紫煙がけぶる店内は、油と柑橘、それからアルコールの匂いで満たされていた。ガヤガヤとしたうちのテーブル、“文芸同好会新入生歓迎会”の面々もずいぶんと酔いが回ってきており、赤ら顔で目の焦点があっていない者や、大声で喋り笑う声量調整の効かなくなった者、そしてそれらの後始末に追われる者に役割分担をし始めていた。 文芸同好会と言ってもマトモに活動している者は一握りで、賞に向けて作品をかきあげたりなどしているが、ほとんどの者は男漁り、女漁り、そして友人漁りといったところだろうか。中でもヒエラルキーのトップは、流暢にそして高圧的に喋る美女、一番ヶ瀬(いちばんがせ)と、複数の新人賞を受賞している真面目な会員な上にイケメンな御手洗(みたらい)の2人で、彼女らを中心にこの会は形成されていた。 今回、幹事を任された俺はどうにも酒を飲むわけにもいかず、かと言って積極的に酔っ払い共の世話をする気にもならず、手持ち無沙汰にスマホを弄り回していた。そんな時ふと、店内の張り紙【このQRコードを読み込んで友達申請をしてくださったら1割引!】の文字を見つけ、ちょうどよいので浮いたその1割を幹事料金として着服してやろうとカメラを向けた。 すると一瞬カメラに写った張り紙がぐにゃりと曲がって、操作もしていないのに勝手にリンクを開き始めた。酒も飲んでいないのに酔っ払ってしまったのか、と目をパチパチとさせながら張り紙の方をもう一度見ると、そこにあったはずの友達申請用のQRコードは張り紙ごと消え去っていた。 あわててスマホの画面に目を戻すと何も操作をしていなかったと言うのにすでにアプリのダウンロードが終わっており、ホーム画面には“ステータス変更アプリ”の文字と怪しげなアイコンが映っていた。 このスマホは乗っ取られちまったかな、どうせ乗っ取られたのなら、と投げやりにそのアプリを開くと、対象にカメラを向けてください、という文字が現れた。誰にしようかと迷ったが、酔っぱらいに囲まれている中学生のような容姿で暗い雰囲気のオドオドとした新入生の女の子、暗敷さんに照準を合わせた。彼女はどうやら上級生数人に口説かれているようで、あしらい方もわからずに居心地が悪そうだ。 カメラで写真を撮ると、画面に魔法のように文字通りステータスが浮かび上がった。暗敷 真奈、18歳、身長が147cmで体重が48kg、そこまでは良かったがそれ以外にも髪、頭皮はては足の爪の健康状態まで、スクロールしていくとギッシリと彼女にまつわる項目が並んでいた。いたずらにしては出来すぎている、それに誰が足の指まで設定を変えたいのだろうか。 とりあえず変化がわかりやすく見ていて面白いのはやはりおっぱいだろうか。そう思い胸のタブを開くと胸囲(トップ)、(アンダー)、乳輪の直径、乳首の長さ、など更に複数の項目が現れた。とりあえずトップの数値を元の71cmから119cmに変更してほかはそのままにしておいてやった。すると、みるみるうちに彼女のおっぱいが大きくなっていき、片方だけで彼女の頭ほどの大きさになってしまった。 このアプリは本物だったのか!、とドギマギしていると画面にチュートリアルめいた注意書きが映る。 1つは「このアプリの改変は現実に最適化され、“もともとそうだった”ものとして扱われます」と書いてある。たしかに倉橋さんもその周りの男も先程と全く変わりがない。強いて違いを言うなら暗敷さんは大きくなりすぎた胸をテーブルの上において休ませているぐらいだろうか。 眼の前で狙っている女性のおっぱいが爆乳になったというのに周りの男たちに動揺は見られない。それどころかどいつもこいつもおっぱいの方を見て喋っていやがる。まるでそこに彼女の目と口でもついているかのように。 関心をスマホに戻すともう1つのポップアップには、「ミッション:『はじめての改変』を達成しました、性晶石を3000個付与します。」と書かれていた。そのホップアップを閉じるとご丁寧にガチャの画面へと飛ばされた。10連が3000石で回せるようなのでとりあえず先程の石を使ってみるとソシャゲのようなガチャが始まった。『N:淫夢のお香』,『R:守護騎士のピアス』と言った感じで文字と絵が流れていく中、最後に画面が虹色の光を上げると『SSR:奴隷の首輪』というアイテムがど派手な演出で姿を現した。と、その時、 「ラストオーダーでーす。ドリンクの注文どういたしますかー?」 と、やる気の無さ気なバイトの声が聞こえた。結局俺は、SSRアイテムの使い方も効果もわからないまま全員分の会計を済ませ、酔っ払い集団を連れて路地に出た。 幹事の俺が仕切らなくても、一番ヶ瀬と御手洗は勝手に2次回かカラオケの多数決を取り始めていた。まあ店の前で大声でたむろしているのではた迷惑ではあるが、進行はこのまま彼らに任せよう。 ガチャから出てきたアイテムの使い方を確認してみると、対象のステータス改変画面で“装飾”のタブを開けば使えるらしい。試しに暗敷さんの装飾のタブを開くと、無地のニットに地味なジーンズが表示される。間違いない、今彼女が着ている服だ。その他には飾りっ気のない、しかし巨大なブラジャーと、柄の合っていないパンツが表示されている。この中に今手に入れた“SSR:奴隷の首輪”を放り込んでみた。 すると暗敷さんの首のまわりにいつの間にかゴツゴツとした首輪が現れ、彼女は周囲の男たちを無視してくぐり抜け、俺の元へとやってきた。 「ご主人さま、二次会はどうなさいますか?」 彼女は淡々と俺の予定を聴いてくる、コレは彼女が俺の奴隷になった、ということだろうか。アプリの危ういまでの効果に思わず目を白黒させていると、暗敷さんの発言を聴いていたワンナイト狙いの男たちは分が悪いとばかりに他の女性へと狙いを変えていった。 「あっ、ああ……。今日は帰ろうかな。御手洗たちがいればもう俺はお役御免でしょ。暗敷さんはどうするつもりなの?」 俺がやっとの思い出返事をすると、暗敷さんは不思議そうにキョトンと首をかしげながら、 「私は奴隷なのでご主人さまが帰るのならそこについていくだけですが……。」 危うい発言だ。他の部員に聞かれるかもしれないこの場で、今の暗敷さんを野放しにするのは俺の名誉が危うい。俺は彼女の腕を引いて自分の住むマンションの方へと彼女を連れ去っていた。 ◆ そうして自宅に帰り、俺のベッドの上にちょこんと座らせた暗敷さんは、俺の指示待ちで動かずにいる。ここに着くまでに彼女といくらか問答をした。「自宅に帰らなくてもいいのか?」とか「着替えはどうするんだ?」とか、色々。ちなみに着替えは明日の早朝に取りに戻って俺が起きるまでには帰ってくるつもりらしい。 しかし彼女と話していると、(暗敷さんとはこんな人だっただろうか……?)と疑問に思う。彼女は喋るときにはいつもどもっていたし、男性と話すときはなおさらだ。そういうところ大人しげなところや、化粧っ気も脂肪もないが悪くない顔立ちで、うちの会に所属する地味な男たちからは狙い所にされていたのだが……。 今の彼女はわりかしハキハキ喋る。もしかしたらおっぱいが大きくなったことで自信が少しましたのかも。そう思い、ステータスアプリを見てみるが、自尊心の項目が50/100と高くも低くもなさ気な数値を指していた。 まあ、どちらにせよ……。 この娘が俺の思い通りになるのなら、たっぷり理想の奴隷に改造してやろう。 まず暗敷さんには前のおどおどした感じが似合っているから、自尊心を20まで下げて固定にしてやった。これで俺が固定を解かない限り、彼女は自分に自信のない臆病な音なんのこのままだ。 それから少しニキビの痕が残る高校生のような肌は美白して、団子鼻もスッキリさせよう、歯並びや唇、目元には文句がないからこのままで。彼女は黒く丸めのボブカットで芋っぽい雰囲気だから頭のラインをスッキリとさせて艶々のロングにしてやろう。 あとは、胸は十分に大きいから、腰を限界まで細く、お尻とふとももはムッチムチに……。身長はこのまま、トランジスタグラマーに……。 そうして改造していくうちに、ベッドの上の暗敷さんは、2次元から飛び出してきたような、非現実的なスタイルと顔の、しかし所在なさげにキョロキョロと目を泳がす、ネガティブ美少女に成り果てていた。ぷるんと大きい胸に同じくらいに大きいお尻、その半分ほどの太さの頼りない腰。ムチムチとした太もものあたりまで艶のあるストレートな髪が降りてきており、まさに絶世の美少女に仕上がっていた。 もうしんぼうできない! 「暗敷さん、こんな時間に1人で男の部屋に入ってきたんだ。そういうつもりなんだよね……?」 俺がそう言って意地悪な質問をしながら、彼女の肩をトンと押してベッドに押し倒すと、相変わらず彼女は俺と目を合わせずに泳がせながら、小さな声でこういった。 「ごっご主人さまがしたいのなら……はっ、ハジメテですので、やさしくおねがいします……なんて。」 そういって真っ赤な顔をそらした彼女がチラリこちらに目線を向ける。その瞳はどういうわけだか湿っていて、俺は思わず彼女の唇に口づけを落とした。 そのまま彼女の胸、肩、首筋、お腹、上半身を丁寧に愛撫してやり、濡れそぼった膣に指を入れてほぐし始めたところで、ふとアプリのことを思い出した。 ステータスで膣のタブを開くと、ラビアの長さや深さ、クリの大きさなど多くの項目が飛び出してくる。俺は暗敷さんの膣の感度を3倍にした。 そうして再び彼女の膣に指を挿れ、Gスポットをスリスリコリコリ♡と刺激する。それだけで彼女の腰はビックン!と大きく跳ね上がり、あまりにも激しく動くのでマトモに指を動かし続けるのが難しいほどだ。その反応が面白くてダラダラと性感帯を刺激していると、目をウルウルとさせた暗敷さんがこちらを見つめてこういった。 「ご主人さまぁ……はやく、はやくっ……うぅ~……っ。」 奴隷の分際でご主人さまにおねだりはできないとばかりに言葉を途切れさせる彼女。しかしそのいじましい姿は俺の理性を崩壊させるには十分な破壊力を持っていた。 彼女の濡れた膣にスルスルと挿入をすると、処女の証が滴り落ちてきてくる。だが彼女は痛みにあえいでいるというよりも快楽にあえいでいるといったほうが正しい、淫らな嬌声を上げていた。 「あっ、おく……ご主人さまのっ……おくまでとどいてる゛っ♡ コツコツって求愛されてるぅ~ッ♡ んぅうぅ゛♡」 そうして足を絡めてくる彼女の奥をリズミカルについていると彼女の声は一際震え、しかしその声量は隣の部屋の住人に聞こえてしまうのではないかというほどに大きくなった。 「ああぁ……やっごしゅじんさまっ……いっちゃいます……いっちゃいますっ!♡」 俺は素早くスマホを操作すると、“絶頂禁止のクリリング”を彼女に取り付けた。すると彼女は、もどかしげに腰をフリフリ動かす。 「あっ……れ……?イケないっ……なんでっ、イキそうなのにっ……ぜんぜんこないっ!?♡」 困惑する彼女に俺は囁いた。 「ご主人さまより早くにイクなんて奴隷失格だぞ、俺が中出しするまで我慢しろ。」 その囁きにすら身体をヒクつかせる彼女は、もし他の人が見ていれば色狂いだと感じるだろう。彼女は賢明な顔で膣を動かしながら、俺を早くイカせようと最大限のご奉仕をしてくる。 「んぉ゛♡ いまのごりってされたところっ……♡ きもちいっ♡ んあぁ゛♡ や゛♡ んゥ゛♡ ォォ゛オ~~~♡ ごしゅじんさまっ、はやくイッてっ♡」 彼女の膣圧に耐えきれずに10分後、ついに俺が中出しをする。その瞬間アプリで彼女のクリリングをはずすと彼女は大きな悲鳴のような喘ぎ声を上げて絶頂し始めた。 「……お゛??♡ お゛っあっあぁ……♡ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~ッッッ!♡♡♡」 ……こりゃあ管理人さんから注意されそうだな……。10分ほど続いた激しい絶頂の後、彼女は白目をむいてピクッ……♡ぴくっ……♡と力なく跳ねていた。どうやら快楽が蓄積されすぎたようだ。 この後も全力で暗敷さんとイチャイチャした後、俺は疲れ果てて眠りについた。 ◆ 翌朝、油の跳ねる音と味噌汁の優しい匂いに目を覚ました。どうやら暗敷さんが朝食を作ってくれているようだ。クローゼットにはちょこんと彼女の衣類がまとめられており、本当に今朝のうちに自宅とここを往復したようで、そして本当にここで住み込みで奴隷をするつもりなようだ。 「あっ、ご主人さまっ♡ おはようございます!ごはんできてますからねっ!♡」 気のせいだか昨日よりも彼女の言葉が事務的でなくなっている。噂に聞く一晩寝ただけで彼女面、というやつだろうか。そんなことを考えながら食べた彼女の手料理は優しい味がして、(料理のステータスはいじらなくていいな)などと失礼なことを考えていた。 ◆ 午後、前日が飲み会にも関わらず、集会のある日だったので暗敷さんと一緒に部室を訪れたところ、珍しく一番ヶ瀬らキラキラ肉食女子グループが先に部室で待っていた、いつもは一番最後に来るのだが。そんなことを考えていると一番ヶ瀬が高圧的に声をかけてくる。 「あら、アンタ、暗敷と同伴してくるなんて、もしかして付き合ったの?2人で飲み会から抜け出してたもんねぇ?まあ、陰キャ同士お似合いなんじゃない?」 どうやらこの嫌味を言うためだけに、彼女は俺たちより早い時間に部会に顔を出していたようだ。標的は俺ではなくて暗敷さんだろう。彼女は昨日ステータス改変を受け、一番ヶ瀬に負けず劣らずの美女になった。その美女の暗敷さんに合わせて世界が調整された結果、一番ヶ瀬は暗敷にマウントを取る機会をずっと狙っていた、という副次的な改変を受けたのだろう。 ……まあ少し頭にきたので彼女にはキツイお返しをあげよう。俺はバレないように一番ヶ瀬にスマホのカメラを向けた。そして彼女の輝かしいステータスを書き換えていく。 自尊心とコミュニケーション能力は高い初期数値の90台で固定にして、まずはたっぷりと身長を下げて暗敷以上のミニマム女子にする。胸と尻も小さくして乳輪と乳首はどデカくしておくか。お腹は3段腹にしておこう。髪も枝毛たっぷりの傷んだものにして……綺麗な顔もいらないな。鼻と唇を曲げて、目だけはそのままにしておいてやるか。体毛を男並みの剛毛にして、最後に膣にカンジダを仕込んでやった。これで性病持ちのブサイク喪女(プライドだけ高い)の完成だ。ついでに名前は百番ヶ瀬にしといてやろう。 さて、百番ヶ瀬本人に目を向けると、ホビットのようなドワーフのような、今の暗敷とは別の意味で“夢物語から出てきたような姿”に成り果てた彼女は、高圧的に大声で話しかけるが誰にも相手にされず軽くあしらわれる哀れな存在に成り果てていた。いや、ロリコンの小田倉くんだけは彼女のことを熱い目線で見つめていた。まあ、身から出たサビだろう。 ◆ そうして百番ヶ瀬をどうにかしたので平穏が戻ってくると思ったが、どうにも部屋が騒がしい。どうやら御手洗を狙っていたヒエラルキーのトップ、一番ヶ瀬がいなくなったことで会のパワーバランスが崩れ戦国時代へと突入したらしい。肉食系の女子たちが一斉に御手洗に押しかけ、それを御手洗本人も周りのワンチャン狙い男子も迷惑がっている。このままでは文芸同好会は崩壊するだろう。 いや、俺はなんとなく在籍していただけだから構わないが、暗敷さんはそうはいかないだろう。彼女はオドオドとした性格の似合う文学少女だった。この会に入ったのも新人賞を取った御手洗を尊敬して、とのことだったはずだ。 しかし肉食女子を皆、百番ヶ瀬のように改造していくのは骨が折れる。どうしたものか……いや思いついた。 俺は御手洗にカメラを向けると彼のステータスの性別のタブを開き、女に切り替えた。すると彼の身体はスルスルと縮み服装も小洒落た大学生のものに変わっていく。これで女子は御手洗に寄り付かなくなった。問題は…… 「御手洗ちゃん今日もかわいいね!」「何書いてるの?みせてよぉ。」 飢えた男どもの方だった。元が美形だった御手洗は女になっても美しく、しかもセンスのいい服にちょうどよい化粧。これでは結局何も変わらない。そうだ、と思いつき俺は御手洗の装飾のタブを開いて“守護騎士のピアス”を貼り付けた。すると御手洗に寄っていた男子たちはなぜだか御手洗に近寄れなくなり、御手洗の周りには暗敷さんを含めて純粋に文学の話をしたいものだけが残ったようだ。たぶん守護騎士様が守ってくれてるのかな……? まあ、こうして文芸同好会は崩壊の危機を免れたのだ。 ふーっと一息。一仕事を終えた俺は自販機でジュースでも買おうと部室を出ようとするが、その袖を引っ張られる。暗敷さんかな、と思って振り返ると、そこには上目遣いの御手洗がいた。彼女はいたずらっぽく微笑むと彼女は俺の耳元でこう囁いた。 「僕のこと、このピアスで守ってくれたんでしょ……♡ これからもよろしくね、騎士さまっ♡」 そう言うと彼女は俺の頬に口づけをした。女になった御手洗はバラの香水をつけているようで、首筋からふんわりと華の香りがした。 ……守護騎士様は俺だったのだろうか?……まあ、なんだかよくわからないが、これからの人生楽しくなりそうだなぁと、俺は自販機に向かうのであった。