――「僕、海なんて久しぶりです!」 夏音は躊躇なく ジャリジャリと浜砂を踏みしめ 水際に乗り込んで行く。 「ひぁあ!冷たあい!」 ハイレグカットが見せる、引き締まった足を 膝上まで波しぶきが乗り上げる。 泡立った海水が舞い上がり 夏音を彩るように光沢を散りばめた。 ジリジリとした暑さの中 塩気のある涼風が流れる。 ――久しぶり 海に面した、この小さな街ではありふれた景色を 夏音がそのように言う理由を考えれば 自分にとっても特別な―― 清廉な景色にも思えてくる。 「しかし、あっという間に焼けたな」 俺は波打ち際で控えながら 夏音を眺めて言った。 小柄というより、スレンダーボディ。 機能美とも言える、必要最低限の筋肉と脂肪が 彼女のしなやかなバネを表していたが この夏は更に、小麦色の肌を纏って ハツラツとした輝きに満ちていた。 「僕、日焼けしやすいみたいです!意外!」 波を蹴飛ばしながら 満面の笑みを見せる。 「日焼け止めとか使わなくて良かったのか?」 ――立ち止まる夏音。 その足元を波が引いていき サラサラと浜砂を巻き込みながら滑っていく。 「だって……嬉しいじゃないですか」 瞳が隠れる程の笑顔だったが 先程とは違う気持ちの深さを見せていた。 確かにそうなのだろう。 昨年のことを思えば こうやって海に入ることすらも想像していなかった。 「そうだな…… 泳ぐか!」 今の幸せをしみじみと
二人で噛み締めたい気持ちもあったが 波に任せて発散するのも良い。 夏音を追いかけるように 一気に腰まで浸かると激しい飛沫と冷たさに 「うおおおっ!?」 と、柄にも無い声を出してしまう。 夏音は弾けるような表情でこちらを見ると ひと潜りしてから 距離を詰めて浮かび上がる。
水を弾きながら輝く、小麦色の肌。 確かにそれは 純粋に健康の証と言えるだろう。 しかし、ここ最近の関係を思えば 水着の縁から覗く、僅かなコントラストは 剥けば雫がほとばしる 柔らかな果肉を想像させずにいられなかった。
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