※※※※※プロローグ※※※※※ ――「じゃあ……明日からは普通に試験受けてね…… これは、私が処分しておくから…… 他の人に見つかったら大変だし……」
私は何枚かの小さな紙切れを手に収めたまま 教室を出ようと身仕度をする。 男の子は座席に座って俯いたままだったが 言う通りにしてくれるだろう。 ――カンニング 私の席からしか見えないような角度だから つい目に入ってしまったのだ。 彼は、いたって普通の男子だったし 私とも言葉を交わす程度には仲が良かった。 それだけにショックで きっと魔が差したに違いないと思うと 話し掛けずにはいられなかった。 これで良かったんだと思う。 もし、私以外に見つかれば大変な事になっていたはずだ。 「……じゃあ、また明日ね……」
教室を出ると、小走りで廊下を進み 手に収めた紙切れをどこに捨てようかと考えていた。 校内は良くない、やっぱり通学路のどこか ゴミ箱でもあれば丁度良いけど―― 「きゃっ!」 廊下の曲がり角で 突然、目の前に人が現れたことに驚き 尻餅を付いてしまった。 「いたたた」 「詩音姉?」 聞き慣れた声に見上げると、水泳部の後輩―― 隣に住む、幼なじみの男の子の姿があった。 「ごめん。怪我はない?」 覗き込んで、手を差し伸べてくれるが 思わず目線を反らしてしまう。 自分で起き上がろうとして 後ろ手に付いた手の平が 紙切れを離してしまったことに気がつく。 散らばる紙切れを見付けると 慌てて、一枚ずつ手に取り 隠すように握りしめると、カバンに押し込んだ。 「ううん、良く見てなかった私が悪いの…… 急いでるから、またね」 私は逃げるように、その場を後にする。 やっぱり、早く処分しないと…… 受け取った以上、自分には隠し通す責任がある。 ・ ・ ・ ・ ・ 紙切れを駅のゴミ箱で処分すると 幾らか気持ちが楽になるかと思ったが そうでもなかった。 彼に出くわしたのが原因だ。 「ハァ……」 帰宅ラッシュの雑踏の中 何気ない彼の言葉を思い出す。 ――「詩音姉」 その言葉を聞く度に、自分の立場を思い知る。 当たり前の呼び方が、こんなにも 重く響くようになったのはいつからだろう。 もう、ずいぶん長く一緒にいるというのに 変わらぬ停滞が自分を追い詰める。 残された時間に危機感を感じながら その呼び方のうちは、彼には何も届かないと 暗示を掛けるようになってしまった。 実際、私の気持ちなど気付いてもいないだろう。 馴れ馴れしく声を掛けたり、体を密着させたり これ以上、詰めようのない距離が 益々、閉塞感を募らせる。 何とかしたい、しなければという 焦燥だけが、日々増していく―― ―――――――――――――――――――――――――― 試験もようやく最終日となり 放課後からは部活動も解禁となる。 早速、練習というわけではなく その前に僕と詩音姉は部室で 備品の整理をしていた。
いつも通り、二人きりでの作業。 この時、僕は全くと言っていいほど不安はなかったし 誤解が解ければそれで終わりのつもりだったのだ。
「そうだ詩音姉、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「何?どうしたの?」 詩音姉は振り向き様にこちらを見たので ポケットから例の紙切れを出す。 「これ……昨日ぶつかったとき、落としたよね。 慌ててカバンにしまっていたけど これも、そうかなって」 詩音姉は一瞬ハッとした表情をして そのまま背を向けてしまう。 まさかとは思うが やはり確認せずにはいられない 「やっぱり、詩音姉が落としたの? カンニング……じゃないよね。 詩音姉がそんなことするわけないし……ハハ……」 ピクンと詩音姉の肩が動いた気がした。 わざと冗談ぽい雰囲気で確認してみたのだが 詩音姉は背を向けたまま動かない。 長い沈黙―― 時が経つごとに空気が重くなっていく。 ――ハァ と吐息が聞こえると ようやく口を開いた。 「……私がカンニングするわけないって…… どうして、そう思うの?……」 肯定でも否定でもない言葉に 若干の苛立ちを感じるが 慎重に言葉を選ぶ。 「え……いや、詩音姉はいつもちゃんと勉強してるし カンニングしなくても良いんじゃ……」 詩音姉に動きはなかった。 またも長い沈黙。 「…………そういうところはちゃんと見てるんだ」 詩音姉が何か言ったようだが 上手く聞き取れない。 「…………したよ…………カンニング……」 耳を疑う言葉だが 今度はハッキリ聞こえた 確かにそう言っている。 「え?……そんな……どうして??」 「……それでね……誰にも言わないで欲しいの」 さらに、らしくない――というか 状況に合わない言葉に戸惑う。 「言わない……けど……それよりも……」 「わかってる……反省してるし、もう絶対しないから……」 正直、ショックで 未だに信じがたい。 しかし、反省の言葉を聞いた以上 取り乱すわけにはいかないだろう。 「……だったら良いよ……もう二度としないなら 僕も何も言わないし、誰にも言わない…… これで、この話は終わりにしよう」 思わず結論を急いでしまったが フワフワとした、納得のいかない展開だ。 何か噛み合っている感じがしない。 しかし、これで重々しい空気から解放される。 黙っていれば、ギクシャクすることもないだろう。 理由を問いただしても良いが 勉強で悩むぐらい誰だってある。 そう納得しようとしていると 詩音姉が突然振り向く。 「ううん。 誰にも言わない代わりに 私に命令して欲しいの」 突拍子もない提案―― 思わず反射的に言葉を返してしまう。 「え?なんで?」 「だって……不安だもん。何の約束も無しじゃ……」 詩音姉はそう言うと 停滞していた空気を破壊するように 素早いスピードで詰め寄って来た。 長い髪がふわりと浮かび 間近まで迫っても、その速度が止まらない。 「ちょ……ちょっと……」 フワっとした風の流れと共に 胸に飛び込むように押し迫る詩音姉。 僕をロッカーに押し付け ガシャンと金属音が響く。 そのまま、すがりつくように僕の胸に 顔をうずめてしまった。 ギュッと両手で制服のシャツにしがみつき 顔を伏せて擦り付けると ボリュームのある髪が鼻先をかすめて 気化された甘い香りが立ち昇る。 状況の変化に付いて行けず 押し戻そうかと思ったが 豊満な詩音姉の胸が 押し付けられていることに気がつくと 接触部分に神経が集中してしまう。 ――「何でも……言うこと聞くよ……」 ドキリと心臓が高鳴る音がした。 “何でも――”という言葉が頭に響く その意味を探ろうと 思考が走り、詩音姉の様子を解析する しかし、その表情は隠れて見えない。 ゴクリと唾液を飲み込み 深呼吸をして、胸元を見下ろしていると―― ――「エッチなことでも良いよ…… 誰にも言わないから……」 その言葉は一本の電撃となって脳髄を走る。 “エッチなこと”の解釈 “誰にも言わない”という、その意味―― 女のコの弱みを握り、卑猥な要求をする。 そんな、エロ漫画のシチュエーションが頭をよぎる。 自分に当てはめる妄想ぐらいは誰だってあるだろう。 紙切れ一枚がきっかけでそれが現実になろうとしている。 経緯はともかく、全てが許されそうな状況に ――いや、しかし と当然の葛藤に さらなる電撃が走る。 「命令してくれないと 私……不安で、明日から学校に行けないよ……」 それは流石に良くない。 カンニングがバレて、自主退学なんて話は 良く聞く話だ。とても良く聞く気がする。 とにかく何とかしないと…… そういう気持ちになっていた。 呼吸が大きくなり、寄りかかる詩音姉ごと 胸元が上下している。 何とか言葉を発そうとして唇を開くと 顎がガクガクと震えている。 「わかった……わかったから……」 その言葉を聞いたのか 詩音姉は呼吸を潜めて微動だにしなくなった。 暫くの沈黙の後、呼吸を整えて 唾液を飲み込み、気道を確保してから 恐る恐る、口を開く。 ――「じゃあ…………パンツ…… パンツ…………見せて……」 詩音姉が顔を伏せていて良かった こんな言葉、顔を合わせて言えるものではない。 心臓がバクバクと響き それは顔をうずめる詩音姉にも伝わっているに違いない。 詩音姉はうつむいたまま すっと、胸元から離れていく。 僕は目線を合わせるのが気まずくて ロッカーを背に下を向いたまま、反応を待っていた。 これで、断られたら、たちの悪いドッキリだ。 そのときは笑い飛ばすしかない。 ところが―― 「わかった……」 あっさりと承認された言葉を聞いて へなへなと背中をロッカーの扉で擦りながら 腰が抜けるように座り込んでしまう。 詩音姉は目の前のベンチに腰を掛けると 僕の視線の先に ちょこんと両膝が並ぶ。 互いの呼吸が部室に響き 時間が長く、長く、感じられていた。 やがて、閉じられた膝の間が徐々に開いていく―― スカートからフトモモが露出していき 布地が擦れる音がハッキリと聞こえる。 薄暗い部室の中で、詩音姉のフトモモだけが 眩しく光ながら、大きく開いていく。 ――全開 目一杯開かれた、 ムチっとしたフトモモはベンチの縁に食い込み 大きめの尻裏までもが丸見えになっている。 残る僅かな面積だけがスカートに覆われ それだけでパンツが見えそうな際どい光景になっていた。 「じゃあ…………見ててね……」 まさか……まさかだった 僕は寸前まで疑っていたのだ。 突然、詩音姉が笑い声を上げ いつもの可憐な笑顔を見せる―― むしろ、そんな光景を期待していたことに気がつく。 しかし、容赦なく捲り上げられるスカートは クシュクシュと手の中に吸い込まれていく。 スカートの裾はますます、ふとももの付け根に迫り やがて、ベンチに密着した尻肉の奥が、パンツの根元が ステージの幕が上がるように徐々に公開されていく。
あらわになる、パンツの全景。 インナー水着を覆う、シースルーのレース柄。 予想以上に大人びた装いに眩暈すらする。 その光景が脳裏に焼付いて 頭の奥がジリジリと熱い。 人生で最も卑猥で、エロティックな経験が 映像として刻印され煙を上げている。 ――ドクン 今度は強い鼓動で体が跳ねる。 スカートの中に籠もっていた ムワッ♡とした熱気が、メスの匂いを纏って こちらまで流れこんできたのだ。 鼻腔から取り込まれた香りが 電気信号となって脳髄から体中に行き渡る。 ――「言われたようにしたよ…… 次は……次はどうすればいいのかな?……」 ――次?次とは、ここから次とは何だ。 いや、わかっている。わかっているが 何もかも未経験な自分には言葉が出ない。 語彙力を持たない。 暫くして、詩音姉が切り出す 「……私が決めてもいい?」 思わず頷く僕。 この状況で展開を委ねる愚行に後悔するが 振られた賽の目は盤上を転がり もはや、その先の言葉を待つ以外になかった。 ――「エッチ」 聞こえた言葉は頭に入るが 処理ができない。 「エッチ……してもいいよ……」 今度は理解が体を下り 既に自分が興奮状態にあることに 本能が選択の余地を奪っていることに ようやく気がついた。 詩音姉はスカートを抑えていた右手を ゆっくりと下ろしていく 水着のVゾーンを下り、その先へと指を滑らせていく。 指先がパンツへもぐり、水着の縁へと 食い込んだとき僕は聴いたのだ。 ――クチュリ と水滴が弾ける音を―― ―――――――――――――――――――――――――― 今月後半のFANBOXの記事に続きます。
ヤルノ
2021-07-01 12:32:19 +0000 UTC宗右衛門
2021-06-07 06:15:03 +0000 UTC南部馨介
2021-06-07 00:37:13 +0000 UTC