NokiMo
mariene-novel
mariene-novel

fanbox


126.お疲れ会

 会議が終わり解散になった。 すっかり夜になっていたぞ。 そして、食堂のようなところでビュッフェ式の夜ご飯を頂くことになった。 会議が衝撃的過ぎて、食欲がなかったけどさ……。 会議前と会議後で俺の中の何かが変わってしまった……ってぐらい衝撃的だった。 内容が内容だけにマリエーヌのことは心配だけど、メインディッシュと思われる肉料理をめちゃめちゃ食べていたので大丈夫そうだ。 後から来たオルダンテ隊長が『お、俺の分の肉はどこだ……!?』みたいに言っていたけど、マリエーヌは知らないフリをしていた。 マリエーヌがビュッフェ形式で食事をするとなると、必ず誰かが損をすることになるのかもしれない。  食後、俺たちは各自個室を割り当てられた。 みんなで話すため、ミルフィーヌの部屋に集合することになった。 部屋にいるのはマリエーヌとミルフィーヌ、あとは俺……そしてディストーマだ。 「さて、ひとまず会議が終わったな。明日も出席することになるとは……」  ミルフィーヌがベッドの上に座りコーヒーを飲みながら会話を切り出した。 食事中は魔女隊の面々が周りのテーブルいたので、本音で話せなかったのだ。 ようやく会議の振り返りができる。 あと、今後の方針も。 「そうですね。あ、ディストーマさん……無事で何よりです」  俺は隣に座っているディストーマに話しかけた。 ちなみに2人でソファーに座っているぞ。 ディストーマが俺の隣に座ってきたのだ。 このメンバーだと俺の隣が安心なのかもしれない。 マリエーヌは椅子に座っているぞ。 彼女は彼女でディストーマに近づきたくないのかも。 4人は座れる大きなソファーなんだけどな……。 「釈放になって、しかも……まさか魔女隊に入隊することになるなんて……」  ディストーマが動揺しているぞ。 なお現在、彼はちゃんと服を着ている。 なんかやつれているような……? もともと細いけど、さらに細くなって疲れが見える。 ヒドい扱いをされていたのかもしれない。 ちなみにディストーマは身長170センチ弱の黒髪短髪で、顔は……いわゆるフツメンだ。 あ、もちろん俺もフツメンだけどね。 「……ケンジとマリエーヌ、キミ達には感謝するよ。僕が釈放されるように意見してくれて」  ディストーマ……! なんか素直になっている。 よほどヒドい扱いをされたに違いない。 全裸の状態で手錠だったしな……。 魔女王……ヒド過ぎるんだよな。 あ、マリエーヌがディストーマをニラんでいるぞ。 「せっかく釈放になって仕事にも就いたんだから、ちゃんと働きなさいよ?」  マリエーヌ!? ちょっとイライラしながら言い放ったぞ。 怒ってる……? 「……」  ディストーマも……ニラみ返している? あ、けど……徐々に表情がデフォルトに……。 「あ、ありがとう、マリエーヌ……」  お礼を言った! いや、けどマリエーヌにイラっとはしてたよね? よほど魔女王に酷いことをされていたので解放されて嬉しさが勝ったのだろうか……? 「えっ!? 何よ……調子狂うわね。アンタなんか、眼中にないんだから」 「なっ! くっ……この……キミって奴は、言わせておけば……くそぅ……」  徐々にディストーマの声が小さくなっていく。 マリエーヌは……ツンデレなんだよな。 おそらく彼女は『ディストーマのことは嫌いだし許していないけど、捕まってからおそらく魔女王にヒドい目に遭わされて、それでもまだ嫌いだけど……まぁ、サンビュルーリカに革命を起こす作戦に参加することになるし、会話ぐらいしてあげてもいいけどね! ちゃんと貢献するなら許してやらないこともないわ』……って感じだと思うよ? そのツンデレを俺以外に発揮しないで欲しい……という嫉妬は胸にしまっておこう。 ディストーマはセンシティブな人だから、あんなふうにマリエーヌに言われたら、『せっかくお礼を言ったのに眼中にないなんて! 僕を見下すなよ!』って思っちゃうよね? ああ、相性が悪い……!! これは時間が掛かりそうだ。 「と、とにかく……魔女隊に入ったディストーマさんは中の動向を知れますよね? これはチャンスかもしれませんね! 僕たちが望む形になりました!」  俺は場を明るくするよう努める。 ミルフィーヌも少し口元を緩ませながら喋る。 「うむ、そうだな。ディストーマ……よろしく頼む」  俺たちの話を聞いて、ディストーマが少し考えている。 その後で口を開く。 「……わかってるよ。アダマーリカで話していたことを本気でやるつもりなんだね? 魔女王様を目の前にしていたから改めて思うんだけど、本当にミルフィーヌさんがこの里のトップに立てると思っているのかい?」  すぐにミルフィーヌがうなずく。 「もちろんだ。魔女王の立場まで上り詰めるつもりだ。5年、10年……いや、それ以上かかってもな」  ミルフィーヌ……俺的には1年で目処をつけたいんだよな。 でも、あの怪物達を目の当たりにして、そんなことは言えなくなってしまった……! 具体的なプランも俺は思いつけていないし……。 「そうか……もちろん協力するよ。この前の一件で僕は決意したからね」  ディストーマが俺のほうを見た。 そう、俺が彼に魔女法を変えることをアピールしたんだよね。 ディストーマが復讐にとらわれてストマイドにならないように……。 「釈放に導いてくれたのも嬉しかったよ……」  まだ俺を見ている。 なんかディストーマからの好感度が上がっている気がする。 「……何か僕にできることはあるのかな?」  その問い掛けに答えたのはミルフィーヌだ。 「そうだな、トランスタイムを使って過去に戻って欲しい。サンビュルーリカを転覆させるような秘密を握りたい」 「わかった。でも、僕は魔封じの腕輪も身隠しの腕輪も魔女隊に取られてしまったんだ。この状態じゃ過去に戻っても誰かに見つかってしまう」 「そうか。……ケンジはどうだ? 腕輪を持っているのか?」 「魔封じの腕輪はストマイドに付けっ放しで、身隠しの腕輪だけはありますよ!」  ミルフィーヌの家に、荷物と一緒に保管してある。 「分かった。たしかマリエーヌも持っていなかったか?」 「そうね、私は魔封じの腕輪を1つ持っているわ。1つだけね。貴重品だし荷物になるから、そう言えば金庫の中にずっと入れたままにしていたわ。ミルフィーヌの家で使わせてもらっている部屋にある金庫よ」  あ……以前、ブルーに取り付けていた腕輪のことだな。 その後は魔法使いの村でマリエーヌがミルフィーヌにも装備させていたっけ。 なんか懐かしい……。 あの頃、俺は地球に戻ってしまったんだよな。 あ、荷物持ちの俺がいなくなったから『荷物になるから』……ってことか。 今となっては荷物持ちでもいいから、一緒に旅をしたいぞ。 「そうか、腕輪は1つずつしかないのか……。ディストーマ単独でしか過去に行けないとなると、ハイリスクだな」 「え、僕は1人でも行くつもりだけど?」  ディストーマが積極的である。 マリエーヌとミルフィーヌが少し驚いているぞ。 もちろん俺も。 彼のアダマーリカでの決意は本物だったということだ。 「その気持ちは嬉しいが、ペアで動いたほうが安心だ。何か突発的なトラブルが起こったときに、1人だと冷静な判断ができない可能性がある」  そんなディストーマにミルフィーヌが注意を促した。 確かに2人いれば、冷静に対処できる確率が上がる。 その時代に干渉したら戻れなくなるからな。 ディストーマと一緒に過去に行ったときも、2人で目線を合わせながら慎重に行動したぞ。 俺が音を立ててしまったときも、彼の迅速な対応で事なきを得た。 今後は、土地勘とか知識とかを考慮すると、ディストーマとミルフィーヌが一緒に行ったほうがいいのかな……? そうなると、やはり腕輪がもう1組必要である。 ……って、もともとマリエーヌは、魔封じの腕輪をコロシアムで買ったんじゃなかったっけ? 「あの……魔封じの腕輪は、コロシアムに買いに行けばいいんじゃないですか? 身隠しの腕輪は売っていなかったですけど。ディストーマさんは身隠しの腕輪をどこで手に入れたんですか?」 「僕は顔馴染みのルートで手に入れていたんだけど、今はもう……」 「え?」  手に入らないのか……。 「最近、魔法石が手に入らなくなってしまったのよ。だから、その手の道具が売られなくなっているの。もともと取り扱っているところは少ないのに……」  俺が不思議そうなリアクションをしていると、マリエーヌが答えてくれた。 ま、魔法石……!! 「そういうことだ」  ミルフィーヌも同じ意見だ。 そうなんだな……。 いや、マリエーヌの情報を信じていないってわけじゃないけどね? よく新聞みたいなものを読んでいたし! で、魔法石ね! 会議で耳にしたワードだ! それが原材料になるのかな? 「魔法石の話を聞きたかったんですよ! 魔力石も! 会議でも話題になっていましたよね?」  ミルフィーヌの目つきが鋭くなる。 「ああ、説明しよう。まず、魔力石は自然界から採取するものだ。特殊な効果が付与された武器や道具を作る際の魔力の源になる。周囲の生物から微量の魔力を吸収し続ける。植物や微生物も含むから、自然界から吸収すると言い換えてもいいな。魔力石がないと、魔封じの腕輪のような特殊なアイテムは機能しないんだ。ケンジの世界で例えるなら、そうだな……太陽電池が近いかもしれん」   すごい詳しく説明してくれた! 「なるほど! ぜんぜん知りませんでした……」 「そして魔法石は、魔力石から人工的に作り出される物だ。魔法石に魔力石から魔力が流れると、魔法石にインプットされている魔法が発動する仕組みだ」  今度は魔法石の説明をしてくれた。 ということは…… 「わかりました! 魔力石と魔法石がそろって初めて機能するんですね?」 「ああ。魔封じの腕輪だったら、魔力石による魔力によって魔法石にインプットされた【フウジール】が発動している。身隠しの腕輪だったら【カクレール】だな」  おお! いろいろと新しい魔法が! あ! じゃあ…… 「マドロミーナの剣だったら【スリープ】ですか?」  いつだかミルフィーヌが眠りの魔法を使っていた。 「そういうことだ。魔法石は、その道の職人が合成してきた。ただ、近年では研究者による量産研究も行なわれている。長いこと研究段階にとどまっていたが、そろそろ生産効率も上がっているものもあるかもしれん。ライトアップされたコロシアムの試合会場を覚えているか?」 「はい! え、電気じゃなかったんですか?」 「あれは魔力石と、【ライトニング】という光を放つ魔法がインプットされた魔法石が使われている。この魔法石に関しては、生産効率が上がっているのだろう」  そうなのか……電気だと思っていた。 「その魔法石は、蛍光灯とかLEDって感じですね」 「そういうことだな。【ライトニング】はともかく、【フウジール】や【カクレール】を始めとして幾つかの魔法石は入手困難になって話題になった。ちょうどケンジが地球に戻っていた期間……こちらの世界だと半年間ぐらいになるが、その期間に起こり始めた」  マリエーヌがチラリとこちらを見た。 「そう言えば話したことなかったわね」 「はい……そんな状況だったんですね」 「職人の界隈で何かがあったと噂されているが、真相は分からん。……まずは既に世に出回っている魔封じの腕輪と身隠しの腕輪を探すか」  ミルフィーヌが指針を示した。 「そうですね! コロシアムに残っているかもしれませんし……」 「うむ。だといいがな……」  ん……? ディストーマが何か言いたそうだ。 「え……本当に僕1人でも過去に行けるけど? 無理しないようにして、少しずつでも情報をつかんでくるよ」  ディストーマ!? ミルフィーヌの話を聞いてた!? その発言に対して、すぐにマリエーヌが反応する。 「ちょっと! ムリするんじゃないわよ! 魔女王様の秘密を探ろうとしているんでしょ? 魔女王様は魔女の中でも常識が通じない化け物よ? わずかでも違和感を感じたら……例えば音を立てたら、あの重力魔法で即座に圧死させられるわよ? 見たでしょう!?」  ディストーマの顔が青ざめていく。 魔女王の残虐性を思い出してしまったか……!? 「う……! わかったよ……」  マ、マリエーヌ……ハッキリ言うなぁ。 ミルフィーヌが軽く咳払いをした後で話し始める。 「よし、ケンジのイドウスルーを駆使して腕輪探しだ。私のテンイスルー2連発があればケンジが奴隷になっても里は出入り自由だからな。そして、私は魔女隊の選抜試験を受ける。ディストーマもイドウスルーが使えるんだ。魔女隊の仕事が始まるまでは腕輪探しを手伝って欲しい」 「わ、わかったよ……」  ディストーマが返事をしたが、ちょっと納得していないという表情だ。 いや、マリエーヌがキツいなぁ……って感じの表情か? マリエーヌなりの厳しめの優しさなんだ……たぶん。 1人で過去に行き、魔女王の秘密を探るのは危険だよね……。  とにかく大まかな方針が立ったぞ。 それにしても、マリエーヌのセリフで会議が始まる際の圧死シーンを思い出してしまったぞ。 「あの、魔女王様の重力魔法……対抗策はありますかね? もちろん直接戦う作戦は避けますけど」  俺の質問にミルフィーヌが返答する。 「……ないな。あの莫大な魔力で放たれる重力魔法……不可避だ」 「そ、そうですか……。ヤバかったですね。あの殺人シーンを見て、喋る気がなくなってしまいましたよ……」 「ああ。それは私も同じだ。まぁ、下手に喋らなくて良かったと思うぞ。……とにかく明日の会議を無事に終わらせたいな。そう言えば、ケンジ。敵へのシラベールとやらは……」 「い、いや……さすがに無理でしたよ!」 「そうだよな。いや、すまん。知的好奇心が勝ってしまって、期待してしまった……」 「あ、それは分かります」  知りたいよね……!! 魔女王と魔女隊長達のレベル!! でも、強い魔女達はとくに魔力に敏感だからな……。 「ちょっと疲れちゃったみたい。先に部屋に戻るわ」  マリエーヌが椅子から立ち上がり、部屋の出入り口に向かう。 「マリエーヌ……大丈夫か?」 「大丈夫よ」  ミルフィーヌが心配している。 マリエーヌ……疲れているよね。 お疲れなのに加えて夜ご飯をたくさん食べたので眠気が襲っている可能性もある。 「そうか。また明日」 「ええ」  マリエーヌが部屋から出て行った。 「マリエーヌ……疲れているな。無理もない。自分の家族の仇が死刑になるかどうか、明日で決まるんだからな」 「あの……この作戦にマリエーヌは参加しないのかな? アダマーリカのときは否定的だったよね?」  ディストーマが質問を投げかけた。 そうだ、説明していなかった。 「あ、マリエーヌ様は……そうですね、配偶者探しを優先しているんですよ。まぁ、なんとか早めにこっちに引き込みたいと思ってますけどね!」 「そうなんだね……」  ディストーマ……マリエーヌを警戒しているな。 できれば仲良くなって欲しいけど……。 「よし……また明日の会議に備えて休むか」  コーヒーを飲み干し、ミルフィーヌが立ち上がる。 彼女も疲れてるのかな……。 やっぱり、あの会議室にいるだけでストレスが半端じゃなかったよね? 俺も自分の部屋に戻ろう。 「あのさ……」  ……ん? 一緒に部屋を出たディストーマが話し掛けてきたぞ。 「もう一人の自分であるストマイドが死刑になる可能性があるのは悲しいけど……それだけの罪を犯してしまったってことだよね……? 会議では、死刑賛成の声のほうが大きかった……」  うっ!? かなり込み入ったことを聞いてきたな……! う、う〜ん……。 「まぁ……罪のない里の人たちを皆殺しにしましたからね……。死刑になってしまっても仕方がないかと……」 「そう……だよね……マリエーヌが会議で死刑を求めたのも、当然だよね……」  ディストーマ……!! 過去に魔女学校で起こったことによる恨みだけではなく、そこについてもマリエーヌへの釈然としない気持ちがあったのか……! いや、正直……死刑は仕方がないと思う。 日本の基準でも死刑だと思うし。 俺が思っているよりも、マリエーヌとディストーマの溝は深そうだ。 「……でも、さっき言ったとおり、彼女が僕の釈放を主張してくれたのも事実だから。あのまま釈放されなかったらと思うと……」  ディストーマの表情が恐怖に染まっていく。 やはり魔女王の仕打ちがヒド過ぎたのか……。 「マリエーヌが一緒だとしても、進んでキミに協力するよう善処するよ。はぁ……」  ディストーマは少し疲れた様子で自分の部屋に向かって行った。 各々、思うところがあるのだろう……。 俺は……マリエーヌが心配だ。 自分の家族を殺し、里を滅ぼしたストマイドが死刑になるのかどうか決まるんだからな……。 しかも魔女王の気分次第で。 あと、ストマイドは会議中にニラみ過ぎだったよね。 精神的にクタクタのはずだ。 マリエーヌの疲れを心配するのは……俺の役目だ! よし、今夜はマリエーヌの部屋に行ってみよう! --- <追加の説明> 魔力石……自然界から採取。魔力を自然界から取り込み蓄える性質をもつ。魔力石を魔法石と接触させると、その魔力が魔法石に移動する。蓄えられる魔力の最大量は石によって異なる。魔力をもつ者が手に持ち、魔力石に過度な魔力を与えると粉々に割れて使えなくなってしまう。そういうことをしなければ、魔法石と一緒に使用しながら数年〜数十年は使える。魔力を溜め込む性質は魅力的だが、魔法石なしには使えないことが難点である。メディアン隊長のように、魔力石の他の使い道を探している研究者も多い。 魔法石……魔力石から人工的に作った石。魔力石の使い道を探した結果、職人が魔法石を作り出すことに成功した。理論上は魔法の数だけ魔法石にも種類があり得るが、作るには職人の専門的な技術が必要。なお、魔力をもつ者が魔法石を手に持ち、魔力を込めても魔法は発動しない。魔力石と接触させたときのみ魔法が発動する。 (作者より↓) 8月の最終週まで更新できる目処が立ちました!! 今後もよろしくお願いいたします。


Related Creators