113.エリィの過去(中編)【異世界に勇者として転移したが、強過ぎるサキュバスとか魔女とかに屈服してイカされ続けた】
Added 2023-02-07 15:00:00 +0000 UTC親衛四天王に連れて行かれたエリィ。 意気消沈したまま牢屋に閉じ込められてしまった。 牢屋の中は暗く、目の前には鉄格子。 周囲には脱走を防ぐための金属でできた壁。 冷たく硬く分厚く、破壊は容易ではない。 そもそもエリィの体は拘束されていて、破壊を試みることもできない。 壁に取り付けられた鎖がエリィの手首と足首、そして尻尾を固定し、女の子座りの状態で動きを封じている。 さらに、その鎖には魔力を封じる効果があり、彼女は徹底的に無力化されてしまっているのだ。 周囲の状況を確認し、彼女の気持ちはさらに沈んでいく。 (牢屋……か。こんなことになるなんて、考えてもいなかったな) 後ろを見上げると、背後の壁に備え付けられた小さな窓から外が見える。 わずかな月明かりに目を向けながらエリィは考え込んでいた。 (サキュバスの歴史において、謀反の例はいくつもあるが……こんなにつらい気持ちになるんだな) 暗い気持ちが晴れない。 しばらく考え込んでいると、牢屋に誰かが入ってきた。 「どうも。拷問係のブルーで~す」 入って来たのは黒いキャミソールとミニスカート姿のブルーだ。 エリィがしっかりと拘束されていることを確認した後で陽気に挨拶をした。 しかし、その笑顔にはどこか猟奇的な危うさが混じっている。 「ブルー……だと?」 「そうですよー。拷問部隊の一員です」 「そうか。……そういえば見たことのある顔だ」 当時、エリィとブルーは面識がほとんどなかった。 「まぁ、私は末端の兵士ですからねー。で、今からエリィ様を拷問しまーす♪ 何か秘密にしていることはありませんか? 他国のこととかでナイショにしている事がありますよね? お隣のシャーロット王との関係も怪しいと言われていますよー? 悪巧みしているんじゃないですか? 四天王さま達が抱いている疑惑について『ぜんぶ吐かせろ』と命令されています。……というわけで、正直に教えてください。そうすれば、拷問しなくて済むかもしれませんよー」 ブルーはエリィのところまで近づき、早口で説明する。 その説明を聞いてエリィの表情が変わる。 「私を拷問する……だと?」 エリィの鋭い眼光が、ブルーに突き刺さる。 初めて会話する末端の部下から『拷問』という言葉が出た。 本能的に自分の身を守るスイッチが入り、眼光で威圧する。 「拷問する気なんだな? 答えろ」 「そ、そう命令されているんですよー! エリィ様は動きも魔力も封じられていますよね? なので拷問は可能かと……」 (拷問か。メリフィールド……容赦ない命令をするんだな。それにしても、こんな遥か格下にナメた態度を取られるとはな) 権力も戦闘力も著しく劣っているブルーからの発言に少し腹が立った。 「可能だが、お前では力不足だな。……魔力、尻尾、そして四肢を封じられたとしても、お前が私に触れた瞬間、お前に重大な危害を加えることができるぞ」 鋭い眼光のまま、言葉でブルーを威嚇する。 「……!!」 ただならぬ空気を察知し、エリィに近づいていたブルーが部屋の入り口まで急いで戻る。 (……こ、怖すぎィ! エリィ様に近づいたのは初めてだけど、こんなに恐ろしいなんて……) 恐怖を感じるとともに、彼女には同時に思うことがあった。 (し、縛られているエリィさま……エ……エロすぎィ! 間近で見るとエロさがヤバっ!! ぜ、是非とも拷問してみたい……!!) 女の子座りの状態で拘束されているエリィの様子を見て興奮している。 ブルーの嗜虐心は、かつてないほど駆り立てられていた。 (ロ、ロングドレスが捲れて見えているフトモモ……! あ、あの白くて細いフトモモがセクシーです……!! そしてあの溢れんばかりのおっぱい!! 綺麗な顔! 大きな瞳!! あの透き通るような白い肌!! 同じサキュバスの私ですら、頭がクラクラしてくるー!! あのドレスの中の股間に私のナイフをグリグリして、エリィ様の威圧的な表情を恐怖の顔に変えたい!!) 怯えていたはずのブルーが、欲望に満ちた眼差しでジッとエリィを見つめ出した。 「……な、なんだ貴様!? どういう目で私を見ている!?」 ブルーの口からはヨダレのようなものが見えた。 その表情は恍惚としている。 「へっ!? い、いや……なんでもないです……。え、ええと、確かに……圧倒的な強さをもつエリィ様からしたら、私を虫ケラのように感じるでしょうね。拷問されても反撃できる……と??」 「そうだ。頭は自由に動かせる。噛みつくことができるかもしれないぞ? 指も動かせるな。指1本、お前の体に触れることができれば、お前を殺すことは確実にできそうだ」 エリィは不吉に笑いながら、その場で指を動かして見せる。 ブルーがゾッとし、その表情がひきつる。 縛られて魔力を封じられていたとしても圧倒的に実力が違う。 指1本で体の肉をほじくり回され、デコピン1発で頭を吹っ飛ばされることは間違いない。 「こ、怖いですねぇ。……でも、私だって触れずに拷問することはできますよ? エリィ様の頭と指に注意しながら、このナイフを使って……」 ブルーが自分の足に取り付けているホルダーからナイフを取り出す。 ブルーの案など、ささやかな反論に過ぎない……と言わんばかりにエリィがほくそ笑む。 「ふっ。良い度胸だ。ナイフが私の体に触れた瞬間、そのナイフはお前の体に突き刺さっているだろう」 「……」 ブルーは想像する。 エリィの体をナイフで切るイメージ。 どこを切ったとても、ナイフがエリィの筋肉によって押し戻されて自分の体にナイフが刺さっているイメージになる。 また、ナイフを投げつけたとしても、彼女の体は、その筋肉は……体の中に侵入してきたナイフを跳ね返してしまうかもしれない。 まさかとは思うが、普通に考えたらあり得ないことだが、エリィの実力ならあり得る。 自分が攻撃されてしまうイメージを払拭できない。 ブルーとエリィとの実力差は明白である。 体を痛めつけて拷問することは不可能だ。 「う……! で、ですよねー。エリィ様を拷問するなんて……私、けっこう四天王さま達から無茶振りされてますよね……」 「お前が私を拷問することが難しいことぐらい、少なくともメリフィールドはわかっているはずだ。なぜそんな指示を……」 「まぁ、私は使い捨てってことなんでしょうねー」 「なんだと? 使い捨て?」 「私の拷問に対してエリィ様がどういう対処をするのか……その結果を見た上で、ちゃんと拷問できる方法を考えるんじゃないですか? 私の身に何があったとしても、お構いなしです」 「そうなのか? お前は使い捨てなのか?」 ブルーの話を聞いて、エリィが口を開けて驚く。 「拷問部隊の中で私が1番嫌われていますから……。まぁ、なんか……異端児と言いますか。使い捨てにされる可能性は充分にあると思います」 「む……そうだったのか。お前のどこが異端なんだ?」 「え? ちょ、ちょっと……残忍すぎるというか、性癖が歪んでいるというか……」 「そ、そうなのか……? お前が異端扱いされているという報告は受けていないな。知らなかった」 「まぁ、王であるエリィ様が知るはずもないですよね……。私は末端ですから。わざわざ報告するわけありませんし」 「……」 周囲から締め出されているのは、今の自分と同じ……と思うエリィ。 彼女は真顔になって考えを巡らせる。 「貴様……いつから嫌われているんだ?」 「え……もう20年以上前だと思います……。あまり覚えていませんけど」 返答しながら、ブルーが不思議そうな表情でエリィを見る。 (エリィ様……な、なんの質問だったんだろう?) 不思議に思うブルー。 エリィはまだ思考中だ。 立て続けに疑問が湧いてくる。 (20年以上……決して短い期間ではない。なぜ平気なんだ? 気にしないのか?) エリィは再び質問を投げかける。 「お前……そんな状況でもメリフィールド達の味方をし、私に無謀な拷問を試みるのは何故だ?」 ブルーの肩から力が抜け、ため息をつく。 「エリィ様……強過ぎて分からないんですね……。群れなきゃ、この魔界ではやっていけませんよー。私はサキュバスの中で弱いほうなので。まぁ、最底辺ではないですけど。……って、そんなことはどうでもいいんですよ! やっぱり拷問することは難しいですから、まずはエリィ様のお世話係のサキュバスに聞いてみようと思います。秘密の会議の内容とか、秘密裏に招いているお客さんとか、いろいろ知っているんじゃないかと。1人ずつ拷問すれば……」 「……なに?」 エリィの顔が曇る。 ブルーは牢屋の外に出て、世話係のサキュバス達を引き連れて再び入ってきた。 「この子たちが世話係……ですよね?」 連れて来られたのは、手錠を掛けられた5人のサキュバス。 彼女達は普段、エリィの着る物や部屋の掃除、客人のアポなど、身の回りの世話や雑務を任されている。 エリィの秘密を知っている可能性は高い。 「なっ!? やめろ! 貴様……この者達に拷問をしたら許さんぞ!!」 「へへへー♪ その反応……やっぱり世話係の子たちがエリィ様の秘密を知っているんですね? ここで結果を出せば、私も少しは生きやすくなるかもしれません」 「このぉっ! 殺すぞっ!!」 エリィが鎖を引きちぎろうと、座った状態のまま全身に力を込める。 「ヒィッ!! エ、エリィ様!?」 ブルーの怯える声とともに、何かが破壊される大きな音がした。 ……が、エリィを拘束する強固な鎖は破壊されていなかった。 壊れたのは壁に取り付けられた小さな窓だった。 窓から放り込まれたのは淡く光る水晶玉。 その光はすぐに消失し、水晶玉から美しいサキュバスが姿を現した。 「エリィ、こんなところに捕われてしまったのね。探すのに苦労したわ」 登場したのは隣国の王であるシャーロット。 真紅のドレスを身に纏い、堂々と立っている。 突然の大物の登場にブルーが驚く。 「え……シャ、シャーロット王!? そ、その水晶玉は……!?」 床に落ちている水晶玉を拾いながら、シャーロットが喋り始める。 「ふふっ。私の実力を持ってすれば、エリィの居場所を突き止めるなんて簡単よ。魔力を感知する能力の高い仲間がいるからね。侵入も計画通りだわ。この水晶玉は時空魔法の職人が作った貴重な代物よ。空間移動に使えて便利なの。見た目も綺麗だし、エリィも欲しいんじゃない? あげないけどね」 シャーロットが笑いながらエリィに視線を向ける。 予期せぬ事態に、エリィは動揺している。 「い、いらん! それよりシャーロット……これはどういうことだ!?」 「あなたの幹部達が怪しい動きをしていることが分かったから、私自ら来たのよ。……助けてあげようかしら?」 「私を助けに来たのか? どうやってこの事態を知った!?」 「私の情報網を甘く見ないでくれる? 部下に団結されて謀反されるだなんて情けないわ。あなたは私の国より大きな国に発展させることに成功したわ。だけど、じつは上手く指揮が取れていなかったのね」 シャーロットが自信満々の笑みを浮かべながらエリィを批判した。 (なっ……!? い、嫌な言い方をする……! しかし、その通りだ。何も言い返せない!) 再び気持ちが沈み始めるエリィ。 「こ、国王自ら乗り込んで来るなんてー! し、信じられません!! やっぱりシャーロット王とつながっていたんですね……!」 状況を理解し、驚きの声を上げるブルー。 「ふふっ。さあ、エリィ。逃げるわよ。私がもっと弱かったころ、あなたに命を助けてもらったことがあったからね」 「……そんなこともあったな」 そう答えながら、考えを巡らすエリィ。 助けが来たにもかかわらず、エリィの表情は暗くなっている。 部下の謀反に続き、シャーロットの批判が追い討ちになった。 しかし、この状況を打開するには彼女に頼るしかない。 「シャーロット……お前を信じていいのか?」 シャーロットを信用し切れないエリィ。 「もちろんよ。悪いようにはしないわ。早くここから逃げないと。……あれが拘束を解く鍵かしら?」 シャーロットが歩き出す。 ブルーを横目に牢屋の入り口付近にある鍵を手にする。 そしてエリィの拘束を解くシャーロット。 「背に腹は代えられん。お前と一緒に逃げよう」 「あら? 信用ないのね」 不敵に笑うシャーロット。 自由になったエリィは半信半疑のまま逃げ出す準備をする。 「……そこにいるサキュバス達は助ける」 エリィが世話係のサキュバス達に目をやる。 「え? そんな下位のサキュバス達を連れて行くの? 甘いわね。……そんなことをしていたら、逃げ切れなくなるわよ? ここの幹部は決して弱くはないでしょ」 「……」 エリィは返事をせずに、世話係のサキュバス達を自分のところに誘導し始めた。 「あらあら、忠告したのに。仕方がないわね。……じゃあ、説明するわ。この水晶玉は対になっていて、外の仲間が持っている水晶玉のところに空間移動ができて……」 「問題ない。さっさと行くぞ」 シャーロットの言葉を遮り、エリィが壁に向かって掌底を放つ。 「少し本気を出した」 厚い金属の壁とは言え、自由になったエリィの前では意味をなさなかった。 この城を囲む森が見えるほどに壁は崩れ落ちた。 「相変わらず、とんでもないわね。この分厚い金属の壁を一撃で……」 エリィの力技に呆気に取られるシャーロット。 「げげっ!? これは……ちょっともう私じゃ手に負えません!! ……って、エリィ様! 世話係の子達を連れて行くなんて、やっぱりその子達は何か秘密を握ってるってことですね!!」 ブルーが叫ぶ。 牢屋に誰か近づいてくる足音がした。 「なんだなんだ!? 騒がしいな……!」 「大きな音がしたぞ! 非常事態か!?」 「拷問部隊! 返事をしろ! どうした……!?」 親衛四天王達の声と足音が牢屋に近づいてくる。 「早く! 逃げましょう……!!」 シャーロットが先導し、エリィが破壊した箇所から外に逃げ出した。 --- エリィとシャーロットは暗い森の中を走っていた。 そして彼女達の後ろを、5人の世話係のサキュバスがくっついていく。 「ちょっとエリィ! 本気でこんなに多くの部下を連れて行くの?」 逃げながら世話係のサキュバス達の手錠を壊し始めたエリィ。 「……彼女達は弱い。知能も低いのだ。あのまま放っておいたら、私のことを聞き出すために、なす術もなく拷問されてしまっていただろう」 下位のサキュバスは精液を食らう動物的な一面が強い傾向にある。 戦闘力も低い場合、世話係や雑用係に任命される。 そんな存在ではあるが、エリィは自分の世話をしてくれるサキュバスを大切にしていた。 「まぁ、いいけど。すぐ近くに私の仲間がいるから、合流するわよ。……それにしてもエリィ、実際のところ、何故こんなことになったの? 親衛四天王の動きについては情報が入ってきたけど、動機は知らないの」 「……私には分からん。途方に暮れている。この感情のやり場も分からん。私が圧倒的に1番強いのに……! まさか親衛四天王があんなことを! 何が悪かったのだろうか……」 メリフィールドの憎しみに満ちた表情を思い出す。 「くっ! メリフィールドまで裏切るとは……!! いつから反旗を翻すつもりでいたのだろうか!?」 「う~ん、四面楚歌になるなんて、やっぱりあなたに原因があるんじゃない?」 そう言いながら、シャーロットが鼻で笑う。 「なっ……! お前……! 分かったようなことを……!!」 「……!? エリィ! ちょっと待って! 」 先頭を走っていたシャーロットが急停止する。 逃げながら話していると、目の前に青い光が広がっていることに気づいたのだ。 「なんだ!? 結界か!?」 続いてエリィ達も立ち止まる。 結界だと気づいた時にはすでに手遅れで、青い光は周囲に広がっていた。 そして、後ろから親衛四天王たちが接近してきた。 逃げたエリィ達を、すぐに追いかけていたのだ。 メリフィールド達は青い光の向こう側で立ち止まる。 「焦っていましたか? 簡単な結界に引っ掛かりましね」 「まさかシャーロット王が乗り込んで来るとは!」 「やはりあなた達2人は何かを企んでいたのでしょうか?」 四天王だけではなく、そこには北地方の魔人達の姿が10人ほどあった。 先ほど四天王とともにエリィを追い詰めた屈強な魔人達である。 そして、ブルーも同行させられていた。 「拷問部隊のお前……逃げられるとはな」 「責任は拷問部隊にあるな」 「とくにお前……この罰は重いぞ?」 ブルーは四天王達に冷たい視線を向けてられている。 (げげっ!? シャーロット王が乗り込んで来たから、絶対に無理でしたよ!? 四天王達……また無茶苦茶なことを言ってる! なんで拷問部隊の責任になるのよー。また私が嫌われる! というか、城から追い出される!!) 納得がいかないブルー。 エリィは相手側の様子を見て、まずい事態に気づく。 「待て……世話係のサキュバスが1人つかまっている」 メリフィールドが下位のサキュバスの手首を掴んでいる。 そして彼女は、勝ち誇ったように喋り始めた。 「やはりエリィ様の拷問は難しいでしょう。代わりにこの下位のサキュバスの拷問を行ないます。あなたがわざわざ一緒に逃げ出そうとするなんて、重大な秘密を知っているのかもしれません」 それを聞いたブルーが眉間にシワを寄せる。 (世話係のサキュバスを拷問するのは、私の案なんですけど……!) ブルーのイライラが溜まっていく。 そんな中、動いたのはエリィだ。 「貴様! その者をこちらに返せ!!」 前に出るエリィ。 ……が、結界が邪魔をして前に進めない。 その様子を見て、メリフィールドが笑いながら喋り出す。 「そんなに必死になって……。やはり何か秘密を知っているんですね?」 彼女の質問に対して、エリィが真剣な表情で焦りながら説明を始める。 「そいつらは何も知らない! 何もできない! 弱く、知能も低く、兵士にもなれない! それでも、私は世話になっているんだ! 必死に私の予定を管理してくれている! 私の大切な美術品も丁寧に手入れしてくれているんだ!」 エリィの言葉に、ブルーが目を丸くする。 (え……エリィ様!? それが……理由なんですか? じ、自分の部下を助けようとするんですね! こんな……私よりもさらに弱いサキュバス達を! 冷酷で残虐と言われているエリィ様が……もしかして本当は優しい?) 予想もしていなかった理由に、ブルーが驚いている。 「そいつは返してもらう! こんなチンケな結界で、私を封じられると思うなよ……!!」 怒りの表情をあらわにしたエリィが魔力を解放する。 彼女の右の手の平が結界に触れると、その部分から徐々に破壊されていった。 その様子を見たメリフィールドの顔が引きつる。 「なっ!? あ、あなたは……本当に規格外ですね!!」 焦るメリフィールドに向かって踏み込むエリィ。 繰り出された掌底が顔面を襲う。 「くっ……!!」 顔を横にそらし、メリフィールドは紙一重で攻撃を避けた。 少し遅れてやってくる風圧に後退りしながら、ゆっくりと口を開く。 「手を……出しましたね!?」 「こいつを取り返しただけだ」 エリィは掌底を放つとともに、尻尾を使って世話係のサキュバスを救出していた。 ブルーは部下を助け出したエリィを見て興奮する。 (エ、エリィ様……! シビれます!!) エリィの行動に衝撃を受けたようだ。 「くっ……! 全員で仕掛けましょう!!」 メリフィールドが指示を出した。 残りの四天王と魔人達が構える。 すかさず前に出てきたのはシャーロットだ。 「ちょっと……私がいることも忘れないでね?」 彼女が真剣な表情になる。 それを見て、メリフィールドも顔色を変える。 「シャーロット王……あなたも戦う気ですか? 国際問題ですよ? まぁ、私達の城に侵入した時点で国際問題ですが」 「国際問題? エリィとは古い仲なのよ。友人が理不尽に捕まったら、助けるのが普通じゃない? 私も戦うから、さすがに引いたほうがいいんじゃない? というか、私が1人で来ているわけないでしょ?」 シャーロットが喋り終わるのと同時にサキュバスが2人、メリフィールド達の両隣から現れた。 彼女達はシャーロットの右腕と左腕と言われている幹部のサキュバスだ。 1人はその手に水晶玉を手にしており、シャーロットの城内への侵入に協力していたことが分かる。 「くっ……!!」 駆けつけてきた2人のサキュバスの戦闘力は高く、メリフィールドが怖気付いている。 それを見て、シャーロットが言葉で畳み掛ける。 「戦争をするのであれば、あなた達の国は戦力ダウンね。エリィがいなくなったんだもの。あ……周囲に住んでいる魔族達から狙われるんじゃない? 北地方の魔人は味方につけているみたいだけど、どこまで耐えられるかしら? 私の国との国際問題より、そっちの心配をしたほうがいいと思うけど」 シャーロットの警告にメリフィールドの口元が歪む。 「くっ! 引きましょう! このままでは済みませんからね……!!」 メリフィールド達は悔しい表情を晒しながら、その場を立ち去った。 事態を収めてくれたシャーロットにエリィが話しかける。 「シャーロット……すまない」 --- 暗い森の中、その場に残っているのはエリィとエリィの世話係5人、シャーロットとシャーロットの幹部2人、そして……ブルーである。 ブルーにしては珍しく、真剣な表情をしている。 「エリィ様……私も連れて行ってください!」 ブルーがエリィに近づいてアピールをした。 「ん? 確か……ブルーという名だったな。なぜだ? お前はあちら側だったはずだ」 「いやぁ、私はちょっと仲間外れでしたからね……」 「さっき牢屋で言っていたな。残虐性……だったか? まぁ、残虐なところがあるのは私も同じだが」 「あ、少しはわかってくれますか? 残虐性、出ちゃいまよねー。もう性癖なんで仕方がないんですよ」 「性癖? 私は性癖というほどではないが……」 「そんな個性も認めてくださいって感じです」 ブルーが鼻を鳴らす。 エリィは彼女の性癖については気にしていない。 その他に疑問に思っていることを切り出す。 「私が不思議に思うのは、お前が20年間疎外されているにもかかわらず何も行動を起こさなかったことだ。悲しく、つらくなかったのか?」 エリィは自分が築いてきた王国の幹部達に裏切られ、つらい気持ちになっている。 そのため、このような質問をブルーにした。 「え? いやぁ、私は自由に生きたいので。本当は群れるのは好きじゃないんですよ。魔界は群れないとキツいですから一緒にいただけです」 「……なるほど。それもさっき言っていたな。……そうか」 自分と同じものを感じたが、今の話を聞いて違うと思うエリィ。 「私がエリィ様について行こうと思ったのは、エリィ様……意外と部下を大切にするようなので安心できると思ったからです」 「そうか……。まぁ、部下にもよるが……」 「……」 ブルーは黙って何かを考えている。 なるべくエリィの言うことを聞こうと思ったようだ。 「わかった。ともに行こう」 「やった♪」 ブルーは自分と似ている状況だと思ったが、性格や考え方は全く異なる存在だ。 エリィは、そんなブルーに興味を持った。 2人のやり取りを見ていたシャーロットが一歩前に出て口を開く。 「ねぇ、話し込んでいないでさ。……どこか行くアテはあるの? ないなら私のところに来ない? 私の国の戦力を強化したいわ。エリィ、私とあなたが一緒にいれば無敵じゃないかしら? 魔界を揺るがす大ニュースよ」 「シャーロット……お前は古くからの知り合いだ。しかし、信じていいものか……」 シャーロットが目を丸くして驚く。 「え……今、助けたじゃない。しかもすごい格好良くさ。まぁ……私も昔、助けられたことがあるから、貸し借りナシって感じだけど」 「助けてもらった……が、お前を信用し切ることができない。それは……お前が強いからだと思う」 「え? どういうことよ? あなたほど強くないわよ」 「単純な強さだけではない。部下を指揮する力が高く、頭の回転が早い。先ほどメリフィールドを退けたときも口が達者だと感じた。広い情報網も持っているようだな。的確な手段で私の城への侵入することに成功したし……さまざまな種類の強さを持っている。……強いものは、私を裏切る」 「え……強いからって、裏切るとは限らないと思うけど……」 「……」 「ちょっと……エリィ?」 裏切られたことを思い出し、考え込むエリィ。 元気のない彼女に代わってブルーが話に入る。 「あ、エリィ様……部下に裏切られて疑心暗鬼になってる感じですねー。そうですよねー。ヒドいことがあったばかりですもんね。シャーロット王の誘いは、また落ち着いてから考えればいいんじゃないですか?」 「……そうだな」 エリィが暗い表情で頷いた。 「……そう。残念だわ。でも、正直に言ってくれてありがとね」 溜め息をつきながら答えたシャーロットをエリィが見つめる。 「……」 「何よ?」 何も喋らないエリィを見て、シャーロットが不思議に思う。 「意外なものだ」 色々と考えた末に口を開くエリィ。 「え、なにが?」 「お前とは古くからの長い付き合いだ。昔も今も、私のほうが強いがな。それでも国を上手に統率できているお前を羨む」 「エリィ……なんか本当に素直ね。確かにあなたの方が戦闘は強い。まぁ、向き不向きはあるわよ」 向き不向きという言葉を聞いて、エリィは目線を逸らす。 (私は統率に不向き……か) エリィは少し考えた後で会話を再開する。 「……さっきお前が言ったような、2人で協力する未来もあるかもしれん。ただ、もう少し、お前の力を頼らずにがんばってみようと思う。私は……魔法陣を作成して地上に行くことにする。魔界で国を統治することに疲れた」 「あら、そうなのね。地上へ? そう……うん、まぁ……ね。メンタルが弱っているのね。まぁ、一生の中で、そういう時間が少しあっても良いかもね。あ、メリフィールドたちに復讐したくなったら協力するから」 「おそらく……それはない。先ほどお前が言ったとおり、ここまで四面楚歌だと、私に何か原因があったのだろう」 「そうかもしれないわね。あ、魔界のものが欲しかったら私に連絡してね。インテリアとか芸術品とか、協力するわよ」 「……助かる」 「魔界に戻って来たかったら、いつでも私に声をかけて。助けになれると思うわ。いくら地上とは言え強敵もいるでしょう。その子達とじゃ不安になってくると思うわ」 「わかった。また……会おう」 「ええ」 こうしてエリィは、世話係のサキュバス5人、そしてブルーを従えて地上に向かった。