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PT研ー⑮『暗がりに蠢く影』

15:暗がりに蠢く影 「センセ……どないします? 鳴臥センセの件……」 「そうね、香澄……取られちゃったわねぇ……残~念♥」 「いやいや! 残~念やあらへんっすよ! うちの計画では鳴臥センセには予算分配会議の場に出てもらって、うちらに有利な発言をして貰うっちゅう大事な役割があったんすよ? PT研の顧問になってもうたらその計画を見直さなあかんくなるやないっすか!」 「そうねぇ……。まぁそこは私が穴埋めしなくちゃ駄目よねぇ?」 「穴埋め? 何か……策でもあるっちゅー事っすか?」 「策も何も……私がその会議の場に出れば問題ないでしょう?」 「センセが……会議に? た、確かに……センセも部活の顧問しとる訳やあらへんから会議に出る権利は有りましょうけど……でも、それは大丈夫なんすか? センセはあまり目立った事をしたくないと仰られていた筈じゃ……」 「本当はしたくはないけど……でも、PT研には私の素性がバレてるみたいじゃない? 香澄に催眠が掛けられているという事への対処もちゃんとして来たみたいだし……。バレてるんだったら隠れてても意味ないだろうし……だったら、こっちも打って出なくちゃ♥」 「ま、まぁ……そうなんすかね? うちはセンセの事全然知らないと言っても過言ではないんすけど?」 「どうやら京堂財閥の娘……京堂小夜子の情報網は私の想像以上に巨大で正確なようね……。流石は“国の情報屋”を謳っているだけはあるわ……」 「国の……情報屋?」 「あら知らないの? 京堂財閥はただのお金持ちって理由で財閥と呼ばれている訳ではないのよ?」 「いやぁ……うちは学園の外の事はからっきしで……」 「大手コンピューター会社に情報を処理する為のマイクロチップの製造や提供を行っているのが表の顔……。だけど京堂財閥の本当の資金源はその配布したマイクロチップに記録された膨大な情報を国の要人に売るというのが主な収入になっている……と、一時期噂に上がったことがあるわ……」 「なっ……!? コンピューターの中に入れるマイクロチップを……不正に?」 「あまりにも情報が早くて正確過ぎたが故そういう噂が立ったけど……真偽のほどは分からないわ……。だけど京堂財閥は国お抱えの諜報機関的な役割を成しているのは事実で、情報の売り買いを裏で行って財を成しているのも確かな話よ」 「そんなの……盗聴器を仕掛けて家具を送る様なものやないっすか! それは……違法なのでは?」 「もしそれが本当なら違法だけど……売り買いしている対象が国や警察だったりするから……まぁ、捕まらないわよね?」 「……ッっ!?」 「京堂小夜子はその京堂財閥の一人娘……。そんな家で育っているのだから……彼女が知ろうと思って知れない情報はないと思って間違いないわ……」 「学校のPCやら……下手したら監視カメラにも……そのマイクロチップとやらが入れられている可能性があるっちゅう事っすか?」 「さぁ? 入っていてもおかしくないし……それを利用しているかもしれない……。正直、あの娘が自分の家の技術を何処まで利用しているのか……見当もついていないわ」 「でも……センセの素性を調べられる情報力があるとするなら……きっと……」 「えぇ。だから彼女には特別警戒をしておいた方が身の為よ」 「わ、わかりました……気を付けます……」 「まぁ、そういう懸念材料があるから……私もPT研だけは潰しておきたいって思ってたんだけどねぇ~」 「鳴臥センセは……結局……PT研に取り込まれる事になりましたから……」 「いちお……失敗した時の布石も打ってはいるけど……」 「えっ? 布石?」 「どうかしらね……? この調子じゃ……綾ちゃんも失敗するんじゃないかしら?」 「綾? って……あの生徒会長の妹の……神崎綾?」 「彼女には、生徒会長の秘密が収められたテープを取りに行くよう暗示をかけたわ……」 「生徒会長の……秘密……」 「もしも綾ちゃんがそのテープを取ってきてくれて……生徒会長の何かしらの口外できない秘密なんかが分かれば……」 「裏で脅す事も可能っちゅう訳っすね?」 「PT研や京堂小夜子がどんなに怖かろうと……生徒会長さえコッチに取り込めれば、予算分配会議は監査委員会の独壇場になる……」 「そうか……そもそも、生徒会長を脅せる様になれば、会長に指示してPT研を同好会レベルに降格させる事も可能になる訳だ……」 「会議の場にPT研が来なければ、監査委員会に敵は居なくなる……そして京堂小夜子が来なければ私も安心して会議に足を運べる……」 「つまりはそのテープとやらに全てが掛かっているという事ですね?」 「えぇ。そのテープさえ手に入れば……学園は私達のモノになる……」 「そういう事やったら……うちの方でも予備策を打たせて貰いましょか……」 「予備策?」 「テープを取る役割の神崎綾はセンセにとっては不安材料なのでしょう? だったら……テープ奪還出来なかった場合を想定して“第二の槍”を用意しておくべきやないですか?」 「第二の槍? 何か心当たりでもあるの?」 「うちの管轄しとる有象無象の同好会には、そういう事に適したクラブもあるっちゅう事っすよ♪」 「ふぅ~ん? 使える駒が有るという事ね?」 「京堂小夜子が情報集めのプロやとするなら……彼女らは屋敷に侵入するプロとも呼べる存在……」 「あらあら……それは……流石は同好会ね? 私の知らないディープな研究してるトコもある様で……」 「……表向きには“空き巣被害対策検討会”とかいう……善良そうな看板をぶら下げてはおるけど……彼女らは空き巣の侵入をシミュレートするとか言って、実際に公共の施設に入ったり警備の厳重な家に侵入してデータ取りをしとるっちゅう……危ない連中なんす」 「空き巣対策の為に実際に自分達で空き巣の真似事をするの? それは……面白いわぁ♥」 「実際は侵入するだけで何も取らないし、犯罪的な事は何もしないで帰るらしいんすが……」 「いや、不法侵入は立派な犯罪よ?」 「まぁ、彼女達は犯罪者として捕まるリスクよりもデータを取って犯罪の抑止に役立てたいと本気で思っているらしくて……」 「考えている事は善良でも……ヤってる事は犯罪かぁ♥ 中々興味を惹く人たちのようね?」 「彼女らに任せれば恐らく誰が侵入するよりも高い成果が得られるんやないかと思います」 「なるほど? 日々空き巣対策の研究をしているのだから……やる側のやり口も熟知している……と?」 「どうせ二番槍を任せるのであれば……それに特化した人材を選ぶべきっす。ほら……よく言うでしょ? 飴は飴屋に任せた方がええと……」 「それを言うなら……餅は餅屋に……ね?」 「神崎綾が失敗したら……奴等にお願いする。その為の繋ぎは……今から取っておかんとあかんのですわ」 「……それは……任せても大丈夫かしら?」 「えぇ。うちには優秀な繋ぎ屋がおりますさかい……お任せくださいまし♥」 「繋ぎ屋?」 「そう……。ある時は生徒会へと潜り込みうちに情報をくれる役割を担ってくれ……またある時はPT研に肩入れしそうになっとる哀れな女……。その正体は、そこのベッドに拘束され身動きが取れなくなっとる……うちの幼馴染にして唯一の親友、宮腰恵梨佳譲や♪」 「宮腰さん……?」 「まさかこんな日が来るとは思いもせんへんかったわ♥ ご主人様であるうちの事を裏切ろうとするなんて……なぁ?」 「むぅぅ! うぅぅぅぅぅ!!! うぅ!!」 「あぁ、そうか……喋れんよう口枷しとったなぁ? 無様でえぇ格好やで……ホンマに♪」  「彼女は……裏切っていたの? あなたの事を?」 「どういう意図で裏切ったのかはまだ聞いてはいませんがね……でも、魔女狩り屋の一件が失敗に終わった原因はどうやら彼女のせいだというのが分かっているんす……」 「へぇ……。っで? どうするの? こんなに仰々しい拘束なんてしちゃって……」 「どうするって……そんなの決まっとるでしょ♪ 今から再教育をして二度とうちを裏切れないカラダにしてやらんと……」 「なるほど? だったら私の催眠もかけてあげよっか? 暗示をかければ手っ取り早いわよ?」 「あ、いえ……。今回は時間をかけてうちがイジメてやろうと考えておるんで……催眠は今回は遠慮しときますわ」 「そう? でも……必要になったら言ってネ? いつでも気持ちよぉ~く、して……あ・げ・る・から♥」 「(うぅ……)ま、まぁ必要が出てきたら……その時は、よろしゅう頼みますわ……ハハ……」 「……フフフ♥」 「予算会議まであと二週間……っすか……」 「それまでに……上手く事が運べばいいのだけど?」 「上手く運ばせんとあかんでしょ。でないと……またうちらは……陽の目を浴びる事無く……地下に蠢く影の一部に成り下がる事になる……」 「生徒会を打倒し、監査委員会が実権を握る様になれば私の研究資金も潤う……。設備さえ整えば……PT研なんかに破られないような強力な暗示をかけられる機器が揃えられる筈……」 「センセのチカラが増せば……うちらが多少の無茶をしても揉み消せるようになる……」 「私と監査委員会はウインウインの関係よ♥ お金が手に入れば……その関係も……もっと♪」 「ヤってやろうやないの。今日からの一週間……忙しくなるで! なぁ? ……恵・梨・香・ぁ?」 「むぅぅぅぅ!! うぅぐぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 ―――――― ―――― ―― ……同時刻、京堂邸 「珍しいわね? 綾ちゃんの方から私の家に来たいと言うなんて」 「え? ソウですカ? 私は……いつも通リだと思イますケド?」 「…………。っで? なんだっけ? 詩織さんのテープを聞きたいとか……言ってたわよね?」 「ハイ。久しぶりに……聞きたイなぁって……思いマして……」 「あら、でも……テープのコピーは綾ちゃんにもこっそりあげたでしょう? それはどうしたの?」 「………………ッ。…………」 「……フフ。まぁ、いいわ♥ 折角来てくれたのだもの……すぐに案内してあげるから……さぁ入って入って♪」 「はい、オジャマ……シマス……」 「……あら? 今日は……靴下穿いて着てないのねぇ? 素足?」 「……はい。後で……脱ぐの……面倒くサいのデ……」 「……フフフ♥ そう。それは……良い心がけね……?」 「ハイ……♥ 小夜子……お姉様……♥」 「いいわ、それじゃあ……連れて行ってあげる。いつもの……あの地下室に……♥」 「…………は、イ♥」 ――第4話、完。   次回、第5話『部費会議編』へ続く……(予定)


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