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ザ・ドッグトレーナー #27『吊り革握り2回目のトライ:最初から本気』(⇔24)

#27 「ハァハァ、ハァハァ……はひ、はぁはぁ……」  罰を終え、すぐさまソフィアに引っ張られるように立たされ、再び吊り革を掴んだ万歳の格好となったリサは、酸欠を強いられた肺にどうにか酸素を蓄えようと何度も深呼吸を繰り返すが…… 「では2回目のトライを開始します」  と言って、ソフィアが背後から時計の方に手を伸ばし始めたものだから、折角吸い込んだ酸素を消費すると分かってもその行動に慈悲を乞う訴えを返す事となった。 「ま、ま、待って、ゲホゲホ! まだ……呼吸が整ってないっ! このままじゃ1分だって我慢できない! ハァハァ、お願いだから……少しでいいから休ませて!」  咳き込み混じりに必死に声を上げそのように訴えかけたリサだったが、ソフィアはその訴えをまるで聞く様子も示さず無視して右の手で時計型のストップウォッチの開始ボタンを速やかに押した。 「ねぇっ! ちょっと待ってって言ってるでしょ! そんな、罰が終わったらハイ次、なんてやられたら……出来る物も出来なくなるじゃない!」  ボタンを押したソフィアの手は彼女のそんな言い分など気にも留める様子も見せず、リサのワキへと手を吸い付かせるように運ばれていく。そして、彼女の戯言を笑いで封じ込めんとするようにワキの窪みをワシャワシャとまさぐってくすぐり責めの第二ラウンドを開始した。 「ちょ、はっっっ!? ひっっひゃっはははははははははははははははははははは、待ってって言ってるのぉほほほほほほほほほほほほほほほ、にぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」  ある程度手に体重がかかる状態で万歳を強いられているリサの腋は、縄で引っ張り上げるよりも真っ直ぐにワキのラインが伸びきっている。筋肉のスジも、皮膚の表皮も引っ張られるように伸びきっていて緊張している様子が伺える。そんな緊張状態を強いられている腋にソフィアの細くしなやか指先が素早く引っ掻き回してくすぐるのだから……それがくすぐったく感じない訳がない。 「ぶひゃ~~~っははははははははははははははははははははははははは、やめでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、もうくすぐりやだぁははははははははははははははははははははははは、くすぐったいのもう嫌ぁははははははははははははははははは!!」  服でも着せてもらっていれば多少は刺激の緩和も期待できただろうが、リサの上半身は完全なる裸である。  肌に直接あの細指の刺激が加えられると考えると……いかに離れたところからモニターで見ているあなたでも刺激を想像し背筋に寒気を走らせてしまうものだ。  ソフィアの黒く塗ったマニキュアも、動かす速さが早すぎて残像しか確認が出来ていない。その残像すらもくすぐりの激しさを物語る演出として機能しており、リサを一層苦しめる要因となっている。 「おっあぁぁぁははははははははははははははははははははは、ひゃぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、うぁははははははははははははははははははははははははははは、無理無理無理ぃぃひひひひひひ、こんなのホントに無理だってぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  胸も肩も腰も腹も全部露出している裸の格好ではあるが、彼女には拘束の為に絡みつけられた縄という名の心ばかりの衣服だけは着せられている。とは言え、例え縄がクロスしている箇所が多いとしても肌を刺激から守ると言った効果は一切もたらさない。むしろ縄の食い込みや動いた時に擦れる感触などが肌のくすぐったさを感じる感覚をリセットしてしまい、余計にソフィアの責めに弱くしてしまっている。  縄の刺激とくすぐりの刺激……その両方がリサの頭を混乱させ増々くすぐりの刺激が際立つ結果となってしまう。  縄で縛られる事が拘束だけの効果しかないと勘違いしているリサは、知らず知らずのうちに自ら身体を藻掻かせて縄の食い込む刺激を定期的に取り込んでしまっている。  くすぐりに比べれば微細な刺激ではあるだろうが、くすぐられながらも身体中に別の刺激を味わうという経験はまずないだろうから、それがいかに新鮮に映るか……想像出来る事だろう。  リサは悶えることによって自らくすぐりに敏感にしてしまっているのだ。  藻掻けば藻掻くほどに…… 「っっっははははははははははははははははははははは、痛いぃひひひひひひ、縄が食い込んで痛いぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」  縄の痛みを感じればそこに意識が向く。 「だぁ~~っははははははははははははははははははは、やっばっははははははははははははははははははははははははははは、くすぐったひぃぃひひひひひひ、くすぐったいってぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  意識が向けばくすぐったいと思っていた刺激は一瞬だけ薄まり、縄の刺激の方が際立って感じる。しかしその感覚も一瞬の間だけであり、縄の感覚が薄くなり始めたら今度はくすぐったさが新鮮な刺激として捉え直され再び笑い地獄に堕とされる。 「はにゃぁはははははははははははははははははははははは、いひっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ耐えらんないぃぃひひひひひひ! もう耐えらんないぃぃ!!」  笑えば身体を悶えさせてしまう為、また縄の締め付ける感覚を味わう事になる…… 「ひぃぃぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、死ぬぅっふふふふふふふふふふふふふふ、ワキ死んじゃうぅぅふふふふふ!!」  後はそれの繰り返しだ。  くすぐりという刺激が“新鮮な刺激”と感じれば感じる程笑いを生む刺激であるのだから、この縄拘束との親和性は抜群なのだ。 「っっっはひぃぃぃぃぃぃっ!? っっひゃっっはっっっははははははははははははははははははははははははははは、ヒィヒィ、イヒィィッッ~~~ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ、も、も、もう無理ぃひひひひひひ!!」 「無理? 何を言っているのです? まだ開始して1分半くらいしか経ってませんよ?」 「ま、まだ1分っっ!? う、嘘でしょっほほほほほほほほほほほ? イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……っはははははははははははははは!!」 「嘘ではありません。時計を見て下さい?」 「だ、だってぇへへへへへへへへへへ……私もう……手が限界ィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」 「まさか、こんな時間で手を放したりしませんよねぇ? そんなだらしない手の放し方をしたら……罰もそれ相応に苦しませますよ?」 「イギィィィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、だってぇづよいぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! あんたのくすぐりっっさっきより強くなっでるがらぁははははははははははははははははははははははは!!」 「“だってだって”言わない! 私のくすぐりが強かろうと弱かろうと耐えきるのが貴女の役目でしょう? ほら、そんな事言ったら……また脇腹をくすぐりますよ?」 「ひっっ!? だ、だ、駄目! 今そこは……駄目っっへへへへへ!! そこだけはやめでっっ!!!」 「問答無用です! 無駄なお喋りをする余裕があるんだったら、もっと耐える方にリソースを割きなさい!」 「や、や、やべでぇぇぇ!!! 余裕なんて無ぃ……ひぎィっッっっっ!!! イギャアァァァァアァアァァァァァ!!!!」 「無駄話をした罰です! 残りの時間はツボ殺しの刑っ!」 「どぉあぁぁぁぁっっっっはっっっひゃはぁぁっぁぁぁっっっはははははははははははははははははははははははははははははは、そりぇだみぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「暴れたらすぐに体力が尽きちゃいますよ? ほらっ! 大人しくなさい!」 「そンニャの無理ぃィぃヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、いへひぁははははははははははははははははははははははははははははは、ニャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、いひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やへへぇぇ~っっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、くぁはははははははははははははははははははははははははははは!!」  1度目のトライ時に手を放させた“ツボ殺し”というくすぐり……  脇腹のツボに指を入れられグリグリと強くまさぐられるこのくすぐり方にリサは最大級の拒絶反応を示す。  身体は何度も跳ね上がり、腰は突き出すように前に出そうと不自由ながらも必死にくすぐりから逃れようとしてしまう。  逃げられないと分かっていても本能的に逃げてしまうのだ……このくすぐりには意思とは無関係に身体の芯の部分が拒絶を示している。だから無駄だと分かっていても繰り返してしまう。  そんな行動を繰り返すものだから、リサの体力も気力すぐに限界に達してしまい…… 「あっっはっっ!? 手ぇ!? 手がぁはははははははは、握れなくにゃるぅぅぅ!!」 「すぐに握り直しなさい。でないと……本当に手を放す事になりますよ?」 「はっっはっっ、無理! 無理! 無理ぃィひひひひひひ、少しくすぐり休めてよぉぉ! 休めてくれたらぁはははははははは、握り直せるぅぅふふふふふふふふふふふふ!!」 「それは無理な相談です。貴女の為に手を緩めるなんて事……するつもりはありませんから」 「そ、そ、そんにゃあぁははははははははははははははははは、少しぃぃひひひひひ、少しでいいからぁはははははははははははははははははははは!! お願いよぉぉほほほほほほ、っはははははははははははははははははは」 「手を緩める気は無いと言っているでしょうが! 分からない人ですねぇ! もういいです。そのまま笑いながら手を放しなさい!」 「っっぎゃはっっ!? はぎゃああぁぁ~~~~~~~~~~~~~!! いやぁ~~~~っっっ!!!!」  結局、リサはソフィアのツボ殺しに耐えることは出来ず、3分40秒という短い時間で手を放す結果となった。  最初のトライよりは40秒程我慢出来たとはいえ……またしても3分台でリタイアしてしまったリサは、自分のやれなさ加減に絶望の色を顔に浮かべる。  手を放したリサをキャッチしたソフィアはすぐさま先程同様に手首と足首に縄をかけ直し、腕はワキ見せのポーズに……そして脚はカカトを尻に付けるポーズにと拘束をし直し、床に座った自分の前にリサの身体を横向きに寝かせて罰の準備を整えた。  リサは顔を青くさせながらブツブツと独り言を唱えている。  私には無理だ……とか、10分も我慢出来る気がしない……とか、絶対出来っこない、やるだけ無駄だ……など、彼女の口からはネガティブなワードが次々に溢れ出してきている。  そんなリサを見て呆れる溜息をついたソフィアは、リサの胸を鷲掴みにして身体を自分の元に寄せつつ……その胸から手を放さず、多少揉み解す仕草を加えながら彼女に言葉を零した。 「どんな事があっても、私は手を緩める気はありません。3度目のトライが始まってもそうです。だから、あんな命乞いの様な真似をするくらいなら、諦めて耐えることに力を回した方が賢いと思いますよ?」 「ンッ♥ ふっ……うぅ……で、でも……本当に……手に力が入らなくなってたから……うっっうぅ♥」 「例えそうだとしても、喋って無ければその分……数秒くらいは耐えられたはずです。それを貴女は放棄して命乞いに力を回した……」 「だって……無理……って分かったんだもの。ンッ♥ 私にあの責めを10分も耐えるなんて……絶対に無理ぃ……」 「限界を決めるのは貴女じゃありません。勝手に無理だと決めつけて……ご主人様の指示を蔑ろにするのは奴隷がやって良い事ではありませんよ?」 「そんな事言っても……出来ないものは……出来ない……」 「出来ないと思っても……限界以上の力が出せるよう最善の努力はすべきです。石に齧りついてでも耐えるという言葉があるでしょう? 命がけで耐えようとするくらいの気概を貴女は持つべきです」 「たかがくすぐり如きに……命がけって……そんな大げさな……」 「その“たかがくすぐり如き”に貴女は二度も手を放してしまっているじゃありませんか。もしもこの吊り革の下が崖だったら、貴女は二度も命を落としているのですよ?」 「そんなシチュエーション有り得ないでしょ……馬鹿馬鹿しい……」 「そうとも言い切れませんよ? 現に今貴女は命がけでこの調教に臨んでいるのですから……」 「命……がけ?」 「貴女は理解していないでしょうが……この調教で貴女に何の変化も現れなければ、本当に貴女の身が何の保証もされない場所へ移される事になるんですよ? それはさっき話してあげたでしょう?」 「……それは聞いたけど……」 「この世界で身の保証が無くなるということは、丸腰で戦場に放り出される事と同意です。つまりは遅かれ早かれ待っているのは死あるのみということ」 「何よそれ、理不尽過ぎじゃない……」 「これはこの世界では常識です。早めにそれが知れて良かったじゃないですか」 「くっ……うぅ、何で私が……こんな目に……」 「ここでは誰も貴女の境遇に同情する人間は居ません。誰も助けてくれないし、誰も手を貸そうとはしません。身を守りたければ自分自身で“この世界”の処世術を学んでいく他ないのです」 「……処世術?」 「良いですか? 調教というのは、奴隷の苦しむ姿を見て楽しむようなただの遊びではありません。犬が粗相をしないよう躾(しつけ)を施すのと同じで、主人の望んだ役割を全うできるよう躾けるのが調教なのです」 「………………………………」 「貴女が調教を受ける気がないというのなら、これ以上の調教を行っても無意味です。それはただのイジメになるだけですから……」 「……………………」 「調教は一方通行では成り立ちません。奴隷となる貴女も……ある程度の譲歩をして貰わないと、ちゃんとした効果は得られないのです」 「……譲歩って……何よ? くすぐられるのを好きになれ……とか?」 「いいえ。それは我々が調教で慣らしていく部分なので、貴女が意識する事ではありません」 「じゃあ……なに? 何を譲れって言うの?」 「簡単なことです。自分が奴隷となる事を認め……そして、ルルシア様に仕えることを受け入れる……それだけです」 「そんな事……急に言われても……出来る訳が……」 「それを最短で行う為には、貴女には諦めて貰わなくてはなりません……」 「諦める? 何を?」 「自分はもう……この世界からは出られないのだ……と。元の生活に戻れないのだと……」 「……っッ!?」 「この世界で生きて行かないといけない……と、諦めて下さい。そうしたら、自分の今やるべきことが見えてくるはずです」 「この世界で……生きて……いく……?」 「逆に言えば、この世界でしか生きられない……と思った方がよいでしょう。助けなど……来ないのですから……」 「助けは……来ない……? 私は……一生……ここで……生きていく……の?」 「正確にはルルシア様の下で生きていく……と言い換えた方が良いでしょうね……。貴女のご主人様になるお方ですから……」 「私は……まだ顔もハッキリとは見ていない女を……主人として認めないといけないの?」 「それが奴隷という立場に堕とされた者の運命です。この世界では立場は金で買う事も出来ますが……その金を持たないのであれば、奴隷は奴隷のままです」 「私は……もう……奴隷になるしか……道は……ない?」 「奴隷になることが貴女にとって最後のライフラインです。この機会を失えば……後は地獄の底に堕ちるしか道はありませんから……」 「助けは……来ない? お母さんや警察は……私を助けに来てくれは……しないのね?」 「えぇ。さっき調べましたけど……貴女の戸籍は死亡扱いに書き変えられていました……」 「死んだことに……なったって……事?」 「そうですね。奴隷商が手を回して、適当な安い遺体を貴女の母親に引き渡したようです……貴女名義のお葬式も、二日前に終わったと聞きました……」 「何処の誰かも分からない遺体を……私って事にして死亡届を出した……? って事は、医者もグル?」 「手を貸す医者なんてこちらの世界にはごまんと居ますから……」 「それに、同意したって事は……母さんは……本当に私の事を……」 「身元不明の遺体を自分の娘だと偽って火葬したのですから……貴女の母親が貴女に対してどう考えていたか……分かりますよね?」 「…………………………」  ソフィアが告げた言葉達は全て真実だ。  成人したばかりの娘にこのような事を告げるのは残酷な事ではあるが……事実を事実のまま伝えてあげるのも調教師としての役割でもある。  期待とは裏腹に突き付けられたのは親にも見放されたという辛い現実……これを受けてリサが絶望から這い上がれないようであれば、この短い時間しか用意されていない調教を最後まで全うする事は叶わないだろう。  ソフィアの話を聞いて、それを信じてくれるかどうかは……今の関係値では難しい所だとも思う。  まだリサもソフィアやエリナの事を信じようとはしていない。ただ自分をイジメるだけの敵だという認識でしかないだろう。  でも、我々にも時間はない。彼女がいかに不服に感じていようが……準備したプログラム通りに事を進めなくてはならないのだ。だから、多少リスクが大きいとしても……リサには早々に諦めるきっかけを与えなくてはならない。来もしない助けを最後の希望の様に心の支えにして待たれては……調教はいつまで経っても次の段階に進めないのだから……。 「さて、貴女の境遇……理解して頂けましたか? 助けなど……最初から期待しない方が身の為ですよ?」 「………………そっか……母さんが……ね。……うん。まぁ……何となく、そうなるかもって……思ってた……」  リサを労わるようにソフィアの手が彼女の胸を優しく愛撫する。リサはその心地の良い刺激に身体をピクリと反応させながらも笑いの時とは違う涙を一筋零す。 「この世界では金が全てだと言いましたが、それは表の世界も同じことです。金の為だったら自分の娘も売る……。金の為なら犯罪も平気で犯す……。人間というのは何処の世界に居ても欲深く業の深い生き物なのです」 「そっか……助けは……来ないか。そりゃそうだよね? さぞかしいい値で売れたんでしょうから……今頃は旅行にでも行ってるんでるんだろうな……あの愛人と……」 「助けが来るという様な希望は……今後は一切持たない事です。結局苦しむだけです。期待を裏切られて……」 「……私……やっぱり……助からないのかぁ……」 「…………………………」  リサが涙声でそのように呟くと少しの間沈黙の時間が流れる。  ソフィアも彼女と目を合わせようとはしない。  ただ、胸の膨らみをなぞるように愛撫を続けている。 「こんな話をしてくれるって事は……あんた……私のコト……気にかけてくれてるって事よね?」 「いいえ。私は……必要な情報を必要な時に与えて良いと……マスターから教わっていたので、それに従っただけです」 「必要な時に……? 今がその時だとあんたは判断したって事?」 「…………まぁ、地獄に行くにしろ奴隷になるにしろ……貴女にも知る権利くらいはあると思いましたから……」 「そんな事聞かされたら……頑張る理由が出来ちゃうじゃない……」 「そう思うのは貴女の自由です。まぁ、私は調教師ですから? 頑張って貰う分にはそれに応えることは出来ます」 「ソフィアだっけ? あんた……素直じゃないわよね?」 「っ!? 何ですか? 急に生意気になるじゃないですか……」 「いや……なんか……力が抜けたわ。自分を保とうとしてたのが馬鹿らしく思えるくらい……」 「言っておきますが……これから罰は加えますよ? 3分30秒しか耐えられなかったので、10分足して13分半です。いいですね?」 「どうぞ……。ヤるならとことんヤってよ? 嫌な事考えなくて済むくらいに……馬鹿みたいに笑わせてよ……」 「っ! 何ですかその悟ったような物言いは! 奴隷の分際で……調教師に指示を出すのですか? ホンッットに生意気ですね? いいですよ、だったら次はこの状態で足の裏も同時にくすぐって差し上げます」 「足の裏も? あぁ……そっか……私……裸足だもんね? しかも、足の裏は……あんたの目の前に晒されてるから簡単に触られる……」 「ワキと足の裏の同時責めです。相当苦しくなりますよ? 覚悟は良いですか?」 「苦しいのかぁ……そりゃそうだよね? 今までも苦しかったんだから……」 「では今から13分半……計ります」 「うん。出来れば……優しくしてね?」 「する訳ないでしょ? 馬鹿ですか?」 「アハハ……やっぱり?」  どうやら、ソフィアの言った“必要な時に必要な情報を与える”という方針は功を奏したようだ。 先程までのリサの困惑やら不安やら恐怖やらの感情はもう表情には浮かんできてはいない。  くすぐられる事を許容した様子ではないが、少なくとも自分の置かれた境遇の理不尽さは少しは呑み込んで諦める事は出来たようだ。  普通の日常を送っていた人間が、目を覚ませば誰かのせいで奴隷に堕とされていたと分かれば、それを理不尽だと思わない者はいない。  その理不尽に諦めが付くかどうかは……その人の裁量にもよるだろうが、リサの場合は彼女の境遇が幸か不幸か元から酷かったようで……諦めへの理解は早く訪れたようだ。  本来なら……この諦めを持たせる時間をもっと取るべきなのだけど……今回の調教は時間の制限が(以下略)なのだから仕方がない。 「手を放した根性無しへの罰です。たっぷり笑って苦しみなさい? ほ~ら、コチョコチョコチョ~♥」 「ぶぎゃっっはっっ!? はひゃあぁぁぁぁぁ!? いきなり足の裏ぁっっ!?」 「ほらほらぁ! ワキも揉み解してあげますよ♥ コチョコチョコチョ~♪」 「あっっっははははははははははははははははははははははははははは、やだっはははははははははははははははははははははははははは、ワキにも手が伸びて来たぁぁはははははははははははははははははははははははは!!」 「モミモミ、コチョコチョ、モミモミ、コチョコチョ♥ どうです? 笑えば嫌な事なんてどうでも良くなるでしょう? もっと笑わせて差し上げます。遠慮せずに笑い悶えまくって下さい? コチョコチョコチョコチョコチョ~♥」 「あっっはははははははははははははははははははははははははははははは、こんなに激しくされたらぁはははははははははははははは、嫌な事だけじゃなくてぇへへへへへ記憶までぶっ飛ぶわよぉォほほほほほほほほほほほほほほほほ!!」 「良いじゃないですか。表の世界での仮初めの記憶なんて笑ってぶっ飛ばしてしまいなさい。これからは新しい人生を上書きしていくんです。その為の準備として頭の中をスッキリ真っ白にしておきましょうよ! ほら、笑って! こちょこちょこちょ~♪」 「ギャ~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、こんな記憶の消し方嫌ぁはははははははははははははははははははははは、全然健全じゃないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「健全? 何をいまさら……。これからは“くすぐり”をエロい事に感じられるよう身体に刷り込ませる予定なんですよ? 純情ぶらないで下さいよ!」 「ヒィヒィ、腋ぃぃひひひひひひひひ! 死ぬほどこそばいぃぃひひひひひひひひひ!! 死ぬぅぅふふふふふふふふ、腋ぃ触られるの死ぬぅ~ふふふふふふふふふふふ!! 「おや? やっぱり足より腋を触られる方が好きなんですね? いいですよ? 罰の時間はたっぷりありますし、貴女が果てるまでいじくり回わして差し上げます♥」 「ひっッ違っっはははははははははははははははははははははははは!! 好きとかじゃなくてぇへへへへへへへへへへへへへへへ、本当に弱いって言ってんのぉほほほほほほほほほほほほほほ!!」 「そう言って私がやめるとでも思いますか? 弱いクセにそこを敢えて私に強調するなんて良い性格してますね。知ってますか? そういうの……誘い受けって言うんですよ?」 「ばっっはははははははははははははははははは、誘ってないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やめろって言ってるのぉほほほほほほほほほほほほ!! うぁはははははははははははははははははははは、ぇははははははははははははははははははは!!」 「全く……そんなに嬉しそうに笑われたら……こちらももっと笑わせたくなるじゃないですかぁ♥ 少し本気でくすぐらせて頂きますよ? 覚悟してください?」 「嬉しくもないぃぃッッひ!? うひっ!! はひっっ!? そ、そ、そこぉ……脇腹ぁ!!!」  リサの様な聡い娘は……もっと時間をかけて丁寧に調教してやるべきなのだが……それを言っても始まらない。  調教を依頼される側は金を積まれれば主人の要望を叶えないといけない。それがこの世界のルールなのだから……。 「よし……ここがツボですね? さぁ、これで笑い狂いなさい? 残りの時間は足の裏コチョコチョ地獄&徹底ツボ殺し責めの刑です♥」 「ィッ!? ギャアアァアァァァァ~~~~~~~~~ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、脇腹ぁははははははははははははは、ツボ入ってるぅぅふふふふふふふ、それツボに入ってるぅぅっっふぁははははははははははははははははははははははははははは、ヒャギャ~~ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」  きっとリサは三度目のトライをクリアできるだろう。そういう顔をしながら笑い悶えている。 「ハヒ、ハヒィ! 苦しいぃひひひひひひ!! 苦しいぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、笑うの苦しいぃぃひひひひひひひひひひひひひひ!! しんどいぃぃ!! キツイぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くぁはははははははははははははははははははははははははははははは!!」  笑い続けるという行為は確かに苦しい。酸欠も辛いし、身体が勝手に暴れてしまうから疲労もすぐに溜まってしんどくなる。  絶望し切った状況でこれをヤられれば、そりゃあ……笑わされる事が地獄にも等しい行為だと感じる事だろう。  でも、その絶望が諦めに変わったら感じ方も変わってくる。  肉体的に苦しく辛いのは変わらないが、諦める事で心の荷が降りる事もある。  その僅かな変化で……考え方も変わるのだ。  考え方が変わればくすぐりに対する感じ方も少しずつ変化していく。  人間は環境に適応する生き物だ。そういう環境なのだと諦めがつけば、くすぐりの苦しみや辛さにもその人なりの適応ができてくるものだ。  苦痛を快楽に変える者もいれば、自分のこの辛い境遇を倒錯的に考えられるようになる者さえいる。  そうやって人間は逃げ道を本能的に探るのだ。  辛さに適応できる逃げ道を…… 「はっっひっ!? はぁぁぁぁはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、うぁはははははははははははははははは!!」  その逃げ道を意図的に示してあげるのが……我々調教師の役割だ。  “くすぐり”という……人にとっては不快感……人にとっては苦痛を伴う刺激を、苦痛だけに終わらせないよう導いていくのが……調教師の役目なのだ。  明日からの調教は、それを意識して二人に責めさせようと思っている。  リサの感じる苦痛を性的な快楽に寄せて逃げ道を作ってあげようと……考えている。 「ひっっひぃぃぃっひひひひひひひひひひひ、ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、ぁはははははははははははははははははは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、くぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……」  あなたは明日の調教のメニューを考えながら、静かにモニターから視線を外し椅子から立ち上がって部屋を後にした。  この後の結果など……見なくて分かっている。  リサは三度目のトライを終えられる筈だ。  そのトライの様子は食事の時にでもソフィアに聞けばいい……  彼女がどんな耐え方をして、どんな態度で最後に臨んだのか……それを聞くだけでも食事は箸が進みそうだ。  あなたは話を聞くのを楽しみにしながら自分の部屋へと戻っていった。  明日の調教メニューを改めて考え直すために……  →#28へ


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