「どう? 私の泳ぎ方、見えた?」
水面をゆらゆらと、かき分けながら詩音姉が問い掛ける。
「う〜ん、後ろからじゃ、よくわかんないな」
一緒に泳ぎながら見るのは難しい。
まぁ、わかってたけど。
後から着いていくのは嫌いではないので、応じただけだ。
「そっかぁ、やっぱり泳ぎながらは無理かぁ。
とりあえず、もう一本通して、終わろうか。
――あ。 あと敬語使ってよね。先輩なんだし」
相変わらず、こだわるなあ。
4月からは夏音ちゃんも来るから、そのせいもあるのだろうか。
だとしたら、もう少し気をつけた方が良いのかもしれない。
「はい、こっち」
詩音姉が手を伸ばし、僕を促す。
言ってるそばから、これだ。
弟扱いは相変わらずなのに、いったいどうしろと。
黙って手を取ると、詩音姉は握手した状態でバシャバシャとプールの壁面を伝いながら泳いでいく。
触れた手が、ふやけて少し硬い。
あまり体重が乗らないように、合わせて進もうとするが、余計に泳ぎにくい。
結局、グイグイと引っ張られたまま、プール端へとエスコートされてしまう。
しかし、僕の意識は、徐々に別のことへと向けられていく。
詩音姉の手が離れて、手すりを掴んだとき、僕は最大限の集中力を発揮する。
目線は一点を捉えたまま、水面を漂い、ベストポジションに着いて、そのときを待つ。
詩音姉の両手に体重が掛かり、向けられた背中が上昇すると、水面を押し上げて――
大量の水滴が音を立てながら、でっぷりとした尻が顔を出す。
僕はその一滴一滴を捉えながら、瑞々しい丸みを目に焼き付ける。
今日も素晴らしい光景だ。
「下から見ると一段とキレイだね〜🌸」
見上げると、満開の桜に取り囲まれていた。
花々の隙間から差し込む光が、詩音姉の背中を薄ピンクに染め上げている。
流れる水滴は輝きながら、美しい曲面を描き
水面へと落ちていく。
僕は感嘆を込めて、心からの感想を述べる、
「――ええ、本当にキレイですね」
ヤルノ
2021-07-01 12:52:12 +0000 UTCジェット
2021-04-01 10:41:58 +0000 UTCtrbksi
2021-04-01 08:36:13 +0000 UTCしんかい
2021-04-01 03:24:02 +0000 UTC