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10.睾丸を潰すつもりですか?【宿屋に泊まったらパーティの女賢者に魔法責めされて、超絶イキ地獄を味わいHPが0になった】

 レインに案内されて、近くの町まで歩いた。 この港町が……マカロウンか。 俺とルーが乗っていた大型船の行き先の町だな。 逃げ出せるだろうか……? いや、この女賢者はルー以上に隙がない。 誰かに助けを求められるだろうか? い、いや……まだ朝の早い時間帯なので町の人はほとんど見当たらない。 港のほうに行けば誰かいるのかもしれないけど……やはりレインから逃げられる気がしない。 魔法を唱えるまでもなく、今の俺を制圧できるだけのフィジカルの強さがあるのだ。 「まずは一緒に朝ご飯よ。じつは、私もあなたを徹夜で待ち伏せしていたのよね。ごはんを食べていないわ」  徹夜なのに、あの動きか! 若いな……。 ……あ! あれは……! 魔法屋の看板じゃないか!? 魔法屋だ! 魔法屋を見つけだぞ! しかし、まだ朝早いので営業していないみたいだ……。 「逃げ出そうなんて考えないでよ? 変な動きをした瞬間、ローブをひっぺがして全裸にするわ。ヨロヨロでボロボロの変質者。誰もあなたを勇者だとは思わないんじゃない?」  うっ! 周囲の様子を探っているのがバレたか! やはり隙がないな……。 「くっ……! そんなキミも水着姿じゃないか……」 「え? ……あ、確かに。ここは港町だけど、さすがにマズいかな。色々と荷物は持って来ているよね。海水浴するつもりだったから」  そう言って、袋から服を取り出した。 綿製の赤いワンピースか……。 スタイルが良いので似合うぞ。 って……こんなところで着替えるなんて、ガサツな感じである。 エリートと主張するわりには、海で遊ぶ気満々だったみたいだし。 けっこう本能に忠実な子だぞ。  何はともあれ、朝ごはんを食べることになった。 彼女が泊まっているという宿屋の1階では、朝食が振る舞われていた。 「あ、ご飯が来たわよ。……ほら、ちゃんと食べなさいよ。そんなヘロヘロの状態じゃ旅を続けられないわよ。ちゃんと歩いてもらわないと。さっきビンビンにしていたことは、秘密にしておいてあげるから」  くっ……! レインが好き勝手言っているぞ。 今は……耐えるしかない。 俺にできることは、この女から何か情報を得ることだな。 砂浜での会話で、この子は口が軽そうな印象を受けた。 さっきも少しガサツな印象だったし。 ……探りを入れてみるか。 「キミたち賢者は……カタストロフ王国の転覆を企んでいるんだな?」 「それはルーから聞いていたのね? そうよ。大賢者様が指揮をとっているわ」 「大賢者……その人が賢者の里のトップなのか?」 「そうよ。ちなみに里の中心人物は、みんな純粋な血を受け継いでいる人達なの。もちろん大賢者様もそう。私もそうよ」 「純粋な……血? っていうのはどういうことだ?」 「賢者として、純粋な血を受け継いでいるのが貴族よ。中心街で暮らしているの。ちなみに、ルーは貧民街の出身だから純粋じゃないわ」 「貧民街……?」 「そう、中心街の周りにあるのが貧民街よ。里の外の血も混じっている人が暮らしているの」 「里の外の人との間に子供が生まれた……ってことか。そうか……そういうことか。賢者の里は、そういう階層があるんだな」 「ええ、そうよ」  やはり、この子は口が軽い。 ほんの少しの会話で、賢者の里の情報が色々と得られたぞ。 まぁ、最終的に賢者の連中は、俺を賢者の里に連れて行くつもりだし、喋っても問題ない内容ではあるか……。 「よし……お腹はいっぱいになったわね。それじゃあ、部屋に行くわよ」  食事を終えて、レインと一緒に2階の部屋に向かった。 逃げる隙を伺っているのだが、やはりそんな隙はない。 口は軽いが、たいした実力者だ。  彼女が2階の部屋の前で足を止める。 「ここが私の泊まっている部屋よ。さぁ、入って」  レインがドアを開ける。 「え……一緒の部屋!?」 「ええ、そうよ。そんな余分にはお金を持っていないし……」  うっ! そうなのか……。 カタストロフ王国のサポートがないと、しんどいな。 え……ベッドが1つしかないぞ? 「そもそも、別の部屋にしたら、あなたを見張れなくなっちゃうから。ルーみたいに、結界石を渡されてはいないし」  ……そういうことか。 「……じゃあ一休みしていて。私は水晶玉で里に報告するから」  そう言うと、レインは水晶玉を取り出した。 俺はベッドの上に座っておこう。 彼女が寝ていたベッドだろうけど……。 めちゃめちゃ疲れているので、ちょっと横になろうかな。 もちろん一休み……と思わせて、ちゃんと聞き耳を立てておこう。 俺はベッドの上で横になり、聞き耳を立てた。 彼女が報告を始めているぞ。 「……というわけです、大賢者様。雷の勇者を捕獲しました。マカロウンから離れた砂浜に漂着していました」  報告する相手は大賢者か……! さっきの会話で登場した人だ!! 賢者の里を束ねている、トップの人だよな。 『雷の勇者……夜の海に飛び込み生還したのか。……何をするか分からん男だ。勇者の睾丸は早めに潰しておけ』  大賢者の声が、俺のところまで聞こえる。 ……ん? 今、なんて言った? とても危険な指示に聞こえたけど……? 「わかりました」   ……はい? 俺の睾丸を潰す指示を出したのか!? ……こ、これはマズい!   「さて……聞こえたかしら?」  彼女は交信を切り、こちらを向いた。 その目は先ほどまでとは違う。 使命を果たそうとしている戦士の目だ……!! ま、まさか……本当に!? 「お、俺の睾丸を潰すつもりか!? お、おい……!?」  彼女がゆっくりと頷く。 う、嘘だろう!? な、なぜ……!? ルーはそんなことをしなかったぞ!! 俺はベッドから急いで降りて、構えを取った。 「雷の勇者リット……これは上からの命令よ! 悪く思わないで!」  彼女が視界から消える! 次の瞬間、俺の下腹部から殺気を感じた。 低姿勢で瞬時に俺に接近し、右手で俺の股間を狙っているのが分かった。 俺のローブの中に手を入れ、睾丸を握り潰す気だな? たしかに速い……が、どこを狙っているのか分かれば、対処はできる。 俺はその場で半回転し、レインの右手から逃れる。 「え……!? よく反応できたわね……!!」  俺はそのままベッドに飛び乗る。 すぐに布団をつかみ、レインに向かって勢いよくブン投げる。 「ちょっ!? すごい必死ね!」  彼女は後退しながらが、布団を素早く払う。 「あ、当たり前だろうっ……!!」  よし……思ったより俺の動きが良い。 食事をし、ほんの少しだけ横になったおかげで、体力が少し回復しているぞ! 部屋にある物を投げ続ければ、レインから逃げられるかもしれない! 「やってくれたわね! 次は……全力で行くわ」  うっ! また彼女の目つきが変わった! 獲物を狙う獣のような目だ!! いや、これはもう……本気で潰す気でくるぞ!! こ、怖い……。 俺の玉袋はローブの中で縮み上がっているだろう。 ここは……一か八か…… 「……雷の精霊よ!」 「え!? 魔法……の詠唱? あなたの魔力は切れているんでしょ?」  レインはそう疑いながらも、警戒して身構える。 ……チャンスだ! 「その魂の一部を我に譲ることを許したまわん……我が手にその魂を集めたまえ! ……サンダー!」  俺の手の平から、1発の雷が彼女を襲う! よかった! 魔法が発動した! 食事と休憩のおかげで、ほんの少しだけMPが回復していたのだろう! ナイスだ! この回復力、俺はまだまだ若いかもしれない! 「くっ!?」  レインが防御の姿勢に入る。 よし! 直撃した! 俺が使える中では一番弱い魔法だが、たしかにヒットした! ……逃げるぞ! 絶対に逃げる! 俺は痺れているであろうレインを部屋に置き去りにし、宿屋の外に出た。 よし……レインは動いていない! ちゃんと痺れているぞ!! 「よ、よくもやってくれたわね! 雷の勇者!! ……逃がさないわよ!」  うっ!? お、追ってきているぞ!! 足が速いな! サンダーの痺れが取れるのも早いぞ!? やはり、かろうじて1発だけ撃つことができた弱々しい雷撃だったか! どうする!? 誰かに助けを求めるか!? いや、誰かに助けを求めても、その町民もろとも殴られて終わりだ! そんな勢いを後ろから感じる!! そもそも、そんなヒマはない! 話しかけようとしている間に追いつかれる! チャンスがあるとすれば……魔法屋だな! 俺の戦闘力を元に戻す! 魔法屋に入り、ドアを閉め、彼女が入ってくる前にリングを1つでも解除してもらう!! 魔法屋はどこだ!? 宿屋に行く途中で看板を見たぞ! さすがにもう店は開いているはず!!  俺は走り続け、かろうじて魔法屋にたどり着いた。 よし! 店は開いている! レインは後ろから追ってきているはずだ!! これは……マズい。 正直、あの賢者はルーとは違う。 本気で俺の生殖能力を停止させにきている。 あの勢いには恐怖を感じた。 あ、そうだ! 俺は……お金を持っていない! 勇者であることを説明して、外してもらおう! 信じて欲しい……!! ……あ、あれ? 魔法屋の中から誰か出て来た! こ、こんな時に道を塞がないでくれ! 小柄な女の子だ! この子は……黒いマントを羽織っている。 そして紫色のボリューム感があるショートへア……! も、もしかして…… 「ルー……!?」 「……勇者様? あれ? え? あの状況で、町まで泳ぎ切ったんですね!」     こ、これは……マズい……! 2対1になってしまう! 「見えた! 私から逃げられるとでも思ってるの!?」  後ろからレインの声がする! すぐそこまで近づいて来ているぞ! 前にはルー!! 賢者が2人がかりで……ピ、ピンチだ……!! しかも挟み撃ちか……。 「勇者様! よくも私から逃げましたね! でも、生きていてよかったです。さっき到着して、魔法屋で準備してから海岸沿いを探そうと思っていました」  たしかにルーは購入した荷物を持っているぞ。 相変わらず仕事をしているな……。 「それにしても……服も荷物もないのに、よくここまで来れましたね? ……って、その黒いローブは……?」  俺が着ているローブを目にし、不思議そうな表情を浮かべるルー。 「私のローブよ!」  俺の後ろから話しかけたのは……レインだ。 お、追いつかれてしまった……。 ルーが俺の後ろにいる彼女に目を向ける。 「……えっ!? 誰かと思ったら、レインじゃないですか! レインが……この町に!?」 「ルー……選抜試合で戦って以来ね」  ……選抜試合?  なんだなんだ? レインの声から、少しイラついているのがわかった。 「……そうですね」  ん? ルーも眉間にシワを寄せているぞ。 どうやらこの2人は仲良しってわけではなさそうだな。 本当に仲間……なんだよね? 俺はルーに質問をする。 「……彼女が近くの砂浜で待ち伏せしていたんだ。賢者ってことは、2人は仲間同士ってことで合っているよね?」 「……そうです」  やはり俺1人が2人の賢者に追い込まれているという状況で間違いない。  続いて、レインが喋り始めるぞ。 「そういうこと。ルーが里に連絡したからね。私は……ルーのサポートをしに来たわ」 「サポート?」  ルーが返事をする。  俺を挟んで会話を展開する2人。 「雷の勇者を探しに来たのよ。何か文句があるの?」 「いえ、べつに。見つけてくれて、ありがとうございました」 「ふふっ♪ どういたしまして」  なんだかレインが嬉しそうだ……。 満足している……というより、優越感に浸っている感じだぞ。 「……それはそうと、マカロウンに来るのが早過ぎませんか? 賢者の里は、この町から遠く離れているはずですけど? 私が里に連絡したのが深夜過ぎですから、10時間も経過していません」  ルーが疑問を投げかけた。 レインが一歩近づく。 「ちょっと待って……目立ってきているわね、私たち。いったん宿屋に戻るわよ。このままここにいると、町の人たちが集まってきてしまうわ」  確かに、徐々に人通りも多くなってきた。 「そうですね……変な噂が立ち、王国に伝わってしまったら大変です」 「ええ。賢者の里とカタストロフ王国は緊迫した状態にあるからね」  くっ! 2人について行くしかないか……。 ルーには傀儡魔法があるからな。 下手なことをしても制止されてしまうだろう。 魔法屋まであと少しだったのに……まさかルーと鉢合わせるなんて。 こんなことになるなら、マカロウンの町長のところに逃げて事情を話せばよかったか……? カタストロフ王国に使者を送ってもらえさえすれば、時間はかかっても助けに来てくれたかもしれない。 いや……2人の会話を聞いていると、戦争になって賢者の里が攻め込まれる可能性をちゃんと気にしている。 レインは、相手が町長だろうと、実力行使で伝達を防ぐだろう。 「さぁ、大人しくついて来なさい。雷の勇者」  レインが俺に圧力をかける。 「……」  ルーは黙って何かを考えているぞ。 何か納得がいかない様子だったけど、どうしたのだろう……?  とにかく賢者2人に対して俺1人……。 これは一体……どうなってしまうんだ? 間違いないのは、俺にとって不利になってしまったということだ……。


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