支援してくださったあなたのおかげでマクドナルドの新作をいただきました。
ありがとうございます。
ごちそうさまでした😋
マクドナルド、放課後の窓際席。
制服姿の三人娘が、トレイを囲んでいる。
てりやきバーガーがずらりと並び、その匂いと熱気が思春期の感情と一緒にこみ上げてくる。
夏美は包み紙を広げながら、ため息をついた。
「なにこの雑な包み方。テリヤキソースがベチャベチャなんだけど……」
リサはむしろ嬉しそうに笑って、ソースが垂れたバーガーをつかんだ。
「でもそれがマックらしさって感じ。 この“博多明太ポテトてりやきチキン”、名前だけでカオスじゃん。そういうところにロマン感じない?」
「感じないわよ。“博多明太”と“ポテト”はまだしもテリヤキとの組み合わせは意味不明だし」
文句を言いつつ、夏美は結局一口、がぶりといった。
渚はストローでドリンクを吸いながら、小さく笑った。
「でも夏美、ちゃんと食べるんだね。減量中の達郎くんに合わせて健康食続けてたんじゃなかった?」
「……もう我慢の限界よ」夏美は視線をそらして、ポテトを手に取った。
「朝からゆで卵とサラダだけで、しかもドレッシングなし。ばぁやが張り切ってるせいで、こっちまで塩分カットされちゃって……」
リサが笑いながらポテトを一本掲げた。
「ギルティな味だよね〜。なんで身体に悪そうなものって、こんなに美味しいんだろ。これが“甘美な背徳の味”ってやつ?」
「……そんな日本語どこで覚えたの?」渚が呆れ顔で言った。
「最近、漢字の勉強してんの。すごくない?」
「でも日本人って、食べ物に全力すぎるよね」リサがバーガーを持ち上げながら続けた。「チーズ四種にテリヤキソース重ねて、さらにたまごにレモンペッパーって、もう“足し算の暴力”よ? イギリスじゃ考えられない」
「イギリスはまず“味がする”ってだけで奇跡だものね……」渚が小さくうなずいた。
「失礼ね。でもホント、日本って美味しさに命かけてるよね。恋愛には消極的なくせにさ」
リサがからかうように夏美を見た。
「なによ、何か言いたいわけ?」夏美がムッとしながらも、どこか動揺を隠せない。
リサがポテトをつまみながら、思い出し笑いを含んだ声を上げた。
「そういえば昨日さ、夜ちょっと寒かったから夏美がブランケット持って達郎の部屋に行こうとしてたじゃん? あたし、たまたま廊下でばったり会っちゃって~」
夏美は慌てて身を乗り出した。
「ちょっ、それ言うのやめなさいってば!」
「だって〜事実でしょ? 夏美、顔まっ赤にして“風邪引いたらかわいそうでしょ”とか言っちゃって〜」
リサはますます調子に乗っている。
「……それはまあ、そうだけど」夏美は頬を膨らませてポテトをかじった。
リサはにやにやしながら続ける。
「で、せっかくだから“じゃあ3人で一緒に寝る?わたしたち二人であっためてあげればいいじゃん”ってあたしが提案したら、夏美がいきなり“バカじゃないの!?”って怒り出すんだもん。わけわかんない〜」
夏美がむくれて言う。
「リサこそ“夜這い”しようとしてたでしょ! そういうのやめなさいよ!」
「ヨバイって、“夜にバイブス上げる”の略かと思ってた〜。違うの?」
リサが真顔で首を傾げる。
渚が口元を拭いて、静かに突っ込んだ。
「そこ間違えるところじゃないから。あと、夏美の乙女心も少しは尊重してあげなさい」
「え〜だって、日本語って難しいんだもん。それに感情表現が素直じゃないのって損すると思うけどな」
リサがぶーたれる。
渚は苦笑しながらバーガーにかぶりつき、ふっと息をつくように言った。
「でも……そうやって素直に気持ちぶつけられるの、ちょっと羨ましいな。私はいつも遠くから見てるだけで──」
その言葉に、夏美とリサが一瞬手を止める。
しかし次の瞬間には、またポテトと照り焼きの香りが空気を和らげていくのだった。
「なに、渚も達郎のこと──」リサが興味津々の顔で身を乗り出す。
「言ってないわよ、なにも」渚は目を伏せ、照れ隠しにドリンクのカップを持ち上げた。「ただ……ね、恋心って止めようとしても止まらないものなのかなって。最近、思うだけ」
「渚……」夏美が一瞬、声を失った。
沈黙しかけた空気を破るように、リサが明るく笑う。
「じゃあ三人で公正に勝負しようよ、ひとりのバチェラーをめぐる女たちの恋のバトル♡」
「なによそれ、勝手に恋リアみたいなネーミングつけないでよ」夏美がつっこむ。
渚は笑って肩をすくめた。
「勝負って言っても、達郎くん、女の子に迫られるとすぐに鼻の下伸ばすからなぁ。」
「それ以上は言わなくていいわ! ほんとに、もう……!」
夏美は顔を真っ赤にして、残りのポテトを口に詰め込んだ。
「こんなもの食べたなんて知られたら、ばぁやに絶対怒られる」
リサはにこにこしながらバーガーをたいらげる。
「ふふふ。背徳の味。放課後のマック、最高じゃん」
「こうなったらシェイクかフルーリー追加しない?」
渚はバーガーの包み紙を丁寧にたたみながら、ふたりの笑顔を見つめた。
(たぶんわたしがいちばん冷静。でも、だからこそ、こうして笑っていられる)
恋に勝つより、大事なものもある。
今日の放課後が、それだった。
ーーーーーーー
ただのバーガー批評ではありがちだしつまらない、と思って、最近はハンバーガーにかけた(連想・インスパイアされる)短編を書いていたのだが、
てりやきバーガーのバリエーションでは、さすがにろくなストーリーがインスパイアされない、と思っていたし、結局なにも思いつかなかった。
読んでもらえればわかる通りバーガーそれ自体については褒めていない。
ただ青春とマクドナルドの相性はいいし、キャラがハッキリしているので、こねくり回しているうちにガールズトークがそれなりにまとまった。
これは通常のデリケートの世界線で、ありえたかもしれない3人の日常の会話。
デリケートファンタジーではない。
リサは達郎の童貞を奪わないし、渚も親友の彼氏を寝取らない。
この世界線のリサは達郎の夏美への想いの一途さを知って、恋をあきらめてイギリスに帰国するだろうし、渚は霧山キャプテンかあるいはもっと頼りがいのある男性に美点を見出し交際を始めるのかもしれない。
あやういバランスの上に成り立っている、もろくてこわれそうな、思春期のきらめき、その一瞬を切り取ってみたつもりだ。
ballchaiball
2025-06-03 16:21:44 +0000 UTCwaldo
2025-05-24 07:47:24 +0000 UTCにしまきとおる Tohru Nishimaki
2025-05-24 07:06:12 +0000 UTCにしまきとおる Tohru Nishimaki
2025-05-24 07:02:35 +0000 UTCZekeZombie
2025-05-23 16:51:49 +0000 UTCwaldo
2025-05-23 14:58:40 +0000 UTC藤堂
2025-05-23 05:03:42 +0000 UTC