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外伝小説「キャットサバイバーズ・ユニバース」

現在Pixivにて連載中の「キャットサバイバーズ」の外伝小説です。本作は2本のエピソードで構成されており、


・ーSide:MEMEー

 (第9話第10話の間の出来事。キャットファイト描写あり)

・ーSide:MIYABIー

 (第4話第5話の間の出来事。キャットファイト描写なし)


となっております。





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆





CAT SURVIVORS UNIVERSE ーSide:MEMEー

ミヤビちゃん、そしてシリウス君との作戦会議。店員さんのミスでアルコールカクテルを飲んでしまった私はその夜、ほろ酔い気分で家へと帰宅した。




「うぅ、さむいよ~!エアコンエアコン……」


自室に入った私は、すぐさま壁にかかったリモコンへと手を伸ばした。

『ピッ』

ボタンを押すとエアコンの口がゆっくり開いていき、暖かい風が送られ始める。


ゴォォォ……


「はぁ~、ぬくぬく~♡」


冷えた身体を暖めてくれるお利口なその電化製品を、私はうっとりと見つめる。


「キミは偉いなぁ~、よしよし」


右手を伸ばして、ツルツルした表面を撫でる。


「……えへ。」


あ、酔ってるな。

そう何となく自覚する。緩み切った表情をした自分の顔が、エアコンに反射して映っていた。


「さっきの私も……こんな顔してたのかな……?」



『誰よりもキミが大切だよ。キミは僕の一番のパートナーだ。』

『嬉しい…。』




先ほどのシリウス君とのやり取りを思い出す。


「~~っ!」


エアコンに映る自分の顔が、真っ赤になっていく。


「はうぅ~!!」


ばふっ!

ふかふかのベッドに飛び込んだ。大きな枕を抱きしめ、ごろごろと転がる。


「嬉しいけど恥ずかしいよぉ!あんな大胆なことしちゃうなんて~!」


うつ伏せになった状態で、枕に顔を埋めて悶える。私の下でむぎゅりと潰れる枕。その抱き心地が何だかシリウス君に似ていて、つい胸の鼓動が高鳴る。



『んっ…♡ ん…っっ』

溢れる気持ちを抑えられず、シリウス君を押し倒してしまったあの感触。それを思い出して身体が、そして心が熱を帯びる。



「もっと……もっとキミのこと知りたいよ……シリウス君……」


愛しい気持ち。

手放したくない気持ち。

――自分だけを特別に想って欲しい、という気持ち。


「こういうの…………”独占欲”っていうのかな……」


すこし胸が痛む。

これに似た感覚を、私は知っている。




遠い日々の記憶が、蘇る。



「……好きな男の子、できたよ。パパ……」


シャンシャン……♪

突然スマートフォンから鈴の音が鳴った。通知音だ。


「? なんだろう。」


手を伸ばし、画面をタップして通知を確認する。


「え……嘘!?」


そこには2件の通知文が表示されていた。




――――――――

■Pixiv通知

[キャット大魔王があなたのコメントに返信しました]

■Pixiv通知

[キャット大魔王が作品を投稿しました]

――――――――




「せ、先生からコメント返信!? それに新作も!? わっ!わぁあ!!」


ベッドから飛び起きると、私は大急ぎで机に向かい、ノートPCを起動させた。大好きなキャットファイト創作者の先生からのコメント返信。そして待ちに待った新作の投稿。これはスマートフォンではなく、大きな画面で確認するしかない。


「Pixiv!Pixivぅ~!!」


カチカチとマウスを操作する。期待に胸が膨らむ。

そこに表示されたのは、以前私が送信したスタンプに対する返事であった。




――――――――

[キャット大魔王]

いつも鼻血スタンプありがとうございます。とても励みになっています。これからも応援よろしくお願いします。

――――――――




「~~ッ! すごーい!? キャット大魔王先生がお返事書いてくれてるー!! どうしよう!? 嬉しい! やった! やったぁ!!」


椅子に座ったまま、両手を万歳してぐるぐる回る。まさかスタンプに対してメッセージで返信してもらえるなんて思っていなかった。


「シリウス君に突っ込まれたときはスタンプにしたこと後悔したけど、送っておいて良かった~! 嬉しいなぁ嬉しいなぁ♪」



『魔法少女ゆりね×リリナ』の世界へ向かう前のやり取りを思い出す。作品への感想がまとまらず、鼻血スタンプの送信だけで済ませてしまったことについて、シリウス君に微妙な反応をされてずっと後悔していた。それだけに、こうして創作者さんから文章で返事をもらえて、飛びあがりそうなほど嬉しかった。


「キャット大魔王先生……。私が初めて読んだキャットファイト創作の作者さん……。この人の作品に出会えたから、今の私があるんだよね……。」


半年前。孤独だった私が人生で初めて本気で夢中になれるもの=キャットファイト創作に出会った。それこそが、このキャット大魔王先生の「未来骨董店のキャットドール」だった。



物語は、上京したばかりの一人暮らしの主人公が、ある日「未来骨董店」という不思議な骨董品屋を見つける所から始まる。そこは、近未来的な便利アイテムが多数販売されている夢のようなお店だった。店主に「一人暮らしでお金もなく、家事をする時間も元気もない」と話した主人公は、美少女の姿をしたメイド型アンドロイド《ドール》を無償で与えられる。


「何なりとお申し付けください。ご主人さま。」


主人に尽くすようプログラムされた従順な性格。愛らしい顔つき。そして、本物の人間の少女と見まごうほどに柔らかで魅惑的なボディ。ドールは主人公の身の回りの世話をすべてこなし、主人公の生活は満ち足りたものへと変化していった。


「君のおかげで助かってるよ。いつもありがとう。」


当初は感情を持つことなく淡々と世話をこなしていたドールだったが、主人公が彼女を人間同然のように大切に扱い、やさしい言葉をかけることで、ドールは少しずつ人間らしさを身につけ、いつしか感情と呼べるものが芽生えるに至った。


「ご……ご主人さま。これからもずっと……お傍にいさせて下さい……。」


頬を真っ赤にして主人公に寄り添うドール。彼女は”恋”という感情を知ったのだ。



だが、ある回から物語は不穏なものへと変化してゆく。

ある日、主人公は2体目のドールを連れて帰って来たのだ。それはつまり「ご主人さまに奉仕する」という役割が、半分奪われることを意味していた。


「私はずっと……ご主人さまと二人きりでいたかったのに……」


複雑な想いを抱える彼女をよそに、主人公は2体目のドールにも愛情を注いでゆく。


「前の持ち主は、君にたくさん酷い事をしてたんだよね? 大変だったね……よしよし……。でも大丈夫だよ。これからは僕が新しいご主人様になって、君を幸せにするから!」


「あ……ありがとうございます……ご主人さまぁ……っ!」


主人公の笑顔と言葉を受け、2体目のドールはすぐに彼へ恋心を抱くようになる。その様子を見て、心に痛みを覚える1体目のドール。



「貴女なんていなくても、私一人でご主人さまを満足させられたのに……!」


やがて1体目のドールは、2体目のドールに敵意を向けるようになる。


「ご主人様は私の方が大切なの!ご主人さまにご奉仕するのも私!邪魔しないで!」


2体目のドールもまた、自分と等しく愛情を向けられている1体目のドールを敵視するようになる。ドールとは本来、2体所有してはいけない製品だったのだ。




「はぁ~!好きだなぁ、このストーリー!ご主人さまを奪い合って、ドール同士が毎日キャットファイトを繰り広げる……。2人とも健気でエッチで、両方応援したくなっちゃうんだよね~♡」


私はドキドキしながら、更新されたばかりの最新話をクリックした。




――――――――――――




「君の体はいつもポカポカで暖かいなぁ」

「ひゃうっ。くすぐったいです、ご主人さまぁ……♡」


暗い部屋の中、ベッドから少年と少女のじゃれ合う声が漏れ出る。


「ご主人さま……好きです……もっと抱きしめて……」

「ふふっ、甘えん坊さんだなぁ。ほら……おいで。」

「んんっ。嬉しい……もっと……もっとぉ……♡」


もぞもぞと布団が動く。

少年に抱きしめられ、少女は真っ赤になりながらも更なる愛情をねだる。


「私、ご主人さまの所に来られて良かったです……っ」

「僕も……君が来てくれて本当に良かったよ……」

「ご主人さま……んんっ……♡」


2人の関係は、主人と従者。

いつも身の回りの世話をしてくれるドールを労って「お返しに何か欲しいものはないか」と問う少年に対し、ドールから帰って来た返答が「夜一緒のベッドで寝たい」というものだったのだ。


「さぁ、明日も早いしそろそろ寝るよ?」

「はい……おやすみなさい、ご主人さま……♡」


2人は眠りにつき、部屋は静けさを取り戻した。

だが、ベッドの横の床に敷かれた一枚の布団の中で、眠りにつけず溜め息を漏らすもう一人の少女がいた。


「……ご主人さまは……私だけのご主人さまなのに……」


そう小さく呟く少女の瞳は、涙で滲んでいた。

彼女もまた、この部屋で少年に尽くすドールであった。だが彼女には、少年と同じベッドで眠る資格がなかった。それは、今ベッドで少年と抱きしめ合って眠っているもう一人のドールとの「取り決め」によるものだった。




翌日ーーー


「ふぅ、お部屋のお掃除完了。そっちはどう?」

掃除機を手にした少女が、浴室に向かって声をかける。

クリーム色のショートボブ。綺麗なまつ毛に、髪と同じ色の澄んだ瞳。エプロンの上からでも分かるほど豊かに膨らんだ、まん丸な胸。まさに美少女。彼女がこの家の1号ドールだ。


「こっちも今終わったよ~」

濡れた肌をタオルで拭きながら、もう一人の少女が浴室から現れた。

ややクセ毛のある栗色のセミロングヘア―。長いまつ毛にルビーのような赤い瞳。Yシャツと下着のみを着用した肌色の身体は、仮に男性が見たら目のやり場に困るであろう程に魅力的だった。この美少女こそ、この家の2号ドールである。


「……。」

Yシャツから零れそうな程たわわな2号ドールの胸元を、冷めた目で見つめる1号ドール。


「……なに?どうかしたの~?」

彼女の目線に気付き、2号ドールはわざとらしい作り笑顔で問いかける。


「ん~、別に? 昨日の夜はそんな下品なおっぱいをご主人さまに押し付けて、わざとらしくすり寄ってたんだなぁって。考えただけで寒けがするよ~。」

1号ドールは腕を組み、同じく作り笑顔で返した。2号ドールに負けず劣らずの巨乳が、腕の上で強調される。


「ふ~ん……さては妬いてるんだぁ? 昨日ご主人さまを私に取られちゃって。」

挑発するようにクスクスと笑う2号ドール。すると1号ドールは右手を伸ばし、Yシャツに包まれた2号ドールの胸を鷲掴みにした。


ムギュッ!


「んあっ……」

「貴女こそ、一昨日私に負けてご主人さまを取られたのが悔しかったから、むきになってアピールしたんでしょ?」


ぐに……ぐにぃ……!

「あん……っ。そ、そんなこと……っ!ひぐぅ!」


Yシャツの上から巨乳を握りしめられ、2号ドールが悶える。


「私に対抗したくて色仕掛けするなんて、やらしいドールね……!」

「くぅぅ……!それは、貴女もでしょっ!」


ムギュッ!


「んあぁ!?」

2号ドールも、お返しに1号ドールの巨乳を右手で鷲掴みにした。


ぐに……ぐにぃ……!


「貴女も一昨日の夜っ!ご主人さまにすり寄っておっぱい押しつけてたの、知ってるんだから!」

「っく!うぅん……っ!?貴女ほどじゃないもん……!くぁあ!?」


どちらも頭に血が上り始める。今度は両手で相手の両胸を揉み合った。

「あぁんっ!負けない……!」

「んんっ!?このっ……!」


ぐにぃ!ぐいっ!

「「んあぁあっ!!」」


そう。2人のドールはこうして、夜ベッドでご主人様に添い寝をする権利を賭けて、毎日密かに争っているのだ。当然ご主人様はそのことを知らない。学校へ行っている間に家事を片付け、残った時間で決着をつける。それがドール同士の決めたルールだった。


「「~~ッ!あぁっ!!」」


ドンッ!!


同時に胸から手を放し、突き飛ばし合った。胸を揉み合っていた2人の頬は赤く、どちらも息を乱している。


「はぁ……はぁ……そんなに痛かった……?」


「そっちこそ……我慢できなかったんだ……?はぁ……はぁ……」


「ふん……せっかくご主人さまに買ってもらったエプロンが……伸びちゃうと思っただけだよ……?」


「こっちだって……ご主人さまに借りたYシャツが……破れちゃうと思っただけ……!」


そう言うと、それぞれ身につけていたエプロンとYシャツを脱ぎ捨てた。

2人は下着姿……もとい、水着のような姿になった。彼女たちドールの標準仕様コスチュームだ。薄い生地は面積が小さく、露出した肌色の部分の方が多い。男性ユーザーを意識したと思われるそのデザインが、ボディラインを際立たせている。


「貴女とお揃いなんて、やっぱり最悪……!」

「同じ製造ロットなんだから仕方ないでしょ……!」


同族嫌悪。自分だけに注がれるべき愛情が、目の前のドールにも注がれることが許せない。妬ましい。負けたくない。


パチィン!!


「っ!」

2号ドールが、1号ドールの頬を引っぱたいた。


「私は貴女には負けない……!」

そう言い放つ2号ドールだが。


パチィン!!


「っ!」

「ご主人さまは私のモノなの!」


1号ドールもやり返す。


パチィン!!


「ぁアっ!」

「違う!私のご主人さま!」


パチィン!!


「ぃんッ!?」

「貴女には渡さない!!」


ご主人様は自分のものだと主張し、頬を打ち合う両者。

やがて堪忍袋の緒が切れると、同時に相手の身体へ飛び込んだ。


「「このっ!!」」


バチィィィン!!


「「んああっ!?」」


身体と身体が真正面からぶつかり合った。

同じコスチューム。同じクオリティで造られた身体。同じようにご主人様から愛され、同じようにご主人様にすり寄っている生意気なボディ。そう考えると、どちらも意地が燃え上がる。


ムギュッ!ムギュッ!!


「はぁ…ん!負け……ないぃ!!」

「あぁんっ!!なによ~っっ!?」


抱きしめ合い、激しく身体を押しつけ合う。

さらには大きく谷間が露出した巨乳を、ぷりんと張ったお尻を掴み合う。互いの身体の柔らかい部分をわざと攻め、同じ美少女型ドールとしての尊厳を傷つけあう。


グニュッ!むにゅッ!

「~~っ!!んンっ!」


ばちん!ムギュッ!!

「~~ッ!!ひんっ!」


お互いに腕を掴み合った。一瞬の膠着状態。

「「はぁっ!はぁっ!!」」


肌色の部分のあちこちが、赤くなっている。だが、まだまだ決着には程遠い。


「くらえ……!」

「このっ……!」

2人は同時に、相手の股間めがけて膝を振り上げた。


バチィィィン!!

「「はぁぁああんっ!?」」


両者の身体が一瞬跳ね上がった。股間蹴りの相打ち。直後、どちらも相手の腕から手を放し、自らの股間を両手で押さえて崩れ落ちた。


「ひぐぅぅぅっ!なにするのぉ……!!」

「んぃいいいっ!そっちこそお……!!」


涙目で必死に睨み合うが、身体をくの字に曲げて膝立ちでうずくまる姿は、ダメージの大きさを隠しきれていなかった。


「ひぃ……ひぃ……んんッ!」

「はぁ……ふぅ……ひぅッ!」


ズキズキと痛む股間から、両手を放すことができない2人。痛覚や感覚神経は人間のそれと全く同じ。故に両者とも、凄まじい痛みと屈辱を味わっていた。


「このぉっ!」

「あんっ!?」


自らの身体に鞭打って、1号ドールが先に動いた。2号ドールの懐に飛び込み、無理やり相手の股間に右手をねじ込んで握りしめたのだ。


ぐみゅううう!


「んぁぁあああ!!やめ……やめてぇ!?」


2号ドールは顔を真っ赤にして泣き叫ぶ。逃れようとする身体を左手で抱き寄せ、股間クローを強める1号ドール。


「このぉ!このぉ!んあああッ!?」


ぐみゅううう!!


「負けるもんかああああ!!」


2号ドールも股間を握り返した。膝立ちのまま、股間を握りしめ合う両者。


「「ひゃうううン!?」」


ドサァッ!!

2人はもつれ合うように、隣にあったベッドへ横倒しになった。


「うぅぅっ!!フーッ!フーッ!!」

「ぐうぅう!!フーッ!フーッ!!」


かすかにベッドに残るご主人様の匂いが、2人の本能に火をつけた。ドールには緊急時、主人を命がけで守ろうとするリミッター解除機能が搭載されている。目の前の宿敵が、自分や愛するご主人様を脅かす存在であると認識した両者は、敵意をむき出しにして攻め立て合った。


バコォッ!!

「んぐっ!?」


ボコォッ!!

「あがっ!?」


右手で股間を握り合ったまま、左手でお腹を殴り合い始める2人。真っ赤な顔で大粒の涙を流しながらも、美少女ドール達は傷つけ合うのを止めようとしない。


「取られたく……ないぃ……!!」

「ゆずれないぃ……!!」


バチンッ!!

「「あぁッ」」


お腹が真っ赤になるまで殴り合う2人。何分もの間、応酬が続く。


「「ぐっ……ぐぅぅん……っ」」


ついに堪えきれず相手を解放し、ベッドの上で倒れ込んだままお腹と股間をかばった2人。ぼろぼろと涙がこぼれる。


「あぁっ……ひぃっ……!」

「あうぅ……ぐすっ……!」


2人の戦いは、今に始まった話ではない。数週間前から毎日シーソーゲーム状態。こんな泥沼の壊し合いが、日中はずっと続いている。


「このぉ……このぉ……!!」


2号ドールが、這いつくばるようにして上半身をなんとか起こした。そして何を思ったか……胸元を覆うコスチュームを自らずり下ろし、生乳を露わにしたのだ。


ぷるるんっ

「はぁ……はぁ……今日も私の……勝ちなんだからぁ……!」


2号ドールは、動けずにいる1号ドールの真上まで這ってゆく。そして…


「くらえぇ……!!」

ぶにゅうううううう


生の両乳で1号ドールの顔面を敷き潰し、呼吸を奪い始めたのだ。


「んんんんんんっ!?」

むっちりとした巨乳に顔全体を覆われ、呼吸も視界も奪われた1号ドール。身体を動かして逃れたいが、お腹も股間も痛んで動かせない。


むにゅううう!むにゅううう!!

「今日もこのベッドで……!ご主人さまにいっぱいいっぱい……!抱きしめてもらうんだもんんん……!!」


泣きながら叫んで宣言する2号ドール。


「んんっ!ンんんんんっ!!」

苦しむ1号ドール。それでも負けられないのは彼女も同じだった。まして連敗を喫するなど、絶対に認められない。


ばるんっ!!

1号ドールも、両手を使って自らの胸元をはだけさせた。形も大きさも極上の生乳がそびえ立つ。その胸の真上には、ちょうど2号ドールの顔面があった。


ガシィイ!!

ぶにゅううううううううう!!


「むぐうっ!?んんんんんんっ!?」

2号ドールの頭に両腕を回すと、69の状態で相手の顔面を自身の両胸に抱き寄せて埋め返したのだ。


「「んんっ!!んんんんっ!?んんんんんん!!!!」」


お互いがお互いの生乳に顔面を覆われ、呼吸を奪い合う窒息合戦。愛するご主人様のベッドの上で、今夜この場所で眠る権利を賭けて。両者のプライドがぶつかり合う。


むにゅううう!!

「んんんんんんっ……!!」


両胸が潰れるのではないかと思うほど、相手の顔面を強く押しつける。


むにゅううう!!

「んんんんんんっ……!!」


極上の質に仕上げられたドールの胸は、もはや凶器。そんな胸を持つ両者の戦いは、同じドールとして決して譲ることのできない意地の勝負でもあった。


「「んんんんんんんんんっ……」」







ピーーーーーーーーッ

数十分後、片方のドールから警報音が鳴り響いた。両腕に込められていた力が無くなり、相手のドールを解放してしまった。


決着がついたのだ。


「ぶはああっ!!はぁっ!はぁっ!!げほっ!げほっ!」


解放されたドールは――――

クリーム色のショートボブの髪をしていた。


「はぁ……はぁ…………」


倒れたまま動かなくなったライバルの上に跨り、呼吸を整える。彼女はボサボサに乱れた髪を直そうともせず、先ほどまで自分の呼吸を奪っていた忌々しい宿敵の生乳を見下ろすと……


「このっ……!!」


バチィィィン!!

べチィィイイ!!

バチィィィン!!


怒りを込めて、その胸を殴りつけた。一発では到底収まらない。右拳で、左拳で、何度も何度も殴りつける。揉み潰し合ったときの恨みを、押しつけ合ったときの恨みを、呼吸を奪い合ったときの恨みを、そしてご主人様にわざとらしく擦りつけた恨みを込めて、生意気なライバル巨乳を痛めつけた。


「はぁ……はぁ……。思い知ったか……っ」


ピーーーーーーーーーーッ


再起動ブザーが鳴り響いた。


「…………!! んあああああっ!? 痛っ!!痛いぃぃ!! 痛いよおおおおお!! んあっ!ぁあああぁんっ!!」


作動停止していた間に殴られた痛みが、遅れてやってきた。栗色のセミロングヘア―を振り乱し、両乳を押さえてのたうち回る。


「ご主人さまは……私のモノだから……っ!はぁ……はぁ……。今夜は貴女が下で寝てよね……!」


涙でぐしゃぐしゃのライバルを見下しながら、そう宣言した。今日の戦いは、1号ドールに軍配が上がった。





その夜――――


「ご主人さま。 抱きしめて……撫でて下さい……♡」


「あ……あんまり騒ぐと起きちゃうかも……」


「大丈夫ですっ。 あの子はあのとおり、お布団かぶってぐっすり眠ってますから……。だから早く、 私のことだけ見てください……ご主人さまぁ……♡」


暗い部屋の中、ベッドの上で1号ドールが少年に身体を擦り付けて甘える。戦いに敗れた2号ドールは、床に布団を敷いて眠っていた。


「あはは……今日は一段と甘えん坊さんだね? って、んンッ!?」


1号ドールは少年の右手を取り、自分の胸を直接触らせた。


「んぁっ♡」


「な、なにを?! 駄目だよこんな……っ」


「ご主人さま……ドールはこうやって……っ♡ 大好きな人に触ってもらうことで……成長できるんです……ひぁっ♡ だからご主人さま……触って……揉んでくださいっ……ぁん♡」


むにぃぃ……♡

少年の手のひらが生乳を包み、1号ドールは甘い声を上げる。


「わ、わかった。じゃあ……優しく揉むね?」


「ひゃあんっ♡」


ぎりぎり2号ドールに聞こえる声で、わざと快楽を隠さず喘いでみせる1号ドール。半分は自分へのご褒美のために。そしてもう半分は、ライバルへ見せつけるために。彼女は至福の夜を堪能した。


「~~っ。ぐすっ……あしたは絶対……勝つんだからぁ……!」


2号ドールは悔しさに涙を流しながら、明日の復讐を誓うのだった。そうして、ご主人様をめぐるドールたちの潰し合いは、これからも続く。




――――――――――――




「んんっは♡ んっ……ひゃううぅ……!?♡」


ブルッ……!!

右手でPCのマウスを操作しながら、左手で股間を弄っていた私。物語のクライマックスに合わせ果てると、ぐったりと脱力し、椅子の背もたれに身を預けながら天井を見上げた。


「はぁ……はぁ……。今回もえっちだったぁ……♡」


両親が不在なのを良いことに、つい喘ぎ声をあげながら派手にオナニーしてしまった。背徳感と高揚感が入り混じる。


「ブックマーク……しておかなきゃ……♡」


マウスを操作し、作品をブックマークに入れる。続けて画面を下へスクロールした私は、いつもの癖でコメント欄から鼻血スタンプを選択しようとした。


「…………。」


じっと画面を見つめる。目を♡マークにして鼻血を噴き出している象さんのスタンプが表示されている。


「……今日こそコメント、打とうかな♪」


椅子から立ち上がった私は、一度手を洗うために洗面所へ向かった。この気持ちをどうメッセージにして先生に伝えよう?そんな楽しみに、胸が躍った。



CAT SURVIVORS UNIVERSE ―Side:MEME―




――――――――――――――――――




CAT SURVIVORS UNIVERSE ―Side:MIYABI―

伍代メメが『魔法少女ゆりね×リリナ』の世界に挑戦する事となる日の放課後。常和ミヤビはメメをクレープ屋に誘ったが、戦いを直前に控えていたメメに断られてしまった。



「それじゃ、今日は私急ぐから先に帰るね!」

「うん、またねメメちゃん。」


メメちゃんは笑顔で私に手を振ると、大急ぎで廊下を駆けていった。教室の前に一人取り残される私。


「……はぁ。せっかく2人で行けると思ったのになぁ。」


ポケットに入れていた2枚の割引クーポン券を取り出す。


[開店記念 半額券]と書かれたその紙は、1枚が私、1枚がメメちゃん用だった。


「使用期限今日までだし、持ってても仕方ないかな。」


私はその2枚を、教室のゴミ箱に捨てる。


『ごめんねミヤビちゃん!誰か他の子と行ってきて!』


そんなメメちゃんの言葉を思い出して、私は頬っぺを膨らます。


「もう……私はクレープが食べたいんじゃなくて、メメちゃんと一緒にクレープが食べたいのっ」


そう小さく呟いて、自分の席にカバンを取りに行った。


「あっ委員長ばいばーい!」

「うん、ばいばい」


「委員長~!また来週~!」

「うん、また来週ね」


すれ違うクラスメートたちが、私に手を振ってくれる。その一人一人に、私も手を振って応える。


『委員長』それが私のニックネームだ。別に学級委員長をやっているわけではない。私はあくまで風紀委員長。ただ、『学級委員長よりも委員長っぽくて頼りになる』と誰かが言い出してから、自然とみんなにそう呼ばれるようになった。


この呼ばれ方は、一応嫌いじゃない。みんな私を慕ってくれているし、仲良くしてくれる。クラスのまとめ役として頼られているのも分かっているし、時折好意を伝えてくれる男の子もいて。すごく光栄に思う。


だけど……



『おはようミヤビちゃん!遅くなってごめんね?』

『ミヤビちゃ~ん!お願いっ!ノート写させて~!><』

『元気ないねミヤビちゃん、大丈夫?』

『ミヤビちゃん♪ 今日帰りにどこか寄ってこうよ!』


「……ふふっ。」

メメちゃんの声が脳裏に浮かぶ。私を『委員長』じゃなく下の名前で呼んでくれるのは、メメちゃんただ一人だ。私は、あの呼び方が一番気に入っている。




――――――――――――




ピンポーン♪ ピンポーン♪


「いらっしゃいませー!」


新しいクレープ屋さんにはメメちゃんと2人で行くと決めているけど、それでも何となくクレープが食べたい気分になっていた私は、帰宅の道中コンビニに立ち寄った。


「あった。」


冷蔵スイーツコーナーに、296円の苺クレープが1つだけ売られていた。カフェオレと一緒に、レジに持っていく。


「ポイントカードはお持ちですか?」

「あっ、いえ。」

「レジ袋はご利用になられますか?」

「大丈夫です。」


店員さんと作業的な言葉を交わしつつ、カバンからお財布を取り出す。そのとき、出入り口の方から数人の男子の話し声が聞こえてきた。


「大丈夫だって!絶対いけるって!」

「覚悟決めろって、ゴッチャン!」

「あ~!あ~!もうわかった、俺いくわ!」


私は特に気に留めることなく、お財布からお金を取り出す。


「俺やる、伍代さんに告白する!」


チャリン

チャリーン…


「ああっ、大丈夫ですかお客さん?」

「えっ」


無意識に身体が膠着し、小銭を落としてしまっていた。拾い上げるより先に、私は声がした方に目をやった。


ピンポーン♪ ピンポーン♪

自動ドアが開き、私と同じ学校の制服を着た3人の男子が出ていくのが見えた。


「おぉ~!よっしゃ頑張れよォ!」

「口説き落とせェ~!」

「~~!」


「……あれってうちのクラスの……。」




――――――――――――




「はむっ。」


クレープを口に運ぶ。生クリームと甘酸っぱい苺の風味が口に広がってゆく。けれど私の心の中は、その味を堪能できないくらいモヤモヤと曇っていた。


「”伍代さんに告白する”……かぁ。」


ぼそり、小さく呟く。

誰もいないイートイン・スペース。窓に面して設置された木製の長テーブル、その一番奥の席で私はひとりクレープを食べていた。


「伍代さん……メメちゃんのことだよね……。少なくとも同じ学年にゴダイって人はいないし……。」


思考を巡らせる。親友が男子から好意を寄せられている。人として、それ自体は本来喜ぶべきことだ。けれど――


「あれ……元バスケ部の後藤くんだよね……う~ん……」



伍代さんに告白する。そう言ったと思しき人物について、自分が知る情報を整理する。

後藤くん。同じクラスの男子生徒。バスケットボール部に所属していたけど、夏頃に退部して今は帰宅部。放課後は今日のように、同じ帰宅部の同級生たちと遊び歩いている。入学してすぐに隣のクラスの女の子と付き合い始めたらしいけれど、数週間前に別れたと噂で耳にした。陽気な性格。人当たりはよく、体育祭後の美化活動の際ごみ袋を持つのを代わってくれた。その時にすこし話した覚えがある。当たり障りのない話題で、内容までは覚えていないけれど、退屈はしなかった。


「悪い人じゃないと思うけど……。」

じとり。窓の向こうの景色を見つめ、イメージする。


――メメちゃんがOKしちゃったら、一緒にいられる時間が減っちゃう?



『クレープ美味しいね、伍代さん!』

『そうだね、後藤くん!』

『あっ、そうだ!俺のやつ食べる?』

『いいの!?じゃあ私のもあげるね!』

『あっははは♪』

『うっふふふ♪』



仲睦まじくクレープを食べさせ合うメメちゃんと後藤くんの姿を想像する。


「はぁ……風紀の乱れを感じるなぁ……。」


両手で頬杖をついて、ため息を漏らした。


ブーーーッ!!

「わっ!?」


突然近くで大きなバイブ音が鳴り響いた。何事かと音の出所を探すと、隣の席の窓際にスマートフォンが立てかけてあった。


「忘れ物……? 気付かなかった……」


店員さんに届けなきゃ。そう思い、スマートフォンを手に取る私。すると画面に表示されていたのは、意外な文面だった。




――――――――――――

[LINE通知]

1年JOSHI WATCHERS

後藤シュン


今さっき話してた委員長の写真これな


返信↓

――――――――――――




「えっ……?」


画面に釘付けになったまま固まる。


「後藤シュンって……後藤くんだよね……」


後藤くんからのLINEという事は、この文面を見るに、さっき後藤くんと一緒にいた2人の内どちらかのスマートフォンだろうか。それよりも。


「委員長って、多分私だよね。グループ名……1年JOSHI WATCHERS……。ジョーシ……ウォッチャーズ……。いや……女子ウォッチャーズ? えっ。」



ブーーーッ!


「わっ」

更にもう一件通知が届いた。写真が送られてきたようだ。


「後藤シュンが写真を送信しました……? えぇっ、何それ……。」


気になる。分からないけど、恐らく私に関わる写真がやり取りされている。これは確認しないわけにいかない。私は「開く」のボタンをタップした。


「あっ……ロック掛かってる……。」


画面が暗転し、4桁の暗証番号を打ち込むロック解除画面に切り替わった。


「う~ん……ダメかぁ……。どのみち他人のスマホを勝手に見るなんて……良くないよね……」


とりあえず何かの手掛かりにするために、この通知画面だけでも写真に撮っておこう。そう思い、私は自分のスマートフォンを取り出そうとした。



その時だった。



『その後藤という男、怪しくはないかい?』

「ッ! 誰!?」


突然声が聞こえ、私は驚いて辺りを見渡した。


「……誰もいない……?」


けれど再び、同じ人物の声が聞こえてくる。


『裏でコソコソ何かやっている男に、伍代メメが取られてしまうかも知れないよ?』


「……!」


『君は伍代メメの傍にいたいと思っているんだろう? なら彼女のことは君自身が繋ぎ止めておくべきだ。これはそのための武器になるんじゃないのかい?』


ハッとして、忘れ物のスマートフォンをもう一度見る。


1……8……


「えっ?番号が……」


ボタンを押していないのに、暗証番号が勝手に選択されてゆく。


6……2……決定……


4桁の数字が選択され、スマートフォンのロックが解除された。


「これって……!」


画面が明るくなり、そのままLINEのアプリが開いた。するとそこに表示されたのは……この夏の水泳の授業で、水着を着用していた際の私の姿だった。


「えぇぇ……!?」


授業が終わり、帽子を取ってゴーグルを首にかけた状態の私。紺と黒の水着が水にぬれてピッチリと張り付き、肌に水滴が滴っている。当然眼鏡はかけておらず、長い髪も降ろした状態だ。


「こんな写真いつの間に……。」


画面をスクロールしていくと、過去の会話が次々と表示される。



――――――――――――

『水泳っつったらさ』

『つったら?』

『水泳の授業直後の委員長がマジでエロ可愛いかった』

『!?』

『マジで?てかお前見たん!?』

『おまえそれくわしくきかせろ!!』

『髪下ろしてて眼鏡も取っててクソ可愛かった』

『え、ヤバ』

『それ超見たい』

『見てええええええええ!!!!』

『激レアすぎ』

『写真撮ってねえの!?』

『委員長ガード固いからな~』

『わかるわ。マジで写真不足』

『さすが風紀委員長』

――――――――――――



「あ……あの人たち~……!」


知らない所で自分のことが話題に上げられ、隠し撮りされた写真が共有されていた。こんなの大問題だ。更にスクロールをしていく。グループ参加人数は7人。かなり長い期間、やり取りが行われているようだ。



――――――――――――

『2組の井上ミサ in 部活後』

[写真]

『撮れたてきたああああああ!』

『でかした!!』

『神』

『エッロ!!!!』

『胸やばいな』

『これどこだよ!』

『部室の裏』

『もう一枚』

[写真]

『エロ過ぎ』

『やばいやばいやばい』

『これはアカンっすよ!!w』

『これもう隠す気ないだろ笑』

『井上ガード緩いからどんだけでも新作出てくるな』

『逆にもう撮られてんのわかっててこんなポーズしてんじゃね?って思う時あるわ』

『確かに制服の時もパンツ率高いもんな』

[写真]

『い つ も の』

『何十回と世話になったわこの写真』

『この尻突き出してからの水色パンツよ』

『毎回見せる気満々のパンツで草』

――――――――――――



「うわぁ……ひどい……。」


そのグループLINEでは、同じ学年のあらゆる女の子たちの隠し撮り写真や、女の子たちについて語り合う思春期特有のやりとりが行われていた。あの子が可愛い、この子がエロい、こんなことを言っていた、あの子ならこんな自慰行為をしていそう等々。とても表には出せないような会話が繰り広げられていた。



――――――――――――

『委員長とかいう1組最高の女にして最大の難関』

『それな』

『正に高嶺の花』

[写真]

『こんな写真しか出てこない』

『花に水やりしてる時のか』

『ド健全で草』

『学校案内のパンフとかに載ってそうな健全な写真』

『普段エロいのばっか見てる自分が恥ずかしくなるわ…』

『隠し撮りなのにこんなクオリティ高い写真映りしてる委員長のおしとやかっぷり逆にすごくね?』

『たしかに』

『でも胸は結構あるよな』

『制服の上からでさえアレだから相当あると思う』

『風紀委員室に呼び出されて「も、もう!隠し撮りなんかして……ダメなんだよ? めっ!」って怒られたい』

『変態で草』

――――――――――――



「……風紀……乱れてるなぁ……。」


頬を引きつらせながら、スクロールをしていく私。画面を擦るその指が、あるポイントで止まった。


「これって……」



――――――――――――

『委員長ってまだフリーなんだよな?』

『フリーってか半年で何人撃沈したんだよ』

『こないだクッソイケメンな3年の先輩が告りにいって断られたって知って、もう俺らなんかには手が届かないんだってはっきりわかった』

『ワンチャン大学生とかと付き合ってそう』

『マジで誰とも付き合ってないらしいぞ。勉強優先で。』

『俺らの委員長はまだ誰とも……』

『これは聖女ですわ』

『でも委員長、伍代さんとはずっと一緒にいるよな』

『あ~たしかに』

『伍代さんも可愛いよな~』

『え?お前ら伍代さんわかるん!?じゃあもっと早く話題に出しとけばよかった!!』

『誰も話題にしないから何かあるのかと思って俺も言わなかったけど、』

『伍代さん今メチャクチャ来てるよな』

『わかるわ~!なんか急に可愛くなったよな!』

『伍代さんって誰だよ』

『おいそれ詳しく』

『1組のメンバーだけで盛り上がんなよ!!』

『3組の俺にもわかるように説明してくれ!!』

『委員長が一番仲良さそうにしてるのが伍代さん』

『伍代メメな』

『みんな委員長に気を取られ過ぎて気付いてなかったけど、最近どんどん可愛くなってきてる気がする』

『てかよく見たら可愛い顔してんなって元々思ってたけど、大人しいから目立たなかった』

『↑それ』

『↑俺もそれ』

『実際入学したての頃はほとんど無口だったよな』

『半年でどんどん明るくなっていつの間にか目立つ子になってた』

[写真]

『この委員長の横に映ってる子』

『いや超かわいいじゃん』

『可愛い』

『なんで気付かんかったんや今まで』

『特に今週に入ってからみんな言ってる』

『今週やばかったよな』

『だからどうやばかったんだよ』

『1組だけで楽しむな(`□´)怒』

『なんかこう、、、、』

『恋する女の子って感じ、、、?』

『恥ずいけど俺もそれ思った』

『授業中だから撮れなかったけど、頬杖ついてぼーっと窓の外見てる顔がクソ可愛くてガチでドキッとした』

『ほう』

『女になったんや』

『女子は恋すると可愛くなるんやで^^』

『いいなこの子……ちょっと明日見に行くわ…』

『おまわりさんコイツです』

――――――――――――



「……みんながメメちゃんのことを……」


こんな邪な会話なのに、私はどこか親心のような所からくる安堵感を覚えてしまった。



半年前、初めてメメちゃんに会った時。彼女はとても無口で、自信なさげで、目に映る全てに怯えているようだった。入学後も私以外とはあまり上手く会話ができない状態だったけれど、それは彼女が育ってきた環境が原因だったことを、話を聞いてすぐに察した。メメちゃんを笑顔の絶えない明るい子にする、それが私の使命だと感じて今日まで過ごしてきた。


「嬉しいな……やっとみんながメメちゃんの可愛さに気付くような所まできたんだ……」


思わず、笑みがこぼれた。




「い、委員長……!?」

「え?」


突然、真横で男の子の声がした。

そこに立っていたのは後藤くんと、さっき彼と一緒にいたクラスメートの高槻くんだった。


「それ……僕のスマホ……!? あっ……その画面……あぁっ……!」

「バッカ高槻お前……!!あぁっ……」


彼らは、私がLINEのやり取りを見ていた事に気づいて酷く取り乱した。


「……高槻くん。これ……悪いけど読ませてもらったよ?」


「い、いやそれは……!あっその……えっと!!ごめんなさい!!すみません!すみません!許してください!ホントその……あのォ!!ホンットにすみませんでした!!」


何度も頭を下げて謝罪してくる彼。真っ青な顔で油汗を垂らしている。


「……私たち女子のこと、そんな目で見てたんだ?」


「いぃや、その……ッ!!俺ら悪い事する気とか全然なくて!!その、ホントに委員長とか女子みんなのことを純粋に憧れっていうか……!尊敬!そう!尊敬してるから、それを語り合いたくて!それでそういうグループ作ったっていうか~……!!」


「盗撮してるのに?」


「あぁぁあ!? うぅ、それはァ……!!」


両手で頭を抱えて、情けないくらいくしゃくしゃの顔をして取り乱している彼。目には涙が滲んでいる。その隣で後藤くんも、気まずそうに直立したまま完全に固まっていた。


「…………はぁ。」


一つため息をつく。


「仕方ないなぁ、もう。」


三つ編みを指でクルクルいじりながら、一歩、二歩、彼らに近づく。


「えっ!? えっ!?」

「あああっ!?スミマセン!スミマセン!スミマセン!」


何を言われるのか。はたまた引っぱたかれるのか。恐怖でたじろぐ様子の2人。そんな彼らの至近距離に詰め寄った私は、両ひざを軽く曲げてその上に両手を置き、小さな子を相手にする時のように前のめりになって二人の顔を覗き込んだ。


「「委員長……ッ!?」」


「もう……隠し撮りなんかして……。」


その体勢のまま、右手の人差し指をぴしっと立てて彼らの前に突き出す。


「ダメなんだよ? めっ!」







その夜。自宅。

学習机のライトのみ点灯させた、薄暗い自室。


宿題を終わらせた私は、椅子に座ったまま軽く伸びをする。


「んっ……。ふぁあ。」


すこし眠い。

今日はいろいろあったし疲れた。


「今度はメメちゃんとクレープ屋さん、行けるかなぁ。」


スマートフォンを手に取り、LINEを開く。


「メメちゃん、用事は無事に済んだ? と……。」


指を動かし、ポチポチと文字を打ち込んでいく。


「送信っ。」


私の打った文字が、トーク画面に投稿される。

それを見ていると、夕方のコンビニでの出来事を思い出した。





『今回は見逃してあげる。勝手にスマホを見た私も私だからね。』


『えっ……本当に……!?』

『このこと他の女子には……!?』


『言わないよ。今日私は何も見なかった。キミ達も私に何も見られなかった。これでどう?』


『う……うぁあ!うぁあ!!』

『ありがとう委員長……!ほんとに……ほんとにありがとォォオ!!』


『クラス全体の風紀を守るのも私の役目だからね。けどその代わり、これから私の目に付く所で変なことしてるのを見つけたら、すぐに捕まえてみんなの前で糾弾するからね?』


『ひっ……!?』

『き、気をつけます……!!』


『はい。それじゃあ行ってよし。気をつけて帰ってね。』


『『ありゃがしたーーーッ!!』』


まるで野球部員のように2人揃って深々と頭を下げると、私に感謝の挨拶をし、撤収していった。


『あっ、そうだ後藤くん。』

『ハイィッ!?』


私が呼び止めた瞬間、ビクッと固まった後藤くん。錆びて動きが悪くなったロボットのように、ガクガクと震えながらこちらを振り返った。


『もしメメちゃんに何か用がある時は……親友の私も同行するから言ってね?♡』


『ひっ!!!?』




ふふっ。

あの時の後藤くんの顔を思い出して、すこしスッキリした。これで当分、メメちゃんを取られることはない。悪いけど、風紀の乱れた男の子にメメちゃんは渡さないんだから。


「それに……」



数日前のメメちゃんの言葉を思い出す。


「メメちゃんはもう見つけたんだよね? 運命の人を……。」





「ミヤビ……常和ミヤビ……」


突然私の耳に、少年の声が聞こえてきた。


「っ!! 誰!?」


椅子から立ち上がり、後ろを振り返る。

そこにいたのは、コートを着た不気味な少年。


「キミの親友……伍代メメがピンチなんだ。僕と一緒に……来てくれないか?」


彼は宙に浮き、部屋の隅の暗闇から私を見つめていた。




CAT SURVIVORS UNIVERSE ーSide:MIYABIー

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