「っ!」
ぞろりと地を掻く気配に気づいて、アズールは飛び退く。
まだ怪人の息がある。
「あ……ぅ……あな、た……」
「……?」
「あなたは……ミサキちゃんの、お友達ね……」
マスクが割れて、人間の顔が覗いている。 その瞳には、たしかに理性の光があった。
「一緒に歩いてるの、見てたわ……」
警戒は完全に解かぬまま、アズールはその怪人――リンに寄り添う。
「ごめん、なさい……ミサキちゃんは、イモムシのような怪人に、連れて行かれたわ……」
「連れて行かれた……!? どこに」
「わからない……ヤツは、自分のテリトリーを地下に築いていて、そこで人間を改造して自分の部下にしているの」
「ミサキも、まさか!」
「わたしの、せいなの……助けて、あげて……」
アズールはかっとなって、声を荒げる。
「あなたのせいって……罠にはめたということ? 友達だって、ミサキに近づいて裏切ったの!?」
「逆らえ、なかった……。それに、話したかったのよ。私、もう戻れないから」
リンはじっとアズールを見据えた。羨望と、かすかな嫉妬が、その視線には含まれていた。じくっと、心臓に刺すような痛みを覚え、アズールは口をつぐむ。
「お願い、助けて、あげて……私の、代わり、に……」
そして、リンは事切れた。目尻に浮かんだ涙が、すっと頬を伝う。
「……」
アズールは唇を引き結び、すっくと立ち上がる。
「キョウ!」
そこにたたたっ、と駆けつけてきたのはエンマとケイの二人だ。
アズールは今ここで起きたことを説明し、二人に助力を求めた。
「ミサキちゃんが……それは一刻を争うわね」
「へっ、いい気味だぜ」
「ケイ!」
エンマが叱りつけるが、ふんとそっぽを向くだけだ。
「地中……私には難しいけどケイなら居場所の特定、できるかもしれないわ」
それを聞いて、ずずいとアズールがケイに詰め寄る。その表情は切羽詰まったものだ。
「ケイ、お願い……」
(この子が、こんな感情をあらわにするなんて)
「わかった、わかったよ! この辺なんだな?」
ちっとケイは舌打ちして、
「セッタップ! セラフアンバー!」
特に必要ない変身ポーズを取って、ケイはセラフィーヌへと変貌する。好きなのだろう、特撮ヒーローのような琥珀色のコスチュームだ。
「よっと!」
アンバーはそのまま、地面に両手を押し付ける。
「ガイアスキャン!」
地中に電磁波を放ち、その反射で探査する技だ。地中の異物や生き埋めになった遭難者の捜索など、いろいろ応用が効く。
「……」
緊迫した空気が、三人の間に流れる。
どれほど経っただろうか。ほんの数分のことだろうが、彼女らには永遠にも思えた。
「ここから南に300メートル、深さ10メートルに、不自然な空洞があるな。中にから大きな生物の鼓動も感じる」
「10メートル……」
深いな、とアズールは思った。身体能力は向上しているが、それでも自分が地中をそこまで掘り進められる気がしない。
「……あー、やるよ、あたしが!」
思索にふけるアズールを見て、アンバーが投げやりに言い放つ。アンバーは土を操る能力を持っていて、掘削もお手の物だ。
「いくぞ!」
「ん……!」
そして三人はイモムシ怪人が巣食っているであろう地点に向けて走り出した。
「ん……」
鼻をくすぐる異臭に、ルージュはまどろみから覚醒する。
「こ、こは……」
暗い。四方を土壁に囲まれている百平米ほどの空間の中に、ルージュは放置されていた。
土壁のため光は一切差し込まないが、ほのかに明るいのは土壁に生えた発光性の苔類のためらしい。
「! なにこれ……繭……?」
ルージュの周囲には砕けた繭が散乱していた。さっきから感じる異臭は、その中の粘液が発しているものらしい。
(これ、あの蝶怪人の繭ってこと……?)
ゾクリ、と背筋が寒くなる。
だとしたら、まずい。ここはイモムシ怪人の巣なのだろう。
「逃げなきゃ……くっ……動けないっ」
「ほほ……動けなかろ?」
「!!」
のそのそと、隅で闇が動いた。
闇から這い出してきたのはやはりあのイモムシ怪人だった。
「特級のしびれ毒を注入しておるからなぁ……ひひっ、さ、こっちさ来い♥」
「い、いやっ」
「くっ……離してっ……!」
イモムシ怪人はルージュを軽々と持ち上げると、横たわった自身の腹の上にまたがらせた。
「ほほ……今まではわし自身の手で手下を生産しとったが……お前は雑兵ではなく、我が子をうんでもらうぞい♥」
「い、いや……絶対いやっ!!」
ルージュは嫌悪感をあらわにして身をよじる。しかし両足をガッチリと固定され、逃れることが出来ない。
「ひっ……」
怪人の股間から出現した巨大な肉棒を目にして、ルージュの口から小さな悲鳴が漏れた。
「ほっほ、どうじゃ、わしのは?」
「あぁ……お、大きい……」
人間の腕ほどもある大きさの性器が、ルージュの女性器に狙いを定めている。
「そうじゃろそうじゃろ♥ では、いただくとするか」
「やめて、いやぁぁぁぁっ!」
ずぶ、ぶうううううっ!!
「あ、ぐ、くううっ!」
股間を無理やりえぐられ、ルージュは痛みに体を震わせる。
しかしルージュの秘所は、怪人のそれをなんとか受け入れてしまった。
「おぉ? なんだ、処女ではないのか……見かけによらず遊んでおるのかな♥」
「ち、ちが……」
ちらり、と戦闘員たちに弄ばれた記憶が蘇る。そして嫌悪感とともに、体の芯が熱くなっていくのも感じる。
忌まわしいことに、性的なことへの耐性ができてしまっていることを認めざるを得ない。それと同時に、淫らになっている自分自身も……。
「まぁ、よいか。それっ!」
ずぐんっ!
「あくぅぅっ!」
ぬぷちゅ、ぐちゅっ!
「あんっ、あうっ、あっ、あっ!」
「ほほ、なかなか良い具合ではないか」
「くっ、そんなの褒められてもっ! あっ、嬉しくないっ」
下から突き上げられ、ぶるんと乳房を揺らしながら、ルージュは怪人を鋭く睨む。
「まだそんなことを言えるか。それなら、こちらはどうかの?」
「あ……」
イモムシの尾が首をもたげ、ルージュの尻に迫る。そしてその先端が割れ、中から細く、鋭いペニスが現れた。
「ひっ……い、いやぁっ! な、なにを……」
「ほひひ……なに、痛いのは最初だけよ」
尻穴にペニスの先端が当たる。ピンク色の菊紋が怯えるようにひくひくと震えた。
「い、いやっ! そっちは、だめっ!」
ずぐ、うううううっ!!
尾のペニスは、容赦なくルージュの尻穴を貫いた。腸壁に衝突しながら、あっという間に根本まで埋めてしまう。
「おしりっ! あがあぁぁあっ!!」
痛みと感じたことのない刺激に、ルージュの尻たぶがたぷんと震える。
「お、おお……こっちの締りも良くなったぞい? ほほっ」
怪人は醜悪な笑みを浮かべ、そのままルージュの両穴を責め立て始める。
「いやあああっ! あっ、あっ♥」
髪を振り乱し、ルージュは喘いだ。
「そら、そらっ」
怪人が一突きするたびに、意識は消し飛ぶような衝撃がある。そして自我を取り戻すとき、染み入るような快楽が全身に行き渡っていく。
「だめっ♥ あああっ! 気持ち、いいっ!」
「そうじゃろう? ほほーっ」
ルージュを屈服させた喜びを隠そうともせず、怪人はご機嫌にペニスをピストンさせる。
「んはああっ♥ あっ、あーっ!」
ぐちゅぐちゅと淫らな水音をさせながら、ルージュは自分から腰を振るようになっている。
ぱちゅんぱちゅんと二人の間に溜まった体液が撹拌され、糸を引いている。
ぞくぞく、と背筋を駆け上がる快楽に気づくと、ルージュは喘ぎながら絶頂が近いことを告げる。
「んああ、すごいっ!♥ やぁ、イッちゃう♥ イッちゃううううっ!!」
「よいぞ、共にイこう♥ そしてわしの子を孕むが良いっ!」
ぞぼぼぼっ!! ずぶうううっ!
怪人のペニスが、ルージュの一番深いところまでその丈を埋め、子種をたっぷりと注入する。
びゅびゅっ!! どぴゅるるるっ!
「あああっ! イックぅぅぅうーーーっ!♥ あーっ!♥」
はしたない絶叫とともにルージュは達した。
「あふぅん……あ、あ……」
背を反らして痙攣し、注入される熱い精液が、自分の中に満ちていく感触に酔う。
「う、あ……あ、イク♥」
びくん。
最後に一回小さくイッて、がくりとルージュは頭を垂れた。
「あく、うぅぅ……あ、あ……」
犯された上、イッてしまった自分が情けなく、怪人にまたがったまま、ルージュは涙を流した。
「ほほ……一緒にイけたのう♥」
「いやぁぁ……もう、やめて……」
「なにを言うか、まだ続けるぞい♥ 孕むまでな……」
「い、いや、いやああああああっ!」
ルージュの叫びが巣の内に響き渡ったその時、どごむ、と二人の眼前の土壁が揺れた。
「……?」
「な、なんじゃ!?」
もう一度、土壁が揺れる。そして――
「ハイドロストライク!」
強烈な水流が土壁をぶち抜いて、洞穴の中に流れ込んできた。
「うおおおっ!?」
「きゃあああああああっ!」
二人は水流に飲み込まれ、そのまま逆の壁際まで押し流された。
「な、な……」
怪人は巨体を引きずるように立ち上がる。
土壁に空いた穴から、アズールたちが踊り込んでくるのを見て、怪人はたじろいだ。
「うむむ、なんでここがわかったんじゃ……」
怪人は地面に上半身をねじ込み、逃走を図る。
「おっとぉ、逃げんじゃねえよ! 外道がっ!!」
地中に潜り込もうとした怪人が、弾かれたように宙に舞う。アンバーが地面を瞬間的に隆起させ、その身を打ち上げたのだ。
「おおおっ!?」
くるくると宙を舞う怪人。そこへ光が伸びて、怪人の腹部を貫いた。
「がふっ……ごぉおぉ」
その光の元は、セラフライラックとなったエンマの掌だ。ビクビクと痙攣する怪人をライラックは冷ややかに見つめ――
「消えなさいっ!」
バシュンッ!
光が増大し、次の瞬間、イモムシ怪人は蒸発して消滅した。
「ミサキっ!」
水浸しになって横たわるルージュを、アズールが助け起こす。
「キョウちゃん……みんなも、来てくれたんだ」
「……無事か?」
「ケイちゃん! ありがとう……」
「べ、べつにっ! キョウが頼むからやっただけだ」
ふん、とアンバーは二人から離れ、一瞬だけ振り向いた。
「想う気持ちは一緒ってことか……」
アズールと抱き合うルージュを見て、アンバーはジェイドを想うのだった。
そして、翌日――。
地下に設けられた水葬場で、ミサキとキョウはリンを見送っていた。
火葬に用いるほどのエネルギーを割けない関係で、死者は地下の大水脈に送ることになっている。送られた人々はやがて戦いのない世界にたどり着き、そこで眠りにつくだろう。
ミサキは最後に、ちち、とリンを包むシートのファスナーを上げる。
その手が、リンの顔を隠す寸前で止まる。
「いい子だったんだよ……」
「……うん」
「リンちゃんのような子こそ、守りたかったのに……」
ぶわ、とミサキの双眸から涙が溢れて、止まらなくなった。そのままひっく、ひっくと泣きじゃくる。
キョウは引手をつまむミサキの手にそっと指を添えると、一緒に上げていく。
「泣いてたら、この子も心配する」
「うん……」
ミサキはグッと涙をこらえてリンの顔を見つめると、そのままファスナーを上げきった。
「さよなら、リンちゃん……」
そして水底へと誘われるように消えていくリンの姿を、二人はずっと見送っていた。