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天空戦姫セラフィーヌ 第7話 迫りくる滅亡 前編

登場人物


大河原カイ/セラフジェイド

建川市に新設された新東都統合学校の生徒。

セラフィーヌの一人、セラフジェイドとして人類を守護する。

真っ直ぐな正義感を持ち、そのための強い決意も秘めている。

しかしそれ故の頑固さ、融通の効かなさが伺える部分もあり、それは彼女にとっての強みでもあり、弱みでもある。

経験人数:二人(初体験:タコ怪人)


水無瀬キョウ/セラフアズール

ミサキと同じく新東都統合学校の生徒。

クールで感情を表に出さない。読書好き。クラスでは他の人と絡まないが、妙な存在感があるタイプ。

猫が好きでコスの猫耳っぽいパーツもその意識が現れている。

経験人数:一人(初体験:ヘビ怪人)



本編

 その光景を見て、セラフジェイドはゾッとした。

 敵軍出現の報を聞き、その方角へ向かったジェイドとアズール。

 その眼前には、まるで黒い帯のように地平線を埋め尽くしている敵軍の姿があった。 

「想像以上の大群だ……!」

 殆どが戦闘員だが、その中に怪人たちがポツポツと紛れ込んでいる。

 この病院が、こちらの勘所であると気づいたのか。

(であれば、いよいよか……)

 エリミネーターの勢力は衰えを知らない。セラフィーヌの健闘で勢力圏を保ってきてはいたが、じりじりと外縁から包囲を強められているのを感じてはいた。

「だが、最後まで戦い抜くのみ……!」

 タタタタッ。

 遠くで小銃の音が響いた。敵を迎撃に出た病院の警備兵たちだろう。

「だ、だめだっ! 逃げろっ……」

「ぎゃあっ!」

 ジェイドが呼びかけるが、遅かった。

 彼らは戦闘員たちに軽く肉薄され、なすすべもなくやられていく。最下層の戦闘員でさえ、常人の彼らには手に余るのだ。

「いくぞ、アズール!」

 傍らのアズールがこくりとうなずく。

「てやああああっ!!」

 そして二人は黒々とした敵軍の群れへ踊り込んでいった。


 場所は変わり、病院内部。

 最初の喧騒はすでに収まっていた。その理由として相応の人数が脱出したというのもあったのだが……。

 左右の肩にそれぞれ妙齢の女性を抱え、我が物顔で血まみれの廊下を練り歩く怪人の姿がある。

 エリミネーターの中でもはしっこいものは、いち早く病院に入り込んで暴虐を働いていたのだ。

「へへ、まだ逃げ残りはいねえかな……? できれば美味しそうなやつがいいねえ」

 こいつのように、と呟いて、抱え上げた一人の尻にぞろりと指を這わせ、顔を歪めて笑う。

「たまんねーなぁ……ちょっと味見しとくか?」

「止まれっ!」

「んあ?」

 怪人の前に立ちふさがったのは、異変に気づいて駆けつけた警備兵たちだ。

「その人たちを開放しろ! さもなければ……」

 つまらなそうに怪人は頬を掻く。

「……けよ」

「なに?」

「どーけーよっ!」

 怪人の胸部が左右に開き、そこから有機的なディティールをした機関砲が顔をのぞかせる。

「なっ!?」

 一瞬後、炸裂音が響き渡り……警備兵たちは跡形もなく砕かれていた。

「へっ……雑魚どもが」

 そして怪人はなにかに気づいた。

 機関砲の斉射で、ようやく半ばほど壊れた扉が正面にある。

 そこで眠りについていたのは、ほかでもないミサキだ。

「ほほー、こいつは上玉だ。へへっ、ちょうどいい。こいつは俺のペットに……おうッ!?」

 怪人は背後から衝撃を受け、たたらを踏んだ。

「なんだぁ?」

「彼女をやらせはしないっ……!」

 怪人が振り向くと、そこにはファイティングポーズを取る女性の姿があった。

 中里かおり……ミサキにセラフクリスタルを託した、かつてのセラフフレアだ。

 上下を装甲服に身を包み、拳には対エリミネーター用の電撃ユニットを装備している。

 彼女は傷が癒えた後、セラフでなくなっても人々の助けになれないかと、自衛軍に入隊して訓練を積んでいた。

「生意気なメスだぜ……だが、ツラは悪くねえ。お前も連れて行ってやるよっ!」

「来いっ!」

 傍らで戦闘が繰り広げられる中、ミサキはまだ目覚めることはない……。



 ――ジェイドたちはじりじりと押し込められていた。気づけば、背後には病院が迫っている。

「通すかっ!」

 翡翠色の閃光が、ジェイドの横を素通りしようとした戦闘員を貫く。

 しかしその横から、戦闘員たちが病院へと殺到していく。病院の制圧を第一の命とされているためだろう。

 眼前の敵を倒しながら、アズールも半ばパニックになっていた。

「アズールっ!」

 切迫した声が、アズールの耳朶を打つ。

「病院の方へ向かってくれ! ここでは全ては防ぎきれないっ」

「で、でもっ」

 ジェイドはこれだけの敵を受け持つ気なのだろうか。彼女はアズールより遥かに機動力に富む。自分よりカバーできる範囲は広いのだろうが、流石に無茶に思える。

「そうはいくかよぉ」

「お前らの相手は俺たちがするぜ」

「むっ……」




 戦闘員を吹き飛ばして二人の前に現れたのは、猛犬型とドラゴンのような怪物型の怪人だ。

「なんかチンタラしてるなと思ったら、お前らのせいか」

「へっ、俺たちは今までの奴らとは違うぜ……覚悟しろよ」

 その言葉通り、彼らからは気圧されるものを感じる。

(こいつら……強い)

 アズールは拳を握りしめた。スーツの内側でじっとりと肌が汗ばんでいる。

「何をしている! 病院へ向かうんだっ!」

「で、でも……」

「ここは私に任せとけばいい!」

 それでもアズールはためらっていたが、やがて病院に向けて走り出した。

「させっかよ!」

 ドラゴン怪人が、背中に装着された砲台をアズールに向ける。

「そらっ!」

 がぉん!

 爆音とともに放たれた弾丸が、アズールに迫った。

「ふんっ!」

 ジェイドは弾道に躍り込むと、弾丸を切り払い、叫ぶ。

「いけっ! 皆を……ミサキを守れ!!」

 ほほーう、と犬怪人が感心したように顎を擦る。

「ねえちゃんやるじゃねえか」

「だが、あんた一人で俺たちを食い止めようってのか?」

「無理無理……ひひっ」

 二人は顔を見合わせ、下卑た笑いを上げる。

「やってみればわかるまい……」

 勝利せずとも良い、人々が避難する時間を稼げれば……その覚悟を込めて、ジェイドは光剣を構え直した。


(後編へ続く)

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