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138.合流

 俺たちはマリエーヌの魔力感知を頼りに、大きな魔力をもつ者がいるポイントに向かった。 ディストーマのテレポスが大活躍である。 もちろん事前に話し合ったとおり、血を流し過ぎたマリエーヌが再び動けるように、まずは食事を第2地区で済ませた。 その後、瞬間移動によって行き着いた先は見慣れたサンビュルーリカの街並みであった。 お! こっちのほうは、いつの間にか雨が止んでいたんだな。 動きやすいし見晴らしもいいので嬉しい。 ここは……いつも俺たちが利用している商店街の隣の通りだな? 「ちょっと……連続で長距離移動し過ぎたよ。少し休ませて」  ディストーマが膝をつく。 どうぞ休んでください。 何度もテレポスを使ってくれて本当にありがとう。  よし……大きな魔力の正体は誰だったのか確認するぞ。 「逃げ遅れた! 早く! 早く逃げろー!」 「まだ戦いは終わっていない! 巻き込まれるな!!」 「本当にヤバい魔法を使っているわ……!」  なんだ? 里の魔女達が数人、俺たちの横を通り過ぎて逃げて行く……! 俺は彼女達が遠ざかっている地点に目を向けた。 あ! 100メートルぐらい離れたところに誰かいるぞ。 あれは……ジャスミーナ先生とメディアン隊長だよね!? 白衣を着ているので分かりやすい。 ……って、あの辺りは建物がボロボロだぞ!? レンガでできた建物が破壊されている……!! すぐ近くの一帯だけ、とくに破壊されている! 道路に瓦礫が落ちていて危ない。 道路自体もレンガでできているが、ガタガタになってしまっているな……! あの辺りで爆発でも起こったのか!? こんな街の中心で、めちゃめちゃ派手に戦ったんだな……。  あ、あれ!? ジャスミーナ先生の後方には、ミルフィーヌが倒れているぞ……!! 赤い着物なので間違いない! マリエーヌも気づいたみたいで大声で呼び掛けた。 その大声が届いてミルフィーヌが意識を取り戻したように見えるけど……大丈夫だろうか!? 「ミ、ミルフィーヌさん!?」  俺とマリエーヌは、ミルフィーヌに向かって走り出す。 戦っている場所から少し離れた位置に瞬間移動してしまったんだな。 ……とは言っても、20キロ近く瞬間移動してもらったはずだから、100メートルほどの誤差は仕方がないか。 むしろ誤差が100メートル程度で済んでありがたいよ! 俺はディストーマの誤差の距離すら瞬間移動できないからね……。 「……や、やはりマリエーヌか! 私の意識は……ある! 1カ所に集まるんだ!!」  遠くて分かりづらいが、ミルフィーヌはうつ伏せに倒れたまま、顔だけを上げて叫んでいるようだ! 『1カ所に集まれ』……ってことは、テンイスルーで逃げるってことだな! ということは、まだ彼女は魔力を残しているということだ。  とは言え、ミルフィーヌは起き上がれないようだな。 まさか完膚なきまでにやられてしまったのか!? 敵は……メディアン隊長だろう。 ジャスミーナ先生はミルフィーヌを守ってくれた感じだよね? 助けてくれて本当によかったぜ……。  それにしても……隊長クラスの戦闘力はやべえな!! 王宮ではミルフィーヌが召喚魔法で押しているようにも見えたが、やはり事前に得た情報の通り、隊長クラスは別格か……!! ん……? メディアン隊長がこちらに視線を向けているようだ。 「そうか……キミ達はミルフィーヌと一緒に逃げたいのかな……!? とは言ってもさぁ、マリエーヌだけは絶対に逃がさないからねぇ!!」  うおっ!? メディアン隊長がこっちに向かって来た! そうだよね、マリエーヌが標的なんだよね……。 敵にとってみれば、目的の獲物がわざわざやって来てくれてラッキーな状況である。  メディアンの動きを見て、マリエーヌが足を止める。 「……ケンジ、下がって! こっちにメディアン隊長が来るわ!」  マリエーヌが俺の腕をつかみ、ムリヤリ後ろに下げる。 まだミルフィーヌのところまでは50メートルぐらい距離がある……。 ぐぅ……早くミルフィーヌのところに行きたいのだが! 「私の目的はマリエーヌだからねぇ!! 再教育しないと!!」  メディアン隊長……なんか怖いよ!? 再教育? よく分からないことを言っているな……。 ただ、どうやら彼女も負傷しているようで、こっちに向かって来るスピードは遅い。 あ! そうこうしているうちにジャスミーナ先生が走り出したぞ! メディアン隊長を止めてくれるようだが……!? 「……いや、あなたの好きにはさせないわよ! で、マリエーヌ……ボロボロじゃないの! あなたは下がってなさい! ミルフィーヌを連れて逃げるのよ! あなたは隊長達のターゲットなの!! そんな状態なのに何で来たの!? しかも、ぞろぞろと他の子たちと一緒に! この人はあなたを恐怖でコントロールして、やりたい放題やるつもりよ! 分かってるの!?」  せ、先生にめっちゃ怒られた……!! ミルフィーヌを助けるために来たんだけどな……。 「マリエーヌ様……ミルフィーヌさんのテンイスルーで逃げましょう! それが最善策かと……」  俺は主張したが、マリエーヌはメディアン隊長を見つめたまま下がらない。 「待って、ケンジ! 動かないで! メディアン隊長が何かをするつもりよ!」  え……? メディアン隊長が指先をこちらに向けているぞ。 「熱線」  な、何か光った!? あ! マリエーヌが俺に覆い被さって倒れてくる!! 俺たちの上を何か熱いものが通り過ぎていった……ような? 「あ、危なかった……。何なの、今の魔法?」  立ち上がりながら後ろを見るマリエーヌ。 お……? 光のスジみたいなのが奥のほうに消えていったようだが? 後ろのほうで休んでいたディストーマが目を丸くしている。 ん? すぐ後ろにある大きな瓦礫に穴が開いている!! 小さな穴だが、穴の周りから煙が出ているので分かりやすい。 これは……もしかしてレーザー光線的な魔法? おいおい……危ないな!! 体を貫通するような攻撃じゃないか! 誰かに当たったら、どうすんだよ……!? 「マリエーヌ……師匠からの命令だよ!! そこを動くな! 動いたら、いつでも撃つからね? ジャスミーナも……動くな!! ミルフィーヌを撃つよ?」 「くっ! あなたって人は……。マリエーヌは殺す気がないって言っていたでしょ!」  ジャスミーナ先生が足を止めて、その場に停止する。 「頭と心臓にさえ当たらなきゃ、回復可能でしょ? ジャスミーナ……まずは一番邪魔なキミを始末しなきゃね!! 弱者を人質にすればキミを仕留められそうだ。爆破すればマリエーヌを吹っ飛ばせるけど、そのまま逃げられちゃうかもしれないから、今一度……毒魔法かな!!」  メディアン隊長が両手を前に出した。 占い師が水晶玉を持つようなポーズを取っているぞ!? ど、毒魔法……だって!? 初めて聞く魔法だぞ!? 毒はヤバそうだ……。 あ……!! メディアン隊長の周辺がどんどん緑色になっていく! 緑色の何かがこちらに迫って来るぞ……!? これは……緑色の粉末!? これが毒なんだよね!? でも、マリエーヌだけは絶対に効かないやつでしょ! マリエーヌは大丈夫!! 「……ウィンドウォール! ウィンドストーム!!」  魔法を放ったのは……ジャスミーナ先生だ! 風属性の魔法だな!? 俺とマリエーヌ、ミルフィーヌ、ジャスミーナ先生自身、そしてディストーマの前に風の壁が発生した。 ウィンドウォールか! これが毒魔法から身を守ってくれるんだな。 こ、こんなにたくさん……いろんな場所に……!! そして、同時にウィンドストームも唱えたようだ! その影響で毒と思われる緑色の粉末が遠くに散っていく。 「おっと……? もう毒魔法に対応してきたの?」  メディアン隊長が驚いている! ジャスミーナ先生は、魔法を放っただけではない。 同時に走り出し、メディアン隊長との距離を詰めていた。 「例え教科書に載っていなくても、すぐに対応策なんて思いつくわよ! あと言いたかったんだけど……『教科書通り』って言葉はね、けっこうカチンとくるものよ?」  ジャスミーナ先生が殴り掛かっている! なんでこんなときに教科書の話をしてんの!? 「ははっ! 思わぬところで精神的なダメージを与えていたようだね!!」  なんか2人で言い合いながら体術で戦っているぞ。 あそこまで距離を詰めれば、メディアン隊長は毒魔法を使う暇がないだろう。 さっきのレーザー光線みたいな魔法も撃てないよね? よし…… 「マリエーヌ様……」 「ええ、チャンスよ! ミルフィーヌのところに行きましょう。……と言いたいところなんだけど」  マリエーヌが横を向いてニラむ。 って、ボロボロの建物の中から人影が……!? 誰か来たぞ……!! 黒い着物姿の男と、黒マントの女性だ。 「おいおい、すごい魔法戦だな! 俺のいないところで盛り上がってるじゃねぇか……!!」 「無事にマリエーヌを発見できて良かったですねー」  げっ!? 通りに姿を現したのは……オルダンテとナイリッシュだ! う、うわああぁっ!! み、見つかってしまった……! ちょうど俺達とジャスミーナ先生達の間の半分ぐらいの位置から出てきたぞ。 すぐにマリエーヌが構える。 2人を凝視する目が血走っている! だ、大丈夫かな……!? 「このっ! ブリザード……ストーム!!」  ……うおっ!? マリエーヌ!? マリエーヌが魔法を唱えた!! これは氷属性と風属性の混合魔法だったよな……。 猛吹雪がオルダンテとナイリッシュに向かっていく!! 重症だったマリエーヌの体は大丈夫だろうか? 俺は傷を塞いだだけなんだよね……。 「マリエーヌ!! ……まだそんな力が残っていやがったのか! 厄介だな!」  刀を抜くオルダンテ。 その刀身に炎を纏わせている。 マリエーヌから放たれる吹雪を、その剣速で消滅させていくオルダンテ。 「環境効果はなくなった! この程度の魔法はチョロいぜ!」  確かに……雨が止んだから環境効果はなくなってしまったんだな。 学校の階段で戦ったときより、さらにマリエーヌが不利な状況になってしまっている。 「くっ! サイクロンボール!!」  今度はマリエーヌのオリジナル魔法、サイクロンボールだ! かつてない数の球体が彼女の両の手の平から発射されている……!! このままでは俺の視界が魔法で埋まってしまうぞ! マリエーヌ……無茶し過ぎでは……!? 「すげぇ量だな!! 量だけはすごい! 足止めをする気かよ!?」  あまりの量に、オルダンテが動けなくなった。 今度は刀に炎を纏わせるのをやめたようだ。 向かって来るサイクロンボールを、ただ刀を振り回すだけで次々と消滅させていく……! 「くっ! 何か手はないかしら……?」  マリエーヌが焦っているのが分かる。 そんな中、後ろから誰かの声がした。 「あ……僕がサポートするよ。新技を使うね。すごい集中力を要するんだけど……」  あれ!? 誰かと思ったら、休憩していたディストーマだ! いつの間にか近くに来ていた! サポート……って、何をするんだ? んんっ? ディストーマが前方のどこか1点を見つめて念じているぞ。 前方には、本当に視界が埋まるぐらい、たくさんのサイクロンボールがある。 あ、ああ!? ディストーマの視線の先にあるサイクロンボールが数個分、消え去った! え、ええぇっ!? 「よし……消えた消えた」  そして再び念じるディストーマ。 な、何が起きるんだ……!? ディストーマが念じ終えた後、オルダンテが叫び出したぞ!? 「おいおい! いきなり目の前にサイクロンボールがぁっ!!」 「え、魔法が……空間を飛び越えたー? これって……魔法……操作?」  オルダンテとナイリッシュの2人が驚いている! え、ディストーマ……そんなことができるの!? しかも他人の魔法を使って……! ディストーマ……いや、めちゃくちゃすごいじゃん!! あ、けど膝をついてゼェゼェ言っている。 魔力をたくさん消費したのかな? 「ぐぎゃあああっ!?」  お! 現れた数個のサイクロンボールのうち、オルダンテに1発だけヒットしたぞ! ナイリッシュは通りの横側に移動し、建物の陰に隠れて標的にされにくいようにしている!! なんか慎重派だな……。 結局、彼女が戦っているところをまだ見ていないぞ? 「……これはディストーマの仕業ですか? 意外な才能ですねー。時空魔法で他人の攻撃魔法を瞬間移動させているのかもしれません」  ナイリッシュが推測している。 時空魔法! そういうことか! テレポスで魔法を瞬間移動させたのかも……! 「ま、また時空魔法に邪魔されんのかよ!? ディストーマッ!! 魔女隊の隊員になったのに裏切るのかぁっ!?」 「……まったくです。私の隊の隊員だったはずなんですけどねー」  隊長達の発言を受けて、ディストーマは気まずそうな表情になった。 ……が、再び立ち上がって魔法の連携を再開する。 「あんた……」  まさかのコラボにマリエーヌが驚いている。 そんな2人の協力プレイに、ちょっとディストーマに対して羨ましいというか嫉妬の気持ちが芽生えたが、この気持ちは心の中にしまっておこう。 「はっ! タネが分かれば怖くないぜ! 結局は時間稼ぎにしかならない!! 魔力が尽きたら、こっちの反撃開始だ!!」  必要以上に大声を出して威嚇するオルダンテ。 さらに向こう側にいるジャスミーナ先生とメディアン隊長はチラチラとこっちのほうを見ながら体術で戦っている。 これは……どうやってミルフィーヌのところに行こうか!? 「マリエーヌ! ちょっと……待っていてくれ! ジャスミーナ先生! こちらへ!」  おおっ!? ミルフィーヌが早歩きぐらいのペースで、こちらに向かって移動している! 回復魔法を唱えられないほどボロボロだったみたいだけど……。 あ、そうか! 自動回復の特性か……! 殴り合いを続けるジャスミーナ先生とメディアン隊長の横を通り過ぎるミルフィーヌ。 そのまま魔法に対応しているオルダンテとナイリッシュを横目に、マリエーヌとディストーマ、そして俺のところへと近づいて来る。 マリエーヌとディストーマは必死で魔法を放ってオルダンテ達を妨害し、ミルフィーヌに危害が加えられないようにしている。 ん? ミルフィーヌが後ろを振り返ったぞ!? 「ジャスミーナ先生! こちらに来て下さいっ!!」  ジャスミーナ先生のことを呼んでいるようだ。 あ……先生も含めて、テンイスルーを使って皆で逃げる作戦だな? ミルフィーヌの呼び掛けに気づいたメディアン隊長が声を上げる。 「また時空魔法で逃げる気だよね!? そうはさせない! マリエーヌは渡してもらうよ!!」  そう言いつも、ジャスミーナ先生の猛攻が続き、メディアン隊長は思うように動けない。 そうこうしている間に、ミルフィーヌが俺たちと合流した。 彼女は再び先生に向かって叫ぶ。 「ジャスミーナ先生! 早く……早くこちらへ……!!」 「ミルフィーヌ……そんなになってまで、あくまでも魔女隊に立てつくのね。どうしてもマリエーヌを助けたいってことね。本当に……変わってしまったわ。もう仕方がないから協力するけど。……ブリザードストーム!!」  今度はジャスミーナ先生がブリザードストームを唱えた! す、すげぇ……!! 俺たちが巻き込まれないように、限られた範囲で吹雪が巻き起こっている!! まずは近くにいる戦闘中のメディアン隊長のエリア、つぎに少し離れたところにいるオルダンテ、そして建物の陰に隠れているナイリッシュのエリアにだけ猛吹雪が集中する。 叫び声を上げたのはメディアン隊長とオルダンテだ。 2人とも全身を切り刻まれているぞ……!! ダメージもしっかりと与えているようだ。 メディアン隊長は俺から見て奥側に吹っ飛び、オルダンテ隊長は横側の建物に突っ込んだ。 ナイリッシュの姿は見えなくなったな。 建物か瓦礫の陰に完全に隠れたのだろう。 ブリザードストームはマリエーヌが使っていた混合魔法だが、威力とコントロールがすごいな……。  ジャスミーナ先生のおかげで、マリエーヌとディストーマが魔法を放つ必要がなくなったぞ。 「はぁっ……はぁっ……。ジャスミーナ先生の混合魔法……すごい威力ね」 「もう……僕は動けないよ……魔力も使い切ってしまった……」  マリエーヌが膝をつき、ディストーマはうつ伏せに倒れた。 両者ともに疲労困憊だ!! ディストーマは魔力切れか! 俺は、こちらに向かって来るミルフィーヌと視線を合わす。 今が……テンイスルーを使うチャンスだ。  そんな俺達のもとに、ジャスミーナ先生が合流する。 攻撃魔法で隊長達を足止めし続けながらも、ミルフィーヌと会話を始めた。 「ミルフィーヌ……今回、私はあなたを守れたから良かったわ。メディアンとオルダンテのバカげた行動も止めたいから、魔女隊の隊長には魔女王になって欲しくはない。……けど、マリエーヌ達と一緒に行動までするつもりはないの」  ジャスミーナ先生が自分の考えを告げる。 彼女は一緒に逃げずに、ここに残るつもりか……! 「おらあああっ!! ジャスミーナの魔法なんて、俺の魔法刀で掻き消してやる!」  吹っ飛ばされたはずのオルダンテが体勢を整えていた! 彼の刀が再び炎を纏う!! さっきより火力が高い気がするぞ!? 猛吹雪を対処し、叫びながらこちらに向かって来る……! 「……これから学校側と魔女隊側がどうなるかは分からないわ。私は魔女学校の教員の一人。これ以上、単独で魔女隊と対立する意志を示すわけにはいかないのよ。他の教員達に迷惑が掛かってしまうからね。学校側は学校側で今後どうするのか決めないといけないの」  ……なるほど。 組織だもんね。 ということは、学校側は新魔女王マリエーヌの味方になるかもしれないし、逆に敵になる可能性もあるわけだな。  ジャスミーナ先生が会話を続ける。 「ミルフィーヌ……マリエーヌを助けたいという、あなたの意志は分かったけど無茶しないで。自分の命を最優先して」 「……わかりました。……でも、ジャスミーナ先生……この場に1人残るのは危険です!」  ミルフィーヌが本気で心配している。 「ちょっと……誰の心配をしているのよ? むしろあなた達がいると、巻き込んでしまって力を発揮できないわ」  ジャスミーナ先生はミルフィーヌと会話を続けながら、今も魔法を放ち続けている。 オルダンテが向かって来ているというのに、その表情や言葉からは余裕が見てとれる。 この強さ……決して強がりではなさそうだな。 隊長だけではなく、教員も段違いの強さかよ……。 「ジャスミーナッ!! おらあああっ!!」  斬り掛かってくるオルダンテ。 真剣な表情に変わった先生が迎え撃つ。 「オルダンテ……単純な攻撃ね。……ウォーターストリーム!!」  ジャスミーナ先生の足元から、龍が出現した……だと!? いや、よく見ると水でできている攻撃魔法だ! 龍をモチーフにしたであろう水系の魔法が空に向かって上昇していく! 胴体が長いタイプの龍で、体を回転させながら上昇していく! か、格好良いな!! 龍からはすごい風圧を感じるから、風属性との混合魔法なのかもしれない。 オルダンテは魔法刀を繰り出す前に、龍の中に飲み込まれてしまったぞ!? 「うおおおおおおぉっ!? ジャスミーナッ!! てめぇっ……!!」  オルダンテが空高く昇って行く。 彼はマリエーヌをズタズタにしたからね、ざまあ見ろって少し思ってしまう。 「ミルフィーヌ! 今よ……!」  ジャスミーナ先生が後ろを振り向き、ミルフィーヌに視線を向けて告げた。 「助けてくれてありがとうございました! テンイスルー……」  ミルフィーヌが静かな口調で魔法を唱えた。 徐々に俺の視界からサンビュルーリカの街並みが消えていく……!! テンイスルーが発動したんだ。 や、やったぞ……! 隊長達から逃げ切った!!


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