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PT研 第4話ー⑧『裏切り』

8:裏切り ――情報精査同胞会 部室…… 「なんや? 急にモニターが映らんようになっとるが……これはどういう事や?」 「分かりません。急にこの階のカメラが一斉に停止してしまったようで……」 「停止? 今からが面白くなるっちゅーこのタイミングで都合よくカメラが止まったちゅうんか?」 「隣の教室や廊下のカメラも止まってしまっていますので……恐らく停電か何かかと……」 「停電ちゅうても……他の階のカメラは動いとるんやろ? 部室棟の2階だけが停電するなんて都合よすぎやないか?」 「この学園は電源のブレーカーを各階ごとの管理に分けていますので……もしかしたら何処かの部が電気を食う様な機械か何かを大量に使用したか……」 「そんな馬鹿な話があるかいな! ボロアパートの電源じゃあるまいに……学園の電気がそう簡単に落ちるわけあるか!」 「そうでなければ……2階のブレカーを誰かが手動で下げたか……」 「ブレーカーを? 誰がそんな事……」 「……………………」 「まさか……PT研が仲間を助けるために……とか言わんやろうな?」 「分かりません。PT研の部室やその周りのカメラは対策されているようで……奴らを監視する事は出来ませんでした……。だから奴らの今日の動きも追えていませんので……」 「そうは言うてもあいつらは今日の襲撃の事知らんかった筈やで?」 「京堂小夜子は捕まる直前に誰かと電話連絡を取っているようでした……。その電話がPT研の仲間だったとすれば……」 「待ちぃや! 奴は眠らされた後今の場所に運ばれたんやろ? だったら2階の今の教室に拉致られたってどうやって分かったんや?」 「それは……」 「それに、助けるだけやったら電源など落とさんでも普通に人数集めて突入すればいいだけの話……そうせずにワザワザ電源を落とすっていう意味がわからんわ!」 「ちょ、ちょっと待ってください?」 「……あ?」 「もし……仮に……この停電が奴らの仕業だとしたら……ですが……」 「……仕業だったら……なんや?」 「停電を起こされて困るのは……我々……という事になりませんか?」 「……!?」 「会長がおっしゃるように……助ける為だけでしたら……電源を落とす意味はありません。なにせ、異端審問の奴らは教室の明かりを点けていないんですから……」 「雰囲気の為か知らんが……わざわざ蝋燭を立ててそれを光源にしとったよな?」 「はい。つまり……電気を消そうが消すまいが助けに入るのに関係はない筈なんです!」 「ただ助けに入るだけなら電源を落とす必要はない……。でも、もし……うちらがカメラで様子を伺っているという事実を知っていたなら……話は変わってくる。……と、いう事やな?」 「そうです。電源を切られて困るのは異端審問の奴らではなく我々の方……」 「カメラを止められれば……うちらがやろうとしていた“魔女狩り屋の正体を収める”という作戦もパァになる……」 「それを見越して切ったのであれば……PT研は我々が関与している事など全部分かっていてワザと罠にかかった可能性が高いです」 「全部分かっていて……罠にワザとかかりに来た……。そうなれば、うちらの計画は筒抜けっちゅう事になるで?」 「誰かが……裏切った……とか? こちら側の誰かが……」 「いや……この計画を知っとるのはお前さんと、あのセンセだけの筈やで?」 「本当に……私と“あの”先生だけですか? 他にも知っている人は……」 「お前さんにもギリギリまで伝えなかったくらい慎重に進めとったんや……センセにだって詳しい内容まで喋っては……」 「……………………」 「……いや待て!」 「……?」 「そう言えばもう一人……おったなぁ……」 「この計画を知ってる人間……ですか?」 「あまりにもあり得んと思っとったから……疑いすらしてはおらんかけど……。確かにもう一人おったわ……」 「それは……誰です?」 「うちの幼馴染であり……相棒でもある……」 「…………」 「今は生徒会にスパイして貰っとる筈の……宮腰……恵梨佳……」 「……ッっ!?」 「疑いとうは無いが……思い起こせば、あの時から少し違和感はあったんよなぁ……」 「生徒会副会長で会計も兼任している学園一の秀才である……あの宮腰さんですか? 生徒会の……」 「うちが詩織に負けて生徒会長の座を奪われた際……恵梨佳だけは副会長のポストを確保しとった。せやからうちは監査委員会の方の座を手に入れ、来るべき日に備えて恵梨佳をスパイとしてそのまま在籍させとったんや……」 「会長は元々……生徒会長の座を狙っていたのですね?」 「学校側は監査委員会にも平等の権利を与えているっちゅー戯言をしょっちゅう抜かしおるが……実際に優遇されとるんは生徒会の方や。それが分かっとったから……生徒会の席はうちが取らなあかんと心に決めとった……」 「しかし実際は……神崎詩織に惨敗を喫してしまった……」 「あぁ。せやからこの……部に昇格も出来てない有象無象の同好会やなんやらを管理する監査委員会に身を落とす事になってしもうた……」 「監査委員会は生徒会や学園の不正を監視する第三の機関……と伺いましたが?」 「それも学園側の戯言よ。結局は生徒会や監査委員の監視は学園の先生側がやっとる事やし、学園側の意向を無視して発言しようものならうちらの予算は削られまくる事になる……。表向きには平等を謳っとるようやけど……うちから見れば張子の虎と同じや! 結局学園の支配力が一番に大きいっちゅう構造になっとる……」 『(まぁ、学生の身分ではあるのだから仕方がない気もするけど……)』 「学園の知名度を世に知らしめる絶好の宣伝文句は……結局は部活動の功績が一番や。甲子園に何回出場やら県大会何回戦進出やら、卒業生の○○がオリンピック選手に選抜にされた~やら……。学園はそういう“知名度を上げてくれそうな部”に最優先に部費を回すし……そういう部を生徒目線で管理する生徒会も優遇され続けることになる」 「会長が監査部に来る前は……酷いモノでしたからね。部費と呼べるような資金は殆ど配分されず……部室の様なものも旧校舎のボロイ部屋に追い込まれていますから……」 「監査部は有象無象の同好会の管理をしていると学園側は説明するが、その実うちらがやらされとるんは……良く分からん同好会の暴走を見張って未然に対処するっちゅー雑草毟りのような仕事が主なんや……」 「部にも昇格できない同好会は……暴走する恐れのある危険分子と学園は捉えているという事ですね?」 「あぁ。それでも学園側が同好会やらの活動を制限せんのは……そう言う活動も容認しているっちゅうアピールをしたいからや」 「“生徒の自主性を重視”“自由な活動の立ち上げ”“部にかかる費用は学園側が総支給”とか……そういうのを推してましたよね? うちの学園……」 「それにつられて自分のやりたいことをやれる部を作ろうと入ってきた生徒たちは……学園の現実を知って絶望するんや……」 「実績が作れなければ……部に昇格も出来ないし……部費も少なくなるからクラブを維持する事も難しい……」 「やがて、ニッチもサッチもいかんくなった同好会が選ぶ道は二つや……」 「理想のものと違うと声を荒げるか……大人しく消えていくか……」 「そう。ほんで、その声を荒げる方をうちら監査委員会が潰して回る……そう言う役割になっとるんや……」 「それが学園のやり口ですか。希望を持たせといてそういう事するなんて……えげつないですね」 「優秀な部はとことん優遇され学園の宣伝に使われ、場末の同好会は陽の目を見ることなく静かに消えていく……。確かに学生の本文は学業であるのは間違いないかも知らんが……うちは、そういう希望を無駄に持たせて入学させて絶望を突き付けるっちゅうこの学園のやり方がそもそも嫌いなんや!」 「会長はその体制を覆す為に……今度の予算配分会議への準備を進めていたのですよね?」 「そうや。その会議で生徒会長の信用を地の底に叩き落し、生徒会に与えられていた権利やら予算やらを根こそぎ奪い取ってうちらの地位を高める! そしてゆくゆくは有象無象の同好会や趣味クラブ止まりだった活動に多額の予算を分配し、正規の部と対等に活動できるよう力を与えていき学園の思惑を裏切り返してみせる……って、そういう計画やったんや」 「その為に……宮腰さんを生徒会に在籍させ続けていたという事ですね? 生徒会長の何かしらの弱みを掴ませるために……」 「PT研が関わってくる前は順調やった。生徒会長と風紀委員の関係が怪しいだの……生徒会長の妹も学園に入学して会長の様子が少しおかしくなってきただの……期待を持たせる報告が逐一入ってきとった」 「PT研が関わってから……その報告が入らなくなってきたという事ですか?」 「正確には……PT研と風紀委員長の衝突が起きたあの日を境に少し様子がおかしゅうなった……と言えるな……」 「風紀委員長? って、あの氷の女王と称される……水科玲美?」 「あ奴らが衝突する前までは生徒会長の情報のみならずPT研の情報やらも積極的に知らせてくれてるほど献身的やったのに……その風紀委員長とPT研との一件以来、伝えてくる情報に靄みたいなもんが掛かるようになった……」 「……靄(もや)?」 「PT研に関する事も生徒会に関する事も……核心部分には触れず、その外堀を匂わす様な情報に留めるようになっておったんや……」 「外堀を匂わす?」 「まるで……うちに回す情報を誰かに操作されとるような……」 「……操作?」 「とにかく……情報に歯切れが悪くなり始めたんは、この時からなんや……後は当たり障りのないどうでもいい情報の方が多くなっていった……」 「あの真面目な副会長が……裏切りを?」 「まだ確定ではないけどな。せやけど……」 「……だけど?(ゴクリ」) 「事実確認は……せなあかんよな? 今回の件も含むて……裏がどうなっておるんか……」 「ま、まさか……彼女に……尋問を?」 「そうやな……。今回は“創作マニピュレーター研究会”に尋問用の機械を用立てて貰うのもええなぁ……機械で尋問するっちゅうのは……ロマンあるやろ?」 「マニピュレーター研究会って……工業用のロボットアームを設計して実際に製造しているクラブでしょ? 確か……部長……というか会のトップは……有名ロボット開発会社の社長の娘だとか……」 「PT研や生徒会に対抗するためにはうちも非殺傷の暴力を行う手段を得ておかないとあかん……本来ならそれは魔女狩り屋の威を借りることで成す筈やったけど……こうなっては魔女狩り屋もあてにできへん。丁度ええ機会や……監査委員会の予算を与えてうち専用の機械を作って貰お♥」 「そ、そんな事して大丈夫ですか? 副会長は幼馴染なんでしょう? 会長の……」 「そうやで? 幼馴染や……。昔から、気になったことやおかしく思った事は全部直球で聞いてきた仲や……。だから今回も聞かせて貰おうやないの……うちが納得いくように……」 「うぅ……」 「裏切ったのであれば……裏切り直すよう調教し直せばええ♥ ただそれだけの簡単な事よ……フフフ……ハハハハハ!」 「(口では笑っているけど目は笑ってない……これは本気の目だ……)」 「そうと決まれば早速アポ取るで! お前さん達も、何かあったら頼る事になるかも知らんから……その時はよろしゅう頼むで?」 「は、はい!」 「ほんま……頼むで? お前さんまで裏切たって分かれば……うち……人間不信になって何しでかすか分からんくなるからなぁ?」 「……ご、ご安心を! 私は裏切りませんから!」 「フフフ……ククク……ハハハハハハハハハハ!」 「あ、あはは……はは……」


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