登場人物紹介
大河原カイ/セラフジェイド
建川市に新設された新東都統合学校の生徒。
セラフィーヌの一人、セラフジェイドとして人類を守護する。
真っ直ぐな正義感を持ち、そのための強い決意も秘めている。
しかしそれ故の頑固さ、融通の効かなさが伺える部分もあり、それは彼女にとっての強みでもあり、弱みでもある。
経験人数:四人(初体験:タコ怪人)
本編
「ぐあっ!」
囚われの身となったセラフジェイドが放り込まれたのは、とある一室であった。
手を縛られている彼女は顔から思い切り床に倒れ込んでしまう。
「く……ここは、どこだ……?」
激しい凌辱の末、意識を失ったジェイドは、気づけば見覚えのない建物に連れ込まれていた。おそらくはエリミネーターの拠点なのだろうが、それ以上のことは何もわからない。
(……簡単に脱出など……できないだろうな)
両手は拘束されているし、壁も恐ろしく強度の高い材質でできていて、フルパワーであっても破壊することは困難だろう。
エネルギーも乏しく、身体もあちこちが痛む。
「つっ……くそっ、随分痛めつけてくれた……!」
拡張された尻穴が特に痛み、ジェイドは苦々しげに顔を歪めた。
「しかし、一体何をやっているんだ、この向こうで……?」
入り口の向かいには強化ガラスの窓が全面に張られていて、その向こうでは何かが激しく動いているのがわかった。
「ッ!!!???」
そのガラス越しにジェイドが見たのは、驚愕の光景であった。
「ちょうだいっ♥ 精子ちょうだいよぉっ」
「おいしいっ、ザーメンおいしいっ!♥」
「もっと出してっ! 赤ちゃん孕ませてえっ! もっと、もっと産みたいのぉッ」
数人……いや十数人ものセラフィーヌが一列に並ばされ、バックから戦闘員に犯されていた。
彼女たちはいずれも乳房が肥大し、中には腹が妊婦のように膨らんでいるものもいた。
そして壁に開けられた穴からペニスが突き出され、それを美味しそうにしゃぶっているのだ。
「あ、あ……」
あまりの光景に、ジェイドは絶句することしかできない。
びゅびゅ~っ!
「あはっ、出た出た♥」
熱っぽくフェラをしていたセラフが射精を受け、うっとりと笑う。そしてペニスにむしゃぶりつき、美味そうにザーメンを嚥下する。
「んちゅっ、ちゅばっ……んくっ、んくっ……」
「はぁぁ……ザーメン……♥ もっと、もっとぉ……」
彼女たちは怪人や戦闘員の精液から栄養を賄えるよう改造を施されていた。そしてバックから子種を受け取り、孕むのだ。
「一体……なんなのだ、これは……」
それ以上の言葉が出てこない。彼女らの中には、見覚えのある顔もある。みな、人類のためにと、体を張って闘い続けていた者たちだ。
(それが、こんな……)
悪夢のような光景に、ジェイドの身体が傾ぐ。
(セラフとして戦ってきて、その結末がこれか……)
絶望。ジェイドの心を蝕みそうなそれは、こう表現するしかないものであった……。
その頃ミサキたちはというと、病院の地下通路を進んでいた。ほんの数時間ではあったが、寒々しい金属の通路を暗黒の中往くのは、状況もあって酷く気が滅入った。
そして、ようやくに三人はぱっと開けた場所へたどり着いた。
ドーム状になっている大きな広場で、訓練場として使われていた形跡もある。今は人々の避難所として機能しているようで、自衛軍の炊き出し、負傷者の治療が行われていた。
人々は自分のことに手一杯で、こちらを気にするものはいないようだ。
セラフィーヌは連携して防衛に当たってはいるものの、彼らとあまり関わりを持たない。互いを知るメリットよりも、情報漏洩等のリスクのほうが高いためだ。
「君たちに会ってもらいたい人がいるんだ」
かおりが訓練場のさらに奥の通路へ二人を導く。
「会ってもらいたい人……ですか?」
「ああ。私たち……君たちセラフに指示を出していた人。自衛軍の長官さんだよ」
ミサキとキョウは顔を見合わせる。
今まで直接的なやり取りをしたことはなかった人物と、ついに面会する。
それは事態も今までとは違う、切迫したものであるからのように思われた。
「ようこそ、花井ミサキさん、水無瀬キョウさん」
通された部屋のモニターに映っていたのは、壮年の男性のようなシルエットだけだった。
「え、これが長官さんですか?」
ミサキはキョトンとしている。そんなミサキをジト目で見やりつつ、
「秘密主義もここまで行くと大したもの」
とキョウは小さく呟いた。
ミサキは、これは会うとは違うのではないか、と口に出しそうになった。
「はは、すまないな。こちらとしても姿を迂闊には晒せないのでね」
さて、と長官は言いおいて、言葉を続けた。
「君たちも知っての通り、エリミネーターの侵攻は激しさを増している。そして今回、こちらの重要施設であった病院を破壊されたことで、今まで保っていた均衡が崩れたと我々は見ている」
ぴり、と緊張が走る。今回ほどの大掛かりな侵攻は開戦直後以来のことだ。
「彼らはここぞとばかり、攻め込んでくるだろう。今回以上の大軍をもってね」
「そんな……」
「しかし、我々も手をこまねいていたわけではない」
モニタの一つに都周辺のマップが映し出された。ポインタが、東京湾のある一点を指し示す。
「東京湾に突き刺さったピラー。彼らの本拠地であると目されているが、本当のところはわからない。そこから彼らが出入りするところを観測できないからだ。……とはいえ現実問題として、彼らは何処からか現れて、何処かへと去る。必ず拠点は存在するはずだ」
拠点。ちらりとミサキの脳裏にジェイドの影がよぎる。彼女も、そこに囚われているのだろうか。
「やつらの出現場所、進行速度……あらゆるデータを取り、計測した結果、あるポイントに彼らの転移施設がある可能性が示唆された」
ピピ、とモニタ上のマップが建川市のものとなり、その北部に赤い光点が現れる。
「ここは完全に彼らの勢力圏で、確認することは不可能だ。だが、ここから彼らの拠点に踏み込むことができるかも知れない」
かおりが眉をひそめる。
「敵の巣窟に乗り込むということですか? 危険では……」
長官はコクリとうなずく。
「だが、敵の勢力は増すばかりだ。敵は地球に根を生やし、人類を肥やしとしながら拡大しているように見える」
ミサキは父が好きだったSF作品の設定を思い出した。さながらピラーは星に寄生するための種子のようなものか。
「それで、作戦はどうなるんですか?」
「うむ……入ってきたまえ」
すると奥の扉が開いて数人の女性たちがどやどやと入ってきた。
「あ、あなたたちは……?」
「はじめまして」
それぞれ年齢はバラバラだが、戦いに臨むものに共通する、ある種の迫力のようなものがあった。
そのうちの一人が、かおりに話しかけた。外国人だろうか、金髪碧眼のセミロングをアップにしたラフなスタイルの女性だ。
「かおり、無事で良かったわ……ひどい目に遭ったと聞いていたから……」
かおりはごしゃごしゃと頭をかいた。そのことはあまりいい記憶ではない。
「あー、それはもういいでしょ。それで、この子がルージュになった花井ミサキ」
「そう、あなたが……よろしくね、私はエンマ」
差し出された手を、ミサキはおずおずと握り返す。柔和に微笑むエンマに、ミサキは包み込まれるような感覚を覚える。
「キョウも、久しぶりね」
ん、とキョウがうなずく。旧知の仲らしかった。
「キョウちゃん、知ってるひと?」
「……随分昔に、ちょっと会っただけ。私たちの前に、中央を守ってた人たち」
「へぇ……」
ということは、だいぶ先輩なのだろう。
「でも、だいぶ減ってしまった……」
キョウの口ぶりは寂しそうだ。
そしてふと、ミサキは彼女らの視線の一つに強いものを感じた。その敵意の持ち主は、ミサキの視線に気づくとズカズカとこちらににじり寄ってきた。
同い年くらいだろうか。少年のような体つきで、綺麗に切りそろえられた短髪からは潔癖そうな気質が見て取れる。
「貴様のせいだ、貴様のせいで、大河原先輩は……!」
「え、えっ……」
「ケイ、やめなさいっ」
エンマがケイと呼ばれた少女を引きはがす。
「くっ……」
ケイは忌まわしげに顔を歪めた後、そっぽを向いてしまった。
「気にしないでね、彼女はカイを慕っていたから……大丈夫、あなたのせいではないわ」
そういうことなのだろう。彼女の震える肩を見て、ミサキは胸の奥が締め付けられる気がした。
「ミサキちゃん、これ」
エンマが、ミサキに何かを差し出した。
「これは、セラフクリスタル……どなたのですか?」
エンマは一瞬言い淀み、首をふる。
「それは、ピラーから脱出してきたセラフのものよ。彼女は私たちにクリスタルを託し……斃れたの」
「あ、これ……!」
ミサキが受け取ったクリスタルは、手のひらの上でぼんやりと光りを発し、そして、かっと眩く輝いた。
「あ、ああっ!」
瞬時に脳内に膨大な情報量が流れ込んできて、ついミサキはクリスタルを取り落としていた。
「わかった?」
エンマがミサキの顔を覗き込む。
ミサキはうなずいた。ピラーの内部構造、そして怪人のエネルギーとなっている貯蔵区画が口述しがたいイメージとして頭に流れ込んできたのだ。
これがあれば、ピラーに入り込み、連中の力の根源を破壊できるかも知れない。
「それを彼女が持ち帰ってきたのは行幸だった。彼らの懐に潜り込めば、勝機はある」
エンマは長官の言葉にうなずき、ミサキたちを見渡した。
「私たちが囮になるわ。その隙にあなたたちはピラーに潜入して、破壊してほしいのよ」
エンマの言葉に、ミサキは当惑した。明らかにベテランの彼女らのほうが適任に思えたからだ。
「残念だけど……セラフの力は、その人間の生命力とか、精神力とか……そういうものに依存するようなの。私たちはもう、あなた達ほどのパワーは出せなくなってしまった」
「そうなんですか……」
突然に重責を背負わされ、ミサキはしょんぼりとする。しかし、隣のキョウがコツンと肘で小突いてきて、顔をあげる。
「一人でやるわけじゃないでしょ」
「キョウちゃん……うん!」
キョウがそう言ってくれるのが嬉しい。
「私も、同行するよ」
「頼もしいです、かおりさん!」
これ、辛いだろ? といって、かおりは床のクリスタルを拾い上げる。確かに常時これを握りしめていては脳が焼ききれてしまいそうだ。
「セラフだったからかもしんないけど、私だとなんか丁度いいんだよね。ふわっとわかるんだ。だから私が案内する」
「ありがとうございます」
「決行は六日後の夜となる。詳しいことは後ほどのミーティングで話す。今は体を休めてほしい」
長官のその言葉を最後に、その場は解散となった。
(後編へ続く)