20.若き才能が立ち向かいます【宿屋に泊まったらパーティの女賢者に魔法責めされて、超絶イキ地獄を味わいHPが0になった】
Added 2022-03-18 08:00:00 +0000 UTC俺は前方にいる2人のもとに駆けつけた。 その少し先で静かに喋っているのは……魔族だ。 俺が聞き間違えていなければ、奴は確かに自分のことを【デスヌーダ】と言った。 その姿は、一見すると人に見えなくもない。 190センチほどの高身長で、引き締まった筋肉。 褐色の肌……。 上半身は裸で、下には黒い腰巻きを装備している。 しかし人間とは異なり……大きな黒い翼が生えている。 ここが大きな違いだ。 突如として出現した魔族は、冷徹な目でこちらを見ている。 「我が名はデスヌーダ。この世界の……新たな魔王になる者だ」 現状を把握したレインが口を開く。 「デスヌーダ……この大陸にいる魔族ね。魔王軍の元幹部……」 そう、この大陸にいるのは分かっていた……。 まさか……魔物に町を襲わせているのがデスヌーダだったとは! 「魔族ですか……私たち2人で戦います。勇者様は下がっていてください」 駆けつけた俺に、ルーが指示を出す。 「この2人が今の仲間か? そうか……私が放った魔物を一掃したのも、お前達だな?」 デスヌーダがルーとレインに視線を合わせる。 「だったら……なんだって言うのよ?」 レインが強気な態度でデスヌーダに近づく。 「レイン! 不用意に近づくな! ルー!! お、俺のリング……外せないか?」 町の魔法屋まで行くとなると、往復20分はかかる。 走っても……往復10分ぐらいか? そもそも魔法屋は閉まって、店主は避難しているだろうし。 ルーの魔法でなんとかならないのだろうか? 「勇者様……またそんなことを……。もう戦いが始まりますよ。そんなに外したいなら、戻って魔法屋に行って下さい。逃げないでくださいよ? 勇者様の子供がいるかもしれませんからね?」 「なっ!? そんな余裕は今、ないだろう? 俺は……ルーのことを心配してだな……」 「デスヌーダは魔王ってわけではないんですよ? 私は今、あの魔族からそれほど脅威は感じません。私とレインの2人がいれば問題ありませんよ……。一応、私は後衛で戦いますから、心配無用です」 ルー……確かに魔王ではないけどさ! 実際にデスヌーダと対峙してみると、脅威は……確かにそれほど感じないな。 俺は『デスヌーダが強い』という話を聞いていただけだ……。 俺が……恐れ過ぎている? どうする? この2人で勝てるのか? 「話は済んだ? ……やるわよ、ルー」 「ええ、レイン。もちろんです」 2人の表情が変わった! こ、この迫力……!! さっきまでとは異なり、本気で戦うつもりだ! 一気に集中した状態に入った! この魔族はそこら辺の相手とは格が違う……という認識はちゃんとしてくれているようだ。 よし……この2人を……信じよう! 危なくなったら、俺も魔法で援護するぞ!! まずは……レインが動いた! 猛スピードで前進している……! 「おりゃあああっ……!!」 レインは拳に炎を纏わせているぞ! 敵の前で急停止し、右のストレートを放つ!! 「う……! なんだその炎は!? 貴様……何者だ!?」 意表を突かれたデスヌーダが防御に回る。 両腕で顔をガードしたぞ! 「私は……賢者よっ!!」 レインのパンチがガードされる……が、攻撃は止まらない!! 炎を纏った拳撃がデスヌーダを襲う。 「どりゃああああっ……!!」 レインの……怒涛のラッシュだ!! 右と左のパンチ、ローキックと膝蹴りも織り交ぜて、次々と攻撃をヒットさせていく……!! 「ぐふぅっ!!」 右のミドルキック!! 強烈な1発が綺麗にデスヌーダの横腹に入った! 「……チャンス!!」 レインの拳が炎から氷に!! その氷が伸びて…… 「ぐはああっ!?」 デスヌーダの胸を一突きだ!! 胸から青い血を吹き出しながら、仰向けに倒れたぞ!? う……動かなくなった。 「なんだ……私1人で充分だったわ。たいしたことなかったわね」 レインはそう言い放ち、後ろでスタンバイしていたルーのほうを振り向く。 「本当に……たいしたことなかったですね」 今度はルーが振り返り、俺のほうを見る。 ジト目だ……。 倒せたのであれば良かった。 想像以上に彼女達が強かったんだ。 ……ん? いや、待て……。 倒れたデスヌーダがわずかに動いている! 「いや……まだだ!! デスヌーダを見るんだ!」 ……なんとなく、嫌な予感がする。 デスヌーダの体が……変化しているのか? 奴の肌の色が……紫色になった!? そして、立ち上がったぞ……。 ん!? 体が……一回り大きくなっている! 2メートルを越す巨体になっている!! 「変化……した!?」 レインが驚いている。 変化……なんか既視感があるな。 「そうだ! そう言えば、魔王も……戦闘中に変化していた! しかも、2回も変化した!」 かつての仲間と戦った魔王戦を思い出した! 最終決戦だったのでよく覚えている! 2回……つまり第3形態まで変化していた! 「オオオオオオオォッー!!」 突如、雄叫びを上げるデスヌーダ! 本能のままに叫んでいる! 変化前は理知的な印象だったが、今は違う!! とても暴力的で破壊的な印象を受けるぞ! な、なんだ!? 風圧が……来る!? いや、魔力を放出したのか!? 叫ぶのと同時に!! 「うわあああああぁっ!?」 俺の体が宙を舞う! う、後ろのほうに吹っ飛んでしまっているぞ! そして地面に体を打ち付けられた!! い、痛い……。 ここら辺は荒れ地なので余計に痛い。 こんな広範囲な攻撃をしてくるとは、参ったな……。 そうだ! ルー達は!? あ……前にいた2人は……余裕で耐えているな。 さすがだ……! やはり前衛にレイン、後衛にルーの陣形で戦うようだ! 向かって来るデスヌーダに、ルーが手の平を向ける。 「明らかなパワー系になりましたね!? ……重力の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん。我が右手にその魂を集めたまえ! ……沈降魔法オモ・クナール!!」 ルーの魔法だ! 体が重くなる魔法だな!? ……通用するのか!? あ! デスヌーダの動きが鈍ったぞ! 「かなり魔力を注ぎ込みました! 重力は2倍になっています……!! 効いて良かった!! レイン!!」 「わかっているわ! 私は……攻撃する!! ……気流の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん! 我が全身にその魂を集めたまえ……風魔法ウィンドアップ!!」 レインは風魔法で自身のスピードを上げたぞ!! そして、やはり拳に炎を纏っている! い、いや……右手に炎、左手は氷だ!! 右手で戦い、左手でトドメを刺すつもりだな! 2種類の魔法を拳に纏っている……!! ルーが補助にまわって、上手く連携しているな! こ、これは……良いコンビネーションだ! 「おりゃあああぁっ……!!」 レインが怒涛のラッシュを再開する!! 次々と敵の身体にヒットしている……! ただ……デスヌーダのやつ、完全なパワー系になっているぞ! フィジカルが強化されているせいで……ダメージを与えている感じはしない!! 「甘いぞぉっ!! そんな攻撃じゃ、次期魔王の私は倒せない!! オオオオオオオォッー!!」 再びデスヌーダが吠えた!! またしても魔力を放出したんだ! 氷の拳を使う間もなく、レインが後退する。 それにしても……すごい魔力の放出だ。 後ろに吹っ飛ばされた俺の方にまで、圧力を感じるぞ。 ルーとレインの2人は後退しつつも倒れずに耐えている!! な、なんてこった……! 変化後のデスヌーダ……強いな!? 「くっ! デスヌーダ!! 賢者を舐めないで!」 魔力を放出し続けるデスヌーダに、レインが突っ込んでいく!! 左手の氷を放つつもりだ!! 「あっ!! レイン! そ、そこは突っ込むな!」 魔力放出中は……危険だぞ!! 「くぅっっ!」 ああぁっ! 近づくほどに、魔力放出による影響を受けてしまっている!! デスヌーダの間合いの中で、レインの動きが止まってしまった!! レイン……そこは突っ込んじゃダメだ! 放出が終わるまで待たないと!! 素質があっても……まだ若い! 「隙だらけだ……小娘!!」 デスヌーダが、その巨体を一歩前に進めてパンチを繰り出す!! 「きゃあああぁっ!?」 レインの顔面にヒット!! 第2形態のデスヌーダ……強い!! ここまでの強さを持っているとは! 次期魔王と主張するだけのことはあるな……!! 「レインが……!! 大丈夫ですか!?」 レインの足がグラついている。 今にも倒れそうだ! ……が、レインはすぐに体勢を立て直して戦い続けた。 デスヌーダからの魔力の放出はおさまり、接近して打撃を放つことができている! 一方、ルーは俺のところまで後退してきた。 「勇者様……えらく吹っ飛びましたね? 大丈夫ですか?」 「俺は大丈夫だよ!」 「あの……デスヌーダは、あともう1段階変化する可能性がありますか?」 「あ、ああ……おそらく。魔王はそうだった。……って、レインをあのまま戦わせていて大丈夫か!? レインを……助けないと!」 「私の重力魔法がまだ効いているので、さっきみたいにムリに突っ込まずに冷静に戦えば大丈夫でしょう。ただ、ダメージは与えられていないですね……。氷の拳が、あの体に刺さるのかどうか。あ、繰り出すみたいです!」 「くらえ! デスヌーダッ!!」 レインが相手の隙をとらえ、氷の拳を繰り出した! 先端の尖った氷が、敵の胴体を突き刺そうとする!! 「なぁっ!? そ、そんな……私の氷が……」 ……突き刺さらない!! 皮膚で止まり、氷が砕け散ってしまった!! 「これは……私も加勢しないとマズいですね。ただ、今は重力魔法を維持するのに魔力を使い過ぎていて、他に何もできないんですよ。重力をもとに戻したら……レインが危険です」 そうか……明らかに劣勢だ。 やはり町まで逃げて、魔法屋の店主を探しに呪いのリングを外してもらうように頼むか? そんなことをしている間に、2人が殺されてしまうか……。 むしろ相手に背を向けて逃げたところを狙われそうだ。 ルーの魔法を使ってみんなで飛んで逃げても、相手も飛んで追って来るはず。 デスヌーダには……翼があるからな。 ……どうする? 「なかなかやるじゃないか! 小娘たち……!! オオオオオオッ!!」 「見てください、勇者様! デスヌーダが……ま、また変化しています! さ、最終形態……!?」 筋肉の膨張が激しい。 さらに……大きくなっていく!! 「う、嘘……でしょ!?」 レインが呆然としている。 劣勢の状態での、相手の戦力アップ……。 こ、心が折れかけているのか!? 「わ、私の……私の魔法が……弾かれました!!」 なぁっ!? 重力2倍の効果が切れてしまったのか……!! 魔法防御も上昇しているのだろうか!? 「くっ! 重力1.5倍で魔法をかけ直します……!!」 ルーが詠唱を始める。 デスヌーダ……もう体が3メートル近くになっているぞ!? あんな大きな体から放たれる攻撃を喰らったら……一撃で死んでしまう!! 「魔法は効きました! き、効きましたけど……」 圧倒的な威圧感を放っている! こ、これは……厳しいな……!! 「……に、逃げろ! 2人とも! 死ぬぞ!! 逃げるんだ! ルー! 俺が時間を稼ぐから! いいから、飛んで行け!」 俺は慌てて前進する。 レインが……殺される!! ルーと2人で逃げてくれ!! ひ……一回り大きくなったデスヌーダが右腕を振り上げている! 「雷の勇者めぇっ!! 逃げるぅっ!? 逃がさんぞおおぉっ!!」 言葉使いがさらに荒くなっている……!! デスヌーダのハンマーパンチが、再びレインの顔面をとらえた。 「きゃ、きゃあああっ……!!」 レ、レインが……!! その場で崩れ落ちた! ……が、すぐに起き上がろうとしている! 両腕でのガードが間に合ったんだな!? よ、よく……耐えた!! 「う、う、うわあああぁっ!? も……もう……ムリィ……!! こんな……大きな……体……」 な、なぁっ!? 両腕を負傷したのか!? ……ダ、ダメだ! 立ち上がるのをやめて、座り込んでしまったぞ!? 戦うことをやめてしまっている! こ、心が折れてしまったんだ!! 「まずは1人目えぇっ……!! トドメだぁっ!!」 デスヌーダがレインの前でゆっくりと右の拳を振り上げる。 「ヒッ!! た、助けて……」 くっ! 恐怖のあまり、レインが涙を流している……!! 急げ! 俺! 俺の今のレベルじゃ戦力外で厳しいだろうけど! 俺は詠唱を試みようとした。 「勇者様!! 重力魔法を解除して……私が助けます!!」 ルーがデスヌーダに近づいていく! 重力魔法の代わりに……なんの魔法を放つんだ!? もう時間がないぞ!? 右の手の平を前に出し、集中している!! 「……ギャアアアアアッ!?」 デスヌーダが叫ぶ! 奴の全身に……細かい無数の切り傷がついていく!! か……風魔法!? ルーが無詠唱で、連続で風魔法を放っている! さすが無詠唱! 発動が早い!! 敵の青い血が地面に滴り落ちている……! デスヌーダはたまらず、後退し始めた!! よし! レインへのトドメの攻撃を止めることに成功した! 「癒しの精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん! ……我が左手にその魂を集めたまえ! 回復魔法……ヒール!!」 ルーが風魔法を放ちながらレインのところまで行き、座り込んで回復する。 俺もあとについて行く。 「……もう……ムリ」 レ、レインが諦めているぞ! 圧倒的な体格差と重い攻撃に心が折れている!! な……涙を流しながら、ブツブツ言っている! 「ルー……このままじゃマズい! 俺の呪いのリング、外してくれ!」 ルーが首を横に振った。 風魔法と回復魔法を同時に使用しながら、俺に返事をする。 「ごめんなさい……私には解除できないんです……本当に……魔法屋に行かないと……」 「なっ! そ、そうか……できないのか……!!」 「勇者様! 前っ……!!」 う……巨体を揺らして、こちらにデスヌーダが近づいてきている!! 「そっちの女がこの風魔法を放っているのかぁっ……!? そして……回復魔法もできるのかぁっ!」 風の刃を無数に受け続けながらも、こちらに進んで来た! 回復に魔力を割いたぶん、風魔法の威力が弱くなってしまったのだろうか!? 「くっ! レイン! 心を強く持って下さい! エリートの意地を見せて下さい!」 そう言い残し、ルーが立ち上がる。 レインへの回復をやめて、攻撃に専念する気だ。 「火炎の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん……我が右手にその魂を集めたまえ……炎魔法ファイアダスト!!」 ルーの炎魔法だ!! 彼女の右手から、無数の火の玉が発射される!! 直径1メートルほどの炎の玉が何発も何発も放たれる。 「う、ううぅっ!? うおおおおっー!?」 よし! デスヌーダに全て直撃している!! 「勇者様! レインを連れて離れて下さい! ……大地の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん……我が右手にその魂を集めたまえ……岩石魔法メテオライト!!」 な、なんだ!? 岩石魔法!? そ、空から、大きな岩が数十個降って来た!? 岩の直径は3メートルほどだ! デスヌーダの今の体と同じぐらいだぞ! な、なんて魔法だ!! に、逃げろ……!! 「おおおおっ!? オオオオッー!?」 超高速で大きな岩がデスヌーダにぶつかっていく!! 岩石魔法メテオライトって言ったのか!? な、なんだそれは……!! また知らない魔法をルーが使っている! 俺はレインを抱えて後退した。 ルーも同様に後退している。 「はぁっ……はぁっ……!! ……ど、どうですか!!」 ルーの息が上がっている。 す、すごい魔法だった!! これは……決まっただろ!? 辺りに岩の破片と土埃が舞っている。 やがて静まり、デスヌーダの巨体が姿を現す。 「ぐふぅっ……! こんな魔法が使えるなんて……優秀だなぁ? けど……効かないなぁ……!!」 効いていない!? う、嘘……だろ!? 「な……くっ……そんな……本当に……ほとんど効いていないです! わ、私は……全力で撃っているのに!!」 単純に、デスヌーダのフィジカルが強い! うすら笑いを浮かべながらデスヌーダが前身し、ルーの前まで来た。 敵の体は傷だらけではあるが……すべての傷が浅い。 全く致命傷を与えられていない……! 「さて……そろそろ殺すかぁっ……!!」 デスヌーダが近づいてくる。 「こ、来ないで下さいっ……!! う、うわああああっー!!」 ルーの無詠唱!! 再び風魔法を放っている! しかし……デスヌーダは止まらない。 小さな傷が増えていくだけだ。 「たいした威力ではないぞ……? さっきの隕石で魔力が切れてきたのかぁっ?」 「そ、そんな……。あ、あああぁ……」 なにっ!? ルーが涙を流し始めた! 恐怖……か! 死の恐怖を感じてしまったのか!? レインも……まだ動けない。 ある程度、ルーが回復してくれたはずだが、痛みではなく恐怖で動けないんだ! しゃがみ込んだまま、体が震えているのが……わかる。 このままでは先頭にいるルーが殴られてしまう! ルーのお腹には、俺の子がいるかもしれないんだ!! 「もう……終わりかぁっ!?」 傷だらけのデスヌーダがルーの前まで来た。 そして拳を振り上げる。 「た、たすけ……て……きゃあああっ!!」 俺は全力で走り、ルーを抱き抱えた。 俺の顔面にデスヌーダのパンチがかする。 うぅっ……! 俺の頬から血が……!! な、なんて風圧!! 「ゆ、勇者……さまぁ……。あ、ああ……よかった……ですぅ……」 ルー!? 何やら俺の左手に温かい液体が!? これは……お、おしっこ!? おしっこを漏らしているのか!? こ、これは……参ったな……。 もうルーも……戦えない。 「雷の勇者ああぁっ!! やっと……お前の出番かぁ!? こんな半端な女どもに戦わせて……。準備運動はとっくに終わっているぞぉっ!?」 デスヌーダ……やはり体が大きくなるとともに、喋り方も荒っぽくなっているな。 最初の雰囲気は無くなっている。 ……さて、状況を整理しよう。 レインは動けるぐらいは回復しているし、まだ魔力も残っているだろうけど、心が折れている。 ルーはノーダメージだが、やはり心が折れている……。 魔力は、ほとんど残っていないだろうな。 そして、俺……呪いのリングを2つ装備した今の実力じゃ……どうしようもない……。 今の俺のレベルでは……何もできない! 次元が違い過ぎるんだ……!! このまま……全滅か? 全滅……するわけにはいかないよね!! 俺はルーをそっと地面に寝かせ、彼女から返してもらった自分の剣を抜いた。 「ようやく……やる気になったか! 雷の勇者!!」 俺は剣を逆手に持ち、地面に突き刺す。 そして、自分の両手を剣の刃めがけて思いっきり振り切った。 自分の両方の手首を……切断するように。 「勇者……さま……!?」 ルーの驚きの声が聞こえた。 俺の両手……手首の辺りから先までが宙を舞う。 俺の両手が体から切断されたのだ。 「な! なぁっ!? じ、自分の手を!? 雷の勇者……血迷ったかぁっ!?」 デスヌーダが大声を上げる。 「は!? う、嘘……!? な、何を……?」 後ろでレインも動揺している。 「ゆ……勇者さまぁっ!!」 ルーが叫ぶ。 ……ルーとレイン。 2人とも、死ぬかもしれない……という恐怖に負けてしまった。 命をかけた、本当に殺されるかもしれない戦いは、まだ経験したことがなかったのかもしれない。 ルー対レイン戦では、2人とも殺し合うことをそれとなく示していたけど、実際は本当には殺せないんだろうな……って俺は思っていた。 もちろん、彼女達の才能はすごいし、将来性も……ものすごくある。 ……けど、命を懸けて戦った経験がなかったんだ。 あくまでも、まだ……若者なんだ。 俺は……命をかけた戦いを乗り越えてきた。 勇者はな……殺されるかも……って思ってからが勝負なんだよ。 世界の平和を守るという使命を果たすために、命をかけなきゃいけない。 勇者は……負けられないんだ。 ここは俺が、命を懸けて戦う! 俺は視線を下に向け、出血している自分の腕を確認した。 よし……呪いのリングは2つとも外れている。 手首から先とともに、地面に落ちたのだ。 「……デスヌーダ! 俺が相手だ!」 俺が放った大声に敵が反応する。 「雷の勇者……! 自ら切り落とすとは……一体なんの真似だぁっ!?」 切断面からの出血がヒドい。 この戦いは……短期戦に持ち込む。 俺は死ぬかもしれない……。 けど……ルーと、お腹にいるかもしれない俺の子供を守るぞ。 「デスヌーダ……なんの真似……だと? ……ハンデに決まってるだろっ!!」 俺はデスヌーダに向かって突進した。