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ザ・ドッグトレーナー #29『2日目:調教失敗ルート、夕食』(⇔26)

#29 「リサさん……やり遂げられませんでしたね……」  食事という華やかな場であるにもかかわらず、重い雰囲気を更に重くさせる言葉がエリナの口から発せられた。  3度目のトライ……それはもう……何の気力も湧かないと言わんばかりにあっさりと手を放して脱落した。  その後……彼女は、悔しがる事も……感情を露わにする事もなく……ただ茫然とその場にへたり込んで動かなくなった。  こうなれば……今後リサにどんな調教を施そうと、彼女が受け入れる事は無いだろうし……奴隷となる素質も開花する見込みも無くなるだろう。  リサの感情は恐怖によって完全に閉ざされてしまったのだ。  もう少し……彼女に希望を持たせる責め方をソフィアにさせるべきだった。  ギリギリまで焦らして耐えさせて……有無を言わさず鬼畜に手を放させるという手法は、今のリサに取るべき責め手ではなかったのだ。  あと少しでクリア出来ていたという希望が覆され彼女の心の芯をポッキリ折ってしまった。本来なら最後のトライで奮起させる材料を彼女に与えてやるつもりだったが……それも成されないままあっけなくリサはリタイアしてしまった。  これはあなたの選択ミスだとも言えるが……それに加えて…… 「マスター。申し訳ありません……私の抑えが……利かなくなったばっかりに……」  ソフィアのSっ気の強さも……今回の失敗を誘発したと言っても過言ではない。  Sっ気の強さは調教師として求められる要素ではあるのだが、ソフィアの場合は根が真面目で優しい……だから、本当の意味でイジメるという行為に慣れていない為役に徹しすぎれば深く入り込み過ぎて暴走しかねない。  焦らして最後の希望をへし折って落とす……という行為は、ソフィアの本当のS心を刺激し興奮させたに違いない。  最後の最後にリサが彼女に縋ってきたタイミングで、本来なら彼女を奮起させる言葉をかけてやるのが彼女の役目だった筈だ……  しかし、暴走してしまったソフィアは……そのままリサを責め立て……彼女を過剰に絶望させてしまった。  頑張る材料を与えられなかったリサは……そのまま奮起する事無く絶望に沈んでいくしかなかった。  これはソフィアのミスだと判断して良い事案だが……そもそも、そういう背景を考慮して判断を下すのはあなたの役割だったのだ……だから彼女だけの責任ではない。責任の所在はそうであるのだけど…… 「マスター、罰は私が受けます。明日……ルルシア様の所へ送ってください……」  責任感の強いソフィアは、それを全て自分のミスだと思い込み自分が罰を受けると訴えかける。  調教の適正無しとみなされたという事は同時に調教は“失敗”という判断が下る。そうなれば当然……ルルシア嬢の提示した罰を受けなくてはならない。  ルルシア嬢はソフィアかエリナのどちらを罰の対象にしても構わないと言ってはいたが……  ソフィアをルルシア嬢に預けるのは、少し気が引ける。  何せ……ルルシア嬢はソフィアを気に入っているのだ……  彼女がお気に入りの奴隷にどんな仕打ちを強いているか……想像に難くない。  小さな背格好に反比例する程のドSさと偏愛性を持つ彼女の事だ、お気に入りのソフィアに対して容赦などしてくれる訳がない。 (まぁ、エリナを差し出したところで……逆に憎しみの加虐をぶつけて来るだろうが……)  最悪……トラウマを植え付けられて帰って来る事になるかもしれない。それはソフィアが可哀そうではある…… 「お姉様? わたくしだって責任の一端はありますよ? 初日、二日目と……彼女に絶望しか植え付ける事しかしなかったのですから……彼女が絶望し切るのも無理はありません!」  エリナはその様にソフィアを庇うが、ソフィアは頑として認めない。 「あんたの調教は絶望を植え付けることが目的だった筈。私はその絶望に少しの希望を与え奮起させるのが役目だった……それを怠ったのは私です。だから罰は……私が受けるべきなんです!」  ソフィアの言葉にエリナは反論する言葉を失ってしまう。  彼女が述べた言葉は確かに間違ってはいない……あの時、リサの訴えに耳を傾けてやれていれば……結末は変えられたかもしれなかった。リサを鼓舞する言葉をかけてあげられていれば…… 「大丈夫。私は……ルルシア様に気に入られているのですから……酷い事にはなりません……」 「でも、彼女に一日好き放題にされるのですよ? 多分……身動きも取れないように……されて……」 「構いません。身体を触られようと、くすぐられようと……私は耐えられる自信があります!」 「姉様……」 「ルルシア様の奴隷に対する愛情の向け方は承知しています。それがどんな偏愛かも……理解してます。でも、自分の気に入らない奴隷に対する仕打ちも……同じように知っていますから……」 「わたくしは……確かにあの方と不仲かもしれませんけど……わたくしは奴隷ではありません! ルルシア様もその点は弁えて罰をお与えになる筈……」 「さぁ、それはどうかしら?」 「……?」 「身体を拘束された女性を目の前に見れば……奴隷なのか、そうじゃないのかなんて……あの方には関係ないと思います。そこに剥き出しのワキが晒されていればくすぐるし……裸足の足の裏が無防備に晒されていれば、誰のものであろうと関係なく徹底的に嬲って来る……そういうお方です」 「……そう……かも……しれませんけど……」 「ほら、今……私の言葉だけでも想像してゾクッとしたでしょ? あの方にくすぐられるという想像をしただけで……寒気が走ったでしょ? エリナは身体が私よりも敏感なんだから……そういうのに人一倍耐えられない筈……」 「で、でも!」 「大丈夫。私なら……耐えられます。だから、マスター? 私をルルシア様の所へ送ってください。必ず……今日の失態を償って……帰ってきますから……」 「お姉様……」  ソフィアは真っ直ぐにあなたの目を見てその様に訴えかけた。  今日の失態は……償いたい。それが彼女の本心であるようだ……  その言葉にエリナは顔を横に向けて口をへの字に結んだ。姉を差し出す事に納得はしていないが……彼女の言葉に反論できる言葉を持ち合わせていない……それを悔しがる様子が伺える。  あなたも申し訳ない思いを持ちつつも、彼女の目を見て一つ頷きを返した。  結局は明日にはどちらかを差し出さないとならないのだ……それならば、罰を受け入れて贖罪したいと考えているソフィアに任せるのが……筋なのかもしれない。  あなたはその様に頭の中で納得を入れ、もう一度ソフィアに頷きを返してあげた。 「まぁ、マスターは私がイジメられている所……記録映像としてみたいと仰っていたようですし? そんなに見たいなら……見せて差し上げますよ。私が無様に笑い悶えている姿を♥」  ソフィアはあなたの苦々しい顔に向かって片目を瞑って舌を出しその様に返すと、鼻歌交じりに自分の部屋へと帰っていった。  その鼻歌には……実は彼女も不安に思っているという心の裏側が投影されていた。  音程は上手く取れておらず……所々に小刻みな震えが聞こえていた……  しかし、その不安をソフィアは顔に出そうとはしない。  自分で決断したのだから……と、自分に言い聞かせながら心の内にその不安を抑え込んで自室に戻っていった。  あなたとエリナは彼女の身を案じてはいるが……もう彼女の決断に水を差そうとは思わなかった。  何を言ったっところで……彼女の決意は変わらないのだろうから……  一度言い出したら聞かない……彼女がそんな頑固な性格だと、あなたもエリナも理解しているのだから。  →#73 ソフィア差し出しENDへ


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