと………これで準備完了よ。

後は〇〇君がスマホの画面の再生ボタンを

タップしてくれないかしら?」




「ええ……3つ数えたら押しますよ………。

3……2……1………スタート!」






音楽が再生され、演技が始まる。

………………短い時間ではあったが、

上手く言葉に出来ないくらいに美しい演技だった。

そしてこの後、亜月は艶めかしい素足を晒して

僕に殺されるとも知らずに、笑顔で話し掛けてくる。





「私の演技、どうだった〇〇君?」




「先輩、とっても………綺麗でした」




「ありがとう、〇〇君。

何だかいつもより緊張しちゃったけど、

あなたがそう言ってくれて本当に……嬉しいわ。

さてと、そろそろ帰りましょうか?

何だかとっても疲れちゃった………」




「ええ、一緒に帰りましょうか。

夜道は危ないですからね。

着替えが終わるまで、ここで待ってます」




「うん………すぐ終わるからね…………」




亜月は演技に使ったスマホとリボンを持って、

体育館に併設された更衣室に入っていった。

それから5分くらい経ったが、戻ってくる気配がない。




「……よし、作戦が上手くいってるといいけど」




僕は恐る恐る、更衣室へと向かう。

亜月が中にいるであろう女子更衣室の扉を

そっと開けると……………。




「すーっ……………すーっ……………すーっ………」




更衣室のベンチの上で横になったまま、

亜月は寝息をたてて気持ち良さそうに眠っていた。

その傍らにはスポーツドリンクの入った

青いプラスチック製のボトルが置いてあった。




「本当に………効いてるんだな」




事前に僕が行った準備というのは、亜月の飲み物に

細かく砕いた睡眠薬を混入させた事だった。

僕の両親が医師から多めに処方されていた物で、

1回分くらいならバレないと思い、こっそり拝借した。




「先輩………綺麗な足の裏だ…………………」



僕は亜月の足裏に鼻を近づけ、匂いを嗅ぎながら

足指の先、土踏まず、踵に舌を何度も這わせる。

体育館のマットのちょっと埃っぽい匂いと、

ほんのりとしょっぱい汗の味がした。




「ん……っ…………すーっ……………すぅ……………」




一瞬、足舐めされた亜月の全身がピクッと跳ねる。

しかし、まだ目を覚ます様子はない。

思う存分に亜月の足裏を堪能した僕は、

ビニール手袋を嵌めて、素手で触った箇所や

唾液がついた足裏、爪先をウエットティッシュで

丁寧に拭いて証拠隠滅をするついでに、

彼女の爪先に死に化粧を施す事にした。




懐から速乾性のネイルポリッシュの

容器を取り出し、爪先に塗っていく。

キラキラしたラメが入ったのピンクの

ペディキュアで、色気を纏った亜月の両足。




そして、開きっぱなしのロッカーの内側に

先程使っていたリボンを結びつけると、

ロッカーの戸を閉め、輪っかを作った。




「んぅ…………さ……つき………ぃ……や…………」




「うなされてて辛そうですね先輩……。

もう心配ないですよ、今から妹のいる所に

連れて行ってあげますから」




ベンチの上から亜月を引き摺っていき、

何とか彼女の首にリボンを引っ掛けた。

首を吊るされ、すぐに目を覚ました亜月は、

身悶えしながら手足をくねらせ始めた。



「んく……っ………は………ぁあ゛っ!!」



「けほっ!! あぐ……ぐるじっ!!」



「〇……〇くっ………だずげでっ!!」




僕に向かって手を伸ばしながら、顔面を鬱血させて

悶え苦しむ亜月の姿はなんと官能的なことか。

首のリボンを外そうと藻掻くが、薬の効き目が

まだ残ってるせいか思うように力が出せないようだ。

レオタードで引き締まった全身を捩らせ、

美しい爪先をキュッと折り曲げて

激しくバタ足しながら、汗ばんだ足裏が

床につく度、ペタッペタッと粘着質な音を放つ。




「はは、足バタバタさせちゃって……。

今の先輩、とっても可愛いですよ。

最期だし、ついでにに言っておきますけど

先輩の妹の彩月を殺したのは僕なんです」




「かヒュ………ぐぉぇぁァーっ!!」




「あの時の彩月の表情、バタ足、失禁、

それに爪先のペディキュア………。

しばらくはオカズに困らなかったけど、

また女の子を縊り殺したくなってきちゃって………。

そんな時に、先輩と偶然知り合えたんです。

………先輩、妹が死んでから辛いんでしょ?

もう生きていてもしょうがないですよね?」




「あ゛………ぐぎっ…………ぁ……な……い!!」




「今、何か言いましたか先輩?

遺言なんて必要ないですよね?

首がガッツリ絞まってるんだから、

無理して喋らなくてもいいんですよ?」




「ゆル…………ざ…………ない゛ィぃっ!!」




『許さない』と言った。

それはそうだろう。

何せ、妹の死を悼んでくれた大切なお友達だと

思っていたのに、実は彼女を殺した真犯人の

サイコ野郎だったと気付いてしまったのだから。

まさに可愛さ余って憎さ百倍、といった所か。




「かひゅぅっ…………カヒュぅぅーっ…………」




「ああ、脳に酸素が届かなくなってますね。

苦しまずに力を抜いて、もう楽にしていいんですよ?

ほら……もう瞼が閉じかけで眠たそうになってきた。

お手手も爪先も除皮質硬直で折れ曲がって…………。

あれ? 聞こえてます?

もう喋る事も出来ないんですか、先輩?

…………………………さようなら………先輩。

あなたの大事な妹が天国で待ってますよ。

いつまでも二人仲良く暮らしてくださいね」




「きゅごっ…………んぐ……ぇぇぇーーっ………………」




力尽きた亜月の頭がカクン、と前に俯いた。

しばらくの間、ピンク色のペディキュアに彩られた

足の指がクニュクニュと蠢いていたが、

やがて折れ曲がったまま硬直し、動かなくなった。

それからすぐ全身を何度か大きく震わせた後、

失禁して夥しい量の小便を漏らした。




ツーンとした強烈なアンモニア臭が部屋中に漂う。

僕はレオタード姿で息絶えた亜月の遺体の全身、

足の裏のアップをスマホで写真撮影していき、

最後に彼女の死に顔を撮ろうと覗き込む。







亜月の両目は充血し、カッと見開いたまま

黒く濁った瞳孔が散大していた。

涙、鼻水、涎でぐしょ濡れの表情。

鬱血していた顔面はドス黒い感じの色に変化し、

紫色の舌がダラリと口から垂れ下がる。




「さてと、そろそろ帰るか。

脱いだ靴下は………ああ、鞄の中か。

ついでに靴下も貰っていきますね先輩。

すぅーっ………ああ、ほんのり汗臭くて

最高ですよ…………」





─────────────────────────





……………………『〇〇』はブツブツと呟きながら、

女子更衣室から立ち去っていく。




翌日、変わり果てた姿の永塚亜月は朝練にやって来た

新体操部の部員によって発見された。

当初は自殺かと思われていたが遺書はなく、

何者かが体育館シューズで歩き回ったような

下足痕が遺体の周りから検出された為、

捜査関係者からは、今回のケースは自殺を偽装した

殺人事件ではないか、という声が上がった。




しかし現場はほぼ毎日、部活動で多数の

人間がひっきりなしに出入りする部屋であり、

体育館用のシューズも全学年共通とあってか、

下足痕だけでは犯人の特定は実質、不可能だった。




下足痕の他に、亜月の爪先に塗られた

自殺する人間にしては不自然なペディキュアや、

遺体の足裏から微細なウェットティッシュの繊維片も

検出されたが、その不確かな証拠以外に

犯人に有力な手掛かりは見つからず、

事件は1ヶ月も経たない内に迷宮入りとなった。




そして………事件から更に1年近く経過し、

高校3年生になってからも相変わらず、

『〇〇』は何食わぬ顔で日常生活を送っていた。

時折、自身が殺害した永塚姉妹での妄想と

彼女達の遺品の上履き、靴下で自慰行為をしながら

性欲を発散していたが次第に、それだけでは

自身の歪んだ欲望を抑えるのが困難になってきた。




だが彼に再び殺人のチャンスが訪れる。

通っている高校からそう遠くない場所に

宿泊施設としても利用可能なスポーツセンターが

あるのだが、今年の夏休みに隣の県から

名門校と名高い△△女子大附属高等学校の

吹奏楽部が合宿にやって来ると耳にしたのだ。





今、通っている高校では校内で女子生徒が2人も

死亡する事件が起きて評判に傷がついた事で、

生徒の安全を確保する為に監視カメラや警報装置等が

あちこちに増えてやり辛い状況だった彼にとって、

この情報は有り難いものだった。





そして迎えた高校生活最後の夏休み。

8月上旬のあくる日の深夜、

自宅からこっそり抜け出した『〇〇』は、

吹奏楽に青春を賭ける大勢の少女達が就寝している、

スポーツセンターの近くまで来ていた………。

【Pedicure Strangler】序章 後編  【Pedicure Strangler】序章 後編  【Pedicure Strangler】序章 後編  【Pedicure Strangler】序章 後編  【Pedicure Strangler】序章 後編  【Pedicure Strangler】序章 後編 

Comments

続編待ってました!! 妹よりも姉のほうが色気があってエロいのでそそられます。 被害者が身に付けているもので首吊り偽装するシチュも大好きです。 ぴっちりレオタードからはみ出そうな乳房と体液垂れ流しの描写(逝き顔と尿失禁)がベストマッチです♪

SITH


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