NokiMo
mariene-novel
mariene-novel

fanbox


128.疑いの矛先

 ミランダさんからブッ飛んだ発言が放たれ、会議室に静寂が訪れる。 ……な、なんだって? 魔女王が……亡くなった!? あの、昨日そこに座って会議を進行していた魔女王が? あまりの唐突な訃報に、みんなポカンとしているぞ。 この静寂を破ったのはオルダンテ隊長だ。 「……は、はあっ!? な、何を言ってやがる! マジかよ!? マジで言ってんのかよ!!?」  椅子から立ち上がり、大声を張り上げた。 明らかに冷静ではない様子だ。 他の隊長達も次々と喋り出す。 「お母様が……!? ま、まさか……あのお母様に限って、そんなことが起こるはずがない!!」 「ははッ! 魔法生命体のミランダ様はウソをつけないよ。本当にアインベルト様が死んだってことなんだよ! それは興味深いねぇ!! どうしてあの人がいきなり死ぬことになったんだい!? 持病はなかったよね!? 殺されたってことかい!? だとしたら、あの莫大な魔力を持つアインベルト様がどんな方法で殺されたって言うんだ!?」 「……まあまあ、皆さん。落ち着いてください。ミランダ様、とりあえず魔女王様のところに案内してくれますかー?」  会議室は騒然となった。 とくにメディアン隊長のテンションがヤバい。 勝手に殺人事件にしようとしているぞ。 銀縁眼鏡の向こう側にある両眼がバッキバキになっている。 その一方で、ナイリッシュ隊長は冷静のようだ。 ミランダさんに案内をお願いしている。 「承知しましタ。ご遺体はこちらになりマス。皆さん、ワタシに着いて来てくだサイ」  俺達は彼女の案内に従い、みんなで王宮内を移動する。 「何が起こったのかしら? 死んだなんて、信じられないわね……」 「これでは魔女王祭どころではなくなってしまったな」  前を歩くジャスミーナ先生とウォルグリア学長も動揺しているようだ。 マリエーヌとミルフィーヌは何も言わずに歩いているぞ。 2人は何を考えているんだ? ちょっと話しかけてみよう。 「マリエーヌ様……」 「なんだって言うのよ……? 何が起きたのか、実際に見てみないと分からないわね」  マリエーヌが眉間にシワを寄せている。 「とんでもないことになったな。魔法生命体のミランダ様は嘘をつかない……魔女王様は本当に亡くなってしまったんだ」  ミルフィーヌも考えている。 ミランダさんは嘘をつく能力がないらしい。 さっきメディアン隊長もそう言っていたな。 これは覚えておこう。 って、俺はこれから死体を見ることになるのか……。 昨日は魔女王による殺戮シーンを見たけど、潰された死体は見ないようにしていた。 し、死体は……見たくはないよな。 この世界の人たち、とくに魔女たちは慣れているんだろうけど……。  そんなことを考えながら、王宮内をしばらく歩いた。 まったく予期していなかった事態が起こったので、この豪華な王宮が恐ろしい場所に見えてきた。 やがてミランダさんが、とある部屋の前で立ち止まる。 「こちらの拷問室になりマス。魔女王様は昨夜、この部屋でストマイド氏と戯れていましタ」  ご、拷問室……!? 魔女王は拷問されたのか!? 扉の前で魔女隊の隊員が2人で見張っている。 ミランダさんは隊員と少し話した後で扉を開けた。 そして、みんなで部屋に入る。 拷問室は、壁がレンガで床は木製の広い部屋だ。 って、拷問器具はないな……。 拷問器具どころか、家具も置物もない。 魔女王はどこだ……? 「げぇっ!? お、おい……マジかよぉ!?」  オルダンテ隊長が動揺する。 部屋の中央にあるのは仰向けに倒れた魔女王の体であった。 服は昨日のロングドレスを着たままだ。 その胴体からは…… 「こ、氷……!? つららか!? つららが突き刺さっているのかよ!?」  オルダンテ隊長の言うとおり、いくつもの『つらら』が突き刺さっている。 雨傘ぐらいの太さと長さで、胴体に……6本。 魔女王が剣山のようになっている。 彼女の目は見開いており、銀色の瞳が天井を凝視しているように見えるが、眼球は全く動いていない。 もちろん体も動いていない。 完全に死体だ。 いや……このつらら、何かおかしいな。 突き刺さっていると言うよりも…… 「違う違う!! この6本のつらら、よく見ると体内から発生しているんじゃないかなぁ!? そしてアインベルト様は……確実に死んでるね! うん!」  メディアン隊長が遺体に駆け寄って観察し、大声で説明する。 続いてナイリッシュ隊長がゆっくりと遺体に近づく。 「あ、本当ですねー。外側の先端に向かって細くなっている。つららの中心部は……どうなってるんですか? 体内にあるんですかね?」  ミランダさんも魔女王のところに移動する。 「ハイ。発見時はご覧いただいているように仰向けでしたが、このように背中が無傷であることも確認していマス。貫通はしていまセン」  ミランダさんが仰向けになっている遺体を横向きにして皆に見せ、再び元の状態に戻す。 それを見たナイリッシユ隊長がうなずく。 「本当だ、これは驚きました。体内の氷のほうが魔力が強く残っていますしねー」 「魔法で殺害したのか。確かに、深夜に城内で魔力を感じたが……」  ウォルグリア学長が遺体に近づき、目を閉じて手を合わせる。 「この拷問室では、毎日のように魔女王様が犯罪者の男で遊んでますからねー。それかと思いましたけど……」 「そうだね! またいつものことかと思ったよ。まさか殺されるなんて……一体なにが起こったんだろう!? 氷系の魔法であることは間違いないけどさぁ!!」  ナイリッシュ隊長とメディアン隊長が徐々に真剣な表情に変わっていく。 魔女王死亡への驚きが薄れ、犯人を突き止める方向に向かっているのだろう。 これ……殺人ってことだよね? 「本日の朝8時半ごろ。この部屋を私が確認し、お亡くなりになっているのが判明いたしましタ。その後、すぐに調査を開始するように魔女隊の隊員に伝えましタ。その足で会議室に向かい、報告したという流れデス」  ミランダさんが説明してくれた。 今は9時を回ったところだから、遺体が見つかったのは30分前か。 すでに調査は始まっている。 警察も初動捜査が大事って聞くし、ミランダさんは隊長への報告よりも調査開始を優先したんだな? 深夜に魔力を感じた……って言ってるし、殺されたのは深夜か? 「失礼します! 法務隊です!」 「ご遺体の詳細を調査いたします!」  魔女隊の隊員達が数人、部屋に入って来た。 入り口にいた見張りの隊員とは違う人達だ。 遺体の調査……鑑識的な感じか? ミランダさんに報告をしている隊員もいる。 ん? ミルフィーヌが俺のとなりに来たぞ? 「……魔力で現場を解析するんだ。そっちの世界の警察と比べたら、分かることは限られているがな」  ミルフィーヌが説明してくれた。 なるほど……。 俺たちの最終目標である魔女王が死んだわけだが、彼女は冷静に見えるぞ。 腕を組んで真剣に考えているようだ。 その視線は遺体を見つめている。 俺もちゃんと見ておくか。 ……けっこう遺体から血が流れたんだな。 すでに床の上で固まっているけど。 この遺体から、どんな情報が得られるのだろうか? 「殺された……。魔法で殺されたんだ」  オルダンテ隊長が呟いている。 そして何かに気づいたようだ。 「ちょっと待て! 昨日、魔女王様は『ストマイドで遊ぶ』って言っていたよな? ストマイドが怪しいぞ! あいつが犯人じゃないか!? ……って、ストマイドはどこだ!? 牢屋にいるのか?」  そうだ……ストマイド! 単純に考えれば、昨夜一緒にいたストマイドが犯人に1番近いか! 「ストマイドですが、牢屋にいまセン。魔女隊の隊員達が総出で探し始めていマス。しかし、今のところ見つかっていまセン」  ミランダさんがそう告げると、部屋にいる皆が騒然となった。 「ストマイド……まさかこんなことまで。姿を消すとは、やはり犯人なのか……」  ウォルグリア学長が落胆している。 「奴は時空魔法を使えるね! テレポスで壁を通り抜けられるだろうし、タイムストップも使えるから見張りは容易に突破できる! 深夜なら人が少ないから目撃すらされないでしょ! あとは殺害方法か……」  そんなメディアン隊長の憶測が飛ぶ中、ナイリッシュ隊長が手を軽く上げて皆の注目を集める。   「ちょっと待ってくださいー。ストマイドは魔封じの腕輪をしていたでしょ?」  皆がストマイドの状態を思い出す。 「そうか! 魔封じの腕輪か……!」 「そういえば昨日の会議中も装備していたぜ……」 「魔法は使えなかったということかな!?」  ナイリッシュ隊長がうなずく。 「そうですよー。で、あの腕輪は取り付けた人物しか外せない仕組みだよねー。彼の魔封じの腕輪を取り付けたのは……そこの人間の奴隷くんでしたよねー?」  ナイリッシュ……!! 鋭い視線を俺に向けてきやがる! 他の人たちも俺を見てくるぞ。 わざわざ皆の意識を向けて……俺を疑ってきやがったな! こういうの嫌だな。 小学校で給食費がなくなって、『あれれー? ケンジくんは体育の時間、保健室に行ってたよねー?』って、わざわざ教室で言い始める奴! そんな感じで仕掛けてくるなら、俺もバンバン喋るよ? 「いやいや! 僕は知りませんよ! ナイリッシュ隊長は、いつどこで僕がストマイドの腕輪を外したと考えているんですか?」  ちゃんと相手の目を見て、少しだけ嫌な感じを出して反論した。 「うーん、チャンスがあるのは深夜かな。キミは個室から抜け出し、拷問室を訪れた……とか?」 「この部屋のドアには鍵が掛かっていないんですか?」 「鍵はありまセン。この部屋はアインベルト様しか使いませんのデ、ご自身の重力魔法でドアを開かないようにしていましタ」  俺の質問に返答したのはミランダさんだ。 それを聞いて、ナイリッシュが口を開く。 「そうか……じゃあ、魔力が低いキミは拷問室に入るのはムリだね」  そういうことだよ! 「……そうですね。魔女王様の気まぐれで僕が部屋に入れたとしても、僕がストマイドの腕輪を外す様子を黙って見ているのは考えにくいですよね?」 「ふーん……そうだね」  ナイリッシュ隊長がジロジロと俺のことを見ている。 『ふーん』じゃないよ! 疑っておいて! 「それにしてもコイツ、本当にほとんど魔力を感じないな。ずっと気になっていたが、本当にストマイドとの戦いで貢献したのかよ? こんなカスに何かできるとは思えん……」  オルダンテ隊長……ボロクソ言うじゃん。 この人、けっこう正直に思ったことを言うよね。 ん? メディアン隊長がこっちに近づいて来たぞ!? 「いや、待って待って! キミか……! この前の事件でストマイドに魔封じの腕輪を取り付けて貢献したのは!! 本当にカスなのか? カスの振りをしているだけじゃないのかなぁ!?」  メディアン隊長……詰めてくるなぁ……。 俺は昨日も会議にいたし、腕輪の話題も出たでしょ!? カスなんてヒドいことを言いながらも、俺に興味を持っているようだ。 急に興味を持たれて、なんか怖いぞ。 その眼からは、俺がこの殺人に何か関わっていると決めつけている感じがするぞ。 ちょっと……いや、けっこう狂気を感じるんだよな。 ナイリッシュ隊長のほうがまだ話せそうだぞ。 まぁ、魔封じの腕輪を外せるのは俺しかいないから、疑われるのは仕方がないけど……。 「僕の魔力は皆さんが感知しているとおりですよ! 基本的に何もできません! この前の戦いは、身隠しの腕輪があってこそですよ! 今回、身隠しの腕輪は王宮に持って来ていませんし……!」  身隠しの腕輪という言葉を聞いて、メディアン隊長が俺との距離をさらに詰める。 「んんん? 身隠しの腕輪!? それがあればアインベルト様への接近も可能かな!? ディストーマも身隠しの腕輪……それに魔封じの腕輪も持っていたよねぇ? 法務隊が押収したはずだ! 隊長のナイリッシュなら、持ち出せたんじゃないのか?」  お……ディストーマが持っていた腕輪のほうに話が移ったか。 ディストーマは魔女隊に押収されたって言っていたぞ。 メディアン隊長の質問に応えたのはナイリッシュ隊長だ。 「ディストーマの身隠しの腕輪と魔封じの腕輪は一緒に魔女王様の倉庫に保管しています。彼女は、あの手のアイテムを好んでいませんからね。ストマイドに取り付けられた魔封じの腕輪は捕まえておくのに便利なのでそのまま取り付けてましたけど。まぁ、とにかくあの倉庫は魔女王様の魔力がないとロックを解除できませんよー。亡くなられたので、もう取り出せないかも……」 「そうなんだね! 取り出せたのは魔女王様だけってことだね……!?」 「魔女隊員の報告によると、開けた形跡はなかったそうデス」  メディアン隊長がディストーマの腕輪に目を付けたが、どうやら関係なさそうだ。 ミランダさんは、先ほど部屋の前にいる隊員と話していた。 報告を受けていたんだな。 彼女は先回りして調査の指示を出しているのだろう。 「皆さん、ちょっと待ってください!」  お! 発言したのはジャスミーナ先生だ。 「……仮に腕輪を持っていたとしても、そもそもアインベルト様を殺すことなんて消息不明のストマイド先生も含めて不可能です。そうでしょう?」  この人が1番、話を分かってくれそうな気がする。   「ああ、確かにそうだな! 魔女王様の絶大な魔力の前ではどんな攻撃も跳ね返されちまう! 攻撃魔法はもちろん、例のタイムストップみたいな魔法だって効かねぇ! そもそも根本的な体の強さ、体術、気配の察知……全てが桁違いだ。わずかな気配も、わずかな物音も聞き逃さないだろ! もちろん魔力感知も桁違い! この人間がストマイド戦でやったみたいに姿を隠して魔封じの腕輪を取り付けるなんて不可能だ!」  オルダンテ隊長が大声で主張する。 う……その話を聞くと、やはりエリィに匹敵する実力者……もしくはそれ以上であることが分かる。   「だが、現に亡くなっている。いや、待て……外からでは魔力で守られていて効かないから、内部から攻撃魔法を発生させたのか? さすがに体内までは守れないだろう……」  ウォルグリア先生が考察している。 「なるほどねぇ! 体内に攻撃魔法を発生させるなんて、そんな魔法は全く聞いたことないですけどねぇ!! ストマイドが……そんな魔法を隠し持っていた……!?」 「そうだとしても、腕輪が外れてないでしょ? 魔法は使えない」  メディアンの予想をジャスミーナ先生が否定する。 会議での印象もあって、この先生はストマイドの味方をしているように見えてしまうな。 「う、うぅっ……」  なんだ? 誰かが泣き始めたぞ!? 「お、お母様……! お母さまぁっーー!!」  お、お母様!? 「レブリネート隊長!?」 「な、なんだ!? 急にどうした!?」  レブリナート隊長が泣いている。 魔女王の娘だからな……。 あ、遺体のところに駆け寄って魔女王の体を揺さぶっているぞ。 ずいぶんと時間差で泣き出したな……。 この状況を受け入れるまでに時間がかかったのだろうか……? 「お気持ちはわかりますが……」 「現場を荒らさないようにしてください……!」  法務隊の隊員達が注意を促している。 あ、オルダンテ隊長が近づき、レブリナート隊長の肩に手を乗せる。 「お、お前の母親でもあるもんな……」  オルダンテ隊長……共感的な態度をとる一面もあるのか。 もしかしたら、隊長の中でこの2人は魔女王に冷たく扱われていたからかも……。 あ、あれ……!? 俺の角度から見ると、レブリナート隊長は笑っているようにも見えるぞ? こ、これは様子がおかしいぞ……。 あと、やっぱりさ……遺体発見から泣き叫ぶまでにそんなにタイムラグがあるものなのかな? 遺体発見の場面はドラマでしか知らないから、リアルな反応は分からないけどさ……。 「私とお母様の血……」  虚ろな目をしながら床に流れて固まった血を触っている。 あの血に何かをして証拠を消したいとか? こんなことを考えてしまう俺は刑事ドラマの見過ぎだろうか? 血液か……警察はルミノール反応で確認するんだよな。 誰の血なのかは、DNAで分かるんだっけ……? 髪の毛からでも分かるんだよな。 ミルフィーヌが、魔力で解析できることは限られるって言っていたけど……この世界の鑑識はどのぐらいのことができるのだろうか? 「あの……この床に付着している血が誰のものか解析はできるんですか?」  床に血が広がっているけど、本当に魔女王様だけのもの? 犯人と揉み合ってケガをして、犯人の血も一緒に……みたいなことはないかな? 「え、魔女王様の血でしょー? あ、犯人の血が混じってるかもってこと? 法務隊のみんな、調べといてー?」  ナイリッシュ隊長が指示を出す。 「はい!」 「その作業は進めております!」  お……できるんだな! それは解決に繋がりそうだぞ。 「とにかく、1番怪しいのはストマイドだろ!? 逃げてんだからよ! このよく分からない氷魔法で魔女王様を殺したんだ!! おい! このザコ抜きで腕輪を外す方法はあるか?」  オルダンテ隊長が俺をニラみながら大声で意見を求めた。 みんなカスとかザコとか、口が悪いなぁ。 「少々強引な方法だが、腕を切断すればいいねぇ!!」  サイコパスな方法を思いついたな、メディアン隊長。 ぜんぜん少々じゃないよ! 狂気に満ちたアイデアは、この人らしいぜ。 みんな『確かにそうだ』という表情になっている。 そういえば、ストマイド自身も、この前の戦いでそういう発想をしていた気がする。 魔女の世界は狂気に満ちているぜ。 「腕輪が外れてしまえば、セルフトランスタイムとやらで直せるだろうしねー。その時に血液が流れた……と考えたからさっき血の解析について聞いたのかい? 奴隷の人間くん」 「……そんなところです」  そ、そこまでは考えていなかったけどね! こういう人にはハッタリも大事。 「いや、待って! 腕を切るのはムリでしょ? ストマイド先生は魔力を封じられて、手錠もかけられていたはず! 会議中に見たでしょ?」  やはりストマイドのこととなると積極的に意見するジャスミーナ先生。 なんか恋仲だったんじゃないかと疑ってきたぜ。 もちろん恋愛は自由だけどさ……。 「確かに。そもそも、魔女王様が腕を切断するのを見逃がすわけないかー。あ、魔女王様が彼の腕を切断して外した可能性もゼロではないね。なんせここは拷問室……」 「いやいや! いくら魔女王様とは言え、わざわざそんなことをするかよ!? ストマイドはテレポスを使って脱走できるかもしれないだろ?」  ナイリッシュ隊長は可能性の一つとして挙げただけなんだろうけど、オルダンテ隊長は熱のこもった口調で反論している。 魔女王は、好んでいない魔封じの腕輪をストマイドに装備させたままにして利用していたんだよね? そこまでしてストマイドの魔力を封じているんだから、リスクを犯してまで外したりしないだろう。 まぁ、彼の腕が切断されたのかどうかは、法務隊による血液の調査で明らかになることだけど。 「うーん……共犯者じゃないですかー? 人間の奴隷くんじゃなくって、我々のような戦力をもっている人物」 「なるほど……それは可能性があるね!!」  俺以外の共犯者か……。 ナイリッシュ隊長の意見にメディアン隊長が同意している。 そして再びナイリッシユ隊長が発言するぞ。 「ここにいる全員に可能性がありますねー。昨日の会議からずっと、王宮内にいるんですから」 「そうですネ。ちなみに夜間から今まで、外部から入った人物はいないという報告を受けていマス」  ミランダさんが補足した。 ナイリッシュ隊長はうなずいた後で、共犯者の説を展開する。 「もちろん城内にいた魔女隊の隊員が共犯者である可能性もありますね。まぁ、魔女王様に立ち向かうだけの気概と実力をもつ者は、まずいないだろうけど……」 「待て待て、ナイリッシュ!! 共犯者がいるとしてもだ、大前提として、魔女王様には束になったってここにいるメンバーじゃ勝てねぇよ! 隊長クラスでもさぁ!」  オルダンテ隊長の大きな声が拷問室に響いた。 「しかし、事実として魔女王様は不可解な氷魔法によって殺されてしまったんですよー。メディアン隊長さん、研究隊の隊長としてどうですかー? この魔法の見解をお願いします」 「……なんだろうね? やはり内部から魔法で攻撃されているように見えるけど。他人の体内で攻撃魔法を発動させるなんて有り得ないね!! ……ってのが常識だよ。魔力が体の表面を透過したってことかな? こんな攻撃魔法、開発されていないよ。サンビュルーリカでできていないんだから、他でもムリでしょ。魔女学校側の見解は?」  横目でウォルグリア学長とジャスミーナ先生のことを見るメディアン隊長。 「見解はあなたと同じよ。うちは基礎研究だし。こんな殺害が可能な攻撃魔法なんて開発していないわ」  ジャスミーナ先生が見解を述べた。 「……そりゃそうか。魔女学校は理論を追っかけているだけだよねぇ? 理屈を付けるだけで、新しい攻撃魔法の開発には消極的だ。マリエーヌくんの混合魔法だって、うちに外研生として来て開発したしね! 魔女学校ではなく……」  お? な、なんだ……? なんかメディアン隊長が攻撃的な発言をしたように聞こえるぞ。 外研生……マリエーヌは自分の学校じゃなくて、外部の組織で研究して卒業したってことね。 日本の大学でもそういうパターンはあるぞ。 「理屈を付けるだけ……とは聞き捨てならないな。新しい理論を生み出せば新しい魔法が生まれる。立場は違えど、協力し合うべきだろう」  大人の対応をしたのはウォルグリア学長だ。 「まぁ、魔女学校はそれでいいと思いますけど……それならば、新たな理論とやらは全て論文にして公開して欲しいですねぇ! ちょっと前の話になるけど、サキュバスを生け捕りにしたんだよね、ジャスミーナ先生? その情報は私のほうまで流れてきてるよ。その研究結果を早く公表して欲しいんだけど?」  もしかしてブルーのコピーのことかな? 昨日、ミルフィーヌは小さな学校でサキュバスの研究をしているって言っていたけど、ジャスミーナ先生と共同研究でもしていたのか? 「おい、話がそれているぞ!」  オルダンテが釘をさす。 「それているぅ!? ……この死因を特定できるかもしれないだろう、オルダンテ!!」 「……それは私が殺ったって言いたげね?」  メディアン隊長がオルダンテ隊長に反論したセリフは、ジャスミーナ先生を疑うものだ。 ジャスミーナ先生は疑われてフザけんなって思っているようだ。 確かにメディアン隊長の表情は『お前が殺したんだろう?』って、煽ってる感じなんだよね。 彼女は魔女学校側を攻撃したいだけのように見えるけど、サキュバスの研究が殺害に関係している可能性もゼロじゃないしな……。 ブルーのコピーから得られた知識……か。 ブルーの大技はアンチマジックだ。 それを習得できたところで、重力魔法を防ぐことぐらいしかできないよな。  ちょっと待って……その線で考えていくと、ストマイドの共犯者がミルフィーヌの可能性も出てくる。 ミルフィーヌはブルーを連れて来て、間違いなく研究に意欲的だった。 まさかね……。 ストマイドはマリエーヌの家族の仇だぜ? いや、ミルフィーヌ……結構真剣な顔をしているな……。 すごい深刻というか……。 うん? ミルフィーヌ、どうした? 熱心に死体を見ている。 ま、まさかね……俺に黙って計画を? 平行して師匠のジャスミーナ先生と考えていた? 最近、ミルフィーヌの表情が読めなくて分からなかったけど……そういうこと? いや、魔女王殺害について真剣に推理しているだけだよね!? 信じているよ!  あ、そう言えば……マリエーヌは何をしているんだろう? ぜんぜん喋っていない気がする。 あ……あれ? マリエーヌ!? まさか、まさか……ぼ、ボーッとしてないか? さすがに話が長過ぎて聞いていられない!? そうだよね……ずっと、ああでもない、こうでもないって皆で話し過ぎだよね!? 長旅の上、俺とエッチもしてお疲れマリエーヌだよね……。 あとで俺が話せば問題ないだろうから、ちょっと休ませておこう。  ん……? そんなことを考えていると、誰かが部屋に入って来たぞ? --- 次の話はコチラです↓ https://mariene-novel.fanbox.cc/posts/5593316 <ご支援してくださっている皆様へ>  日頃より、ご支援ありがとうございます!  7月と8月のマリエーヌの話は、エロ描写が少なくなると思われます(全くないかもしれません……)。  というわけで、エッチな短編小説を投稿します。  とりあえずJKが主人公の短編(2話完結)を投稿します(マリエーヌ関係のエッチな話は9月以降になります)。  この後、17:30に前編を全体公開で投稿し、後編は支援者様限定公開で完成次第投稿しますので、よろしくお願いします!!  Subtle


Related Creators