NokiMo
mariene-novel
mariene-novel

fanbox


130.マリエーヌの出世

 マリエーヌが……新しい魔女王!? えええぇっ!? な、なんで……!!? ん? ちょっと待てよ……俺とミルフィーヌが企てていたプランが意図せぬ形で達成されたのか!? マリエーヌが魔女王ならば魔女法を変えてくれるだろう! 俺はマリエーヌと生涯を誓うパートナーとして人生を歩めるのか……!? あ、ミルフィーヌはトップになれないから納得しないか……? いや、そもそも……隊長達や先生達が納得するのか!? そして肝心のマリエーヌも引き受けるのかどうか……!? さすがに急に魔女王になるのは……どうだろうか? 「え、本当に何よこれ……どうなってんの? い……意味が分からないわ!」  何がなんだか分からない……といったリアクションだ! そうこうしているうちにオルダンテ隊長が怒気を含んだ様子で喋り始める。 「おいおい! ちょっと待てよ!! 魔女王様は深夜にこんな大事な手紙をミランダ様に預けて、そのまま死んで……はぁっ!? これ……完全に偽装だろ!? マリエーヌが次の魔女王だなんて唐突過ぎるぞ……!」 「これは流石に驚かされましたねー。ミランダ様、これ以前に遺言状は渡されていたんですか?」  ナイリッシュ隊長がミランダさんに尋ねた。 「ハイ。こちらになりますネ」  ミランダさんは、1つ前のバージョンの遺言状も持って来ていた。 メイド服のポケットから別の封筒を取り出したぞ。 ナイリッシュ隊長が手に取って読み上げる。 「1つ前の遺言状の内容は……『私の死後は、サンビュルーリカにて戦いの場を設け、最後に勝ち残った者を次期魔女王とする。アインベルト』ですねー」 「戦いの場!? 試合をして1番強い奴が……ってことか!? こっちの方が妥当だろ!!」 「昨夜、気が変わったってことかい!? やっぱり不自然だよねぇ……」  メディアン隊長も疑っているぞ。 ん? ジャスミーナ先生が喋り始めるみたいだ。 魔女学校側はどう思っているんだ? 「昨日の会議でマリエーヌを褒める場面はありましたよね? 魔女隊への入隊も推薦で決めた……。その直後のタイミングで新しい遺言状を残す……。あながち不自然とは言い切れないかも」 「思い返してみれば確かにそうだ。マリエーヌの将来性を見込んで本当に書き換えたのかもしれない。自分が死ぬとは知らずに」  ウォルグリア学長が同意した。 ……確かに。 2人の意見を聞くと、自然な流れにも思えてきたな。 納得はできる。 でも、隊長達は納得していない表情だ。 いくらマリエーヌを評価していると言っても、遺言状に次期魔女王として書くのは決断が早過ぎる……ってことかな。 変更後にすぐ死亡するなんて、そんなことあるか!? ……って感じだろうし。  あ……今度はレブリナート隊長に動きがあるぞ! 遺体に向かって行った!? うわ! 鬼の形相だ! なんか叫んでいる……! 「このクソババアがぁッーー!!」  レブリナート隊長が、またしても泣き叫ぶ! 「なんで、なんで私じゃないんだあ!! やっと死んだと思ったら、このクソババァがあ!! マリエーヌを選ぶのは血迷い過ぎだし、それ以前の遺言状も私じゃないのかよー!! 私がどれだけババアに献身的だったか、分からないのかあああーー!!!」  うそお!? ひょ、豹変してるじゃん!! お母様って呼んでいたのに……。 そ、そうか……彼女は魔女王になりたかったのか。 遺体を見て笑っているように見えたのは、自分が魔女王になれると思ったから……ってことか? 泣くタイミングが遅かったのは、本当は悲しくなかったけど、泣き叫んだほうがリアルな反応っぽいと思ったからそうしたのだろうか!? い、意外と計算高いのかも……。 「どちらの遺言状も、私じゃないのかよおおおっ!! 私に期待しろよおおおおっ!!」  うお!? さらに声が大きくなった。 期待しろ……か。 魔女王はこの人にキツかったし、親子の確執があったように見えたけど、やはり親には期待されたかったってことか? う〜ん、どうなんだろう……。 「レブリナート隊長! 落ち着いて下さいよ!」 「だから! 現場を荒らさないでください……!!」  叫びながら勢い良く遺体に近づくレブリナート隊長。 遺体を調査している隊員が注意した。 そんなドタバタした中、続いて声を荒げたのはメディアン隊長だ。 「なぁ、ちょっと待って! 深夜にミランダ様が会ったのは偽物じゃないの!? 外見はアインベルト様でも、中身は違うんじゃないの!?」  それは俺も思った! 変身魔法とかね……! 「筆跡は似ていますねー。まぁ、魔女王の直筆は世に出回っていますし、練習すれば真似は可能ですね」  遺言状の書き方が違うんだよな。 いま見た遺言状は最後に自分のサインをしていて、はじめに見た遺言状は最初のほうで自分の名前を名乗っていた。 あ、メディアン隊長がまた何かに気づいたようだ。 「ミランダ様! 実際にアインベルト様と最後に会った際の魔力はどうだったんだい!? 感知しましたかね……!? それで本物かどうか分かりませんかね!?」 「深夜3時に私の部屋に来たときの話ですネ。それが……そのときは魔力を感知できませんでしタ」 「え!? 感知できなかった? なにそれ!? じゃ、じゃあさ……最後にアインベルト様の魔力を感知したのはいつだって言うの?」 「深夜0時ごろで、場所はこの部屋……拷問室でス。夜11時ごろに食事を届け、食器を回収したのが0時ごろです。それが最後ですネ。どちらもアインベルト様の魔力でしタ」 「じゃあ、新しい遺言状を持ってきた深夜3時のときは偽物かもしれない。あ、そうだ……魔力を感知できないのは、まさか魔封じの腕輪をしていたからなのかな……? 魔封じの腕輪をしたストマイドが変身魔法で……?」  新たな予想を立てるメディアン隊長。 しかし、それは…… 「あの……魔封じの腕輪をしていたら、変身魔法は姿が戻ってしまいます! この前の戦いでストマイドがそうでした」  がんばって自分で主張したぞ。 魔封じの腕輪をしたまま変身魔法で変装する……というのは矛盾している。 「ああ、それもそうだね! ……まぁ、いいや。アインベルト様が偽物だと証明できなければ、このまま魔女法に則るしかないし。我々にとっては、そっちのほうが都合が良いし!」  え……都合が良い? メディアン隊長はマリエーヌ賛成派か? マリエーヌの卒業研究を担当した人みたいだし。 「うーん、この状況はなんとも難儀ですねー。ミランダ様の『魔力を感じなかった』という発言で何か分かりそうでしたが、難儀ですねー。もういい加減、推理は終わりにしましょう。……皆さん、後のことはよろしく。私は一時退散しますのでー」 「はあっ? おい、ナイリッシュ! おい! どこに行くんだ!?」  えっ!? ナイリッシュ隊長が部屋から出て行った……!! 文句を言っているオルダンテ隊長には会釈だけして出て行ったぞ。 なんで!? 次々に唐突な展開が起こってるよ!! 「なんだよアイツ。なに考えてんのか、ぜんぜん分かんねえよ……これからサンビュルーリカはどうすりゃいいんだ? ミランダ様?」  オルダンテ隊長が口を尖らせている。 そんな混乱の最中、ミランダさんがマリエーヌに近づく。 「新魔女王であるマリエーヌ様が、30日以内に新魔女法を発表することになりマス。法の内容は独断で決定できマス」 「え? あの、ミランダ様……。私が新しい魔女王になるなんて、信じられないんですけど……。気持ちの整理ができないですよ」  マリエーヌが混乱している。 「……とは言え、現魔女法に則って動いていただかないト。アインベルト様の遺言状は絶対デス。魔女法は宣言するだけでも構いまセン。後々は文書にしていただきますケド。ただし、宣言は少なくとも魔女隊の隊長達が全員そろっている場所でなくてはなりまセン」  ……な、なにぃっ!? ということは……マリエーヌが今なにを言おうとも、新魔女法にはならない! ナイリッシュ隊長がいないから……!! 「え……ナイリッシュ隊長がいないじゃない……」  マリエーヌが困っている。 くっ! このルールがあるからナイリッシュ隊長は出て行ったのか……! 「ナイリッシュのやつ……! マリエーヌの魔女法の宣言を阻止した……ってことか?」   オルダンテ隊長も気づいた。 ナイリッシュ隊長は現魔女法をすべて暗記しているのか!? まぁ、法務隊の隊長だもんな……。 マリエーヌが魔女王になることに反対しているという意思表示だな。  ミルフィーヌがマリエーヌの肩に手を置く。 「マリエーヌ……落ち着くんだ」  ミルフィーヌの表情がかなり険しいのが気になるぞ。 「え、ええ……。でも、私は30日以内に新しい魔女法を決めなきゃいけないのよね。どうしよう……1つぐらいしか浮かばないわ。ナイリッシュ隊長もあんな感じだし……。ミルフィーヌがトップだったら良かったのに……」  マリエーヌが考えているぞ。 おそらく、その1つはパートナー問題を解決するものだろう。 マリエーヌ……細かい法を決めるなんて難しいよな。 「ミルフィーヌとケンジも……協力してよ?」 「もちろんです! 精一杯やります!」 「うむ……」  あれ? やっぱりミルフィーヌが浮かない顔をしている。 どうした、ミルフィーヌ!? やっぱり自分が魔女王のほうが良かったのか? 10代のころからサンビュルーリカでの成り上がりを目指していたんだもんな。  マリエーヌ達とそんな話をしていると、オルダンテ隊長が何かに気づいたように語り出す。 「まぁ、そうか……ナイリッシュが示したとおり、もうここまできたら本当の遺言状とか魔女王様を殺した犯人とか、どうでもいいのか……」  お? なんだ? マリエーヌを支持してくれる発言なのか? そうじゃないのか? マリエーヌを見る表情は穏やかではないので違うかも……。 「……お母様。あなたが誰を選んだかなんて関係ないですよね。私は……解放されました。決して逆らえなかった巨大な力から……」  レ、レブリナート隊長……? なんだ? な、何を言っているんだ? なんか隊長達の様子がおかしいぞ……!? レブリナート隊長は、さっきよりは冷静になったように見えるが、どこか発言がおかしい。  そうこうしているうちに、今度はメディアン隊長が眼鏡の縁をつかみながらミランダさんに詰め寄る。 「ねぇ、ミランダ様! もしもマリエーヌが新魔女法を発表できなかった場合は……どうなるんだろう!?」  この人は……どうだ? なにを考えている? 発表できなかった場合……だと!? 「魔女法には、そのような事態に備えた法はありまセン」 「やっぱり! そうなんだね……!! それは良いことを聞いたよ!!」  いや、これ……もしかして隊長達は、マリエーヌに敵意を向けていないか? ナイリッシュ以外の隊長達も、マリエーヌが新魔女王であることを認めておらず、新魔女法の発表を阻止しようとしているんじゃないか……!? な、なんかヤバい雰囲気だぞ!! 「……」 「……」 「……」  え……これ、本当に大丈夫か? 隊長達は沈黙してマリエーヌを見たり、お互いに視線を合わせて何かを確認したりしているぞ。 ……何を考えている? 隊長達はマリエーヌに何をするつもりだ!? まさか……まさかだよ? 誰かがマリエーヌを攻撃するのを待っているのか?  ウォルグリア学長とジャスミーナ先生は……どんな感じだ? 少し離れた位置で……なんかヒソヒソと会話しているぞ! 先生達の行動は隊長達がどう動くか次第……とか? それとも……まさか隊長達と同じ? マリエーヌ、どうなってしまうんだ……? 「……」  マリエーヌも沈黙している。 ……状況を徐々に理解したためか、弱気な感じのマリエーヌになりつつある。 マリエーヌ、どうなってしまうんだ……? じゃないだろう、俺! 俺が彼女を守らなければ……!! 「やはり敵対したか。マリエーヌ……逃げるぞ」  ミルフィーヌが小声で囁いた……! ずっとこの状況を想定していたのか!? さてはマリエーヌが選ばれた時点で、隊長達がこういう行動に出ると分かっていたんだな!?  少し離れたところにいるディストーマは挙動不審だ。 でも、状況は把握している感じだぞ! 彼は協力してくれるだろうか? マリエーヌを守るのは、彼のモチベーション的に難しいだろうけど……。  あっ!? 隊長たちがジリジリとこちらに近づいて来たぞ!?  どうする!? 俺は……喋って考える時間を稼ごう! 今回、推理の始めで俺が疑われた。 その反論のために発言していたから、この場での喋り易さはある。 会議でマリエーヌの味方ができなかったから、俺はここで勇気を出すぜ!! ここは屋内だ……イドウスルーは使えない。 俺の攻撃魔法が通用するはずがないし、喋るという選択肢しかないんだ! 「……あの! ちょっと待って下さい! 誰が犯人か分からなくないですか? マリエーヌ様かもしれませんよ? マリエーヌ様の秘めた大技が炸裂しちゃう可能性もありますよ!?」  俺の発言を受けて、隊長達が次々に口を開く。 「たしかにマリエーヌは新しい混合魔法を開発した実績がある! さらに魔法を開発している可能性もあるよねぇ!! 師匠としては嬉しい限りだけど」 「そういや魔力を体内でパワーやスピードに変換する新しい技も開発したんだよなぁ、マリエーヌ……!!」 「体内で変換ですか……。体内というのは怪しいですね。もちろん氷系の魔法も得意でしたよね、マリエーヌ……」  そうそう、そうなんだけどさ……。 俺の話には付き合ってくれているけど、3人ともこっちに近づいてきているよね? その目は……マリエーヌに向けられていて殺意に満ちていないかい!? オルダンテ隊長は、すでに腰の刀の鞘を左手で掴んでいる。 いつでも攻撃できるよ……ってこと!? 「ほ、ほら……! 変なことを考えないほうがいいですよ? あ! もしかしたら魔女王様もマリエーヌ様の秘めた力を考慮して次の魔女王に選んだのでは……?」  喋る内容はどうでもいい。 時間を稼げ、俺。 マリエーヌとミルフィーヌ、そして俺とディストーマが考える時間をつくる! たぶん……ミルフィーヌがテンイスルーを使って逃げるんだよな? さっき手紙を渡しに来てくれたから彼女は近くにはいるけど……ミルフィーヌからマリエーヌまで2、3歩ってとこか。 俺はマリエーヌを挟んでミルフィーヌとは反対側にいる。 俺に触れている余裕はないだろうし、狙われているのはマリエーヌだし……。 ディストーマは少し離れた位置にいるから、もっと助ける余裕がない。 とにかくミルフィーヌがマリエーヌに触れて、テンイスルーで逃げる……で、いいのかな?  って、隊長達から俺への返答がなくなった!! 「あの……ちょっと待って下さい! 分かりました分かりました! 聞いて下さい! 魔女王様の遺体の件です! 体内で魔法が発生したということは時空魔法の応用で攻撃されたのでは?」  俺の突飛な推理にイライラしたオルダンテ隊長が食いついた。 「あん? なんだ、ザコ野郎? 時空魔法の応用……!? ストマイドか!? そうだったらよ、そんな反則級の技はマリエーヌとの戦いで使われているだろ!」 「ま、まぁ……そうですね。共犯者と2人掛かりで魔法を放った……とか? あ……ぼ、僕の時空魔法が関係しているかもしれませんよ?」  とにかくマリエーヌから注意をそらせ。 隙を見せてくれ! そうすればミルフィーヌが動けるから! 隊長達が近づいてきているし、どんどん目付きが鋭くなってきて怖いけども!! 「おいおい人間!! その推理は、キミが魔封じの腕輪を外して協力したって自白しているのかなぁ!? 適当なことを言っているのであれば、少し黙っていてくれないかなぁ!?」 「うるせーんだよ、ザコ野郎……!!」 「あなたの力では何もできない。お母様に危害を加えることをもちろん、我々に対しても……」  うわ! みんな理性がすっ飛んでる! もう隊長達の目付きから察するに危険信号だろう……! 欲に塗れて自分を失っている感じもする。 いや、これが魔女王が死んで明らかになった隊長達の本性なのかもしれない。 マリエーヌに新魔女法を発表させなきゃ、自分が魔女王になれるかもしれない……ってことだよね!? 怖いけど、まだまだ俺は時間を稼ごう……口で! 俺は……あのエリィと対峙しているし、今では普通に会話するまでに至ったんだぞ……勇気を出せ! 他に何か話すことはないか? 何か……何か…… 「あ、あの……」 「うるせぇっ! いつまで推理に積極的になっている!? もう関係ないんだ! あの強大な魔女王様が死んだ! マリエーヌを殺れば新しい魔女王になれるチャンスが俺らにある! 犯人なんて、正直どうでもいい! ナイリッシュだってそう考えたから、部屋から出て行ったんだ! この世界は……強い者が上に立つんだぜぇ!!」  オ、オルダンテ隊長!! つ……ついに直接的に言いやがった!! 「ケンジ……もういいわ……」  え? と、隣のマリエーヌが……恐怖を感じている! いつだか過去で見たアバンギャルド戦でのピンチ、春先の谷のブルー戦でのピンチのときのような表情だ! こんな顔……もう見たくなかったのに! ここまで隊長側の意見がハッキリ出たのに、魔女学校の先生達は……動かないのか!? 「私はお母様に……選ばれなかった。だからマリエーヌには死んでもらいましょう。それで私に素質があることがお母様に証明できますから。それで魔女王になれば、お母様にとって私が1番になります」  レブリナート隊長……!? なんなんだ!? 親に対する承認欲求が歪み過ぎたパターンか!? 死んでもらいましょう……って、歪み過ぎて発言がイカれているけども! 「何も殺すことはないよねぇ……オルダンテ、レブリナート! 私の可愛い教え子なんだしぃ!!」  メディアン隊長……!! その発言は、こちら側に回ってくれるってことか!? そんな雰囲気ではないけど! 「……とりあえずマリエーヌの手足を全部折って閉じ込めておけば、骨も心も折れて私達に都合の良い魔女法にしてくれるんじゃないかなぁ? そのあとは私の研究費と、魔力石の発掘と魔法石の開発も……ぜんぶ新魔女法でよろしく!!」  げっ! メディアン隊長!? イカれた殺人犯みたいな目をしてやがる! 「待て、ミルフィーヌ……何をしている? やたらと高い魔力を込めているじゃねえか……」  オルダンテ隊長が腰を落として構える。 鞘に納めている刀の柄を握っているぞ! え……ついに攻撃を仕掛けてくるのか!? 「ちょっと、オルダンテ……! ミルフィーヌに手出しするなら、私も黙っていないわよ」  離れたところからジャスミーナ先生が言葉で牽制する。 この先生はミルフィーヌがお気に入りだったもんな! 助けてくれそうだぞ……! 「あん!? なんだと……」 「……まあまあ、オルダンテ隊長。あなたの攻撃ではミルフィーヌを殺してしまいますよ。……バリアント!」  レブリナート隊長が右の手の平をこちらにかざした!! バリアント!?  ミルフィーヌに向けて放たれた……! 薄緑色で三角錐型のバリアが彼女を包む。 「これでミルフィーヌは何もできない。殺すのはマリエーヌだけで充分でしょう」  ミルフィーヌの動きが……封じられてしまった! テンイスルーでマリエーヌを逃がすことができなくなったぞ! ど、どうする!? 最善手がまったく分からん! 「……」  ミルフィーヌ……! バリアの中でなにか言っているけど、よく聞こえない。 学校側はどうなんだ? ジャスミーナ先生は!? 「……」  ジャスミーナ先生!? 沈黙!? ちょっとぉ!? ミルフィーヌが安全なら別にいいやって感じ!? マリエーヌを助ける気はないの!? ……ウォルグリア学長は? 「サンビュルーリカ……いや、魔女の里全体にとって誰がトップだと最善なのか……。マリエーヌが魔女王になるのであれば赤ネクタイ差別が完全になくなるだろう。教育者としてはマリエーヌにがんばって欲しい。……しかし、魔女王に必要なのは絶対的な戦闘力。ここで私が助けるわけにはいかない」  学長!? なんだそのスタンス! 教育魂を貫くよりもマリエーヌの命を大事にしてくれ! 魔女王に戦闘力が必要なのは正しいんだろうけども! 目の前で卒業生がリンチ状態でも何もしないのかよ! 「……ただ、私も彼女の元担任。過度な暴力が始まるのであれば……魔女隊の隊長達は私の体罰対象かな?」  おお!? やっぱり元担任だったか! ヤバくなったら手を貸してくれるって感じ? マリエーヌのお手並み拝見……じゃないんだよ! そんなことをしている間に殺されてしまうよ!? 体罰とかよく分かんないことを言ってないで、とりあえず殺害を止めてくれよ! なんなんだよ、魔女の教育感はよおっ……!! 「おい、ミルフィーヌ! ……また何かしているな?」  今にも抜刀しそうなオルダンテ隊長がミルフィーヌにニラみを利かせる。 「……」  やはりミルフィーヌは、バリアの中でブツブツと呟いているようだ。 ……まさか召喚魔法? バリアを突破できるのか? 「何かしそうですね、ミルフィーヌ……。ジャマをするなら容赦しませんよ? バリアで圧死させてあげましょうか?」 「ミルフィーヌ、ジッとしていて! 変なことを考えないで!」  レブリナート隊長の言葉に、ジャスミーナ先生が慌てる。 ジャスミーナ先生! 離れたところにいないで、早く加担してくれ! それにしても、レブリナート隊長! さっきはミルフィーヌは殺さないという方針だったのに! 「マリエーヌ……覚悟しろよ!! ほら、どけよ……人間。そんなに近くにいると、お前まで一緒に切っちまうぞ!!」  オルダンテ隊長がさらに腰を沈める。 こ、こえええっ!! ……マリエーヌは? 何か狙っているのか? え、マリエーヌは……恐怖しているぞ!? ……けど、オルダンテ隊長に向かって構えた!! 怖いけど、抵抗しようとしているんだ! さすがに隊長3人に殺意を向けられると、マリエーヌでもつらいんだな!! ぜんぜん敵わないってことだよな!? ど、どうする、俺……? 俺は……助けるよ! 隊長は怖くない! 怖くないよ!! エリィのほうが、よっぽど怖いからね!? なんと言っても、俺は一度キンタマを潰されているから!! 早くマリエーヌを守らなきゃ!! もはや隊長達は俺の言葉には耳を傾けてくれないから…… 「ちょっと待ってくださああああい……!!」  俺は斜め前に移動し、マリエーヌの前に立った。 「ケンジ!? な、何を……」  マリエーヌが驚く。 俺が仕掛けるのは…… 「……アイスウォール! アイスウォール! アイスウォール! アイスウォール! アイスウォール! アイスウォール!」  氷系の魔法だ!! 俺たちと隊長達の間に氷の壁を6重にして発生させたぞ! 1枚あたりの厚さは20センチほどだけど、横の長さは部屋の端から端までで、高さは天井いっぱいまでだ! 思い通りにできた! 俺の魔力……けっこう上がっていたか!? マリエーヌに危害は加えさせない……!! 「魔法を唱えやがった! コイツ……!! ザコのくせに規模調節と形態変化まで!」 「おお、人間! 意外と派手な魔法だねぇ!! 連射もなかなか速いし!! けど薄いし強度もなさそうだねぇ。……これじゃあ失格だよ。その程度の魔力じゃ時間稼ぎにすらならないっ!!」  あ……俺、死ぬ。 氷の壁が何重にもできたはずなのに、なぜかオルダンテ隊長の刀の刃の部分が俺の首元に見える。 いつ抜刀したのさ? なんで刀に炎を纏っているの? その炎がすぐ目の前というか首の前から横の範囲に見える……。 速過ぎるためか、まだ熱さは感じない。 俺の氷の一部はこの炎で一瞬にして溶かされたみたいだな。 前方には彼が融かして通ったと思われる氷のトンネルが見える。 あれ……なぜか周りがよく見えるぞ。 やはり死の瞬間はスローモーションなのか。 あ、そういえば俺……エリィが召喚されれば最強じゃんとか思っていたな。 けど、俺が瀕死にならないとダメだったよな。 首を切断されるコースだから……即死じゃん。 これじゃエリィが召喚されないのでは? ああ、もうダメだ。 俺はマリエーヌを……守れなかった……


Related Creators