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11.あなたの睾丸を守ります【宿屋に泊まったらパーティの女賢者に魔法責めされて、超絶イキ地獄を味わいHPが0になった】

 俺とレイン、そしてルーも一緒になって宿屋に戻った。 部屋に入ると、ルーがレインに疑問をぶつけた。 「レイン……! さっきの話の続きです。報告を受けてから、ここに来るまでが早過ぎます。賢者の里から近隣の砂浜まで、さすがに一晩では来れませんよね?」 「ああ。私は偶然、この町にいたからね」 「……偶然? あらかじめ、私と勇者様がこの大陸に来るのを待ち伏せしていたんじゃないですか? ……何を企んでいるんですか?」 「……まぁ、こんな大仕事を、貧民街出身のあなたに任すことを嫌がる貴族もいるのよ」  なにやら里の内部でゴタついているようだな。 賢者の里は、貴族と貧民街出身者とで差別的な社会が成り立っているわけだ。 「……そうでしたか。やはり待ち伏せしていたんですね。勇者様が逃げ出していなければ、監視をするつもりだったということですか?」 「まあね。監視……する予定だったわ。もっとも、あなたが勇者に逃げられたせいで、海を漂う勇者を探すことになったけど」 「『監視する予定だった』って……そんな勝手なことをして、カタストロフ王国側に何か言われたらどうするんですか? 勇者様にお供するのは1人だったはずです。王国側の許可なく監視なんてしたら、大変なことになるかもしれません! どこの貴族がそんな指示を出したんですか……?」 「大丈夫。私に命令したのは大賢者様よ。王国側になにか言われたら、弁明してくれるわよ」 「大賢者様……! 大賢者様だったんですね!?」 「ええ。あなたがヘマをしないように……という指示ね。選抜試験ではあなたに負けたけど、私のほうが大賢者様に気に入れられているみたい。王国に監視を気づかれたら、『万全を期して監視をつけていた』……って言うつもりだったんじゃないかしら」  大賢者……確かに水晶玉で直々に指示を出していた。 レインは彼に気に入られているのか……。 「それなら……問題はなさそうですね。大賢者様ですし。それにしても、私は信用されていないんですね。まぁ……勇者様に逃げられたので何も言えないです」 「そういうこと。あなたはミスをしたのよ? つべこべ言わずに大人しくしていなさい」 「くっ……!」  ルーが強く言われている。 俺に逃げられた落ち度を責められているぞ。 「ふふんっ♪」  レインは何やら嬉しそうだ。 仲間のはずなんだけど仲は悪そうだな……。 貴族と貧民街出身者で大きな溝がありそうだ。 「あなたが賢者の里に連絡した後、マカロインにいる私に勇者を探す指示が出されたってわけ」 「……わかりました。レイン……これから残党狩りの仲間に加わるということでしょうか?」   ルーが確認している。 そ、それは……俺への監視がキツくなってしまうな! 「いや……私は私で、さっさと新たな目的を果たすわ。そのあとは、また大賢者様に報告して確認を取るつもりよ」  レインの新たな目的……そ、そうだ! ルーの登場で忘れていた! まずいぞ!! 「ちょっ! ルー!! この賢者の目的は俺の睾丸を潰すことだ! な、なんなんだよ、この賢者は!? そこまでするなら俺は全力で抵抗するぞ! 意地でも魔法屋に行く!」 「そう、それが私の目的よ。……協力して、ルー。あなたの傀儡魔法なら簡単に動きを支配できるでしょ? 今、この勇者のレベルは低い」 「ちょっ! ルー!! 協力しないよな!? わざわざ睾丸を潰す必要なんてないだろ!? この賢者を止めてくれ!」 「……」  ルーが黙っている!? 「ルー? 早く傀儡魔法を使って」 「……」  な、なんだ!? ぜんぜん喋らないぞ!? 何かを考えている……。 「ルー!? なんで傀儡魔法を使わないの? 大賢者様から指示が出ているのよ? この男の睾丸を……潰さないと! こうやって……!!」  なっ!? レインが俺のほうに向かって来た! くっ! 完全に虚を突かれた! 本気で俺の睾丸を握り潰しにきているんだ! 彼女の右腕が俺の股間に迫っている!! は、反応できない!! 「きゃっ!?」  えっ!? レインの……悲鳴!? あ、ああっ!? レインの右腕に切り傷が!! 血が流れ始めた……! 「ルー!! なんで勇者の睾丸を守るのよ!?」  ルー……!? ルーの風魔法か!? 無詠唱の!! 俺を……守ってくれたのか!? 「レイン……睾丸を潰す許可は本当に出ているんですか? 私は何も言われていません!」 「出ているわよ! 去勢は優先事項になったわ。大賢者様の指示ね」  ……そう、確かに言っていた。 俺にも水晶玉から音声が聞こえたぞ。 って、優先事項なのか……や、ヤバ過ぎるだろ! 「大賢者様……そんなに焦っているなんて……」 「それはそうよ。勇者が逃げたからね。何をしでかすか分からないわ。私だって一時的にだけど、さっき逃げられたわ。危険よ。旅の途中で、私やあなた、もしくは行きずりの子が種付けされたらどうするのよ? 勇者の子供よ。確実に【引き継ぎ】が起こるわ」 「そ、そうだけど……! 勇者様にはそんな度胸はありませんよ!」  お、おい……!? ヒドいぞ! 確かに童貞だから自信はないけどさ……。 「ルー? なんでそんなに睾丸を潰すことを拒否するの? 賢者にとって、当然のことでしょ? 貧民街の出身者だからって……」 「貧民街の出身者だから……ですって? その言い方は……いい加減、聞き捨てならないですね。貴族とは言え……」  ルーが怒っている! 差別的な物言いに対して反応しているぞ! 「ふんっ。今さらね。ルー……もう一度聞くわ。なんでそんなに去勢を拒むの? 大賢者様の指示なのよ? あなた……もしかして、何か私の知らない指示を受けているの? 誰の指示?」 「去勢は……里に連れて帰ってからでも良いはずでは? どうせ儀式をするのですから……その……」  ルーがレインの質問に対して答えを言わない。 なんか歯切れが悪いぞ。 そして……【儀式】とは何だ? 嫌な予感しかしないっ!! 「大賢者様の指示なんだって。しかも、里に連れて帰るのは残党討伐が終了する頃だから1年後ぐらいでしょ? リスクが大きいと判断したのよ。勇者が逃げたからね。……って、いま話したばっかりじゃない。どうしたの、ルー? 聡明なあなたらしくないわね……?」 「……」  ……また沈黙! どうした、ルー!? な、何か小さな声でブツブツ言っているぞ!? 「やっぱり何か隠しているわね? まさか、あなた……」 「……傀儡魔法、アヤ・ツール!」  ルーの傀儡魔法だ! 詠唱していた! レインに向かって放ったようだけど……!? 「傀儡魔法は私には効かないわよ? 試合のときもそうだったでしょ? あなたと私の実力は、同じぐらいだから」 「くっ!!」 「さっきの風魔法に続いて傀儡魔法……。私への攻撃の意志がある……と見なしたわ」  あっ! レインがルーに向かって突進した!! ルーはまた詠唱しているぞ!? 「……傀儡魔法、アヤ・ツール!」  そ、それは効かないだろう!? レインの攻撃は右ストレートだ! リーチが長い!! 「くぅっ!?」  ルーの左頬にパンチがヒットした! 綺麗なフォームで伸びのある右ストレートが決まった! 腰の入った、強烈な一撃である。 だ、大丈夫か……!? ルーが壁まで吹っ飛んでしまった!! 「キャッ!!」 「うぅっ……!?」  えっ!? レインのほうも苦しんでいる! 彼女の全身から血が……! こ、これは……!? 「また……無詠唱の風魔法ね。傀儡魔法はフェイクだったってわけね……!」 「……」  殴られたルーは、壁に叩きつけられた痛みに耐えながら沈黙している。 「私とあなたが本気でやり合ったら、タダじゃ済まないわね」 「……はい。そうですね。こんな宿屋……吹っ飛んでしまいます。騒ぎになってしまいますよ」 「そうね、それはマズいわ。この町もカタストロフ王国の統治下よ。勇者に同行する私たちが破壊行動を起こしたら、大変なことになる……。賢者の計画がバレるわ」 「だからって、私は大人しくしていませんよ? ……重力の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん……我が右手にその魂を集めたまえ。……沈降魔法、オモ・クナール!!」  ルーが魔法を唱えた! 沈降魔法!? また初めて見る魔法だぞ!? 「なっ!? なんの魔法!? 体が……重い!! い、いつの間に……こんな魔法を!」 「新しく覚えた魔法です。あなたの体重が……1.5倍になりました。この魔法なら効くみたいですね? それにしても、こんなにあっさり効くなんて。私のほうが選抜試合のときよりレベルが高くなっているんじゃないですか? レイン……あなたは里の中で、のんびり過ごしていたからですよ。……才能だけじゃ私には勝てない」 「くっ! こ、この……!! 言わせておけば!」 「私相手に1.5倍はキツいんじゃないですか? あなたは魔法で遠距離攻撃するのは苦手ですよね? 肉弾戦ばかりですしw」 「くっ! くそっ! けど、それでも……あなたを殴り倒せる自信はあるわ! チマチマした風魔法でどこまで凌げるかしらね?」  レインが指の骨をパキパキと鳴らしながら前進している! 1.5倍ぐらいの重力では、押さえつけられないのか!? 「さぁ、どうするの!? ルー!! ……派手な攻撃魔法を唱える? 宿屋が破壊されるわ! それとも、勇者と一緒に戦うって言うの?」  お、俺の出番か……? そうだな…… 「……まぁ、ルーの味方はするよ。睾丸を潰されたくないからね」 「勇者様……レインが本気を出したら、今の勇者様では勝てません」  なっ!? それなら……どうするつもりなんだ? 「……重力の精霊よ、その魂の一部を我に譲ることを許したまわん……我が右手にその魂を集めたまえ。浮遊魔法……フワフワ・ニナール!!」  おっ!? ルーが浮いた! 自分に浮遊魔法をかけたのか!! 「私と……勇者様にもかけていますよ」 「えっ!?」  確かに! 俺の体も浮き始めた!! 「レインから逃げることならできるはずです」 「ちょっと! ルー!? 何も説明せずに逃げるつもり!? あなたは……何を企んでいるの? まさか、本当に……」  レインが焦っている! ルーが……逃走!? 逃げる判断をするとは! ルーは宙に浮いたまま俺を抱き抱えた。 ……ル、ルーの体が密着する! わ、わわわ……や、柔らかい……。 そんなことを言っている場合じゃないけど! 「ルー!! 絶対に逃がさないからね!!」  ルーは俺を抱き抱えて窓ガラスを破壊し、空に飛び出した……。 ---    空中に飛び出したぞ! 俺はルーに抱き抱えられたままである。 「……無事に逃げ出せましたね。あの場所で宿屋を壊さずにレインに勝つのは厳しいです。彼女も追い詰められたら、勇者様の睾丸を狙うでしょうし。あのまま続けていたら、睾丸を守りながら戦うことになっていたでしょう」 「おお……危なかった……。お、驚いたよ……空を飛ぶ魔法が使えるなんて」 「私は風魔法が得意で、浮遊魔法も使えるので。それら2つの魔法を組み合わせています」 「そうか……無詠唱で風魔法も使っているのか。浮遊魔法で浮いて、風魔法で進んでいるわけだ。風魔法は切り刻むだけじゃないんだな。しかも2つの魔法を組み合わせるなんて! レインに重力魔法も使っていたから、3つ同時に魔法を使っていたのか。す、すごい……!」  俺は1発ずつしか使えない。 まぁ、そもそも同じ系統の魔法を3種類使えるだけなんだけど……。 ルーの魔法力、純粋に感心するぞ。 「ええ。3つ同時に使っていましたね。もう重力魔法は解いちゃいましたけど。あと、まだまだ飛行速度が遅いです。高さも足りないですね。徐々に高度が下がってしまいますし。ただ、レインが走るのよりは少し速いと思いますよ」 「ルー……色々なことができるんだな。しかも、まだまだ成長過程だよな」  さっきレインに使った重力魔法は覚えたてって言っていたからな……。 レインも、ルーが使えることを知らなかったみたいだ。 若いんだな。 まだまだ成長途中なんだ……羨ましい。 才能も若さも羨ましいぞ。 「ええ。それにしても、まさかレインが来ているなんて……」 「そ、そう! なんなんだ、あの子は!? ヤバ過ぎるだろ! 本当に睾丸が潰されるかと思った!! ……ちょっと……一体、俺はどうしたら……」 「勇者様? ほ、本気でビビっているんですか……? 私にはたいして屈服しなかったのに!」 「俺の生殖能力を本気で奪おうとしているからな……。睾丸を容赦なく握り潰そうとしてくる敵なんて、さすがに恐ろしいよ……。ルーにも金的攻撃をされたが、そのときと違って、あいつは本気で潰そうとしているんだ……」 「なるほど。男性にとって、そんなに恐怖に感じるものなんですね。でも……そこまでやるのが賢者の里です。……さすが保守派です」 「保守派……? 保守派って……どういうこと? い、いやいや! めちゃめちゃ過激だったよ!?」 「あの……保守派というのは思想の問題ですよ。賢者の純粋な血を守っています。ちなみに、私は過激派です」 「えっ? ルーが過激派? ……か、過激派ってどういうこと!? ルーが睾丸を潰そうとしていないのは分かるけど……。どういうこと? 過激派は何を狙っているの?」 「勇者様を無力化させて賢者の地位を向上させたいのは、保守派も過激派も一緒なんです。ただ、過激派は賢者の里に勇者様との子が欲しいんです」 「なぁっ!? ……な、なんだって!?」 「新しい力を手に入れるために、里の外と交わりたいんです。一方で、保守派は賢者の純粋な血を守りたいわけです。なので、賢者と勇者様が交わることが無いように、去勢を行ないたいと思っているんですよ」 「……なるほど」  俺に呪いのリングをはめて無力化し、さらに去勢して【引き継ぎ】を阻止する。 て、徹底しているな……。 俺が寿命で死ぬまでの間、事実上、世界から勇者が消える。 「保守派は、魔王軍の残党を全滅させたあとに、里に勇者様を連れて行ってから去勢を行なうはずだったんですけど……」 「俺が逃げ出したことにより、俺のことを危険だと感じたんだな」 「レインによると、そういうことです。おそらく勇者様の睾丸を狙って、里から保守派の人たちが攻撃しに来るかもしません。このまま逃げ切れるのか……」  そうか。 水晶玉で大賢者と連絡できるからな……。 いま飛んで逃げていることも、レインから情報が筒抜けだ。 「町に泊まるのは危険ですね。幸い、魔法屋で準備は整えておきました」  ルーはしっかり荷物を持ってきている。 「そうか……。なぁ、俺の腕輪……外せないか? 俺は戦闘力を上げて、自分の睾丸を守りたい。せめて1個だけでも腕輪を外して欲しい……」 「ダメです。それだと……勇者様が私から逃げ切れる可能性が上がります」 「う~ん……まあ、そうだよね。それもそうか……」  確かに……1個でも外せれば傀儡魔法は俺に効かないだろう。 俺はルーから逃げて自由になれる。 「そうですよ。……私が睾丸を守ったことにより、レインたち保守派に過激派の存在、そして思想を確信させてしまったでしょう。これから……過激派狩りが始まります。この事態を過激派のトップに知らせないとダメです。そして、指示を仰ぎます。私が勇者様に逃げられたミスで保守派が一気に動き出してしまうなんて……。一度、里に戻ります」 「……」  俺は、ルーの言うことを聞かざるを得ない。 呪いのリングを装備させられている限りは。 まさか俺の睾丸をかけて保守派と過激派が争うことになるなんて……。 俺の睾丸……本当に大丈夫だろうか? 俺が心配していると、ルーが口を開いた。 「あなたの睾丸は……私が守ります」 「え、ええぇっ……?」  ルー……!? な、なんか格好良いことを言ったぞ! この子は……俺のことを悪く言っていたくせに! 俺を連続射精させたくせに! さらには拷問したくせに! ちょっと……キュンとしてしまった。 い、いやいや……! 俺を奴隷のように扱っているルーに、何をキュンとしているんだ! あ、危ない危ない……!! --- 〜ご支援してくださっている皆様へ〜 いつも読んでくださって、ありがとうございます! 次週は2話分更新しますね!(1/28、17:00と17:30) よろしくお願いします!! Subtle


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