バグトラップ
Added 2021-07-02 10:05:31 +0000 UTC「むしろ君達がやってよ」 放課後の教室、3階から見下ろすグランドにミナはポツリとこぼした。書き終わった日誌をパタリと閉じて、教室を後にする。 ぼっちは暇だと思われているのか、日直の相方は部活があるからと、当番を押し付けて先に行ってしまった。とんだ勘違いだ、学校生活が充実していないからこそ、それ以外の時間はミナにとって非常に貴重な時間であるというのに。 「(やっと帰れる)」 ミナは職員室に日誌を届けると、少し早足で帰路に着いた、途中のコンビニで弁当を購入する、共働きの親の帰りはいつも遅く、食事は自炊時々コンビニがミナのルーティーンだった。 夕食を完食すると自分の部屋へ行き、バイクのヘルメットの様な物を頭に装着するとベッドに仰向けで横たわった。 「安定し、リラックスできる姿勢をとって下さい」 聞き慣れた音声ガイダンスに従い、目を閉じて全身の力を抜いていく。 「異常を確認した際には、ゲームのプレイ中であっても……」 注意事項を聞き終わると沈黙になり、目を開けると、真っ暗な視界がクリアになってくる。 ミナは殺風景の西洋ファンタジー風の部屋で同じように、ベッドに横になっていた、ゲームにおいてのミナの部屋だ、服装もミナのロール(職業)であるウィザード(魔法使い)に合わせた衣装に変わっている。 「さあ、行くか」 ミナの充実した時間がようやく始まるのだった。 初のバーチャルゲームが発売されて10年は経つ今、現実のステータスに左右されにくいバーチャル空間に居場所を求めるものは少なくない、総人口が1億人を超えるゲームも存在するのだ、ミナもそんな居場所を求める一人だった。 ミナは人と関わることが嫌いなわけではなかった、容姿にコンプレックスもない、しかし、人と深く関わることが苦手だった、クラスの人間とも必要なコミュニティケーションは円滑にとっているが、一緒に遊びに行ったりという事には気が進まず、自分に好意を寄せて来た人間を意図的に避けて過ごしているうちに、クラスから浮いている、という程ではないが、親しい友達もいない、空気のような存在になってしまっていた。 自らの行動の結果ではあるが、ミナはそこまでの孤独を求めてはいなかった、しかし他人と深く関わるのを拒む気持ちもまた本心、結果、ミナの心を満たす人間関係を学校生活の中に見出す事は難しく、虚しい学校生活を余儀なくされていた。 そんなミナがゲームにのめり込んで行くのは、もはや必然だった、基本的にゲーム以上の繋がりを持たない、シンプルでスピーディーな関係性、まさにミナの求める人間関係がそこには広がっていた。 学校では最低限赤点を取らない程度に勉強し、帰ってからはゲーム三昧、周りから見たら廃人、変人扱いされそうなひどい生活だがミナには全然気にならなかった。 充実した高校生活とは必ずしも学校の中に無くてはならないものではないのだ、ミナは今日も心地よい人間関係と、心躍る冒険を求めてバーチャルの扉を潜った。 ……………………………………………………………… 「誰かいないかなー」 ギルドにて、ミナは見知った顔を探していた、ギルドは聖堂の様な広い建物で雑談するためのテーブルやクエスト受注の為の掲示板などが設置されている、今は100人くらいの人が溢れていた、しかしその中にミナの仲間は見当たらない、それもそのはずで、ミナの仲間は今から30分前のクエストを受けることが多かった、それ故に日直の当番が長引くことはミナにとっては致命的だったのだ。 「おーいっ!」 「クリス!」 ミナは思わず頬を緩ませた、今ギルドの隅のテーブルに腰掛け、ミナを呼んでいる女の子はミナがこのゲームをやり始めてまもない頃から仲良くしている、唯一友達と呼んでもいいかもしれない関係を築けている人物だ。 「今日は来ないのかと思ってた」 「うん、ちょっと用事があって」 「そっかそっか……そいえばね、このまえ行ったダンジョンで……」 2人の会話にリアルの話は持ち込まれない、話すのは基本的にこのゲームの話ばかりだった。人によっては、長く一緒にプレイしていくうちに、プライベートな連絡先を交換したり、オフで会ったりと、交友が深まっていく事もあるが、ミナとクリスは出会ってから何年経っても、その関係性は変わらずギルドで会ったらゲームの話をしたり、一緒にクエストに行ったりするに留まっている、しかしクリスとのそんな距離感がミナには心地よかった。 「また、行こうね」 「うん」 「…………」 「ねえ知ってる?」 一通り雑談を終えた所にできた、会話の間に、ちょうど隣で喋っていた女性冒険者の会話が入ってきた。 「最近〇〇ダンジョンでレアイテムが出るらしいよ」 「あんな古い所で?」 「うん、ただ……」 「…………ナミ?」 なんとなく隣の冒険者の会話に聞き入っていたミナは突然のクリスの声に少し驚いたように向き直った。 「ごめん、私もう行くね」 「え?」 「今日はナミ来ないと思ってたから他の人とパーティー組んじゃったの」 ナミとはゲーム内でのミナの名前だ、本名をひっくり返しただけだが、ミナはこの名前が気に入っていた。 「そっか、また明日ね」 クリスはひらりと手を振ると他の仲間と早々に行ってしまった。 「どうしようかな」 別段悲しいということはないが、完全にクリスとクエストに行くつもりだったミナは拍子抜けになってしまい、ギルド内をぼんやり眺めた。 「今日は一人で行くか」 ミナのレベルはそこそこ高く、飛び入りでどこかのパーティーに入れてもらうこともしばしばあるが、今日はクリスと行くつもりになっていたので、他の人と行く気になれず、ミナは一人でダンジョンへ向かった。 ……………………………………………………………… 「ここ来るのも久しぶりだな」 ミナはギルドで隣に座っていた冒険者の話が気になり、〇〇ダンジョンに来ていた。昔はミナも通い詰めた人気のダンジョンだったが、今日は誰もいない様だ。 ミナのロールであるウィザードは本来攻撃したり、回復したり、灯りを照らしたり、と幅広くスキルを使える為、一人での探索には有利と言えるロールたが、ミナは攻撃魔法をとことん強化して前線に出るタイプの為、一人での探索にあまり向いているとはいいがたかった。ダメージを受けてしまうとろくに回復できない為出来るだけ敵を一撃で倒しながら進んで行く。 「やっぱり何もないな」 ダンジョンの最深部、モンスターは難無く倒して進むことができたし人のいないダンジョンは独占感があって楽しいものではあるが、宝箱のアイテムはあまり[[rb:芳>かんば ]]しくない、あの冒険者の情報はハズレだったみたいだ。最深部の宝箱も既に持っている、アイテムだった。 「まあそんなもんだよね……あれ?」 最後のアイテムを回収した、ミナは早々にダンジョンに回れ右した所で、違和感が走った。 「なんか、前来た時と違ってる気がする……」 具体的には、壁の模様が前来た時と少し違う気がした、近づいて観察してみると、壁の模様に人為的と思える真っ直ぐな亀裂が走っていた。 「まさか隠し通路?レアアイテムってこれのこと!?」 思わぬ収穫ができるかもしれない、ミナは早速壁を押してみたり、攻撃魔法を当ててみたりと、隠し通路を開くギミックを調べてみる。 しかし、いくら試行錯誤してもなんの反応も得られない、段々と、実はただの壁に向かって試行錯誤しているのかもしれないと思えてイライラしてくる。 「もうっ!」 八つ当たりにうんともすんとも言わない壁を魔法の杖で小突いた ゴゴッ…… その行動が奇跡を起こした様で、地鳴りの音が響き、あれだけ固く閉ざされていた、壁が四角くくり抜かれていく様に奥にスライドし始めた。 「うっそ」 困惑するミナをよそに、壁は横にスライドし、狭いスペースを開いた、基本薄暗い洞窟のダンジョンだがミナが開いたスペースは壁が僅かに発光して、短い通路を照らしている、そして奥には宝箱が設置されていた。 「やった、こんなことあるんだ」 このゲームをそれなりにやり込んでいるミナだがこんな形でのアイテムドロップは初めての経験だった、思わず宝箱に駆け寄りすぐさま手をかける。 「何が入ってるんだろう」 期待に胸を膨らませ、宝箱を開いた次の瞬間 「うわっ、何これ?!」 箱から縄の様なものが飛び出し、ミナの身体に纏わりついた、咄嗟に掴むが蠢く縄は手首に巻き付き、両手を後ろに回すように引っ張ってくる。 「くっ…!」 抵抗しようと両腕を踏ん張らせるがどうにもならず、ミナの両腕は背中でコの字の様に組まされ、腕を巻き込む様に胸の上下にも縄が巻きついていく。 ようやく縄の動きが止まった時には、ミナの両腕は背中で組まれた状態からピクリとも動かせない様に縛り上げられていた、肘は直角より少し鋭角に折り畳まれ、手首と肘の中間で束ねられ、さらに腕ごと胸の上下にも縄が巻きつき胸下の縄は身体と二の腕の隙間を埋めるように絞られている。 おまけに背中から伸びた縄が奥の壁に光る釘の様なもので固定されており、その場から動くこともできない。 「……最悪」 思わず吐いた言葉が狭い通路に反響する。運営も悪ふざけが過ぎる、どうやらトラップ付きのフェイク宝箱だった様だ、相当なレアアイテムを期待していただけに、ショックが大きい。 しかも、身体に巻きつく縄によって絞られ、胸がやたらと強調されてて、かなり恥ずかしい格好になっていた、一人で来ていたことが不幸中の幸いか。 「はぁ……帰ろう……………………あれ?」 このゲームでは身体拘束系の魔法は最長でも30秒で無敵時間が終わり、その後ちょっと力を入れればすぐに解除でき、仮に無敵時間が終わってから無抵抗だったとしても、その後1分で自動的に解除される、そういう仕様になっている。 しかし、明らかに30秒は過ぎたはずなのに、力を込めても、ミナの身体に巻きつく縄は解除される気配がない。 「(どういうこと?新しい拘束トラップ?)」 待てど暮らせど、解除される気配はないので、二の腕に巻きつく縄に少し強めに力を込めてみる。 「んっ……」 しかし、縄からは物体にダメージ蓄積の際に発生するエフェクトも一切確認できない。 「んっ……ん゙っ……」 ギッ…ギッ…… 期待を裏切られた挙句に足止めだ、募るイライラは縄に込める力をどんどん強くしていった。 ギギィ……ギチチ…… 強く力を込めると、縄が軋み鋭く乾いた音が背中から伝わった、無駄にリアルに作られている様だ。 「んっ……くっ……もうっ、なんなのこれ……」 何度力を込めても一向に拘束が解ける気配はない、それが煩わしくてミナは次第にムキになり、身体も捩らせ夢中でもがき始めた。 「んんっ!…………ぅっ……ン……くぅ……」 体を力ませた際にか細い呻き声が漏れる。 「つっ……このっ……んん!……」 ギチチ……ギチッ…… 「ふっ…ん……むぅ……」 ギッ……ギチッ…… 「ダメだ、外せない……」 ミナは必死に縄を軋ませるが一向に解ける気がしない、最初はイライラをぶつける様にもがいていたが、徐々に不安がまさってくる。報酬なんてどうでもいいから一刻も早く、この状況から脱したい。 「もういいや、強制ログアウトしよう……あっ……」 メニューバーを開く為には手を使って特定の動きをしなければならない、つまり、ミナは拘束が解けない限りログアウトできない。 「どうしよう……」 言いようのない不安がミナの心を埋め尽くす。 途方に暮れ周りを見渡すが、そもそも拘束魔法はその多くが数秒程度で解除される為、解除アイテムというものは存在しない、どんな強力な武器やアイテムが落ちていたとしてもミナの拘束を解除することは不可能なのだ。 嫌な予感がする、正確には不安な心が良からぬ想像をしてしまっていた。 「んぅっ……このぉっ…………」 ミナは再びもがき始めた、何を考えたところで結局それしか出来ることがなかった、まだ力尽くでは解けないと確定したわけじゃない。 「んぅぅっ……」 二の腕を力ませながら胸を逸らす様に大きく捩らせた、胸を逸らした分縄が食い込み、胸の存在がさらに強調される。 「んっ…………んん……くっ…はぁっ……」 ギチッ……ギッ……ギギッ………… 「むっ……くっ……ふっ……くそっ……」 ギチチ…………ギチッ……ギッ…… ミナの焦燥とは裏腹に拘束は微動だにしない。それでもミナは未練がましく縄を軋ませた。 「んっ…………んんっ!……」 ギィ……ギチィ…… 「くぅ……っ……んぅ………………ふぅ……」 解ける気配のない拘束にミナは抵抗をやめ、忌々しいアイテムが入っていた宝箱を閉じその上に腰を下ろした。 「はぁ……はぁ……解けない……」 これまでの拘束魔法は少しの抵抗で簡単に解除できていただけに、ムキになって抵抗していたが、力任せにもがいただけでは、どうにも抜け出せそうにない。 「もしかしたら、これに何か仕掛けがあるのかも」 ミナは立ち上がり腰掛けていた宝箱を調べてみる、何か暗号的なものが書いてないか、ボタンの様なものが付いていないか、しかしどれだけ観察してもただの宝箱にしか見えなかった。 「ダメだ、分かんない」 ミナは観察をやめ再び宝箱に腰を下ろす、もう30分は経っただろうか、メニューが開けないから時間も分からないが、想像していた最悪なことは起こらず、両手が拘束されたまま時間だけが流れていた。 「はぁ……もう、助けてもらうしかないか……」 こうも八方塞がりだと、ミナは他のプレイヤーが来るのを待って、運営に連絡してもらうしかない、拘束された姿を見られるのは恥ずかしいがどうにもならない。 「んっ……むぅ……」 助けを待つにしろ、拘束された状態では手持ち無沙汰だ、仕方なくミナは三度縄への抵抗を試みる。 今度はがむしゃらにもがくのではなく、考えながら、身体を動かしてみる 「必要なアクションをすれば解けたりしないかな」 身体を左右に捻ったり、肩を動かしたりと両手が使えない狭い可動域の中で、ミナはさまざまな動きを試す。 「手首と胸の縄が繋がってるみたい……」 手首を下げようと力を込めると、胸の縄が締め付けられる感覚があった。 「んっ……っ……ふぅ……」 ギチッ…… しかし、何度手首を下げる方向に力を込めても、胸の縄が締め付けるだけで拘束に変化はなかった。 「やっぱダメかぁ……くっ…このっ……」 一応ダメ元で思い切り力を込めてもがいてみるが、当然縄はびくともしない。 「ん゙っ……むっ……はぁ……くそぅ」 本来30秒で解けるはずの拘束はどうしても解けない、移動することもできない。もうミナの心は羞恥心よりも早く解放されたい思いが強くなり始めていた。 しかし、できることは何もない、宝箱に腰掛けぼーっと通路の入り口を眺めながら、ミナは他のプレイヤーが通りかかるのを待った。 ……………………………………………………………… 「んっ…くっ…………はぁ……」 ギチィ……ギチ…… あれからまた30分は経ったか、ミナは宝箱に腰掛けたまま他のプレイヤーが通るのを待っていた。やることがないので、たまにもがいては、またぼーっとしてを繰り返している。 長時間拘束されている不安が最初はあったが、今は妙に落ち着いていた、暴れた所で縄が解けることはないし、冷静に考えればここはゲームの世界、最悪の事態は起きようがない、一定の時間が経てばプログラムが異常を感知して、強制ログアウトしてくれる。 「この拘束、多分バグだよね……もう最悪」 ミナが何度目か分からない愚痴をこぼしたその時、青白い光がチラチラと視界をかすめた。 「これ……崩壊エフェクト!」 すぐに胸に視線を落とし身体に巻きつく縄を確認するがしっかりと身体に吸い付く拘束に変化はなかった。 「ちょ……なにこれ!?」 崩壊エフェクトは縄とは全く別の場所、ミナのスカートの端から発生していた。 「なんで、どうなってるの?」 そうしてる間にもミナのの羽織っているマントの端からエフェクトがではじめ、すぐに服、靴、と縄意外にミナの身につけているもの全てから崩壊エフェクトが立ち上りたちまちミナはエフェクトの光に包まれた。 「スカートちょっと短くなってる……?」 膝くらいまであるミナのスカートは既に少し1、2センチ短くなっているように感じられた。 「このまま服が壊れたら……」 このゲームは下着や裸にはなれない仕様になっているが、これまで起こって来た異常事態を考慮すれば、最悪の事態を想像する事は難しくない。 「それはヤバいって」 迫る危機にミナは再び身体をもがかせ始めた。もう何としても、抜け出すしか無い。 「んんっ……くっ……むっ…………うぅ…」 ギチチ…… 必死に力を込め身を捩らせるが、背中でまとめあげられたミナの両腕はピクリとも動かない、縄の軋む音が、虚しく響く。 「くぅ………ん………むっ……」 ギチッ……ギチッ…… 「つっ……ふっ……お願い……外れてよぉ……」 ギチッ…… 必死の抵抗を嘲笑うかのように、身体に巻きつく縄がギチギチと乾いた音を立てる。 それでも衣服が消えてゆく中、ミナは抵抗を止めることはできなかった、力尽くでは外せないと何回も確かめたけれど、それでもミナは身体に纏わりつく縄を外そうとその身を捩らせ続ける。 「この胸の縄が……外せれば」 背中がどうなっているかは分からないが、拘束の主要な役割を果たしているのは胸の上下に巻きつき二の腕の動きを制限している縄に見えた。 「解除はできなくても、抜け出せるかもしれない……」 ミナは胸の上下の縄を何とかずらそうと肩を回したり上下に動かしたり、できる動きを試みる。 「ふっ……んっ……この……」 「んっ……んん……くぅ……」 しかし、いくらミナが身体をくねらせようと、縄がズレる様子はない、そもそも、ズレる設定になっているのであれば、今まで散々もがいて来たのに全くズレていないはずがない。 しかし、こうしている間にも、衣服はどんどん消えてゆく、ミナは胸縄をずらすことができるという限りなく薄い期待値に縋り付き、もがき続けるしかなかった。 「んんんっ……あぁ……ダメだ…外れない……」 ギチチ……ギチッ…… 圧倒的な焦りと不安にミナの瞳には涙が滲む。 「ん゙ゔぅぅっ…………」 胸の縄を下にずらそうと、手首を下げる方向に思い切り力を込め肩をくねらせるが、胸の上の縄は胸の膨らみに遮られ、ずらせない、胸の下の縄も上の縄と連動している為か、ずれる気配はない。 「くっ……む……うぅ……」 下がダメなら上へにずらそうと、肩を窄めて上げたり、くねらせたりして見るが、とても上に擦り上がっていくような感覚は得られない。 「んんっ……くぅ……うぅ……」 それでもミナは抵抗を止めなかった、ミナにとってこの仮想空間は現実世界のどこよりも大切な場所、ここで、裸を晒して、他プレイヤーに写真でも取られたら、ミナのゲームライフは大きく変わってしまうかもしれない、とても諦めることはできなかった。 膝くらいまであったスカートはもうミニスカートくらいになってしまった、服もお腹が見えそうな所まで消えてしまっている、もうあまり時間がない。 ミナは必死に身を捩り二の腕に力を込め、もがき続けた。 「ん゙ん゙っ……くそっ……むっ……んっ……」 ギチチ……ギギ…… 「んっ……あぁ……んっ……ん゙ん゙……」 ギチィ……ギチッ……ギッ……ギギギ…… ……………………………………………………………… 「はぁ…はぁ……はぁ……」 もがき疲れて、ミナは立ち尽くしていた、ゲームの世界では完全に体力が尽きるということはないが、どれだけもがいても解けない拘束に心が疲れ切ってしまっていた。 もう衣服は殆ど消滅して、下着が見え始めている、下着は現実世界と同じものの様だ。 ポロポロと涙がこぼれる、このままどうなってしまうのか、最悪な未来がミナの脳裏を駆け巡る、ゆっくりと消えてゆく残り僅かな衣服はミナの絶望をさらに加速させた。 ついに服は完全になくなり下着の端からも崩壊エフェクトがキラキラと立ち上った。 「やっぱり下着も消えるんだ」 下着は消えないという一縷の望みもあっけなく打ち砕かれる。 「あぁ……このままじゃ」 徐々に晒されて行く、秘部、無理と分かっていてもミナは縄から逃れようともがかざる得なかった。 涙に顔を歪ませ、最後の抵抗を試みる 「んんっ……うぅ……」 ギチッ……ギチッ…… 拘束に変化は見られない、ミナは消えてゆく下着を見つめながら、めちゃくちゃに身体をもがかせる。 ブラに守られただけの胸が激しく揺れた。 縄はいっそう激しく軋み通路に反響する。 「ん゙っ……ん゙っ…………ぐっ…ゔぅ……」 ギチチ……ギチッ……ギギッ…… 「ふっ……くっ……ん゙……むぅ……」 ギチッ……ギギ…… 必死に、本当に必死にミナはもがいたが、結局縄が解けることはなく、乳首を覆っていた布の最後も消滅してゆく。 ミナはぎゅっと目を閉じた。 「ナミ!?!?」 聞き覚えのある声に顔を上げると 「クリスぅ……」 突然の仲間の登場に笑顔で応えることはできなかった、ミナは泣きじゃくりながら絞り出すように、その名を呼んだ。 「大丈夫、何があったの?」 クリスはすぐにミナに駆け寄り、自分の羽織っているマントをミナにかけた。 「トラップが……ひぐっ……外れなくて…………服も…ひぐっ……段々消えちゃって……」 クリスが来てくれた安心感でミナの目からは絶えず涙が溢れ出る。 「大丈夫、大丈夫だよ」 クリスは泣きじゃくるミナをそっと抱きしめミナが落ち着くのを待ってくれた。 ……………………………………………………………… ミナが落ち着いてから、クリスがすぐさま運営に連絡、ミナは強制ログアウトしてもらい、今は現実世界のベットの上に戻って来ていた。 「はぁぁぁあ……」 安堵のため息が出る、思わず腕や衣服を確認するが、服は着ているし、縄の跡もなかった。 あれだけ疲れ果て、泣きじゃくりながらもがいていたのに、ログアウトした瞬間、汗ひとつかかずにベッドに寝転がっている、まるで夢オチだったかのようだ。 「今日はもう寝よう」 ミナはベッドの上で、助けてくれたクリスの事を思い出した。 「(今日、クリスが来てくれなかったらどうなっていたか……明日ちゃんとお礼言おう……迷惑かけちゃったな………………クリス、リアルではどんな子なんだろう…………リアルで出会ってても仲良くなれたのかな、まあそこまで仲良くする必要もないか……本当に?クリスとは今の関係を継続するだけでいいの?………………まあいっかとにかく今は寝よう、明日になればまた会えるんだから)」 人と深く関わりたくないそんな心が少しずつ変わり始めていた、そんな自分にまだ無自覚なままミナは目を閉じる、明日も友達と会うために。 ーーーーENDーーーー