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【前編】マッチングアプリで出会った子と誘拐ごっこをする話

近頃巷を騒がせているのは“性癖マッチングアプリ”『あぶのーまる』だ。

恋愛目的のマッチングアプリではなく、性癖を満たすことを目的としている。

つまるところ人に言えないようなフェチズムを満たしてくれるパートナーと出会うことができるのだ。

このアプリの素晴らしい点は登録者情報は全て秘匿とし、お互いの呼び方まで指示を出してくれる。また、お互いの集まる場所についてもアプリの方で用意してくれるのだ。


そんな魔法のようなアプリにオレも手を出してみることにした。


「『緊縛』っと……『縛る側』で。」


ポチポチとスマホをタップして情報を入力した。


「はや…!?」


するとすぐにマッチングが決まったようだ。さすがは都会。人がいるぶん、性癖もその数だけあるのだろう。

オレは支持されたマンションの一室に向かった。



「アンナさん、お邪魔します。」


マンションに入室する。

アンナさんというのはアプリから指示された偽名だ。ちなみにオレはシュンだった。


「リビングにいるよー。」


若そうな声に惹かれるようにリビングへと向かった。


「え…アンリ……ちゃん。」


そこにいたのは見るも明らかに成人していない女の子だった。凹凸のない身体には学校指定の体操服を纏っていた。


「ユーサクさんだね。まってたよー。」


ユーサクというのは偽名だ。アンリというのも同じく偽名。この偽名もアプリが指定してくれる。身バレの危険性も少ないというわけだ。


「えっと、アンリちゃんは縛られたいってことで良いのかな?」


「なに言ってんのさ、あのアプリでマッチングしたってことはそうだよ〜」


アンリは笑いながら話した。どうやら人懐っこい性格のようだ。


「ってわけでさ…アンリを縛ってほしいわけなんだけど〜」


「うん。」


「どーせならシチュエーションも凝りたいわけだよー」


「シチュエーション…?」


「ユーサクさんが誘拐犯で、アンリが誘拐された女の子っていう感じでさ。」


「なるほどね。」


どうやら縛られる過程を重視したいようだった。


「縛ったあとはユーサクさんに任せるよ〜。もちろんアンリは縄抜けがんばるけどね。」


「わかったよ。」


「それじゃ…始めよ〜!!」


そうして“誘拐ごっこ”が始まった。


__________________________


「ん…ここは……?」


アンリはベッドの上で目を覚ましました。

そこはいつもアンリが寝ているベッドではありませんでした。


「あれ、手が…」


眠い目を擦ろうとしても手が動きません。体の後ろ側でガッチリと固められているような感じがしました。


「って…うそ!縛られてるの!?」


ぼんやりしながらアンリの体を確認すると胸の上下に縄が巻かれていました。


「身体の後ろにもこんなに縄が…」


身体を捩らせて背中を見ると麻縄が縦横無尽に張り巡らされていた。背中側でアンリの両腕は綺麗に束ねられていた。


「ん…!解けてよ…」


必死に身体を動かしても麻縄がギチギチと鳴くばかりで一向に解ける気配などなかった。


「オレの縛りが解けるわけねーよ。」


「っ…!?誰…?」


「君を縛った張本人さ。」


「誘拐犯……。」


「そういうことになるね。」


誘拐犯はアンリが縄抜けしている姿を見てニヤニヤしていた。


「このアパートから逃げ出さないと約束してくれるならその拘束を緩めてやってもいいぞ。」


「そんなのイヤ…!」


「なら仕方ない…、もっと拘束を増やすしかないな。待ってろ縄を持ってくる。」


男は寝室から出ていきました。


「(いましかない…!)」


男の隙をついて寝室から飛び出しました。


「(走りづらい…縛られているだけなのに…)」


アンリの上半身は麻縄によって完全に拘束されていました。上半身が動かせないだけでとても違和感を感じてしまいます。


「(でも…逃げないと…!)」


アンリは一生懸命に走りました。

アパートといっても部屋の構造は簡単なはずです。おそらくこの扉を開けば玄関にたどり着くと思います。


「あれ…?」


扉を開けようと手を出そうとしたけど手が動きませんでした。

それもそのはずです。アンリは縛られているんだもん。


「いや…ぜったい逃げるもん…!」


アンリは後手で必死にドアノブを掴もうとします。


「ん……!あと少し…!」


「おい!なにをしている!」


誘拐犯に気づかれました。


「…よし!」


ガチャリとドアノブが回ってくれました。

アンリは一目散に玄関に走りました。


「はぁ…はぁ…」


縛られて走りにくいですが身体を揺らしながら懸命に走って玄関まで辿り着きました。幸運にも玄関は押し扉になっていたので体当たりするだけで扉は開くはずです。


「えい!」


アンリはやっと逃げられる、そう思っていました。しかし、現実は残酷でした。


「え…。」


玄関の扉は固く閉ざしたままでした。

鍵が閉まっていたのです。


「開けるやつはどこ?」


アンリは必死になって鍵の場所を探します。


「そんな……。」


アンリは絶望しました。扉の上部に鍵が設置されていたのです。背伸びすれば届く高さにありましたが、今のアンリには不可能でした。


「縛られているから…届かない……。」


アンリの身体に巻かれた縄は自分の両手を動かすことさえ許してくれません。たった一本の縄ですが、“それ”はアンリの両手を身体の後ろでギッチリと縛りあげ固定していました。


「逃げようとするなんて悪い子だ。たっぷりとオシオキをしないとね。」


男はアンリを手繰り寄せて、縄を眼前にチラつかせながら言いました。


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