「ん……和奏…ちゃん……?」
沙希は目を覚ました。その瞳には簡易的な後手縛りを施された和奏の姿が映った。
「目が覚めましたか、沙希さん。身体は大丈夫ですか?」
「う、うん…。いつもよりギチギチだけど…」
沙希は身体を起こして、縄の状態を確認する。簡単な後手縛りを施され、胸の上下に通された縄によって胸が強調されていた。そして何より縄が強く食い込んでいた。
「縄原さんとは思えない雑な縛りです…」
「…縄原までおかしくなっているなんて……」
全ての元凶と思っていた縄原までもがこのおかしい世界の住人となっていた。
「でもひとつだけわかったことがあります。」
「え!なになに?」
得意げに和奏が続ける。
「…私のお尻を叩いてください!」
「へ?」
唐突の要求に沙希は困惑する。
「あ、縛られているので叩けませんでしたね。それでは抓る感じでよろしくお願いします。」
「いやいやいやいや!そうじゃなくて…どうしちゃったの?SMとかそっち系に目覚めちゃった感じ?」
「っ!?なにを言ってるんですか!そんな変態ではないのです!…興味はありますけど……」
「興味あるんだ…。…でもそんな痛いこと和奏ちゃんにできないよ」
「それが、痛くないんですよ。」
「どういうこと?」
「モノは試しです。ぎゅーとやっちゃってください!」
「本当に?いいの?」
「はいです!」
沙希は和奏に促されるままに後手で和奏のお尻に触れる。
「えい!」
沙希は力いっぱいに和奏のお尻をつねった。
「…ふふふ。」
「あ、あれ?」
力いっぱい抓ったはずなのに和奏はいっさい表情を変えていない。
「だから言ったでしょう?痛みを感じないのですよ」
「そんなことある…?」
沙希は後手で自分の腰を抓った。
「本当だ…痛くない……」
不思議なことに痛みを感じなかった。
「“痛みを感じない”ということは連想できることがありますよね?」
「まさか…夢の中ってこと」
「私はそう分析しています。」
突拍子のない分析だったが、諸々の違和感を証明するには十分だった。
「で、でもさ、縛られてる感覚はあるよ。股縄だって気持ち良かったし…」
「確かに、縄の感覚はありますね。」
そこでハッとしたように沙希は口を開いた。
「もしかして現実世界で私たちは縛られているってこと……?」
「なるほど!それなら説明がつくかもしれません。」
沙希と和奏は一つの仮説に辿り着いた。しかし、それはこの現状の解決にはつながらない。
「この夢から覚めるにはどうしたら良いんだろう?っていうか目が覚めたとしても私たちは縛られてるってことだよね……誰に縛られてるんだろう…目が覚めるのが怖いよ…」
「沙希さん。大丈夫です。目が覚めた時には私が救いだします。だから今はこの夢から覚める方法だけを考えましょう。」
「和奏ちゃん…」
沙希は和奏を頼もしく思った。
「私が思うに、この世界は“バグ”で満ち溢れています。」
「“バグ”ってゲームとかの?」
「はい。通常じゃ考えられない事象ばかりです。」
和奏は続ける。
「アナログな話になってしまいますが、昔の人は壊れたテレビとかをどうやって直していたか分かりますか?」
「えっと…なんか叩いたりして直してたとか?マンガとかでそういう描写があったような」
「その通りなのです。つまり、このバグに塗れた世界にちょーっと強めの刺激を与えてあげるのです。」
「つまり…なにをするの?」
「縄原さんに縛ることの楽しさ…私たちをギチギチに縛りあげる快感を味わってもらうのです!」
「…どうしよう……和奏ちゃんがおかしくなっちゃった…」
和奏の提案に沙希は困惑する。
「むむ、また何か誤解が生じているようですね」
「だって自分から進んで縄原に縛られようってことでしょ?あ、それならいつも通りか」
「どういうことですか!…まぁ否定はできませんが……」
赤面しながらも和奏は続ける。
「つまりこの世界の縄原さんに縛ることの楽しさを知ってもらうことで元の世界に戻る足掛かりにするのです!」
「なるほどね〜。でもさ、私たちは縛られてるわけでしょ?縄原に縛られるってことは縄抜けしないといけないし…解けそう?」
「問題ないのです」
そう言うと和奏は忍術を唱えた。
「縄抜けの術!」
和奏の周りに風が生じ、一瞬の隙に和奏は縄の縛めから解放された。
「さすが和奏ちゃん!」
「えっへんなのです」
「服も脱げちゃってるけど…」
「脱げるものだと意識しておけば恥ずかしさも半減なのです」
和奏は下着姿で胸を張っていた。
「さぁ、縄原さんに思い出してもらいましょう!」