♫〜〜
♬〜〜
「もう…なに……?」
枕元でスマホが鳴る。
横河原沙希は半ば寝ぼけながらスマホを手に取り通話に応じた。
「もしもし…」
『あ!出た!やっぱり寝てたでしょ』
「んにゃ?光姫?」
『私も居るよ〜』
「友梨ちゃんも?」
通話の主は高浜光姫と衣山友梨だった。
「こんなに朝早くどうしたの?」
『なに寝ぼけてんの!』
「ふぇ?」
沙希はおそるおそる時間を確認する。
「わぁぁぁ!!!!」
スマホの時計は8:00と表示されていた。それは光姫たちと待ち合わせをしている時間だった。その時間に目を覚ましたということは遅刻が確定したことを意味していた。
『まったく…いつもの場所で待っててあげるから急いで来なよ』
「ごめーん!」
沙希は飛び上がって登校の準備を始める。
『あはは、みんなで遅刻してローターされようね』
「ん?今なんて?」
『ほら、さっさと準備しなさいよ!』
「あ!そうだった!」
『電話は切るね。ばいばーい』
そういって通話は切られた。
沙希は着替えを急ぐ。
「うわ!自縛したままだった!」
沙希の身体には美しい亀甲縛りが施されていた。昨晩、自縛したまま寝落ちしたらしい。
「うぅ…解くの大変だよ……」
沙希は急いで複雑な縛りを解きにかかった。
__________________________
「うぅ…この私が寝坊するなんて……。8:00に集合なら7:55には到着していなければならないのに…」
沙希はワイルドな性格をしている割には時間に厳しいのだ。
辺りを見渡しても他の学生の姿は見えない。急いで準備したが遅刻は免れなさそうだ。
「ごめーん…寝坊しちゃって……」
膝に手をつき、息を荒げながら集合場所に到着した。
「もう!遅いよ!」
「沙希ちゃんが寝坊なんて珍しいねぇ」
光姫と友梨の声に安心し、顔をあげる。
そこには衝撃的な光景があった。
「光姫!?友梨ちゃん!?」
目の前の親友たちは縄で縛られていた。
光姫はコの字になるように後手に縛られており、胸の上下に縄を通され上半身をぎっちりと縛られていた。閂も通され簡易ながらも確かな拘束力のある後手縛りだった。
友梨は光姫よりも縄を多く用いた縛りを施されており、股縄まで施されていた。
「どうして縛られてるの!?また誰かに脅されて……」
「沙希こそ縛られ忘れ?先生に怒られるよ」
「“縛られ忘れ”って…友梨ちゃんもどうしちゃったの?」
「え?だって女子高生は縛られないといけないんだよ」
「なにそれ?!」
沙希は状況が掴めない。
「にしても友梨は気合が入ってるね〜、股縄までしてもらったんだ」
「えへへ〜今日の放課後、お兄さんとご飯に行くんだ〜」
友梨は放課後に沙希の兄と食事に行くらしく、楽しそうに答えた。
「沙希も残念だったね。大好きなお兄ちゃんを友梨に取られて」
「だから、私はブラコンとかじゃないから!」
会話自体はいつもの光姫と友梨だった。しかし、その格好が沙希には到底受け入れられなかった。
「ほら!行くよ!」
「まぁ遅刻は確定だろうけどね〜」
光姫と友梨は学校に向けて歩き始めた。
「本当に縛られたまま行くの?」
「沙希こそ縛られ忘れしたまま行くの?」
「だから!それなに!?」
沙希は困惑しながらも縛られた親友たちと学校へ向かった。
__________________________
「やめてください…!どうして私が縛られないといけないのですか!」
校門の前では沙希たちと同様に遅刻した女子生徒が若い女性の先生の手によって縛られていた。
「あ、あれは…」
その姿に沙希は見覚えがあった。共に幾多の戦いを潜り抜けてきた……そして幾度となく一緒に縛られてきた親友、古町和奏その人だった。
「和奏ちゃん!」
沙希は縛られ終えた和奏の元に駆け寄る。
「ん…亀甲縛りみたいですし…股縄までする必要ありますか……縛られるにしても光姫さんみたいな縛りで良いのに…」
縛りソムリエみたいなことを言っている…これは正真正銘の古町和奏その人だった。
「和奏ちゃんは私の味方だよね?」
「え、味方というか…お友達ですけど……大切な親友です…」
「あ…ありがとう……」
「……//」
「……//」
沙希と和奏は顔を赤くして見つめ合っていた。
気まずい時間が流れる。
「そうじゃなくて!和奏ちゃんも私と同じで縛られないで登校したんだよね!?」
「は、はいです…!登校したら皆さん縛られていて…そうしたらいきなり先生に捕まって…」
和奏は縛られるに至った経緯を沙希に説明した。
「よかった〜私だけがおかしいのかなって不安だったよ」
「はいはい、横河原さん。あなたも縛られ忘れですね。縛ってあげるので両手を身体の後ろで組んでください。」
沙希と和奏の会話を遮るように若い女性の先生が麻縄の束を持ちながら告げた。
「和奏ちゃん…どうしよう…」
「悔しいですが大人しく縛られましょう…。悪意のない先生を攻撃することはできません…。沙希さんを守らなければならないのにすみません…」
「大丈夫だよ。今は縄を受け入れて解決手段を一緒に探そう!えへへ、それに縛られるのは慣れてるし嫌いじゃないからね」
「っ…心強いです」
沙希は両手を後ろ手に組んで先生に向けながら続けた。
「さぁ、縛ってください。」
「潔いですね。古町さんと同じように縛ってあげます。」
そう言って女性教師は沙希の両手に縄を巻きつけていった。
「(和奏ちゃんと同じってことは後手縛りの後に亀甲縛りをされるんだよね…女性の若い先生と言っても恥ずかしい……)」
そんな沙希の気持ちを置き去りにするように沙希の身体には縄が飾られていく。
胸の上下に縄を通し、閂を施すと沙希の胸が強調されてぷるんと揺れた。
そして新しい縄の束を取り出し、沙希の首にかける。そこから胸の上下、おへその下あたりに結び目を作り、亀甲縛りの下準備を進めていく。
「股縄を通します。足を開いてください。」
無機質な要求に沙希は応じるしかなかった。
「はい…。」
沙希が足を開くと無慈悲にも縄が股間に通され引っ張り上げられる。
「ん…」
さすがの沙希も声を漏らしてしまう。いつになっても股縄は嫌でも感じてしまう。
そこから先は沙希や友梨のような手際の良さで亀甲縛りを施された。
「完成です。今後は縛られ忘れのないようにしてください。」
沙希と和奏のお腹には六角形の亀の甲羅が縄によって描かれていた。強盗犯や誘拐犯ではなく知っている人に縛られるのは味わったことのない羞恥の感情を与えていた。
「それと遅刻の罰ですね。4人とも私について来てください。生徒指導室まで行きます。」
「「はーい」」
光姫と友梨は大きく返事をして女性教師についていった。
「私たちも行きましょう。」
「うん…」
沙希と和奏も光姫たちを追うように歩き始めた。
__________________________
生徒指導室まで向かう道中、周りの教室を見ると沙希たちと同様に女子生徒全員が縛られていた。縛り方は人それぞれではあるが全員が後手縛りを施されていた。
「みんな縛られてる…」
思わず声を出してしまう。
「殿方は縛られていないようですね。しかし殿方もまたこの状況を受け入れているように見えます。」
共学ゆえ異性が縛られているというのに男子生徒は一切気にする素振りを見せていなかった。また、異性に縛られている姿を見られているというのに女子生徒も羞恥の気持ちを持ち合わせている様子もなかった。
「知ってる人に縛られてる姿を見られるのは恥ずかしいよ…光姫たちならともかく…」
「同意です…顔から火が出る思いです……」
沙希と光姫は顔を伏せながら急ぎ足で生徒指導室に向かった。
__________________________
「そこに並びなさい。」
生徒指導室に着くと、1列に並ばされた。光姫、友梨、沙希、和奏の順で並び、沙希は小声で和奏に語りかけた。
「こうしていると誘拐犯に捕まった時を思い出すね」
「そうですね…。私たちがいながら毎度縛られることになって申し訳ないのです…」
「良いって良いって。私なんか特に縛られるの嫌いじゃないしさ。縛られ慣れしてるし。」
「うぅ…沙希さんに縛られ慣れさせているのはくノ一としてどうしたものかと……」
「和奏ちゃんは優しいね。でも大丈夫だよ。一人ぼっちで縛られるのはまだ怖いけどみんなと一緒ならそんなに怖くないしさ」
「ありがとうございます…」
そんな話をしていると横から友梨が話しかける。
「ねーねー、なんの話?」
「こうしていると誘拐犯とかに捕まった時を思い出すねって話してたんだ」
「え?そんなことあった?」
「え……」
友梨の返答に沙希と和奏は固まった。
「私たちよく捕まってたじゃん!」
「ですです!いつもギチギチに縛られて…」
「こうやって毎日縛られてはいるけど…」
沙希はたまらず光姫にも語りかける。
「光姫は覚えているよね!私の家で遊んでたとき泥棒に縛られて…」
「そんなことあった?てか女の子が縛られるなんて当たり前のことじゃない?あんまり覚えてないや」
「うそ…でしょ……」
自分たちが間違っているのか…。そんな思いが沙希と和奏の心の中をぐるぐると回る。
そんな困惑している沙希たちを他所に、女性教師は物置棚から4つの道具を取り4人に見せつけた。
「遅刻の罰としてローターをつけます。」
遅刻の罰…それはローターによる責めだった。
「うそ…ローター……」
「皆さんのいる前で…ローターに責められるのですか……」
ピンク色のローターを当然のように見せつける姿に沙希と和奏は絶句していた。
「「はーい」」
光姫と友梨は腰を擦りながらローターを待った。
女教師は養生テープとローターを持ち、まずは光姫にローターを着け始めた。
「動かないでくださいね」
「分かってますよ〜」
女教師はスカートを捲り、パンツの中にピンク色のタマゴを挿れた。そしてローターのスイッチを太腿に養生テープで固定する。太腿からコードがスカートの中まで伸びていた。
そしてローターが起動し、光姫の秘部を刺激し始めた。
「ん……」
光姫は甘い声を漏らしていた。
「次は衣山さんです」
「はーい。」
友梨も同様にスカートを捲られ、パンツの中にローターを挿れられた。そして太腿にスイッチを固定され、ローターを起動させられた。
「ん…ぁ」
友梨も甘い声を漏らす。
「続いて横河原さんです。」
「いやです…!」
沙希は抵抗する素振りを見せた。
「遅刻の罰です。拒否権はありません。」
沙希は強引にスカートを捲られ、パンツの中にローターを挿れられた。股縄によってキツくローターが押しつけられる。
「んひぃ!?」
そして抵抗した沙希のローターは強めに振動を始めた。
「ぁん…」
「これで大人しくなりましたね」
女教師は沙希がローターに悶えている隙に太腿にスイッチを固定した。
「最後は古町さんです。」
「いや…やめてください……」
「抵抗すると横河原さんのようになりますよ。」
ローターの刺激に悶える沙希を見ながら女教師は和奏のスカートを捲り、パンツの中にローターを挿れた。沙希と同じく股縄によってローターが押しつけられる。
「ん……」
女教師は和奏が抵抗しないことを確認するとスイッチを太腿に固定し、ローターを起動させた。
「ぁ…」
「では一時限までには教室に行きなさい。」
4人にローターをつけ終えた女教師はそう言い残し、生徒指導室を後にした。
「ぁ…」
「気持ち良い……」
「っ……」
「んく……」
残された生徒指導室には4人の艶かしい声が響いていた。
限界状態の沙希だったがそれでも光姫たちに聞かなければならないことがあった。
「光姫と友梨ちゃんは本当に覚えてないの?」
「覚えてないって言われても…沙希こそどうしちゃったの?縛られ忘れてくるし、変な昔話もするし…」
目の前にいるのは間違いなく光姫と友梨だった。それでも何かが違う。
「そうだ。質問を変えましょう。」
和奏はふぅと深呼吸をして続けた。
「光姫さんと友梨さんに質問します」
「なになに?」
友梨と光姫はいつものような笑顔を浮かべながら応える。
「お二人は縛られることについて恥ずかしいという気持ちはありますか?」
「おかしな質問だね。別に普通のことじゃん」
「だねー。でもお兄さんみたいな人に縛られるときはドキドキするかな〜」
「なるほど…」
和奏は質問を続けた。
「では、ローターについてはどうですか?」
「これもまた当たり前の質問だね。遅刻した罰…つまり校則違反の罰だからどうという感情もないよ。でも強いていうならローターは刺激で授業に集中できないのは辛いかな」
「私も光姫ちゃんと同じー!」
そこまで聞いて和奏は沙希に向き直って状況を整理した。
「どうやら縛られることに対する認識がおかしくなっているようです。股縄をはじめローターの刺激には快楽を感じているようなので、目の前にいるのは間違いなく沙希さんたち本人だと思います」
「つまり…認識…概念がおかしくなっていると……」
「おそらくそういうことでしょう。古町家の人間、つまり私との記憶がなくなっていないところを見ると“緊縛”に纏わる記憶だけが改竄されているように思えます。」
「たしかに、縄原との出会いがなければ和奏ちゃんたちと知り合えてないもんね。」
そこまで言ったところで沙希と和奏は固まった。
「「あぁぁぁぁ!!!!」」
ようやく思い出した。
全ての元凶。
こんなことが起きた時に真っ先に疑うべき相手。
縄原麻美。
「ねぇ!縄原についてはどう思ってる?」
沙希は興奮気味に尋ねた。
「優しい市長じゃん。」
「この前挨拶されちゃった〜」
この2人の反応を見て、沙希と和奏は目を合わせて頷いた。
「ありがとう。2人は先に教室戻ってて」
「うん。2人も遅れないでね。」
「分かりました。」
そうして光姫と友梨は生徒指導室を後にした。
____________________
「“緊縛の影には縄原あり”だね」
「そのようですね。真っ先に疑うべき相手を忘れていました。」
「でも…どうしよう。こんな手も足も出せない状況だし……」
沙希は改めて自分たちの身体を確認した。身体中に張り巡らされた縄は沙希たちの身体を完璧に拘束していた。
「ふふふ、心配ないのです。」
和奏は得意げに続ける。
「古町流忍法“縄抜けの術”」
和奏がそう唱えると一瞬のうちに縄の縛めから脱出した。
「すごいよ!和奏ちゃん!」
「えっへんなのです」
胸を張りドヤ顔を見せつける和奏。
「っ…和奏ちゃん…その……えっと…」
沙希は和奏から目線を逸らしながら恥ずかしそうに告げた。
「ん?どうかしたのですか…?ってうわぁぁ!
?」
和奏は自分の身体に視線を落とした。
和奏の制服は縄とともに脱げてしまい、下着姿になっていた。髪色と同じピンク色の可愛らしい下着が晒され、和奏は両手で身体を隠した。
「…古町流忍法はえっちなんだね…」
「うぅ…否定できないのが悔しいのです……。どうも服まで脱げちゃうのが癖になっているみたいでして…」
和奏は自分の下着を一瞥しながら呟いた。そして、ローターによって刺激されていたせいかショーツにシミがついていることに気づき、急いでローターを外して制服に着替えた。
「沙希さんの縄も解いてあげますね」
「ありがとー」
クナイを用いて縄を切り、沙希は自由になった両手を使ってローターを外した
「それでさ…とりあえず縄原のところに行ってみないとだけどさ、縛られてない私たちが街中を歩いていたら怪しまれるし…どうしよう」
「ふふふ、そこは心配不要なのです。」
頭を悩ませる沙希に、和奏は自信たっぷりに返す。
「どうするの?」
「こうするのです!」
和奏は沙希をお姫様抱っこした。
「わぁ!」
和奏は軽々と沙希を抱え上げた。
「大丈夫?重くない?」
「大丈夫ですよ。それよりもしっかりと掴まっててくださいね」
「え、なにするの…?」
「ふふふ、街中を歩けば怪しまれるかもしれませんが“上”を行けば見つかることもないのです」
そういうと窓を開ける。
「え、うそ…」
和奏は、3階にある生徒指導室の窓から飛び出した。
____________________
屋根を伝うように駆けていくくノ一。
その懐にはお姫様抱っこされた女子高生がいた。
「空を飛んでるみたい!すごいよ和奏ちゃん!」
屋根を伝いながらの移動は沙希にとって初めての経験で目を輝かせていた。
「ありがとうございます。高いところは怖くないですか?」
「和奏ちゃんに抱えられてるし大丈夫だよー」
「優奏が初めてこの修行をした時なんて怖くて泣き出していたのに、沙希さんはもしかしたらくノ一に向いているのかもしれませんね」
「和奏ちゃんにそう言われると嬉しいな〜。くノ一か、たくさん縛られそうだし楽しそうだよね」
「あはは…できれば捕まることなく任務を遂行したいのですけど……」
和奏は縛られた時の記憶を思い出し下腹部が熱くなった。
「縛られるのは好きだけどさ、やっぱりこの世界は苦手かな。毎日、毎時間ずっと縛られてると縛られた時の喜びも半減すると思うんだよ。」
「と言うと…?」
「縛られるのが日常…つまり“縛られてあたりまえ”になっちゃうと縛られること自体に特別感がなくなるというか…」
「なるほど…。言いたいことは分からなくはないです。」
「縄原に会って解決するかは分からないけど…」
「それでも私たちにできるのは縄原のところに行くことだけです。」
「そうだね。なんとか元の世界に戻さないと…」
「そうですね…頑張りましょう。あっ役所が見えてきました。護衛を相手にするのは面倒です。窓から突っ込みますよ。」
そうして和奏は窓から市長室に侵入した。
__________________________
「あら?」
市長室に縄原は居た。
「縄原さん、皆さんに何をしたんですか!」
和奏は縄原に言う。
「…誰よ、貴女たち。」
「え……」
いつものように和奏たちを揶揄う縄原の姿はそこにはなかった。
「勝手に市長室に入ってくるなんて非常識よ。」
縄原は冷たい視線で告げた。
「と、とぼけても無駄です!どうせ黒忍さんたちを遣って洗脳まがいなことをしたのでしょう」
「っ…黒忍について知っている……?何者なの?」
縄原は驚いた表情を浮かべていた。
「和奏ちゃん…なんか縄原の様子がおかしいよ……」
「どうせ私たちを揶揄っているだけです。こうなれば実力行使です!」
和奏は縄原に向かって駆けていった。
「遅いわ。」
縄原は和奏の腹部に拳を入れた。
「ガハァ…」
和奏はその場に倒れる。
「っ…はぁ…はぁ…」
和奏は腹部を押さえて蹲った。
「和奏ちゃん!?」
沙希は和奏の元に駆け寄る。
「本当なら警察に突き出すところだけれど黒忍について知っているなら尋問が必要ね。秘密の地下牢に拘束するわ。」
縄原は指を鳴らして黒忍を呼びつける。
「あら?みんな出払っているのかしら。仕方ない。私が拘束しましょう。」
そうして縄原は麻縄の束を取り出した。
「私たちが大人しく縛られると思ってる?」
沙希は和奏の前に立ち両手を広げて縄原に抵抗の意思を伝えた。
「チッ…面倒ね。」
次の瞬間、縄原は沙希の背後に移動し、手刀を喰らわせた。
「ぁう…」
沙希は気絶し、その場に倒れた。
「ぅ…沙希さん……」
「その状態じゃ、抵抗もできないわよね。大人しく縛られなさい。」
「くそ……」
和奏は抵抗する力も残っていなかった。
「手錠があれば良かったわ。縄で縛るのは面倒ね」
「貴女はいったい…こんなの縄原さんじゃない…」
「うるさいわね。口も塞がれたいの?」
「っ……」
「それで良いのよ。」
「(痛い…こんな縛り…縄原さんの縛りじゃないです…)」
それは今までに感じたこともないほど冷たい縛りだった。
__________________________
「ん……和奏…ちゃん……?」
沙希は目を覚ました。その瞳には簡易的な後手縛りを施された和奏の姿が映った。
「目が覚めましたか、沙希さん。身体は大丈夫ですか?」
「う、うん…。いつもよりギチギチだけど…」
沙希は身体を起こして、縄の状態を確認する。簡単な後手縛りを施され、胸の上下に通された縄によって胸が強調されていた。そして何より縄が強く食い込んでいた。
「縄原さんとは思えない雑な縛りです…」
「…縄原までおかしくなっているなんて……」
全ての元凶と思っていた縄原までもがこのおかしい世界の住人となっていた。
「でもひとつだけわかったことがあります。」
「え!なになに?」
得意げに和奏が続ける。
「…私のお尻を叩いてください!」
「へ?」
唐突の要求に沙希は困惑する。
「あ、縛られているので叩けませんでしたね。それでは抓る感じでよろしくお願いします。」
「いやいやいやいや!そうじゃなくて…どうしちゃったの?SMとかそっち系に目覚めちゃった感じ?」
「っ!?なにを言ってるんですか!そんな変態ではないのです!…興味はありますけど……」
「興味あるんだ…。…でもそんな痛いこと和奏ちゃんにできないよ」
「それが、痛くないんですよ。」
「どういうこと?」
「モノは試しです。ぎゅーとやっちゃってください!」
「本当に?いいの?」
「はいです!」
沙希は和奏に促されるままに後手で和奏のお尻に触れる。
「えい!」
沙希は力いっぱいに和奏のお尻をつねった。
「…ふふふ。」
「あ、あれ?」
力いっぱい抓ったはずなのに和奏はいっさい表情を変えていない。
「だから言ったでしょう?痛みを感じないのですよ」
「そんなことある…?」
沙希は後手で自分の腰を抓った。
「本当だ…痛くない……」
不思議なことに痛みを感じなかった。
「“痛みを感じない”ということは連想できることがありますよね?」
「まさか…夢の中ってこと」
「私はそう分析しています。」
突拍子のない分析だったが、諸々の違和感を証明するには十分だった。
「で、でもさ、縛られてる感覚はあるよ。股縄だって気持ち良かったし…」
「確かに、縄の感覚はありますね。」
そこでハッとしたように沙希は口を開いた。
「もしかして現実世界で私たちは縛られているってこと……?」
「なるほど!それなら説明がつくかもしれません。」
沙希と和奏は一つの仮説に辿り着いた。しかし、それはこの現状の解決にはつながらない。
「この夢から覚めるにはどうしたら良いんだろう?っていうか目が覚めたとしても私たちは縛られてるってことだよね……誰に縛られてるんだろう…目が覚めるのが怖いよ…」
「沙希さん。大丈夫です。目が覚めた時には私が救いだします。だから今はこの夢から覚める方法だけを考えましょう。」
「和奏ちゃん…」
沙希は和奏を頼もしく思った。
「私が思うに、この世界は“バグ”で満ち溢れています。」
「“バグ”ってゲームとかの?」
「はい。通常じゃ考えられない事象ばかりです。」
和奏は続ける。
「アナログな話になってしまいますが、昔の人は壊れたテレビとかをどうやって直していたか分かりますか?」
「えっと…なんか叩いたりして直してたとか?マンガとかでそういう描写があったような」
「その通りなのです。つまり、このバグに塗れた世界にちょーっと強めの刺激を与えてあげるのです。」
「つまり…なにをするの?」
「縄原さんに縛ることの楽しさ…私たちをギチギチに縛りあげる快感を味わってもらうのです!」
「…どうしよう……和奏ちゃんがおかしくなっちゃった…」
和奏の提案に沙希は困惑する。
「むむ、また何か誤解が生じているようですね」
「だって自分から進んで縄原に縛られようってことでしょ?あ、それならいつも通りか」
「どういうことですか!…まぁ否定はできませんが……」
赤面しながらも和奏は続ける。
「つまりこの世界の縄原さんに縛ることの楽しさを知ってもらうことで元の世界に戻る足掛かりにするのです!」
「なるほどね〜。でもさ、私たちは縛られてるわけでしょ?縄原に縛られるってことは縄抜けしないといけないし…解けそう?」
「問題ないのです」
そう言うと和奏は忍術を唱えた。
「縄抜けの術!」
和奏の周りに風が生じ、一瞬の隙に和奏は縄の縛めから解放された。
「さすが和奏ちゃん!」
「えっへんなのです」
「服も脱げちゃってるけど…」
「脱げるものだと意識しておけば恥ずかしさも半減なのです」
和奏は下着姿で胸を張っていた。
「さぁ、縄原さんに思い出してもらいましょう!」
_________________________
「はぁ…ただでさえ公務で忙しいというのに、あのネズミたちから情報を聞き出すために尋問することになるなんて…」
1日の仕事を終え、地下牢へ向かいながら縄原は嘆息混じりに呟いた。
「な……」
地下牢の扉を開けた縄原は言葉を失った。捕まえたはずの和奏と沙希が縄抜けに成功していたのだ。
「あわわ…見つかっちゃいました……?」
牢の中で苦笑いを浮かべる和奏。
縄原はすぐに落ち着きを取り戻し、沙希たちと対峙した。
「これだから縄の拘束は嫌なのよ。まぁ良いわ、面倒だけどまた縛れば良いだけの話よ」
「縛るのが面倒だなんて…縄原はそんな人じゃないよ!」
沙希は強く言い返す。
「おかしなことを言うのね。私の何を知っているの?」
「全部だよ…“全少女緊縛計画”も、あなたの縄捌きも……」
「なにそのふざけた名前の計画は?」
「やはり…縄原さんもおかしくなってしまったのですね……」
「おかしいのは貴女たちの方よ。勝手に市長室に侵入したことや、黒忍たちを知っていたことを洗いざらい吐いてもらうわよ」
縄原は牢の鍵を開け、沙希たちと向かい合った。
「大人しく捕まる私たちではありません。覚悟してください!」
和奏はクナイを構えて縄原と対峙する。
「はぁ…結果は分かりきっているでしょう?」
「それはやって見ないと分かりませんよ…」
そうして和奏は縄原に向かって駆けていった。
___遅いわ…
「なっ…」
一瞬の交錯。
その刹那、和奏はクナイを奪われ、組み伏せられた。
「言ったでしょ?」
縄原は奪ったクナイを和奏の首筋に当てながら沙希の方を見て続ける。
「そっちの子は?私と戦う?」
「こ、降参します…」
沙希は両手をあげて縄原に告げた。
「そう。賢明ね。」
縄原は再び和奏を拘束するべく、組み伏せたまま、縄抜けした縄を探すためにあたりを見回した。
「縄原…これでしょ……」
沙希は両手をあげながら自身の足元に視線を向けた。
「あら、綺麗にまとめてくれていたの?」
「えっと…あはは…」
少しはにかんだように苦笑いし、沙希は深呼吸して思いって縄原に言葉を投げた。
「わ、私が和奏ちゃんを縛ります。」
「はぁ?なにを言っているの?」
珍しく縄原が困惑していた。
「縄原が和奏ちゃんを縛っている間、私に反撃されちゃうかもしれないよ」
「そんな隙を私が作ると思う?」
「人間、火事場の馬鹿力があるんだよ。もしかしたら縄原もびっくりの超スーパーパワーが出ちゃうかも」
「まぁ良いわ。そこまで言うなら縛ってみなさいな。」
縄原は麻縄の束を沙希に渡し、和奏を立たせた。
「両手は組んだまま動かないで。少しでも動いたら背後からお友達をクナイで刺しちゃうわよ」
「本物の縄原さんならそんなことは言いません。」
和奏は屹然とした態度で縄原に返した。
「ふふ、そんなみっともない姿で強い言葉を吐いても怖くないわよ」
「………みっともないですか」
「ええ、両手を後ろに組んで縛りを待っている。あまりにも滑稽よ」
「これでもまだ思い出しませんか…」
和奏は寂しげに呟いた。
「和奏ちゃん、大丈夫?」
「はいです。ここまでは計画通り…。でもこのままいくと沙希さんが縄原に…。」
「大丈夫!私を誰だと思っていの?縛られマスターの沙希ちゃんだよ。絶対にうまくいくから。」
「頼もしいです…」
和奏は三たび両手を後ろ手に組んで続けた。
「私を縛ってください。」
「あはは、滑稽ね。自分から縛りを乞うなんて、それでもくノ一なのかしら?」
「おや、随分と嬉しそうですね」
「っ…嬉しくなんかないわ。あまりにも滑稽で笑ってしまっただけよ」
「そうですか。では、沙希さんお願いします」
「よしきたっ!」
沙希は親指を立てて和奏に返した。
そして麻縄を整え、和奏に縄をかけていった。
沙希は巧みな手捌きで和奏の手首を縛り上げ、胴体に縄をかけていく。
「ん…」
胸の上側に縄を通した際、和奏は小さく声を漏らした。
「大丈夫?痛かった?」
「いえ、大丈夫です。沙希さんの縄が痛いなんてあり得ないですよ。いつも優しく縛ってくれるのでとても安心します。」
「えへへ、ありがとう〜」
そんな沙希と和奏のやりとりを見ていた縄原は小馬鹿にしたように嘲笑していた。
「優しく縛る?身体を拘束されているのに安心する?意味がわからないわ。もしかしてマゾヒストなのかしら?」
「今の自己中心的な縛りをする縄原さんには理解できないでしょうね。“緊縛”の良さを…!」
「理解できなくて良いわよ。変態の心理なんてね」
「そうですか。沙希さん、続けてください。ギチギチにお願いします」
「まかせて〜」
沙希は意気揚々と和奏の身体を縄で飾りつけていく。
「胸縄もするよ」
胸の上下に縄をかけ、閂を施した後に肩から胸にかけてV字になるように縄を這わせる。これにより和奏の胸が縄によって絞り出された。
「縦に縄を割ることで縄抜けできないようにしているわけね。変態さんにしては考えているのね」
「うぅ…この縛りは少し恥ずかしいのです……」
「和奏ちゃんは大きくて、胸縄が映えて羨ましいよ」
「複雑な気持ちなのです…」
夢の中とはいえ意中の人に見られながら縛られるのは流石に羞恥心が刺激される。まして胸を強調する縛りは下着姿を見られるよりも恥ずかしかった。
上半身を縛り終えた沙希は和奏の腰にも縄を巻いていく。
「腰縄?連行用ってこと?」
困惑する縄原に沙希は得意げな表情を浮かべながら応えた。
「こうするんだよ!」
沙希は和奏の腰縄から出た縄尻を股間に通して思い切り引き絞った。
「あひぃ!?」
麻縄が秘部に食い込み、和奏はだらしない喘ぎ声を漏らした。
「そんなところを縛ったって身体を拘束できないじゃない…何の意味があるのよ……」
「股縄の良さが分からないなんて勿体無い人生だよ」
沙希は得意げに語り、両手を後ろに組んで縄原に背中を見せた。
「さぁ、私も縛って欲しいな。和奏ちゃんみたいにギチギチにして良いからね」
「なんなのよ…この子達……」
縄原は困惑すると同時に、感じたことのない感情が心の底で湧き立っていた。
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