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PT研第4話ー⑩『動き出す裏と表』

10:動き出す裏と表 ――放課後、学園内 保健室 「す、すいませぇ~~~ん? 四ツ星先生……いらっしゃいますかぁ~?」 「あらあら……“貴女の方”が来てくれたのね? 神崎……綾さん?」 「あ、はい。明日香ちゃんは……その……取り込み中でしたので……代わりに私が……」 「そう……。まぁ、貴女でも全然問題はないわ♥ さぁさ、入って頂戴♥」 「は、はぁ……じゃ、じゃあ……失礼しますぅ……」 「うんうん♪ 緊張しなくていいのよ? リラックスして……その椅子に座ってぇ?」 「うわぁ……この部屋……甘くていい匂いが……」 「そう? ありがとう……ウフフ♥」 「部屋も……お花が一杯で……綺麗……」 「フフフ♥ やっぱり評判通り……とびっきり可愛いわねぇ♥ 思わず守ってあげたくなるって表現されるのも……分かる気がするわぁ~」 「あ、あの……えっと……鳴臥先生から……四ツ星先生が話したいことがあるみたいだから保健室まで行ってみてと言われたのできたのですけど……? 話したい事って?」 「あぁ、うん……ゴメンゴメン♥ 用事って言う程の大した事では無いのだけど……ちょっと貴女に協力してもらいたいことがあって……ネ?」 「……はぁ……協力? ですか?」 「そっ♥ 座ったままでいいから……私の目を見て、話を聞いて貰えるかしらぁ?」 「は、はい……こ、こうですか?」 「そう……そのまま……私の目を……ジッと見つめて?」 「……? は、はぁ……」 「どう? 何か……感じてこない?」 「……………………?」 「私の目……貴女にはどう映ってる? 言ってみて?」 「……ぇと……ライトの光?? 先生の目……キラキラ光ってて……綺麗……」 「ウフフ♥ そうでしょ? もっとよく見てみて?」 「あ、あぁ……アレ?? なんか……見てるだけなのに……頭が……グルグル……して……きた……」 「あらアら……どうしたノぉ? 体調……悪くなってキちゃったカシラ?」 「あの……わ、分かりません……ケド……その、気持ち悪くはなくて……むしろ……フワフワして、気持ちが……ヨク……」 「そう? だったら……今カら、私のイう事を……よく聞いテ頂戴ね?」 「は、はヒ……何でしょう……カ?」 「貴女ノ……お姉サん……神崎詩織サンの……秘密……教えて貰えル?」 「詩織……お姉チゃん? お姉ちゃンの……秘密……?」 「そう。PT研は何か掴んでイるんデしょ? 貴女のお姉さんノ秘密を……」 「PT研……お姉チゃん……」 「それを使って脅シたからこそ……部に昇格出来た……そうデしょ?」 ――ブゥゥゥゥゥゥン…… 「ハ……ひ? なんか……変な音ガ……部屋中カラ……し始メた??」 「気にしなくていいワ♥ それよりも……もっと私の目を見テ? 穴ガ開くほど……シッカリと……」 「は、ヒ……目が……回ル? 目が……回っテる?? 先生ノ声も……洞窟の中にイルみたいに響イて聞こえ……ル……」 「さぁ……続きヲ教えテ? PT研は……どウやって……部ニ昇格したの?」 「はヒ……? PT研……」 「……そう……よ。PT研……ハ、どんな手を使ッて……部に……昇格……シたの?」 「ソれは……私ガ……私が……」 「綾ちゃンが……なに? どうシたの?」 「私が……オ姉ちゃんノ秘密……喋ッちゃっタ……」 「秘密? そうなの? ふぅ~ん……そレで? その秘密って言うのはナニ?」 「部に……昇格する条件トして……テープに……宣誓を……残シた……」 「……宣誓?」 「部長は……そのテープを口外しナいト……お姉チャんと約束シテ……部に昇格サせタ」 「何かを宣誓さセたテープが存在スるという事ネ? じゃア、そのテープは……何処に有るのかしらァ?」 「テープ……は……小夜子先輩ノ……おうチ……」 「京堂小夜子の家? 京堂小夜子は……PT研の副部長……ね?」 「小夜子先輩の……オうちは……凄く……大きくテ……立派……」 「知っテいるわ。京堂財閥の娘さんなんでショ……? 財閥の娘さんの家って事は、警備も厳重なんデしょうね?」 「厳重……お巡りさんミたいな……警備ノ人……いっぱい……イた……」 「あラ……行ったこトあるの? 彼女の家……」 「何度か……イキました……何処にテープを保管してイるか……教えてくれタ……」 「そう……だったラ、貴女だったら……そのテープ……取ってこれるワよね?」 「私ガ……テープを?」 「そのテープさえあれば……監査部ヲ勝たせる事が出来る。監査部が生徒会ニ勝てば……私ガ学園の裏で管轄シている“快楽催眠奉身会”にモ資金が見込めるわ。そコで、もっと良い機材ヲ仕入れられれば……こノ学園を裏で操る事モ可能にナる……」 「……快楽催眠? センセ? 操るっテ……何ノ事です……カ?」 「フフフ♥ 今のは余計なお喋りだったわネ♥ 今言った事ハ記憶から消シておくわ。勿論……こういう話ヲしてきた事モ全部……一旦は忘れて貰う♥」 「忘レる……? 今の事? 私?」 「その代わリ……貴女ニは……今までに味わった事の無ィ……最高の快感ヲ……味わって貰うわ……♥」 「最高ノ……快感?」 「そうよ? 意識がブっ飛んジゃう位ノ快感♥ 貴女も……そう言うノ……嫌イじゃないデしょ?」 「は、はひぃ♥ 嫌いじゃ……ナイ……れすぅ♥ 私ィ……気持ちいぃの……好キ……♥」 「ウフフフ、素直でいい子ね……♥ 私も、そういう欲望ニ素直な子……嫌いじゃナイわよ?」 「苦しいの……好き♥ 笑うの……スキ♥ イジメられるの……好キ……♥」 「ウンウン……いいわ……可愛ガってあげるゥ♥ 今日から綾チャんも……私の奴隷よぉ♥」 「私が……奴隷? 四ツ星センセの……ドレイ?」 「貴女の望む快感を私は何でモ与えてあげる事が出来ル……。だから、私の命令モ必ず遂行してみせてネ?」  「は……イ♥ やりますゥ……テープ……取ってきますぅ」 「よしヨし……それじャあ、この会話を忘レてしまう程の……快感ヲ……今かラ与えテあげマしょうネ♥ ほら……コッチにキて? コッチの部屋に……」 「はひ♥ はヒぃ……♥」 「この話ハ、一旦快感に上書きさレて忘れる事にはナるけど……脳の隅っこノ方にはちゃ~んと刻まれテいるから……安心してネ?」 「あハぁ♥ ベッドに……枷が付いてるぅ♥ 私……拘束される……ノ? このベッドにぃ?」 「そうよぉ? 手足が動かせなクなって抵抗できなくなっちゃうケド……こういうのも好きでショ?」 「好キ……♥」 「ほら、服を脱いで……ベッドの上でバンザイしナさい? 貴女の望む通りの拘束を……シてあげるカラ……♥」 「ハイ……ぃ♥」 「これが終わったラ……綾チャンは、普段通りノ貴女を演じ続けるのよ?」 「……ハイ……」 「いつモ通り……普段通り……この出来事ヲ忘れて……静かにタイミングが来るのを待ツの……」 「……タイ……ミン……グ?」 「そのタイミングは……鳴臥先生が合図を送ってくれる筈だカら……その合図を聞き逃さなイでね?」 「合図……」 「合図となる言葉は……“顧問になる!”よ」 「コモンに……ナル?」 「そう……鳴臥先生が……何かノきっかけでその言葉を言ったなら……貴女ハ私とのこの“営み”を思イ出して……その日のウチに動くの……分かっタ?」 「顧問に……なル……。顧問に……」 「本当は、その言葉ヲ吐かないこトが一番だけど……なんせ、あの京堂小夜子の居ルPT研ですもの……用心に用心を重ねるニ越したことはないワ……」 「顧問に……なル……。鳴臥先生が……顧問に……」 「フフフ……顧問になろうがなるまいが……香澄は私のモノよ♥ 彼女も……奴隷……」 「鳴臥先生も……ドレイ?」 「そう……奴隷よ。私デも催眠術デもナく……快楽ノ……奴隷……」 「カイラクの……ドレイ……」 「快楽にヨって刻まれた私との盟約は……催眠の効果も相まって絶対に抗えなイわ♥ それを上回る快感が刻まレない限り……この催眠は誰も解ケない。貴女も私のモノよ♥ これから……ね?」 「私は……センセの……モノ……」 「そう……私のモノ……。可愛い可愛い……私の実験鼠(モルモット)になるの……♥」 「私は……先生……の……モノ……四ツ星……センセイの……モノ……♥」 「さぁ、始めましょう? 私と……貴女との契(ちぎり)の儀式を……」 「…………は……い……♥ センセ……四ツ星……センセぇ……♥」 ―――― ―― ― ……中世異端審問研究クラブの一件から一夜明けた放課後、PT研 部室。 「貴女達ッ! 先生にこんな事してただで済むと思っているの? 私に傷でもつけてみなさい、全員漏れなく退学処分よッ!」  あの恐ろしい目に合わされた昨日の事件から一夜明け、鳴臥先生への交渉は小夜子先輩から部長にバトンタッチし、早速彼女を部室へと誘い出すべく伺いを立てる事となった。 「ハハハ、まさか……先生様に対して傷をつけるだなんて……我々はそんな事これっぽっちも思ってなどいませんよ」  今度はちゃんと先生をこの部室に連れ込む予定であったため、部長の生徒会長をも落とした舌制術は冴えに冴え……このように先生をまんまと部室へ誘導する事に成功した。 「嘘おっしゃい! 部屋に入るなり鍵なんかかけて、こんな如何わしそうな椅子に座らせて拘束して! もうこれだけでも立派な監禁罪よ!」  やはり交渉をやらせたら右に出る者は居ないと言わしめるほど……部長の捲し立ては鮮やかなものだった。  先生が「拷問は暴力であり倫理的でないから駄目だ」と言えば「じゃあ教育的指導も暴力を含んでいるのだから倫理的であるとは思えない」と返し、「指導はやり過ぎなければ教育の一環だと」返されれば「拷問も過度な暴力を取り払えば人間同士の心理戦が主軸になる」と返し。「拷問と教育を同列に考えるのはおかしい」と反論されれば「人間の心理的動向を観察し研究する事が教育的と同列ではないとするなら、道徳や心理学の授業も教育的でないと言っているようなものだ!」と語気を強めて反論を返したり……  そもそも拷問の歴史はあーだこーだで、教育の始まりもあーだこーだで……暴力を使う拷問はアレコレそれがこうで、暴力を使わなければ何々で……と、先生をも困惑させる様な謎知識を洪水のように披露して捲し立てたり…… 「知ってますか? “拘束”は同意の上ならば暴行罪にも監禁罪にも問われないんですよ。ほら……大人になったらそういう“プレイ”を好む人っていうのもいるのですから……」 「ぷ、プレ……!? って……あ、あなた高校生の分際でッ! そんな破廉恥な事を……」  「ハハハ……表現がよろしくなかったですか? まぁ、最近の女子高生は多感で好奇心が旺盛ですから……そういう知識が無い方がおかしいくらいですけどね……」  とにかく、こんな風に先生の反論をことごとく口八丁手八丁で潰していき……いよいよ反論の言葉が弱まったと思った瞬間を見定めて……お決まりのあの言葉を吐いたのである。 『百聞は一見に如かずと言いますし……実際に我々の活動を体験なさっては如何ですか?』と。  その言葉に、まだ何かしらの反論を見せるかと思われた鳴臥先生だったけど……私の想像とは裏腹に、その言葉を待っていたと言わんばかりに二つ返事で「良いわ……受けて立とうじゃない!」と乗り気な言葉を返し、早速先生を部室に連行してこの椅子に拘束を施したのだった。 「それよりも……貴女、今……同意の上なら……って言ったわよね?」 「えぇ……そう言ったつもりですが?」 「なら、この拘束は絶対に暴行罪とか監禁罪に当たるわよ! 私が同意なんてする訳が無いんだから!」 「フム……それは困りますなぁ……」 「な、なにが“困りますなぁ”よっ! そう思ってるんならさっさと解きなさい! でないと……私は相手が生徒であっても本気で警察に訴えにいくわよ!」  もう3度目だから説明の必要すらないだろうけど……  鳴臥先生に座って貰っている椅子は……私を二度にわたって地獄に叩き落した……あの拘束椅子だ。  上は、着ていたジャージの上着を脱がせ体操服の格好になって貰い……下はジャージを着せたまま履物だけ脱がせて座って貰い、手首を背もたれの上についてある枷に万歳の格好で拘束し……足も地面に足裏が付かないよう浮かせて足首を拘束し身動きを封じてある。  丁度、昨日の最後に私が生徒会長に責められた時の格好をそのまま先生には取って貰ってる形になっている。 「拘束に同意して貰わなければ……我々の活動を“体験”など出来ませんから……」 「だ、だからっ! 私は体験したいなんて一言も言っていなわよ! どんな活動をしているのか確認しに来ただけで……」 「いやいや……説明しましたよね? 我々の活動は、体験してもらわないと本当の理解は得られない……と」 「知らないわよっ! 別に理解なんてする気もさらさらないわ! 貴女が散々煩く部室に来いって喚くから来てやっただけよ! こんな事されるなんて聞いてないわ!」 「喚いただなんて人聞きの悪い……。私はあくまで冷静に話をしに行っただけなのですがねぇ? どちらかと言えば煩く喚いていたのは先生の方……」 「う、うるさいっ!! いいからさっさと外しなさい! これ以上ヤれば退学だけじゃ済まなくなるわよっ!」  しかし……若いとはいえ流石は体育の先生だ。肩幅も胸の大きさも身体のラインから括れのシルエットに至るまで……私なんかとは格の違う大人のカラダを見せつけてくれている。  小夜子先輩も負けてはいないが……胸の大きさはやはり大人の女性を表わすかのようにボリューミィで張りが良さそうな膨らみだ。理子先輩と並べると先輩には胸が無いのではないか? と錯覚を起こしてしまう程の胸の格差があり、まさに子供と大人の違いを見せつけている。  腕も私なんかよりしっかりと大人の女性らしい筋肉が適度についていて……体操服から晒されている二の腕の肌も、日に焼けてはいるものの張りがあり柔らかそうで健康的な印象を植え付けて来る。  ワキは……残念ながら体操服を着ている為見る事は叶わないけど、きっとソコも大人の女性らしく色っぽくて綺麗な窪みを隠し持っているのだろうな想像がつく。  腰回りにはベルトでの拘束も行っているが、このベルトは服の中の肌に直接巻き付ける格好となっている。だから体操服の裾はベルトに巻き込まれておらず、ダランとした服の着方になってしまっていた。だけど胸の大きさが幸いしてか、胸の頭頂部に引っ張られる形で服には皺が寄っている為胸横の体格がいかに細く華奢なのかを服の張り具合で悟る事が出来る。  胸の大きさと反比例して案外脇の下や脇腹は細いのだろうと……私はそれを見て勝手に服の中を妄想し始めてしまう。  そして、胸にも負けない豊満な膨らみと弾力感を持っているであろう先生のお尻……  そこもジャージの下に隠れている為肌を直接見る事は出来ないけど……座面に座っている尻肉のモチっと歪んだ形を見れば、その肌が如何に弾力感があって張りもあるのかが確認できる。  座っていてもダレるような形に崩れてはいない。それは大殿筋がしっかりと引き締まって鍛えられている証拠だ。お尻を支える筋肉が鍛えられているからこそ……座った姿勢も奇麗に映るのだ。  そう言えば……座っている先生の姿はいつも背筋がキレイに伸びていて姿勢も美しい。今こうして拘束されて不自由な格好を強いられているが、その姿勢のスラッと伸びた美しさは失われておらず逆に凛々しさを増したようにも見えてしまう。  その姿勢だけでも「絶対に負けない!」という強い意志を感じられるようで……思わず生唾を呑み込んでしまいそうだ。 「まぁまぁ……先生殿……落ち着いてください。大丈夫です……我々が行う“拷問”は先生が想像なさっている拷問とは違って……傷を付けたりするような野蛮な事は一切行いませんから……」 「野蛮な事は行わないですって? この拘束だけでも十分に野蛮で暴力的よっ!」 「いえ、この拘束は……先生の身を案じて……行ったに過ぎませんよ?」 「……は、はぁ?? 私の身を……案じて? って……何を言って……」  ジャージは足首まで隠す長いタイプであるため、出来れば見たいと思っていた太腿や膝……脛などの部位も直接見る事は叶わない。しかし、最も見たいと思っていた先生の“足”はしっかり露出されてあるのでそこは見る事が出来ている。  靴も……靴下も脱がされ、裸足の格好にされている鳴臥先生のナマ足……  それもやはり……私達学生には醸し出す事の出来ない……大人の女性を匂わす様な立派な足であると見るだけで伝わってくる。  成熟しきった大きな足……  無駄な肉はついておらず、足の指に向かって関節の骨が浮き出て見える足の甲……  足の爪には落ち着いた深い藍色のペディキュアが塗られていて、指の細さも相まって独特な色気をその足先から漂わせている。  普段……隙を見せずガードが堅い印象を覚える鳴臥先生である為、当然靴を脱いだり足を見せたりしてくれる瞬間などない。しかし今はそんな先生の秘密を垣間見ているようで胸が高鳴ってしまって仕方がない。  下から覗けば……さぞかし私の想像を超えるような素晴らしい足裏が拝めるんじゃなかろうか……? 私達が知るにはまだ早い大人の足の裏というのを……知ることが出来るのではないだろうか?  ……などとその足を見て妄想を更に膨らませると共に、早くその足裏に触って味わってみたいと期待してしまう自分が湧き立ってきているのを自ら感じた。 「我々が行う拷問は“思わず身体を動かしてしまいたくなるような刺激”が送られるので、拘束していないと無意識に暴れて怪我人が出てしまいます」 「思わず……身体が……動く? 何よそれ……」 「不本意ながら動いた手足が……生徒の顔や身体を傷つけてしまえば……先生としても立場が無いでしょう? それこそ……先生の方が暴行罪で訴えられかねません……。大人の方でもありますし責任も重い筈ですから……」 「そ、そんなの“生徒の暴力に自衛的に手を挙げた”とか言えば何とでも言い訳は……」 「いえ……それを聞いても教育委員会や警察は納得しないと思いますよ?」 「……な、なんでよ? 自分に向けられる暴力から身を守る為の暴力よ? 世の中ではそう言うのを正当防衛と言うわ!」 「正当防衛は“同程度以上の脅威”が予測された時に対して行うから正当防衛ですよ? それは理解されていますよね?」 「ば、バカにしないで! そんな事……分かってるに決まってるじゃない!」 「じゃあ……我々が行う拷問が……同程度“以下”の脅威であった場合は……どうですか?」 「同程度……以下の……脅威??」 「例えば……“子供のじゃれ合い程度の刺激”に対して思わず手を挙げてしまったら……」 「子供のじゃれ合い……程度?? そ、そんものに……手を挙げる訳が……」 「そう思いますよね? 当然……誰に説明してもそういう認識しか持てないと思いますよ? 我々の拷問は……」 「な、何が言いたいの? その程度の事しかしない……とでも言うつもり? 拷問なのに?」 「えぇ、そうです。きっとヤられたことを説明しても……誰も手を上げた事に共感しては貰えないと思います。何せ……あまりに子供染みていて……拷問と言われても上手く結びつかないと思いますし……」 「子供染みていて……って……貴女達は……一体何をするつもりなの? 私の事をこんな格好にして……」 「我々の部がPainless・Torture(痛みの無い拷問)を研究する部だという事は説明しましたよね?」 「………………え、えぇ……」 「ペインレス……痛みが無い……。つまりは、痛みの無い刺激を送り込んでどのような拷問が行えるか……それを研究しているのが我々の部なのです」 「だから、それが何よ! そもそも痛みの無い拷問ってなんなのよ! 拷問の方に引っ張られてて気にもしてなかったけど……それの意味もさっぱり分かんないわっ!」 「我々も義務教育課程の学生という身分であるのは間違いありません。ですから、あまり過激な事をやるのは教育衛生上よろしくは有りません……そこは理解しています」 「理解しているって……そもそも拷問などという倫理的におかしい研究をしてる事こそが――」 「だから、ペインレス……痛みの無い……拷問なんです!」 「……ッっ!?」  手足を抵抗させようと枷に対してガチャガチャと音を立てているが、この拘束椅子の枷は大人の先生が暴れようとしてもビクともしない。  この拘束に捕まってしまった者は……きっと大人の男だろうが鍛えている女性であろうが関係なく、自由を拘束できる力があると改めて納得できる。(そりゃあ……私が暴れてもビクともしない訳だ……) 「拷問という言葉について……先生はどうお考えですか?」  部長は、そんな動きが取れなくなった先生に対して、覗き込むように顔を近づけさせながら距離も言葉も詰めていく。 「そ、それは……映画とかでよくやる……暴力や凄惨な事をして見せて……口を無理やり割らせるとかいう……アレでしょ?」  最初こそ強気を保っていた印象の鳴臥先生だったけど、徐々に手足の不自由さが不安に変わってきているのか……部長の言葉に対して少しずつ素直に返答を返し始めている。 「そうですね……。そういう映画では大抵、被害者となる受け手と拷問を行う責め手……この二つの陣営に分かれているのが基本ですよね?」 「陣営? ま、まぁ……そう表現するなら……そうなるかもだけど……」 「責め手は必要な情報を聞き出したい……受け手は逆に自分の知っている情報を吐きたくない……双方の思惑の構図は大抵こうなっています」 「……ねぇ、何が言いたいの? こんな当たり前の様な話をして……」 「責め手は受け手から情報を得る為に、暴力を使って脅したりしますよね?」 「……うぅ………………」 「暴力によって受けた傷や痣は、受け手に取って“生命を脅かされている”という恐怖を生みます。これ以上暴力を受け続けたら……自分は死んでしまうかもしれないと怯えさせることが出来ます。責め手はそんな“恐怖”を植え付けることが最重要の目的であり、その手段として暴力を用いているのです」 「………………」 「じゃあ……その責め手に“痛み”や“傷”を与える事を禁じたら、責め手の人はどう出るでしょう?」 「……禁じる?」 「相手に痛みを与えずに“恐怖”だけを操って必要な情報を吐かせる……そういう条件で尋問をするとなれば、どのような手段を用いると思いますか?」 「そんなの……拷問とした成り立たなくなるわ……」 「なぜそう思います?」 「だって……今貴女が言った事でしょう? 拷問は痛みや傷を負わせて、恐怖を植え付けて……情報を吐かせるって……」 「それはあくまで一般的な映画の中の話を説明したまでです。私は、拷問という行為はそれだけに依存しているとは思っていませんよ?」 「どういう意味? 言ってる事が理解出来ないわ」 「分かり易く言えば……痛みや傷を負わせる事だけが拷問の本質ではないと言いたいのです」 「傷付ける事が……本質ではない??」 「拷問の本質はいかに“恐怖心”を煽れるか……そこに尽きます。被者に恐怖心が芽生えなければその拷問は必ず失敗しますし……逆に、どのような手段であれ恐怖を植え付ける事が出来れば、それは拷問になり得ると私は思っているのですよ……」 「恐怖心を煽る?」 「恐怖心と言っても感じるものは様々です。命が奪われるかもしれないと恐怖する者もいれば、この拷問はいつまでも終わらないんじゃないか? と恐怖する者もいますし、はたまた、どんな責めが来るか想像も出来ない……と不安を募らせ勝手に潰れていく者もいたりします」 「その恐怖心が……本質? それを与えることが……拷問の本質って考えてるって事?」 「そうです、拷問とはただ暴力を加えれば情報を聞き出せるという様な簡単な構図ではありません。拷問を行う場所、部屋の雰囲気、責め手の態度、喋り方、暴力の種類、緩急の付け方、処遇の細かい部分に至るまで……その全ての環境を練り上げて進行し、受け手を肉体的にも精神的にも追い詰め、恐怖を募らせる事こそが拷問を行う側に必要とされる必須条件なのです」 「そんな知識……どこから学んできたのよ……。馬鹿らしい……」 「拷問とは、突き詰めれば責め手と受け手との心理戦です。いかに効率よく情報を聞き出すかという点を責め手は考えなくてはならないし、受け手はいかに長く責め手を翻弄するかを常に考えます」 「だったら……なおの事……さっき貴女の言った“痛みや傷を与えない”というのは効率的ではないんじゃないの? だって……怖くなくなるじゃない……そういう事しないって告げられたら……」 「確かに、痛みを想起させやすい道具を見せつけたり、それを実際に使って痛み与えるというのは一番手っ取り早くて効率が良くなります。しかし、恐怖と言う感情は結局の所“予期不安”の最終系だと思っていますので、その予期不安を揺さぶる事が出来たなら……暴力は必要でなくなるのですよ……」 「予期不安って……将来的な出来事に対する不安と言う事よね?」 「そう。お化けや幽霊を怖がるのは……お化けが“自分に何をしてくるか分からない”と思ったり“自分に何か危害を加えてきそうだ”と、思っているから怖いのです。毒蛇が目の前に居たら怖いのも“噛まれてら命が脅かされるかもしれない”という想像や“この動物は何をしてくるか分からない”という、今後の動向が読めない不安が募る事で恐怖を覚えます」 「…………」 「逆に幽霊が見える人や、動物園で毒蛇を飼育している人なんかはそれに対して毎度恐怖を抱いてるでしょうか? 普通の人と同じように過度に怖がることをするでしょうか?」 「……それは、しないかも……しれないけど……」 「幽霊が見える人は、普段からそういうモノを見慣れている為幽霊がどういう存在なのかを我々よりも知っている。毒蛇の飼育している人も、蛇はどう接したら攻撃してくるかを理解して飼育している。そういう人たちは対象への理解があるから、過度に予期不安を起こす事はない……。得体の知れない存在だという認識ではないから日常で接する分には恐怖を覚える事はしないんです」 「得体が知れないから……人は恐怖する……。何が起こるか分からないから……不安は強くなる……と、貴女はそう言いたいの?」 「そういう事です。蛇の飼育員も、油断して噛まれればそりゃあ恐怖を覚えます。幽霊が見える人も、見た事も無い幽霊が目の前に出てくれば不安を覚える事でしょう……。恐怖という感情は、普段扱い慣れていると思っていても“予期しない出来事”に見舞われれば……すぐに反転して牙を向くものです」 「その恐怖を……予期不安とやらを煽るのが……拷問の本質って言ったわよね?」 「えぇ、そこに全て詰まっていると言っても過言ではありません。むしろ、それを引き出すために心理戦を仕掛けるのが拷問の本当の意味だと思っています」 「だったら……やっぱり……貴女の言う“痛みの無い”拷問は……成立しなくなるじゃない!」 「なぜです?」 「だって……恐怖心も、予期不安とやらも……痛くされるのが怖いとか、きっと危ない目にあうって予測させられるから発揮されるものよ? 暴力も受けないで済むし命の危機がまるでないと思わされれば……怖くなんて……」 「確かに……痛みを与えないとは言いましたが、暴力を振るわないとは言ってはいませんよ?」 「……えっ?」 「我々は“痛みを発するような暴力”は与えませんが、それ以外の暴力は加えるつもりです……」 「な!? け、結局……暴力……を?」 「とは言え我々も世間でいう所の女子高生です。義務過程の生徒は義務過程から逸脱しない暴力で拷問を執行します」 「義務過程を逸脱しない……暴力って……何よ? そんな聞いた事も無い単語……勝手に作らないで!」 「時に先生は……たまに生徒同士で見られるボディタッチのような“じゃれ合い”について……どうお考えですか?」 「ボ、ボディタッチ? ど、どうって? 別に、じゃれ合いは……じゃれ合い……でしょ?」 「ですよね? じゃれ合いは……じゃれ合いに過ぎない……」 「だ、だから何よ! 何が言いたいの?」 「その“じゃれ合い”の中に“くすぐり”という行為があったりするじゃないですか……」 「……く、くすぐり?」 「ワキとか足の裏をコチョコチョ~って触って笑わせ合う……アレです……」 「それが……なに?」 「アレを……暴力だと……感じた事はありますか?」 「は、はぁ?? くすぐりが……暴力?? 何を言っているの?」 「ありませんよね?」 「思う訳ないでしょ! だって……くすぐり合いなんて……子供の頃誰だって……」 「でも、よく考えてみてください?」 「……??」 「じゃれ合って楽しそうに笑っているように見える、あのくすぐりという行為ですが……見方を変えれば“強制的に笑いを引き出せる行為”と捉える事も出来ませんか?」 「強制的に……笑いを引き出せる……行為?」 「ヤられている本人は……別に笑いたくて笑っている訳じゃないかもしれませんよね?」 「…………」 「別に親しくしたいとも思っていない人物からでも、くすぐられてしまえば笑ってしまう……笑顔を見せたくもないと思っていてもくすぐられれば自分の意思とは無関係に笑ってしまう……そういう行為だと思いませんか? くすぐりって……」 「ま、まぁ……そう捉えれば……そう……かもだけど……」 「じゃあ、その“くすぐり”という行為を……一方的にヤられたら……どうでしょう?」 「……? 一方的に……ヤられたら……って?」 「今の先生の様に……手も足も拘束され……身動きも抵抗も出来ないようにされた状態で“くすぐられ”たら……どう思います?」 「今の私のように……拘束されて……くすぐられる??」 「先生は今……両手を万歳の状態にされワキを隠せないよう拘束されていますよね? そのワキを……好き勝手にくすぐられたら……どう感じますか?」 「どうって……それは……」 「足も裸足にさせられて拘束されていますよね? こんな風に脚の高い椅子に拘束されているから、足の裏も地面に着いていない……そんな状態で足の裏をくすぐられたら……どう感じますか?」 「ちょ、ちょっと待って! あ、貴女達……まさか、それをする為に……私を……こんな風に拘束したとか……言わないわよね?」 「身体は……くすぐったいと感じたら……どういう行動を起こすか分かりますよね? こんな風に弱点を晒すように拘束された身体をくすぐられたら……先生は……」 「それが拷問だとでも言いたいの? 仰々しい事をツラツラ喋って……ヤることはくすぐり? 馬鹿にしないで! 私は貴女達の“お遊び”に付き合っているほど暇じゃないのよっ!」 「ハハハ……そう! 先生でさえもそう思ってしまうからこそ、この拷問はヤられた事の無い人には理解がし難いんですよ……」 「……ッっ!?」 「例えば……先生が……この拷問の事を誰かに訴えかけようとするじゃないですか?」 「…………」 「私はあの生徒達に拷問を受けた! 身体中をくすぐられて酷い仕打ちを受けた! と、説明したとするじゃないですか……」 「う、うぅ……」 「その説明を聞いて……深刻に先生の話を受け止めてくれる人が……果たしているでしょうか?」 「……うぐ……うぅ……」 「真面目に取り合ってくれる先生が他に居るでしょうか?」 「くっっ……」 「必死に訴えかけても……他の先生には、今の鳴臥先生の様に……“じゃれ合い”の想像しか出来ないんじゃないでしょうか? だって……やってる事は本当に……じゃれ合い行為そのものなのですから……」 「うぅぅ……」 「誰にも理解されず……自分だけがあの苦しみを知っている。そうなれば……訴える手段にはなり得ませんよね?」 「くっ……それはそうよ。そんな子供染みた行為を……拷問だなんて説明出来るわけがない……」 「貴女は……我々の活動を体験して……訴えを起こして我々を潰す気でいたようですが……それは、難しい事だとお判りいただけましたか?」 「……っ!? な、なぜその事をッ!?」 「我々には優秀な分析官が在籍していますから……。彼女の情報収集力を侮ってはいけませんよ」 「分析官? あぁ……京堂……か……」 「貴女は我々に対して拒否の態度を示しつつも、拷問を体験するという話になれば素直に食いついていらっしゃいましたよね? それは……そういう話が出るのを待っていたという事に他なりません」 「別に待ってなんていないわよ! 貴女達がしつこくて面倒くさかったから……私の意思が固い事を分からせるために乗ってあげただけで……」 「そうですか……まぁ、認めたくないのであれば今はそういう事にしておきますが……」 「……フン!」 「しかし、今日のコレが終わる頃には……きっと先生も考えを改めて下さると思いますよ?」 「……はぁ? 私が? 考えを改めるって……そんな事ある訳ないでしょ! 万が一にも……」 「貴女がご自分の意思の固さを分からせたいと思っているのと同じように……我々も分からせたいと思っておりますので……」 「何をよ? こんな如何わしい部の何を分からせたいって訳?」 「それは勿論……痛みの無い拷問の……素晴らしさ……ですよ」 「な、なにが素晴らしさよ! 所詮は拷問と言う名のお遊びでしょ? そんなものに感化されるとでも思っているの?」 「感化させて見せますよ……? 実力で……ね?」 「ふ、ふざけないで! 何がくすぐりよ! 何が痛みの無い拷問よっ! 人を馬鹿にするのも大概にしなさいっ!」 「馬鹿になどしていませんよ。むしろ……コレが終わる頃には……先生の方が“顧問にしてくれ”と懇願してくれるんじゃないでしょうか? あまりに辛すぎて……」 「フン! 懇願する事になるのは貴女達の方よ! どうか潰さないで下さいって……土下座して謝る未来しか見えないわ!」 「それは楽しみですね……とても……楽しみです……」  普通の生徒であれば“拘束されてくすぐられる”と聞けば、恐怖まではいかないにしても……ある程度の拒絶感や困惑は態度で見せるものだ。  だけど……鳴臥先生は……余程くすぐられる事に自信があるのか、裸足にさせられて万歳の格好で拘束されていると指摘されても動揺する素振りを見せていない。むしろ、拷問の内容がくすぐりだと聞いて“やっぱり”と言わんばかりに安堵しているようにも見える。  きっと先生は……くすぐられる事を不安には思っていない。  それが、大人の女性である事から生み出される余裕なのか……それともくすぐりに対する抵抗感の薄さから来るものなのか……分かりかねるけど……  この不敵な笑みを浮かべる先生の余裕には何か裏がある……と、誰しもが思っている事だろう。  鈍感だと言われ続けてきている私なんかがそう思えているのだから……きっと、部長も小夜子先輩も……綾ちゃんも……理子先輩ですらもそう思っているに違いない。  鳴臥先生には何か秘密がある……  私はそんな嫌な予感を募らせながら、先生の後ろに立てと言う部長の指示に従った。  足の方には理子先輩が座り込んで待機している。  私と理子先輩は不気味に余裕がっている先生に向けてゆっくりと手を差し出していくのだった。  手をワキワキさせながら……くすぐったい刺激を想起させる様に……焦らしながら……


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