ベリル「…………んっ……」
赤い瞳がゆっくりと開く。
靄が掛かったように真っ白な視界。天井に設置されたLEDライトの光が霞んで見える。
ベリル(私は……いったい……)
頭がグラグラ揺れて思考が働かない。身体が重くて動けない。自分がどういう状態なのかが分からず、ただただ天井を見つめる。
ベリル(ここは……浴室……)
自分がいる場所を理解する。いつからここにいたのか。なぜこうなっているのか。記憶を辿ってゆっくりと精査する。
ベリル(私は……入浴をしていて……それから……)
湯船に浸かっていた時の記憶が、徐々に戻ってくる。
浴室の扉が開く。
そして……
ベリル「……っ!」
開いた扉から”同居人”が現れる記憶が蘇った。
ベリル(そうです……。あのあと私、オーラと喧嘩になって……。それから……。)
彼女の存在と共に、この場で争った記憶の一部始終が脳内再生され、ベリルはハッと息を飲んだまま膠着した。
オーラ「気がつきましたか……ばかベリル……。」
ベリル「!?」
すぐ隣から声がして、ベリルは驚いた。
オーラ「ふふ……天校バスボ部の副キャプテンともあろう者が……無様なものですね……。まぁ……私も他人の事を言えた口ではありませんが……」
意外な光景だった。あれだけ激しくやり合った相手が、おとなしく隣に並んで横になっていた。いや、自分と同じく動けないのだろうか……。
ベリル「…………どうして……」
オーラ「どうしてって……。逆にどうしているのが……正解なのですか……?」
ベリル「…………」
言葉が出てこない。なぜなら自分はあの時……
オーラ「……勘違い、なさらないでください……。あなたは負けてなど……いません……」
ベリル「……!? けど私は確かに……あなたに……」
言いかけて、ぐっと唇を噛みしめる。あのとき確かに自分は、この宿敵の巨乳に呼吸を奪われ、屈服させられた。意識が遠のき、記憶はそこで途切れている。それはつまり、そういう事なのだ。
オーラ「石鹼……」
ベリル「せ……?」
オーラ「ですから……。あなたが石鹸を踏み抜いて……それで転んだことくらい……見えていました……」
ベリル「……!」
オーラが言わんとする事を理解したベリル。だがそれは結果論だ。あの時偶々ベリルの側に石鹸があった。それもまた運であり、運も実力の内だ。少なくともベリルはそう感じていたし、あの時はその不運も含めて、悔いていた。
オーラ「私は……それが見えていながら……。まるで自分が……力であなたに勝(まさ)ったかのように……好機に乗じて……勝ち誇って……」
ベリル「それは……ですが……」
オーラ「見くびらないで下さい……っ!」
語尾を強めるオーラ。彼女もまた、グッと唇を嚙みしめていた。
オーラ「私は……バストボーラー失格です……。焦りからなりふり構わず、あのようなやり方で勝ちに行こうとするなど……アスリートとして、乙女として、あるまじき行為……」
オーラの表情が、後悔の念で曇っていく。生意気だと思っていた彼女が、歳相応の少女らしい表情を見せたことに、ベリルは呆気に取られてしまい。
ベリル「…………ふ……ふふ。」
オーラ「? 何を笑っているのですか……?」
ベリル「いえ、すこし意外で……。いや、かなり意外でした。あはは。」
オーラ「な、何なのですかぁ……!? 人の苦悩を笑いものに……! 言っておきますけれど!今日帰宅が遅れたのだって、あなたとのこれからについて真剣に悩んでいたからで……!」
ベリル「え……?」
オーラ「あっ……!」
勢い余って本音を口走るオーラ。
予想外の一言に、ベリルも目を丸くする。
オーラ「い、いえ!別に私が悪かったなどと思っていたわけでは……!」
ベリル「……私も」
オーラ「っ?」
ベリル「私も、昼間のあなたとの一件を思うと罪悪感に駆られてしまって……。あなたが帰ってくる時間に合わせてお風呂の支度をしようと……思ったのです……」
オーラ「な……」
ベリル「あなたが帰って来ないことに腹を立てて、決めごとを破って先に入ってしまって……。つまらない事をしたと自分でも思います……。」
オーラ「ベリル……。」
ベリル「ですからその……私の方こそ……」
申し訳なさそうに瞳を潤ませるベリルの横顔を見つめるオーラ。
オーラ「あの人の……」
ベリル「っ?」
オーラ「あの人の言うとおりでしたね……」
ベリル「あの人……?」
オーラは、夕刻のアイ・オライトとの会話を思い出していた。一度思い切りぶつかってみれば良い。お互い納得いくまでやり合えばいい。自分と同じ青い瞳に力を込めて、そう言い放ち去って行った同郷の憧れ。その眩しい姿を、今一度思い返した。
オーラ(アイさん。やっぱりあなたは凄いです。)
ベリル「ちょ……何をニヤニヤしているのですか……っ!?」
オーラ「あぁいえ……。私とあなた……結局は似た者同士という事かなと。」
ベリル「…………」
横たわったまま、顔を見合わせる。
どちらの頬も、執拗に引っぱたき合ったおかげで赤く腫れ上がっていた。
ベリル「……確かに。ふふ…」
オーラ「ふふ……っ」
ベリル・オーラ「「ふっ!あはははっ」」
可笑しくなって笑い合う両者。
疲労で起き上がれないまま、浴室にはしばらくの間、二人の笑い声だけが響き渡っていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
伍代メメ「ひぃ!ひぃ!ひぃ~!」
ヒスイ「あと50メートルですよー!メメさんファイトー!」
翌朝、グラウンドの隅。そこにはおもりを背負って走り込むメメと、そのメメに檄を飛ばすヒスイの姿があった。
伍代メメ「お、鬼軍曹~!ひぃ!ふぇえ~!」
泣きべそをかきながら、指定されたゴールラインを何とか超えたメメ。たまらずおもりを放り出し、その場にひっくり返った。
ヒスイ「はい、お疲れ様でした!今日はここまでにしましょう♪」
伍代メメ「はぁ……はぁ……最先端のカリキュラムを……取り入れてる学校なのに……はぁ……はぁ……こんな前時代的な特訓……絶対おかしいよぉ~……」
仰向けのメメを覗き込むようにして、ヒスイが腰を下ろし笑みを浮かべる。
ヒスイ「あはは、残念でした。これはこの学校ではなく、私の母国・水の国の特訓メニューです。基礎は大事なのですよ、メメさん♪」
伍代メメ「うぅ~!」
屈託の無い笑顔に見下ろされて、メメは膨れっ面を浮かべる。
「~~!!」
「~~!!」
不意に、遠くで誰かが言い争うような声が聞こえた。
伍代メメ「ほぇ?」
ヒスイ「ん?あれはー……」
2人が声のする方へ目を向けると、そこにはいつもの光景が広がっていた。
ベリル「さ、先にユニフォームの中へ手を入れたのはオーラでしょう!んぁあ!♡」
オーラ「人聞きの悪い事を、言わないでください!んっ…!♡ 誰があなたの貧相な胸を生で触ろうなどと、思うものですか! は、はぁあんっ!?♡」
ゴール付近、膝立ちで向かい合った状態のベリルとオーラ。よく見ると2人の両手は、お互いのトップユニの中……つまり生乳を鷲掴みにし合っているようだった。
オーラ「あ……ァん♡ そ、そんな攻めで私が怯むとでも……ぉんン♡」
ベリル「そ、そちらこそぉ……あはァっ♡ くっ……負けませんんっ!♡」
赤と青、互いのユニフォームの中で両手がいやらしく動めいているのが分かる。はち切れそうな巨乳と巨乳が、ビクン、ビクンと反応している。
ベリル「んぁあああ!?♡」
オーラ「ぁああんんっ!?♡」
伍代メメ「ど、どどどどういう状況!?」
ヒスイ「あ~!先輩達またやってます!」
両手を地面に着き、鼻血を噴きそうな勢いで起き上がるメメ。四つん這いで目を細めて状況を凝視するヒスイ。2人でジッと副キャプテンたちの様子を見つめるが……
ヒスイ「あ……。そっか。無事に仲直りできたんですね、お二人。」
伍代メメ「なにが!? どうして!? あれのどこが仲直りなの!?」
安心した表情を浮かべるヒスイに、思わずツッコミを入れてしまったメメ。だがヒスイは、心配ないといった様子で2人の様子を見つめていた。
ヒスイ「いいなぁ。私もいつかあんな風に、正面から思いの丈をぶつけられるライバルに出会ってみたいです。」
伍代メメ「アレってそういう感じなの!? でも、うーーーーーん……。うん!一理ある!!」
2人は満足げな顔で、しばらく先輩たちの乱闘を観戦していた。
オーラ・ベリル「「やっぱりあなたをぉ……っ!♡ 副キャプテンとは認めませんんっ!!♡」」
《ギスギスシェアルーム! 終わり》
ミニラ
2022-12-17 12:38:19 +0000 UTCアニサン・フェリックス
2022-12-09 21:06:15 +0000 UTCミニラ
2022-12-09 02:38:55 +0000 UTCミニラ
2022-12-09 02:31:04 +0000 UTCrin
2022-12-07 16:40:48 +0000 UTCzuizhixue
2022-12-06 15:19:10 +0000 UTC