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125.死が漂う魔女王祭会議(後編)

 魔女王の進行により、会議の話題はストマイドの有用性があるかどうかに移った。 最初の口を開いたのはオルダンテ隊長だ。 「魔女王様……タイムストップはマリエーヌに破られ、セルフトランスタイムとやらは、そこの人間ごときに破られているんですよね? しかもストマイドは、魔女隊の隊長と比べると純粋な戦闘力が低いですよ。役に立つとは言い難いと思いますけど?」  そこの人間とは俺のことだな。 彼は先日の戦いの内容を把握しているようだ。 セルフトランスタイム、そしてストマイドに否定的なんだな。 あと、人間ごときって……人間の戦闘力にも明らかに否定的である。 「人間がセルフトランスタイムに対処できたのは魔封じの腕輪のおかげさ! 今もストマイド氏の手首に付けられている! 私はあの腕輪を作りたい! けど、魔力石と魔法石がないと! そう! 魔女王様! 魔力石の発掘に人員と経費を割いてくださいっ!! 魔力石の有効活用! あとは魔法石の開発と製造の許可を!!」  メディアン隊長が目の色を変えて主張した。 す、すごい勢いだぞ……!? 「静かにしなさい、メディアン隊長。魔力石は認めません。魔女には魔女がもつ莫大な魔力がある。それでいいじゃないですか。魔法石の開発も認めません。論外ですね。魔女は自分達の魔法で戦い抜いていくのです」  魔女王が持論を展開している。 それは今日、俺にも注意してきたな。 「……」  メディアン隊長がめちゃめちゃ不満な顔をしている! 魔封じの腕輪は、魔力石と魔法石がないと作れないってことか。 魔力石は魔力を秘めた石で、魔法石は魔法を発動するのか? その手のアイテムを作る元になるってことかな? じゃあ、身隠しの腕輪もそうなのかも。 あ! いつかのマドロミーナの剣もそうかもね。 あの剣には眠りの効果が付与されていた。 魔女王……その手の武器やアイテムがそんなに嫌なのか? 効率厨なのにアイテムに頼らないなんて、矛盾しているように思えるけど。 あ……もしかして、里の内部で反乱が起こることを防止しているんじゃないか? そういう意図があるのかも。 そんなことを考えていると、今度はレブリナート隊長が話し始めた。 「私は……これまでの基準から判断して、ストマイドは死刑でいいと思います。あと、タイムストップやセルフトランスタイムの研究をしたところで意味はないと思いますけど。時空魔法を使える人なんて、この里で他にはディストーマしかいないので。それよりも研究隊には防御魔法を開発して欲しいです……。バリアントぐらいしかないので……。魔女王祭の守りはもっと固めたいので心配です。今からでは急過ぎますが……」  彼女は静かな口調で主張した。 隊長の中では、この人だけおとなしい感じなんだよな。 防衛隊だからか魔女王祭の守りを任されているのだろうか? 不安そうである。 あと、俺も時空魔法を使えるんだけど、弱過ぎてカウントされていないようだ……。 あ……まだミルフィーヌの奴隷として、この人には認識されていないだけか? 「防御魔法かぁ……」  メディアン隊長が考えているぞ。 あまり良い表情ではない。 防御魔法を開発するのはあまり気が乗らないのか……? あと……話題が逸れているな。 今はストマイドの話でしょ?  お……魔女王が再び喋り始めるぞ。 「研究に意味がない……なんてことはないですよ。『バリアントぐらいしかない』って、あなた……バリアントは熟練度次第で化けていく素晴らしい魔法ですよ。あなたが分かっていなくて、どうするんですか。……浅はかですね、レブリナート」  魔女王がレブリナートに対してバッサリと切り返す。 ちょっと厳しい感じだぞ!? 娘だから、あえて厳しく……か? 「も、申し訳ございません……」 「まぁ、他に時空魔法が使えるのがディストーマだけ……というのはその通りです。ということは、ディストーマがタイムストップだろうとセルフトランスタイムだろうと、高度な時空魔法を使えるようになればストマイドは不要……とも言えますね。ナイリッシュ、あなたはどう思いますか?」  今度はナイリッシュ隊長か。 ……彼女は何を考えているのだろうか? 「えー。さすがに里を1つ滅ぼしておいて、死刑にしないなんて、他の魔女達に示しがつかないですよー。小さな里を壊滅とか侵略する輩が増えちゃいませんかー? あと、たぶんサンビュルーリカを中心として男たちがストマイド様バンザイ……みたいな感じで付け上がりますよ? 反乱の小さな切っ掛けになるかもしれません」  非常に余裕がある喋りで答えたぞ。 ……なるほど。 軽いノリで答えているが、説得力のある意見だ。 魔女王は納得している表情だな。 「なるほど。それは1番問題がありますね。……マリエーヌはどうですか?」  あ……ついにマリエーヌに意見を求めたぞ!! 「私は……死刑にして欲しいです」  マリエーヌ! はっきり言った! マリエーヌの考えは変わっていない。 そうだよね……家族を殺され故郷を壊滅させられているんだから、それが本音なのだろう。 うぅっ!? 魔女王に後ろに立っているストマイドが、マリエーヌをニラんでいるぞ!! アダマーリカで戦ったときと同じ目をしている。 「……そうですか、分かりました。やはり私にはナイリッシュの意見が1番響きましたね。ストマイドは魔女王祭で死刑にしますか」  ……き、決まった!? みんなに意見を聞いていたけど、投票とかじゃなくて魔女王に決定権があるんだな! さっきのディストーマの件もそうだった。 あ……ジャスミーナ先生が立ち上がったぞ! そうだよね、魔女学校側には何も意見を聞いていないよね? なんか魔女隊と教員とで格差が見えてしまう……。 「そんな……もうちょっと考えてみてくれませんか? ストマイド先生には貢献度もありますよ。魔女学校は彼がいないと成り立たない授業もありますし……」  そうか……ストマイドの同僚だったんだもんな。 おそらく良い面しか見ていないんだろうな。 俺はストマイドの闇の部分を直に見たから、学校の先生を続けてくのは難しいと思っているぞ。 「そうですか……。ウォルグリア学長はどうお考えですか?」  今度は学長に意見を求めたぞ。 「……時空魔法を使える者が貴重だというのは間違いないです。里に2人いれば、それはそれで良いと思っています。しかし……やはり里を1つ滅ぼしたのは大きな問題です。卒業生を殺害しようとした教員の言うことを生徒が聞くかどうか……そういった問題もあります」  それはそうだ……。 大きな過ちを犯した教育者の言うことなど聞きたくはないだろう。 ……が、過ちを犯しても、教員を続けている厚顔無恥な先生もいる。 とくに一昔前は、体罰やセクハラを行なっても平気で勤めている先生が一定数いた。 今だって泣き寝入りしているケースがあるだろう。 「魔女学校の教壇に立つのは、もう難しいでしょう……」  ウォルグリア学長が付け加えた。 それも同意見だ。 ストマイドが教員を続行したとしても、生徒をコントロールするのは困難だと思うぞ。 この里では男というだけで見下されるし。 アバンギャルドみたいな生徒がいたら、徒党を組んでネチネチ……いや、堂々と教員を追い込んでくるぞ。 この学長は、ちゃんと教育のことを1番に考えていそうだ。  ……ん? 魔女王が何か考えているぞ? 「『卒業生を殺害しようとした』……そう言われると、やはり雄の本能には凶暴な面がありますね。しかも彼はアダマーリカの戦いでマリエーヌを性的に襲おうとしていますから」  その発言に反応したのはオルダンテ隊長だ。 「魔女王様……男であることよりも、他里からの転居を受け入れているほうが問題ではないでしょうか? もしサンビュルーリカ出身の魔女だけで生活していれば、今回の問題は起こらなかったはず……」  オルダンテ隊長がトーンを落としながらも必死に主張している。 会議前の勢いがないぞ? そして、その意見は極論じゃないか? 鎖国同然の状態になっちゃうよ……!? 男という存在が危険視されて必死になっているように見える……。 続けてジャスミーナ先生が発言する。 「確かに青ネクタイと赤ネクタイでは青ネクタイのほうが優秀な傾向にありますね。校内での素行も良いですし」  オルダンテ隊長を擁護したのか。 魔女学校では青ネクタイがサンビュルーリカ出身で、赤ネクタイが他里出身だったな。 ジャスミーナ先生は青ネクタイ主義だと思ったんだよな! 以前、ミルフィーヌがマリエーヌに負けているのが納得いかない感じの発言をしていた。 「……とは言え、他里出身であるストマイド先生がいないと学校の教育のレベルが下がってしまうので、一概に問題があるとは言えないですが」  ジャスミーナ先生は他里出身者に思うところはあるが、あくまでもストマイドは死刑にしたくないということだな。  次に発言したのはメディアン隊長だ。 「おいおーい!! 優秀な他里出身者は他にもたくさんいるぞっ! 私は赤ネクタイだったよ!? どれだけ研究でサンビュルーリカに貢献していることかっ!! そこのマリエーヌも首席で卒業していて優秀だよっ!」  メディアン隊長も他里出身なのか。 こんな重大な会議で赤ネクタイか青ネクタイかが話題になるなんて、この里にとっては重要なことなんだな……。 「そうですね。やはり私は雄の本能の凶暴性に懸念があります。……今回、ストマイドが起こしたような事件が再び起こらぬよう、雄が教員や魔女隊になることを廃止することも検討しますか……。それならば少なくともサンビュルーリカの魔女には攻撃できない。私が魔女王になってからというもの、雄に権利を与え過ぎました」  また魔女王が男という存在を危険視する発言をした。 これに再び反応するオルダンテ隊長。 「ま、魔女王様……俺も男ですが、隊長の地位までのし上がりました。男を問題視するのはちょっと待って欲しいというか……やはり他里からの受け入れを考え直していただきたいです……」  男であるオルダンテ隊長が再び主張した。 その意見を聞いて、反論を始めたのはウォルグリア学長だ。 「オルダンテ隊長……今はもう、学校の雰囲気は良いですよ。青ネクタイ、赤ネクタイの問題は消えつつあります。これにはマリエーヌの影響があると思いますよ。このまま魔女学校は良い方向に向かうでしょうから、他里からの転居を規制するのはもったいない」  あ! それは俺も思った! ストマイド事件のときに魔女学校に2回訪れたけど、明らかに雰囲気が違っていたよ! 赤ネクタイの子も青ネクタイの子もマリエーヌに敬意を払っているというか、『見れて嬉しい! 会話できるなんて幸せ!』ぐらいに思っていたんじゃないかな? ウォルグリア学長……生徒達をよく見ている! 「どうやら古い考えのようね、オルダンテ」  魔女王の判断が下る。 「ぐうっ……」  オルダンテ隊長が意気消沈してしまった。  俺もマリエーヌが後輩たちに憧れられているのを見たって話したいけど、何も言わないでおこう。 というか、発言できる雰囲気ではないんだよ……。 マリエーヌとミルフィーヌでさえ、自由に喋れる空気じゃないんだ。  そんなことを考えていると、再び魔女王が会話を切り出す。 「……そうだ、メディアン隊長の『マリエーヌが優秀』という発言で思い出しました。私はマリエーヌを魔女隊に推薦しますよ。マリエーヌもディストーマ同様、選抜試験を免除します。先日の戦いではストマイドとの1対1の殴り合いでストマイドを圧倒していたそうじゃないですか。攻撃隊に入ってください」  マリエーヌが……魔女隊に!? さっきのディストーマと同じ感じか! 「え……!?」  マリエーヌ本人も驚いているぞ! 「ま、魔女王様!? 攻撃隊って……お、俺の隊ですか……!?」  オルダンテ隊長が焦り始めた。 この話でテンションが上がっているのはメディアン隊長だ。 「同感ですねえ! マリエーヌは良いですよおっ! 私のところで卒業研究をして良好な結果を残しましたし!! あの【サイクロンボール】は実戦で使いやすい。魔法センスは抜群だね!! 本当は研究隊に来て欲しかったけども! 攻撃隊の休暇日には研究隊で働いてくれえ!!」  え! あの混合魔法、マリエーヌが開発したんだ? たしか以前、ブルーと戦ったときに使っていたのを見たぞ。 で、マリエーヌはメディアン隊長のところで卒業研究をしたの? 魔女学校で研究するとは限らないんだね。 ……って、メディアン隊長がめちゃめちゃブラックなことを言ってる! マリエーヌ……休みなし!! 「いや、その……考える時間をください。私は今、パートナー探しをしているんです!」  マリエーヌが立ち上がって主張した。 魔女王が頷く。 「そうですか。では、パートナー探しを継続してください。ただし、入隊もしておいて下さい。ひとまず籍を置いておくだけでいいので」  魔女王が凛とした表情で決断した。 マリエーヌはしぶしぶ頷き、席に座る。 魔女王……絶対的な権力を持っているのか。 焦りを隠せないオルダンテ隊長。 魔女王に体を向けて発言する。 「ちょ、ちょっと魔女王様!? それだとマリエーヌが自由過ぎませんか? 他の隊員から批判的な目で見られてしまいます……! そ、そこまでして入隊させたいのですか!?」  彼の発言を受けて魔女王が鋭い視線を向ける。 表情が凍るオルダンテ隊長。 こ、怖いぞ……。 「まあまあ。皆さん、お静かにー」  そんな雰囲気を察知したのか、久しぶりに発言したのは様子を見ていたナイリッシュ隊長だ。 「話題を戻しましょう。事件が起きた原因が、雄が権利を持ち過ぎたのか、雄の凶暴な本性なのか、はたまた他里からの転居なのか……実際のところ分かりませんが、一番大事なのは魔女の里の秩序を維持することですよー。一般市民が反発して反乱するのを防止するため、大罪を犯したストマイドはちゃんと死刑にしておきましょうよ」  ナイリッシュ隊長が冷静に発言する。 ……って、な、何が原因で事件が起こったか分かってないの!? 俺の常識で言えば、いつでもどこでも男を蹂躙しまくってるからだよ!? 別次元にいたディストーマのそんな恨みつらみがストマイドとなって今回の事件を引き起こしたんじゃないの……!? 先日の取り調べで、別の次元のディストーマがストマイドになったことはちゃんと俺が話しているはずだけどね!? 今もさ、ディストーマもストマイドも無駄に全裸にされているし……。 会議の最初では男が1人殺されているし……。 こういうのが当たり前になっちゃってるから、大きな事件が起こってしまうんじゃないの!? ……なんて言える空気ではない。 「あの、魔女王様……」  ジャスミーナ先生が手を上げた。 「逆に男の人権を上げてみてはどうでしょうか? ストマイド先生とディストーマの悪意の根本は、魔女学校にあります。魔女学校の男子生徒はもちろん、卒業後も人権が低いこと。私はそれが原因だと思いますけど……」  ジャスミーナ先生! サンビュルーリカの常識にとらわれずに気づいてくれた。 しかも、それをこの会議で発言してくれたぞ! そう、それなんです! あ! オルダンテ隊長に笑顔が……! 「お……ジャスミーナ先生、それは良い意見だ……! 俺も賛成……」  オルダンテ隊長でさえも、立場が弱いんだろうな。 会議では発言回数が多かったけど……人一倍、魔女王の機嫌を気にしている感じはある。 やはり男だからか……。 あ……オルダンテ隊長への魔女王の目つきが、また鋭くなったぞ!? 「オルダンテ……今日はおしゃべりね? 他の隊長や教員がいるから、自分を大きく見せているのかしら? 所詮、お前は私の遊び道具だということを忘れるな……!!」  ん!? え……や、ヤバい! なんかいきなりヤバい雰囲気だ! あ、遊び道具……!? 「うっ……」  オルダンテ隊長が下を向いた。 男は隊長になっても、この扱いか……!! そう言えば魔女王はオルダンテ隊長にだけ敬語を使ってない気がする!  みんなが沈黙した中、ジャスミーナ先生が再び口を開く。 「話を戻します。すぐにとは言わず、いずれは男の人権を上げるため、ストマイド先生を死刑にまではしなくていいのではないかと思います」  えっと……ストマイドを死刑にすると、いっそう里の男達が人権がないように思っちゃうってことか? ストマイドは大きな罪を犯しているわけだから、そこは結びつけて考えないほうがいいんじゃないか? ジャスミーナ先生はどうしても死刑を阻止したいような感じがする。  続けてメディアン隊長が発言する。 「私も! ストマイドが使う時空魔法の貴重性を再度主張するよ! ディストーマが同じように育つとは限らないのでは!? 少なくともディストーマが育つまで死刑は保留ってのはどうでしょうー!?」  魔女王は少し考えた後で口を開く。 「なるほど、保留……それは一理ありますね。簡単に死刑にはできないかもしれません。ふぅ……なかなか結論が出せませんね」  魔女王に疲れが見えるぞ。 一理ある……と思った意見はちゃんと取り入れるんだよな。 ってことは、スルーされたジャスミーナ先生の主張は却下されたということか。  疲れ気味の魔女王が続けて喋り始める。 「私は秩序を維持するために死刑の方向でいきたいですけど、時空魔法が貴重というのは確かに引っかかります。ただ、やはり死刑を完全に覆すほどの決め手にはならないのですよ。何かストマイドに別の使い道があればいいのですが……。学校側から意見が出たように、教育者として価値はあった雄です。そう……思想はともかく、能力的には優秀な部類なんですよね。優秀……そうですね……ストマイドには完全に人権を捨てさせて、種付けマシンにしてしまいましょう。そして、隊長達に与えればいいのですね。そうすれば、時空魔法を使える魔女がたくさん生まれるかもしれません」  ……ん? 「な、なああにいぃっ……!!?」 「え、ええぇー!?」 「お母……様……?」  女性の隊長3人の顔がひきつる。 な、なんか著しくヤバいことを言ったよね!? 『完全に人権を捨てさせて』!? で……なんだって!? た、『種付けマシン』……って言ったのか!? 「魔女界の繁栄のためには最善策ですね。ディストーマでは隊長達とは魔力が釣り合わず、妊娠するまで多大な時間が掛かるでしょう。ストマイドが相手ならば、その心配はありません。その方向も考えてみましょう」  う、うわああぁっ!? は、話を進めているぞ……!! 「我ながら良い案を思いつきました。ここまで皆さんが真剣に話し合ったおかげです。ありがとうございました。だいぶ時間が経過してしまいましたね。この案を具体的に詰めるのは、また明日の会議にしましょう。私も死刑にするべきか、種付けマシンにするべきか一晩じっくりと考えます。私にはナイリッシュの意見がとても響きましたから。魔女王祭の他のイベントについても、明日の会議で話し合いましょう」  魔女王が指針を示した。 自分で良い案だとは言っているけど、決め切れていないんだな。 「それでは今夜、私は遊びますので……」  ん……遊ぶ? 急にどうしたんだ!? あ、オルダンテ隊長がビクッってなった! 「……オルダンテ、お前ではない」  魔女王がオルダンテ隊長に厳しい! オルダンテ隊長は、いつも夜の遊び相手だったの? 遊び相手……それは……どういう意味だ!? 「今夜の遊び相手は……ストマイド、あなたです」  魔女王が後ろを向いてストマイドに冷たく言い放った。 「……この雄は反省していないみたいですからね。今日も会議中にマリエーヌをニラんでいましたよね? 私が気づいていないとでも思いましたか? 今夜もお灸を据えてやらなくてはなりません」  え、えぇっ!? お灸を据える……!? 遊びって……まさか拷問とかじゃないか!? もう本当に人権無視なんだな……。 やばい……やはり魔女王はヤバ過ぎるぞ。 「ストマイド……あなたの今夜の態度次第で、私は死刑側に傾いてしまうかもしれませんよ?」  もう……め、メチャクチャだあっ!! 最初に会ったとき、魔女王はインテリ感がある性格の悪いヤツって印象だったけど、この会議で気分で殺戮お構いなしの独裁者という本性が見えたぞ!! クレイジーな発言を連発しているよ! 「明日の会議は朝一番で行ないます。隊長達も来客の方達も王宮に泊まって下さい。そのほうがムダがありませんので。部屋はたくさんありますし。ミランダに案内させましょう」  あ、効率重視なところが出ている。 こんな豪華な王宮に泊まれるなんて最高だよ。 ……って、会議の前なら思っていただろうけど! 「それでは、お言葉に甘えまして」  ウォルグリア学長が返事をする。 「ありがとうございます、魔女王様」  ミルフィーヌもお礼を伝えた。 あ……オルダンテ隊長が青ざめているぞ。 だ、大丈夫か? 何かを思い出しているのか? 普段、何をされているんだ……。 「あなたも客室でいいですよ、ディストーマ。釈放で、しかも魔女隊員ですから」  魔女王が後ろで立っているディストーマに伝えた。 ミランダさんが来て、ディストーマの手錠を外したぞ。 早く服も着させてあげてくれ……。 「は、はい……。ありがとうございました」  ミランダさんが会議室に戻って来て、みんなの案内を開始する。 ようやく会議が終わった。 この会議……異様な雰囲気で全く発言できなかった。 マリエーヌの味方をする意見を言いたかったけど……。 会議の雰囲気もそうだけどさ、マリエーヌの意見である『ストマイドを死刑にしたほうがいいと思います』って……俺には発言できないよ。 命の選択を言葉にするのは、日本で生きてきた俺には重過ぎなんだよね……。


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