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118.旅立つマリエーヌ

 昨日はマリエーヌとエッチなことをいっぱいした。 昨日のエッチのラストは寸止めで終わってしまったけど……。 『私のことを思い出してオナニーしてね』って、最高だよマリエーヌ。 彼女が旅立っても、もう思い残すことはない。 いや……そんなわけはないよ! これからが本番なんだ。 俺は人生で初めて攻めの選択をしたと思う。 ミルフィーヌをサンビュルーリカで成り上がらせるという大きな目標に向かって突き進まないとね。 そしてマリエーヌと一生を添い遂げるパートナーになるんだ!  今日はそんなマリエーヌの旅立ちを見送らなければならない……。 旅立ちと言っても、魔女王祭があるから2週間だけだ。 それでも……不安だ。 他の男を探しに行くんだから……。 ---  まだ朝の早い時間帯である。 商店街のお店は開店準備を始めていた。 現在、俺がいる場所はサンビュルーリカの出入り口だ。 門を通過すれば、外の世界に行ける。 門の周辺には建物がほとんどないけれど、道はちゃんと石で舗装されているぞ。 石像が立ち並んでおり、サンビュルーリカの正門って感じである。 俺とミルフィーヌは、マリエーヌを見送るためにここに来たのだ。 「……そろそろ行くわね。とりあえず飛空艇が出ている里に向かうわ。サンビュルーリカからは飛空艇の便がなくて不便だわ」  マリエーヌがプランを教えてくれた。 「サンビュルーリカは閉鎖的だからな。まぁ、秩序を保つためなのだろう」  ミルフィーヌが説明した。 ……なるほど、1番大きな里なのに飛空艇がないのには理由があるんだな。 「……ところでマリエーヌ様。服を新調したんですね?」  マリエーヌはパープルのマントとハットにブーツ、それにミニスカートを身に付けているぞ。 いつものマリエーヌに戻った気がする。 「え? ああ。ケンジに紫色の服がトレードマーク……みたいなことを言われたからね。同じやつを買っておいたわ。これ、攻撃魔法に耐性のある良い品なのよね。けっこうな出費だったわ」  以前にコロシアムの試合やサクラダ王国でぼったくって稼いでいたから、いいじゃないか。 それにしても俺の言葉に影響されて前と同じ服を買ったのは嬉しいぞ……! 「さて……じゃあな、マリエーヌ」  ミルフィーヌが別れを切り出した。 いつものように赤い着物を着て、凛とした佇まいでマリエーヌを見ている。 「ええ。魔女王祭までには戻ってくるわ」  そう言いながら、マリエーヌが地面に置いていた荷物を持つ。 以前は俺が持って運んでいたんだけどな。 今回は一人旅だ。 「そうだな。……そう言えば、回復アイテムは持ったか?」  マリエーヌが手に持つ荷物を見ながら、ミルフィーヌが気にしている。 「ええ。持っているわよ」  マリエーヌは回復魔法を使えないからな。 俺も心配である。 ああ、不安な気持ちになってきた……。 「マリエーヌ様、やはり1人では心配です……」 「なによ、ケンジまで……。私の心配なんて100万年早いわ!」  ひゃ、100万年……!? またそんな大袈裟なことを言って……。 「うむ……回復魔法を使えないことが1番マズい」  ミルフィーヌがハッキリと指摘した。 「むっ」  マリエーヌが眉をひそめる。 なんか解決策はないかな……? ストマイドみたいな強い敵と遭遇したらヤバいよね。 「僕は……例の新技を使うほどの強敵が出てきたらと思うと心配です。あのマリエーヌ様の新技を使った後の疲労度は結構ヤバくないですか?」  彼女の新技は、魔力を体内で物理的な力に変換する……という技だ。 ストマイドとの戦いで使っていたが、その後しばらくは本調子じゃなかった。 疲労度の大きい技だから心配になる。 「……なるほど。それはそうだな」  ミルフィーヌが同意してくれた。 マリエーヌは眉間にシワを寄せてイライラし始めた。 「大丈夫よ! 地上のそこら辺に、魔女学校の先生とかサキュバスの城にいた魔人級の奴なんてウロウロしてないわよ!」  確かに生物図鑑には『魔女は地上ではトップクラス』と書いてあったな。 ……とは言っても不安である。 あ、『魔法に関してはトップクラス』……だったかな? 身体能力がめちゃめちゃ高い魔族とかいるかもしれないから、やはり心配である。 マリエーヌは嫌がっているが、何か俺にできることはないかな……? 新技は体への負担が大き過ぎるんだよね? だったら…… 「そうだ! マリエーヌ様……あの新技を使うときに、攻撃する瞬間だけ威力を増大させることは可能ですか?」  バトル漫画とかで、よくある攻撃方法だ。 そこら辺は元の世界で色々と漫画を読んでいたから詳しいぞ。 実際にはどうなんだろう? この世界では、そういうことは可能なのかな? 「えっ? なに言ってんの? どういうことよ?」  マリエーヌがイライラしている。 「例えばパンチを当てる瞬間に、拳にだけ魔力を込めるんですよ。そして拳だけを強化するんです」  俺の説明を聞いてミルフィーヌが頷いた。 「……なるほど。体内の魔力を操作して一箇所に集めるということか。魔法操作の応用と言ったところだろうか? 魔法操作は、本来は敵に放った魔法を操作するものだ。その応用で、体の内部の魔力を操作するということだな?」  興奮気味に説明をするミルフィーヌ。 「そういうことだと……思いますけど」  しかし、俺は魔法操作やら規模調節やらはできないから、いまいちピンと来ないな……。 「ケンジの言う技術が可能ならば有効かもしれん。拳の疲労は溜まるだろうが、全身の負担は減らせるかもしれないぞ! 魔力の消費量はどうなるか分からんが……」 「はあ? ケンジ……なんか生意気ね。別にいいけど」  な、生意気……!? なんで!? 『戦闘力の低いアンタがゴチャゴチャ言うな』……って感じか? 「バリアント! さあ、このバリアに向かって試してみろ」  ミルフィーヌが防御魔法を唱えた。 アバンギャルドが使っていた魔法だな。 半透明で緑色、1辺30センチぐらいの正方形の板がミルフィーヌの正面に発生した。 「あら、防御魔法? ……使えたのね」 「ああ。このぐらいの魔法はできる。強度も申し分ないぞ。防衛隊のような熟練度には至らないが5枚貼りぐらいはできる。さあ、来い」  あ、本当だ。 よく見ると複数枚のバリアが重なっている。 ……って、防衛隊? 防衛って……里を守ってんのかな。 マリエーヌから聞いた話だと、魔女隊には複数の隊があるみたいだから、その一つだろうか。 あと、バリアントの熟練度ってどういうことだろう? そういえば過去で、アバンギャルドがバリアントを空中に自由自在に発生させて、マリエーヌの攻撃をガードしていたな。 発生位置とか大きさとか、同時に出せる枚数とか……熟練度が上がると色々できるのかもね。 サンビュルーカを守っているバリアントは桁違いに大きくて、しかも透明だもんな。 この防御魔法は奥が深そうだ。 「じゃあ、いくわよ?」  マリエーヌが門のほうに後退してミルフィーヌと距離を取った。 俺はミルフィーヌの斜め後ろのほうに避難しておこう。 あの新技はすごい威力だったからな。 「ああ。本気で来い」  ミルフィーヌが両手を前に突き出し、自分の前方に浮かんでいるバリアントに魔力を込めているようだ。 マリエーヌはその様子を確認した後で、腰を落として構えた! 「はあああああっー!!」  大声を上げながら右の拳に力を込めているようだぞ!? す、すごい迫力だ……!! 魔力が拳に集中しているのだろうか!? これは……もしかしたら! 俺の言葉がきっかけで、マリエーヌが新しい戦い方をしてくれるようになるかもっ!! ……ん? ミルフィーヌが少し慌てた様子で喋り始めたぞ!? 「マリエーヌ……!! それでは全身に魔力が流れているぞ! 全身が強化されている!! 今までと何も変わらない!」  えええぇっ!? できていないのか……!!? 見た目的には、できている感じだったのに!! 「おりゃあああぁっー!!!」  マ、マリエーヌが消えた!? 俺の目では全く追えない……!! 「マリエーヌ!? う、うああああぁっー!?」  今度はミルフィーヌが大声で叫んだぞ……!!? あ、ああぁっ!? ミルフィーヌが後方に! 街の方向に吹っ飛んでいる!! 少し遅れて強風が俺を襲う……!! 「マリエーヌ様!? 何が起こっているんですか!? うわああああっ!!」  俺も風に煽られて街のほうに吹っ飛んでしまった……!! し、尻餅をついてしまったぞ。 慌てて起き上がると、もともとミルフィーヌの立っていた位置にマリエーヌがいる。 パンチを放った後のポーズをとっているぞ。 そして歯と思われる白い物体が数本、宙を舞っているのが見える。 あ、地面に落下した。 あれは……ミルフィーヌの歯だよね? ま、また……この展開か!! 「う、うううぅっ……」  遠くでミルフィーヌが仰向けになってブッ倒れている! 「やばっ」  そう言いながら、マリエーヌが俺の横を通り過ぎた。 慌ててミルフィーヌのところに駆け寄るマリエーヌに、俺もついて行く。 ああ……ミルフィーヌの左頬が赤くなっているぞ。 マリエーヌのパンチがバリアント5枚分を突き破り、ミルフィーヌの頬にヒットしたんだな!? 「ミルフィーヌ……なんかごめん」  マリエーヌが謝罪した。  「ま、まさかバリア5枚分を突き破るとはな……! 周囲にある石造を破壊しなかったのが不幸中の幸いか。また魔女隊に聞き取り調査されるところだったぞ……」  ミルフィーヌが上体を起こしながらそう言うと、マリエーヌが嫌な顔をした。 先日の取り調べを思い出したのだろうか……。 左の頬に手を当てて状態を確認するミルフィーヌ。 い、痛そうだ……。 「で、マリエーヌ……技のほうだが、体全体に魔力が流れていたぞ」  そうだったんだな……。 マリエーヌは魔法操作とか規模調節とか形態変化とかを使いこなしていて、魔法に関しては器用だと思っていたんだけどな……。 『私の拳でぶっ飛ばす!』ってモードになると、ぜんぜん魔力をコントロールできないのかな? 0か100か……って感じでコントロール不可という印象だ。 マリエーヌらしいけど。 「……もういい。さっさと旅立て」  ミルフィーヌが呆れている。 「何よ、その言い方……謝ったのに。言われなくても行くけど」  ちょ、ちょっと微妙な雰囲気だな……。 大丈夫だろうか? 何度も何度もケンカしないでよ……? 関係は改善してないのかなあ……って不安になるけど、マリエーヌの表情は以前よりも段違いに柔らかい。 ミルフィーヌはボロボロで頬が腫れ上がってきて、表情がよく分からん。 「ケンジも……じゃあね。吹っ飛ばしちゃって悪かったわ」  マリエーヌが俺に挨拶をした。 珍しく謝罪もしてくれた。 なんか、ちょっと悲しそうにも見える笑顔である。 「いえいえ、ぜんぜん気にしないで下さい! お気をつけて!」  俺が元気よく送り出すと、マリエーヌは門に向かった。 2週間後に無事に帰って来てくれ……! ミルフィーヌが回復魔法で自分を治療しながら、ゆっくりと起き上がる。 「ケンジ……今夜はエリィのところに行くぞ。忘れるなよ」  傷ついたミルフィーヌが今日の予定を教えてくれた。 表情はよく分からないが、声の感じだと怒ったり悲しんだりはしていないようだな。 痛かっただけか……? マリエーヌとミルフィーヌの関係は大丈夫……なのだろう!  よし……今夜、俺は忘れずにエリィのところに行かないとな。 マリエーヌ一筋なのにエリィにヌカれるのはどうかと思うけど。 彼女が旅立ってから早速エリィと……っていうのはちょっと考えちゃうよね。 せめてマリエーヌに言われたとおり、彼女のことを考えながらオナニーしないと! とは言え、夜までに1発でもオナニーをしちゃったら精液の味が落ちて、エリィの機嫌を取れなくなるかも。 エリィをコントロールできなくなるのはリスクが高過ぎるので今日のオナニーは困難だ。 う~ん……マリエーヌと一緒に生きて行くんだから、このエリィにヌカれる問題は最終的にはどうにかしないとな……。


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