8.ルーは幸せになりたい【宿屋に泊まったらパーティの女賢者に魔法責めされて、超絶イキ地獄を味わいHPが0になった】
Added 2021-12-31 08:00:00 +0000 UTCルーは幼いころ、賢者の里の貧民街で暮らしていた。 賢者の里には貴族たちが住む場所、中心街がある。 貴族たちは、純粋な賢者の血が流れている。 里の外の者と交わってできた子はいない。 中心街の周りには、ルーの住んでいた貧民街がある。 貴族の隠し子が捨てられ、そこからこの街の歴史が始まったと言われている。 中心街での、予定外の妊娠と出産。 それは両親が貴族同士のケースもあれば、貴族と里の外の者とのカップルの場合もあった。 貧民街は、そんな子供たちの誕生から始まった。 貧民街の住人達は徐々に里の外の人間と混じり合い、賢者の血が薄れていった。 子供たちは、両親と暮らしている子もいれば片親の子もいる。 両親ともにいないケースもある。 みんな、決して裕福な環境ではない。 ボロボロの建物、荒れた人々の心、明日食べる物があるのか心配している者もいる。 ルーの両親はいなかった。 自分がどこから来たのかも分からない。 幼いころ、周囲の人間はルーのことを【ジール】と呼んでいた。 貧民街の子供たちは、大人になってもそのまま過ごし続ける者が多い。 その一方で、外の世界に出ていく者もいる。 また、厳しい能力審査を受けて、貧民街から中心街に移る人達もいる。 貴族たちは里の外の国々と闘うために、より大きな力を求めていた。 いずれ来るカタストロフ王国との戦いに備えて、貧民街からでも才能のある者は審査して受け入れるようにしていた。 --- ジールが13歳になったとき、外の世界に出ることを決めた。 貧民街に親がいなかったため、とても生きづらかった。 裕福な中心街に行きたい。 しかし、自分の今の力ではムリだ。 そう悟っていた。 里の外に行けば、力を手にすることができるかもしれない。 食料もお金も力も手にすることができるかもしれない。 里の外は素晴らしい世界であり、中心街に行く必要はないかもしれない。 ……そんなことを考えながら、外の世界に飛び出した。 途中で船に乗り、大陸を超え、大きな国にたどり着いた。 これだけ大きな国であれば、仕事があるかもしれない。 幸せになれるかもしれない。 しかし、ジールがたどり着いた国はカタストロフ王国だった。 賢者の里の出身だと知られ、城の中に捕まってしまった。 当時、賢者の里とカタストロフ王国が緊迫した状態に入りつつあった。 貧民街の子供であるジールには、そんな情報は入っていなかった。 王国に捕らえられて、牢屋に閉じ込められた。 貧民街の出身者では、人質や交渉のカードにはならない……というのが王国側の考えであった。 ジールは城の中で奴隷のようにコキ使われた。 そうして1年も経つころには、その体が女として成長していた。 やがてカタストロフ王国の兵士たちに性的行為を強要されることになる。 武力で領土を広げるため、疲れ切った兵士たち。 その兵士たちの性欲を満たすために使われたのだ。 口と胸、ときには膣。 あらゆるテクニックを使い、精液を搾り取ってきた。 (外の世界がこんなにヒドいなんて……。希望を持って里の外に出たのに、私は一体なにをさせられているのだろう? ……貧民街のほうがまだマシ。帰りたいです。そうだ、私は貧民街出身者……こんな私にも、少しは賢者の血が流れているはずです……。私には何か役割があるはず。この国でのクソみたいな役割ではなくて) 里の外に出て、自分には賢者の血が流れているということを大切に思い始める。 今の自分は本当の自分ではない。 賢者の血が流れているのだから、何か他にやるべきことがあるはずだ……と。 そんな思いを募らせ、魔法と武力の鍛錬を始めた。 カタストロフ王国の城内は知識で溢れていた。 あらゆる書物を城で盗み見たのだ。 ジールは、やがて男を誘惑できるようになる。 それほどまでに彼女の魅力は上がっていた。 短く切っていた黒い髪の毛を伸ばし、ロングヘアにした。 黒色のロングヘアは好評だった。 メイクも派手にした。 男を誘惑し、情報を盗むのは簡単だった。 城内でレアアイテムを発見することもできた。 そして、それを盗むことに成功した。 (もう充分です……。こんな腐った王国、早く逃げ出さないと。私は賢者として、自分の役割を見つけます) 見た目が大人になっただけではなく、戦闘能力も上がっていた。 18歳のとき、盗んだアイテムを売り捌き、そのお金で里に帰った。 --- 賢者の里に戻り、彼女は名前を【ルー】に変えた。 ジールという名前を捨てた。 派手なメイクはナチュラルなものに変えた。 童顔の自分に派手なメイクは似合わない。 髪もショートへアに戻した。 汚された自分……昔の名前は思い出したくない。 (今なら、能力審査に通るかもしれない……。貧民街から中心街に行ける可能性はあります) 賢者の里で審査に合格し、中心街に住めるようになった。 断トツの結果で審査を突破。 ルーには師匠の賢者がついた。 50代中盤で細身の男賢者だ。 彼も過去、貧民街から試験を通って中心街に来た。 中心街はカタストロフ王国と遜色ないぐらい綺麗な街並みであった。 建物も服も食べ物も、貧民街とは全く違う。 「ルー、あなたには魔法の才能がある。今日からこの家で暮らしなさい。なかなか広くて綺麗な家ですよ」 中心街では、今までよりは良い生活ができるようになった。 師匠にも恵まれた。 賢者として、さらに力をつけることができた。 だが、待っていたのは貴族たちの陰湿ないじめ社会。 中心街では、使える施設・設備や、買える食品・武器・防具・アイテムなどは区別されている。 もちろん、貴族のほうが優位な立場にある。 法で裁かれないイジメも日常化していた。 ルーは、日に日に憎しみが溜まっていった。 (……ようやくここまで来たのに、想像以上に腐っていましたね。腐っていたのは、カタストロフ王国だけじゃなかった。賢者の里の中心街も……腐っています) そんな思いを募らせていった彼女。 およそ5年が経過するころ、ルーは雷の勇者と同行する代表者の座を勝ち取るほど強くなっていた。 そんな中、師匠の賢者に呼び出された。 「ルーのつらい気持ちは分かる。私の若いころもそうだった。年々、貴族たちの我々への迫害はヒドくなっている気がする……。中心街に増えていく貧民街の出身者に焦っているんだ。しかし、カタストロフ王国との戦いにも備えなければならない。我々の力にも頼らざるを得ない。そんな葛藤が生んでいる悲劇だ」 「そうですよね……」 「ここでチャンスが来た。ルー……あなたが雷の勇者に同行する賢者として選ばれたからね。よくがんばった」 「ありがとうございます。この5年間、師匠のおかげで成長できました。そのおかげで、選抜試合で優勝することができたんです」 「そうだね。そこで……ルーに重大な任務を任せたい。……雷の勇者の血を取り入れるんだ」 「師匠? それは……どういう意味ですか?」 「賢者と勇者の血をかけ合わせるんだ。賢者の里に、新たな子を生み出すんだ。勇者の力が賢者に備われば、人を超える者……【超人】が生まれるだろう」 「え、師匠? 貴族たちは……賢者の純粋な血を保っていたいと考えていますよね。その思想に反してしまうのではないですか? 大賢者様や貴族たちは勇者を討ち滅ぼしたいはずです。勇者を去勢し、死ぬまで弱体化させるのが目的ですよね?」 大賢者とは、貴族の頂点に立つ者……すなわち賢者の里を束ねる者のことである。 「……その通りだ」 「しかも雷の勇者は、カタストロフ王国の管轄にあります。賢者の里とカタストロフ王国が一触即発の状態であることは、いまや周知の事実です。今回、和解や休戦の意味を込めて、私はカタストロフ王国に派遣されるようなものです。そんな勝手なことをしてしまったら、戦争が始まってしまいませんか? 私の見立てですが……賢者の里の戦力では、あの武力国家にはまだ敵いません」 「賢者の純粋な血を守る……そんな貴族たちの考えなど、くだらない話だ。そう思っている。……私も貧民街出身だからね」 「し、師匠……。それは……私も思っていますけど。彼ら貴族に……そして、カタストロフ王国にも牙を剥くということですか?」 「そうだ。大賢者と貴族たち……我々は、彼らに取って変わる。そして、カタストロフ王国とも戦う」 「な!? そ……それは……クーデターということですね? そして、あの王国とも戦うんですね……」 「そうだ。我々、貧民街の出身者は今まですっと力をつけてきた。富を食い尽くし、のさばっている貴族達と違ってな。……中心街に来た我々は、ずっと準備を整えてきたんだ」 「えっ!? そ、そんなことが水面下で……」 「やってやろうじゃないか、ルー。あなたが勇者の同行者として選抜試合で優勝したことは、貴族の衰えを象徴している。流れは来ていると思う。しかも、勇者を我々に手なずける最大のチャンスだろう? 貧民街の出身である我々の力を充実させるぞ。この気は逃さない。カタスロフ王国とも、魔王軍の残党を倒すまでは仲良くしておくんだ。残党の殲滅まで、およそ1年はかかる見立てだ。その間に、我々はさらなる力をつける。我々は……過激派だ」 「過激派……! 私たちが……里を……王国を変える……」 「そうだ。差別はなくなる」 差別はなくなる……。 それなら、自分は幸せになれる。 率直な感想として、ルーはそう思った。 しかも、その前線に立つのは、大きな役割を与えられたのは……自分だ。 「わかり……ました」 ルー、23歳。 髪を紫色に染め、再びカタストロフ王国を訪れた。 あのときと名前は変わっている。 カタストロフ王国の人達にはバレない。 (貧民街出身者のみんなで、そんな計画を立てていたのは驚きです。私としては、大きな役目を背負ったことが嬉しい。貧民街出身者の中でも私は認められています。選抜試合で優勝したのも嬉しかった。貴族達に、私の力を認めさせてやりました。……ついに、私にも役割ができました) 賢者の里に戻ってきてから、彼女は幸せになりつつある。 だが、まだ障壁は残っている。 壁となって立ち塞がっているのは、貴族達だ。 ルーは障壁を壊すため、差別をなくし幸せになるため、決意を固める。 何より、これまで以上に特別な自分になったことを、ルーは喜んでいた。 何も期待されていなかった自分の人生が大きく変わっている。 自分にも役割ができた。 今、自分は自分のことを一番大切にできる。 そんなことを考え、勇者リットと出会った。 (……大丈夫。王国側は私がジールであることに気付いていなかった。私は王国に従うフリをする。大賢者をはじめとする貴族達にも従うフリをする。それにしても……私の体をおもちゃにしたカタストロフ王国は憎いですね。里の貴族たちだけでなく、この王国も憎いです) 昔いた地に訪れ、当時を鮮明に思い出すルー。 王国に対する憎しみが、こみ上がってきた。 (……こんな王国に素直に従っている雷の勇者もチョロそうですね。もう目に炎が宿っていないです) --- 時は戻り、現在。 勇者リットが深夜の海を泳いでいる頃である。 残されたルーは噛まれた足を魔法で治しながら、船室で考えごとをしていた。 (……昔を思い出していました。雷魔法の痺れは完全に消えましたね。せっかく勇者を捕らえたのに、取り逃してしまうなんて! 夜の海に飛び出すなんて信じられない! 執念ですね……) 勇者の行動を振り返り、ルーは頭を抱える。 彼の覚悟を甘く見ていた……。 燃え尽き気味で引退寸前の勇者だと。 自分の甘さを痛感する。 (逃げられた……。雷の勇者に逃げられました。呪いのリングを2つもつけているのに、彼の雷撃は効きました。……さすが奥義です。腐っても勇者の一撃は強力……) 今はレベルに大きな差があるはずなのに、確かにダメージを受けた。 回復魔法で治した足の傷をさすりながら、彼の実力を再確認した。 (彼は……どこに流れ着くんでしょう? 海流的には、この船が向かっている大陸にたどり着く可能性が高いはずです。……すでに賢者の里には連絡しました。大賢者や貴族達がどんな判断をするのか……。目的地の大陸に賢者の里があるけど、広い大陸の内陸にあるからとても一晩じゃ救出に来れません) ルーには水晶玉が渡されていた。 大賢者と連絡を取り合うための水晶玉である。 ルーは、すでに里に連絡を取っていた。 (私のミスで、大変なことになりました。自由になった勇者が王国に助けを求め始めたら大変です。死んでしまっていても大変です……。計画が……すべて台無しになります) どんどん不安になっている自分に気づく。 徐々に自信がなくなっていく。 (自信をなくしてはダメ。……私は雷の勇者とともに行動する立場を勝ち取ったんです。貴族の中で随一の実力をもつ【レイン】にも勝利して選ばれたんです) ルーは嬉しかった出来事を思い出し、気持ちを立て直す。 (私は……このまま目的地に上陸するしかないですね。目的地のマカロウンに到着したら、すぐに勇者を探索します! そして、さっさと残党狩りを再開しないといけません。最終的には、過激派のクーデターを成功させるんです。貴族も王国も憎い……。こんなクソみたいな世界を変えます。新しい賢者の里を私が引っ張っていきます。そうすれば、きっと差別のない幸せな世界に……) そんな未来を思い描いていた。 そして、ルーは勇者の探索に備えて眠りにつくのであった。 --- Subtleです! 今年の更新はこの話で終わりです。 読んでくださり、そしてご支援してくださり、ありがとうございました! 次回は1/7(金)の17時に更新しますね! それでは、良いお年を……!