PT研 第4話ー⑦『苛烈な審問』
Added 2023-07-01 09:37:53 +0000 UTC7:苛烈な審問 リーダーの指示が下るや否や小柄な女生徒は小夜子先輩の横腹の部位を鷲摑みにし、そこにマッサージを加えるような動きで指を蠢かせ始めた。 「イギッ!? ひっッ!! いびゃ~~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ウヘヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、くはははははははははははははははははははははははははははは!!」 脇腹の皮膚が波立つくらいに強い力でくすぐられ始めた小夜子先輩はそのあまりにも強烈すぎる刺激に、声を出す事を我慢する暇も与えられず大爆笑を強いられた。 「イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、や、や、やめ! やめて! そこだけは……っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」 普段の冷静でおしとやかな彼女を知っている私からしてみればこの様に大口を開いて無様に笑い狂わされる小夜子先輩を見ると、それが現実ではないんじゃないかと疑いを向けてしまう程違和感を覚えてしまう。 同じ学園の生徒であり同じ人間である事は当たり前のように理解しているけど……いつもの彼女は“人が責められる様子を見る側”の立場であるのが常であり、部長と同じで決して責められる立場にはならない人間なのだと勝手に解釈していた。 だから「立場が逆転してもきっとくすぐりとかにも強いんだろうな……」などと、これまた勝手に彼女の像を頭の中で固めてしまっていたのだけど…… 「ギャ~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、お願っっは……ゲボ、ゴボ、ごはっっ!! くすぐらないでっっへへへへへへへへへへへへへへ! 力がっっ抜け……ゴボゴボ! ぶはっっ!! っっくはははははははははははははははははははははははははは」 こんな風に、恐らく素人であろう女生徒のくすぐりに笑わされている姿を見てしまうと、小夜子先輩だって私達と同じ普通の女子高生であり、同じ人間なのだ……くすぐられればくすぐったいと感じるだろうし、くすぐったいと感じれば笑いもする……と、当たり前の納得を心の中でしてしまう。 「あはっっ! あがはははははははははっ、アブププ……!! グプッ! ゴホッ!! ゲホゲホ!! はひ、はひぃ、苦しいぃぃひひひひひひひ!! これ、想像以上に……苦しいっっひひひひひひひひひひひひひひひ、ゲポポポ……ゴポポ……」 笑ってしまえばお腹の力が抜けてしまい上半身を起こせなくなってしまう。すると堀の底に繋がれたゴムの力に負け水中に顔を潜らせる事を余儀なくされる。 水中では呼吸が出来ないのだから、当然先輩は無理してでも腹筋に力を入れ直して上半身を起こし顔を水から出そうとする。だけど…… 「キャハハ♥ どうだぁ、くすぐったいだろぉ? コチョコチョコチョコチョ~♥ もっと笑え~♪ もっと苦しめ~~アハハハハハ♥」 顔を水面にようやく出したかと思えば彼女達によるくすぐりが激しさを増し先輩を再び笑わせ、折角入れ直したであろうお腹への力も無理やり抜かされてしまう。 「ぶひゃはっっ!? ヒギャっっっ!? あびゃひゃ……ゴボゴボゴボ……ゲボゲボ……ぷはっっ!! はひ、はひぃぃぃぃっっ、ひひひひひひひひひひひ、はひへへへえへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……」 顔を水面以上に維持しなければ待っているのは確実な死であるのだから必死になって顔を上げ続けないといけない……。でも、顔を上げてもくすぐりの刺激が先輩を笑わせてしまうからまともに呼吸もさせて貰えない。 力が抜けても苦しむし……力を入れても苦しむ……まさに地獄……。小夜子先輩はそんな地獄の狭間を延々と彷徨わされている。 こんな事を繰り返されれば遅かれ早かれ先輩の体力は尽きてしまって……力を込める事も難しくなってしまう。 水の底から這い上がれなくなれば待つのは死のみだけど……まさか学生の身分でそこまでの事をやるとは思えない……。思えないけど、もしかすれば彼女達の危機管理が行き届いていない可能性もあり万が一の事故も起きうる可能性はある。特にこんな得体の知れない人達が相手なのだから、余計に不安が募ってしょうがない。 「フム……まだ顔を上げる力は残っているようだな? ではココもくすぐってトドメを刺して差し上げようか……」 「ゲホゲホ! くへへへひひひひひひひひひひひ、待っでぇへへへへ、も、もう無理! ……力が入れられない……ひひひひ!! これ以上は勘弁して……ゲホゲホ!!」 「君たちは今まで、そうやって命乞いしてきた者の言う事をすぐに聞いてあげたのかね? 私の耳に届いている限りでは……この程度では許して貰えなかったと皆口をそろえて証言しているのだが?」 「ホントに無理なの! 死んじゃう! このままじゃ……私……ひひ! 死んじゃう……」 「学校で溺死とは何ともいたたまれない死に様だよな? そんな死に方は嫌だろう?」 「死にたく……ない! まだ……死にたく……ゲホゲホ!! うくぅぅ……」 「だったら……教えてくれないか? 生徒会長の弱みを……」 「ハヒハヒ! くふっっふふふふ……でも、それだけは言えない! 約束……だから……ゲホ!! 誰にも……言わないって……約束したから……」 「自分の命よりも秘密が大事なのか? そうか……だったら仕方がないよな? 私にこんな事をされても!」 「ひっ!? や、や、やめ!! ダメっ……ヒッ!!?」 リーダー格の女生徒はその様に声を荒げると堀の水の中に手を勢いよく突っ込み、水中に漂っていた小夜子先輩の無防備なワキへと手を這わせ始める。 そして、水をバタつかせるよう腕を豪快に動かしながら先輩のワキを両手で激しくくすぐり責め立て始めた。 その刺激が加わるや否や、先輩は顔を突き上げるように拒絶反応を示し…… 「イギャ~~~~ッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、腋だめぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、くすぐったいぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やめてぇへへへへへへへへへへへへへへ!!」 と、こちらも水面で身体を動かせるだけ動かし暴れ回り、くすぐりへの拒否反応を示した。 「ブゴッ!? ボゴゴゴゴゴ……ホゴゴゴゴゴっっ! ぷはっ! ゲホゲホゲホ!! ケ……ひひ、ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、げぼぼぼぼぼ……ゴボ、ゴホゴホ!!」 その暴れっぷりは凄まじく、上半身の力が抜けて顔が水に浸かっても水中でも暴れている様子が伺える程だ。 何度も水面に顔を出そうと力を込めなおしているが、水面に顔を出せるのはもはや数秒程であり十分に息も吸えていないだろう。水面に顔が出ている時もくすぐりは止まってはいない為笑い声を吐き出すのが精いっぱいで呼吸など二の次になる……そんな状態で水中に引き摺り込まれるものだから、呼吸が持たなくなるのは目に見えている。 それでもこの3人は小夜子先輩の無防備な身体を容赦なくくすぐり続けている。 先輩が本格的に溺れている姿を楽しむように見ながら…… 「ボゴゴゴゴ! グボボボボ……ばがっっはっ! はがぁ……ハァハァ、あはぁ……はは……はひ、はひ……いひぃぃひひ……ひひ……ゲボッ!? グボボボボボ……ゴボボボ……」 私は先輩の徐々に弱っていく姿を見て言葉も発せないくらいの恐怖に苛まれていた。このままでは本当に死んでしまう。小夜子先輩が……本当に……死んでしまう!! 助けたい……今すぐにコレをやめさせたい…… でも、もし変な事を言って彼女達を刺激して……ターゲットが私に変わってしまったらと思うと……怖くて言葉が出せない。 こんな拷問……私は数秒だって耐えきる自信が無いのだから…… 「ブゴゴ……フゴォォォ……オゴオゴ……ボゴゴゴゴゴゴ……」 あの先輩が苦しんでいる……死ぬほど苦しい目に合わされている。 助けてあげたい……。少しでも辛さを肩代わりして安堵できる時間を作ってあげたい思うのだけど……。 目の前で行われている拷問があまりにも凄惨すぎて…… 自分がもし同じ事されたらと考えるだけで、背筋に嫌な寒気が走って顔が凍り付いてしまう。 絶対苦しい筈だ……。それが目の前で見ていて分かっているから……言葉が出てこない。 どうせなら生徒会長の秘密なんて喋っちゃえばいいのに……命と秘密を天秤に掛けるなら余計なプライドなど捨てて喋った方が遥かに楽になるに決まっている……と、私は思っているのだけど…… 小夜子先輩はそれをさっきしなかった。喋らなければどうなるか……それが想像できていない筈は無いのに…… 「フフフ……そろそろ一旦止めてあげようか……」 小夜子先輩の顔はいよいよ水面から上がらなくなっていた。自分の力では顔を浮き上がらせる事も出来ないくらい弱らされてしまっている。リーダーの女性はそれを見て部下たちにくすぐるのを止めさせ、水中に沈んだ先輩の後頭部を持ち上げ水面上に顔を持ち上げて呼吸をし直すよう施してくれた。 「ガハッッッゲホゲホゲホ!! オゲェホ、ゴホゴホゴホ!! ハァハァハァハァ……はひぃ……はひぃ……」 口の中からは飲み込んでしまっていたであろう水が大量に吐き出され、先輩は激しい咳込みを繰り返しながら涙目で呼吸を整えていく。 後数秒この手助けが遅ければ……小夜子先輩は溺れてしまっていただろう。寸前の所で助けて貰えたと言っても過言ではない。 「どうだい? ここまでされれば……いくら君でも情報を吐きたくなったんじゃないかい?」 嗚咽を零しながらも必死に呼吸を繰り返す小夜子先輩……。その必死さは胸の上下運動の激しさが物語っている。 「ハァハァ……も、も、もうやめ……て……。限界……よ。もう……力が……入れられ……ない……」 「フム……。時間は丁度一時間を指すところか……一時間もこの体勢を続ければ体力もとっくに限界を越えているだろうに……」 「一時……間? もう……18時に……なる? あと……何分……で……一時間?」 「あと三分半……と言ったところだな」 「そう……。あと、三分……くらい……ね? ゲホ……ゲホゲホ!」 「ほら、そんな事より……今度こそ吐いてくれるだろ? 生徒会の情報を……」 私が意識を失っていた時も含めて……一時間も先輩は腹筋を酷使し続けていた筈だ。それだけでも先輩に与えられている苦痛は尋常でないモノであっただろうに……僅かに残していたであろう体力もあのくすぐりによって完全に奪い取られてしまったようだ。自分の力で浮き上がってくることすら出来ていなかったのだから、当然屈服を宣言してこの凄惨な拷問を終わらせるのが筋だと思うのだけど…… 「は、吐かない……。これだけは……私のプライドに……かけて……絶対に……喋らない! 誰であっても……絶対に……」 と、小夜子先輩は事もあろうに屈服を認めずこのような発言をしてしまう。何処からその様な強気が湧いてくるのか是非聞いてみたいとすら思える程の言葉を言い放った先輩の目は、まだ何かしらの希望を持っているようで睨み目は死んではいない。 しかし……それを聞いて「ハイそうですか……」と素直に納得するような連中ではないのは分かり切っている事だ。だから彼女達のリーダーは…… 「そんなにプライドが大事なのかね? 死ぬほど苦しい思いを経験した筈なのに……よくもまぁそんな事が言えるな?」 そう言って彼女も小夜子先輩を強く睨み返した。 「私のプライドは……超合金の様に……硬く出来てるの。これは誰にもへし折らせるわけにはいかない! 貴女達みたいな素人の拷問なんかに……屈服なんてしたら……和音ちゃんや理子ちゃんに笑われちゃうもの……」 「成程? あくまで我々の拷問に屈服はしたくないと言うのか? そうか……それじゃあもう慈悲なども必要ないという事だな?」 「必要ないわ。どんな事をされても……私は……ハァハァ……絶対に……喋らないって……決めてるから……」 「絶対に喋らない……か……。まあ君がそう言うつもりであるなら我々は一向に構わんさ……。そうであれば聞く人間を変えるだけなのだからな……」 そう言って私の方を見返すリーダー格の女性。彼女は時計の時間をチェックしながら一度だけ頷きを入れ、小夜子先輩の頭から手を離し先輩の身体を持ち上げる事をやめる。すると先輩の顔がすぐさま水中に沈みかけてしまう。 どうにか口と鼻だけは水面ギリギリに保つよう力を込められたようだが、それ以上顔を上げる事は出来ておらず……少しの邪魔が入ればすぐに力尽きて顔が水の中に浸かってしまうであろう事は見て分かる。 そんな先輩の様子を横目に見ながら私の横へと移動してきたリーダー格の女性は、指示を待っていた部下たちに一言「ヤれ」という言葉を送り先輩の身体を再びくすぐらせ始めるのだった。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 「ブギャハッ!? はぎゃ~~っははははははははははははははははははははははは、ゲボボボ……ゴボボボ……ぶはっ!! ケヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、いひひひひひひひ!! やめっっ……ゴボボボボボボ、ボゴゴゴ……」 水面ギリギリを維持していた先輩の顔はくすぐりが再開されるとすぐに水中へと沈み、吐き出す呼気を泡に変えて水面を泡立たせ始める。 それでもどうにか力を込めなおし顔を水面に上げたりもするのだけど……無慈悲にくすぐる二人の手にどうしても笑わされ、顔はすぐに水中へと逆戻りさせられる。 「バヒャハハハハハハハハハハハハハハ、うひゅあははははははははははははは、ゲホゲホ! グボボボボボボボボボボ……ゴボボ……ぷはっ!! くはぁはぁ……ひひ……ぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くへへへへへへへへ……へぎっ!? ボゴゴゴゴゴゴ……オボボボボボ……」 力が上手く腹部に集められなくなってしまったのか顔を水面に上げる事自体が困難を極め、僅かに浮かび上がっては沈み……また僅かに酸素を吸っては沈みを繰り返すようになる。 「ボビョボボボボボボボ……ごぼぼぼ、ゲボボボボボボ……ぶはっ! くぅは……は……は……はひ、はひひひ、いひ、イヒヒヒ……ヒヒ……も、もう……だめ……。もう……だべぇべべべべべ……ゴボボボ」 そんな今にも溺れてしまいそうになっている姿を見せつけられ恐れ慄いている私に、リーダー格の女性が私の拘束された椅子の隣まで歩を進め、私と同じ目線になるようその場にしゃがみ込んだ。 そして、私と同じ視線で先輩を見ながら…… 「明日香殿? 彼女を救えるのはどうやら君だけになったようだ……」 と、落ち着いた声で話し始める。 小夜子先輩はまた水中に沈み上半身を左右に振って苦しんでいる様子を見せている。 「君が全て喋ってくれるなら……彼女も君も解放すると約束しよう。君も喋らないという事であれば彼女は……」 リーダー格の女性はそのように言葉を零すと顎を突き上げ部下たちに何かしらの合図を送って見せる。 それを見た部下たちは無言で頷きを入れ小夜子先輩に課していたくすぐりをより一層激しく与え始める。 激しくなったくすぐりに、水中に居ても笑わされ始めた小夜子先輩は……これが最後だと悟ったのか残った力を集めて勢いよく上半身を水面に浮上させ最後の抵抗を試みる。 とは言え……彼女の残った力では、水面に顔を出せたのは僅か2~3秒程度の事で……その短い時間で最後の呼吸をするのかと思ったのだが…… 彼女は、その貴重な最後の呼吸チャンスを捨て、私に必死に言葉を伝えたのだった。 「ブハッ! ンムハハハハハハハ、あ、明日香ちゃん! 言っちゃ駄目! 絶対に言わない……でぇへへへへへへへへ……エゴボ!? ボゴゴゴゴ……オゴゴ……」 と、早口で言ったかと思うと、そのまま力尽きるように先輩の顔は今度こそ完全に堀の底へと沈んでいく事となってしまった。もう暴れる力も使い果たしてしまったのだろう……その後先輩が水中で身体を動かす事はなくなってしまった。 部下の生徒たちは小夜子先輩が浮かび上がってこない事を気にも留めようとせず……くすぐりを続けている。 先輩はそのくすぐりに肺に僅かに残っていた空気を無理やり吐き出させられていく。 「ほら……今言わないと君の先輩は……取り返しが付かないことになるよ? それでも良いのかい?」 水中からはボコボコと先輩の呼気が泡となって次々に浮き上がってくる。 水の中でも口を大きく開けて笑い続けている先輩……もう、限界だ……今すぐに助け出して貰わないと本当に先輩が死んでしまう。 私は、その言葉が過るや否や彼女に縋る様に声を震わせながら屈服の言葉を吐き出した。 「い、言います! 言うからすぐに先輩を助けて!」 「情報を言うのが先だ。情報を聞いた後に助けてやる」 「そんな! い、今すぐに引き上がてくれないと……先輩が!」 「そう思うんだったら余計な事と言ってないでさっさと喋ったらどうかね? こうしている間にも彼女の呼吸は……」 「わ、わ、分かりましたぁ! 生徒会長の弱みですよね?」 「そうだ……早く言いたまえ?」 小夜子先輩にも部長にも他言無用だと口を封じられた、生徒会長の情報だけど……今はもうそれどころではない! 私が喋る事を渋れば先輩の死が現実味を帯びてしまう! そんな事させる訳にはいかない! だから、仕方がない! 会長には申し訳ないけれど……弱みの一つと命を天秤に掛ける訳にはいかない!! 「会長は……実は妹の綾ちゃんを溺愛していて! それで――」 私が観念してその様に話し始めると、それを見越していたかのように…… ――ガタン!! と、何かスイッチのような物が下げられたような音が何処からか鳴り響き…… 「よし! 18時ピッタリだ! もういいぞ!」 私が喋り終わるのも待たずしてリーダー格の女性が部下二人のくすぐりを止める指示を下した。 「あ……へ? え??」 そしてそのリーダーは私の元から素早く移動し小夜子先輩の沈んだ顔を急いで引き上げ呼吸が出来るよう再び力を貸してくれた。 私はその様子を訳が分からないと言う表情でポカンと眺めている。 水から顔を出してもらった先輩は口から水を大量に吐き、ゲホゲホと激しく咳き込みながらもまだ生きていたという事実を私に知らせてくれている。 指示を受けた部下の子達は今まで責めていたのが嘘であったかのように急々と先輩の枷を外していき拘束を解いていっている。 「あ、あの? これは一体……どういう事……で?」 置いてけぼりを食らっている私は訳も分からずその様に零すが、3人は小夜子先輩の安否の方を気にしていて誰も応えてはくれない。 ――ガラッ! そうこうしていると、私達が閉じ込められていた教室のドアが突然開き…… 「えっ!? ぶ、ブ……部長?? 理子先輩?? 生徒会長まで……な、なんでココへ!?」 開いた扉からは部長やら理子先輩やら生徒会長やらが一斉に入室し、それぞれが天井を見上げ何かを探す様な仕草を始めた。 そして、何かを見つけた理子先輩が「あった! 多分アレです!」と言葉を零すと、彼女が指を差した方に部長が椅子を運び天井に備え付けられた半ドーム型の物に手を伸ばしそのカバーを外して何やらスイッチの様な物いくつか切っていった。 「ご苦労だったな……小夜子……。大丈夫か?」 天井の機械に処置を施した後部長はゆっくりと小夜子先輩の方へと近寄り、彼女がゼェゼェと荒い呼吸を繰り返すのを見て声を掛ける。 その言葉に小夜子先輩は頭を縦に振って言葉にならない返事を返している。 この一連の出来事の意味が全く分かっていない私は安堵して良いのかどうかも分からず、顔をキョロキョロさせて誰か説明してくれる人はいないものかと救世主を探した。 すると、そんな様子をジト目で見ていた理子先輩が拘束されたままになっている私の横まで歩いてきて、いつもの調子で私の事を馬鹿にしつつも事の一部始終を話し始めてくれた。 「なぁに? 今の状況がどうなってるかまだ分かって無い訳ぇ? 相変わらず鈍臭い女ね……」 「ちょっ! 鈍臭いって言わないで下さいよっ! 何の説明も受けていなんですから分かる訳が無いじゃないですかっ!」 「ちっとは無い頭を回転させて考えなさいよ……そんなんだからいつまでたっても馬鹿だって私から言われんのよ?」 「無い頭は余計です! 私の頭はいつでも重い脳みそが詰まってるんですっ! んな事よりも、まずアレは何ですか! 先輩が指差したアレ……」 「アレは見ての通り“カメラ”よ。ココの部屋には監視カメラが設置されてあったの、それを今無効化したのよ? 見りゃ分かるでしょ?」 「監視……カメラ? 無効化??」 「学校が安全の為に設置したカメラだから別に違法な物とかそういうもんじゃないけど……これを利用して彼女達を嵌めようとした人間がいるの」 「彼女達って……私と小夜子先輩の事……ですか?」 「はぁ? 馬鹿じゃないの? あんたならいざ知らず私が小夜子先輩の事他人行儀に“彼女”って形容する訳ないでしょ? あ・ん・た・な・ら、いざ知らず!」 「(私なら他人行儀に形容するのか! 二度も強調しやがって! この生意気発育不良クソチビ先輩め!)」 「私が彼女達って言ったのは……そっちの覆面マント女子達の事よ」 「覆面マント……。異端審問なにがしさん達の……事ですか……」 「そう。彼女達は依頼を受ければ理由の是非を知らされなくとも対象に罰を与える……学園の裏の掃除屋……通称、魔女狩り屋……」 「魔女狩り……屋……?」 「彼女らは本来ならば“小夜子先輩から情報を聞き出せ”という依頼をこなす為にこの凶行に及ぶつもりでいたのだけど……その依頼主はこの依頼に罠を仕掛けていた事が分かったの。それを知った小夜子先輩が逆に魔女狩り屋に話を通してその罠も逆利用してやろうって考えに至ったのよ」 「依頼主が……罠? 罠を見破ったから逆に利用しようとした?? えっと……まだ全く意味が分かってませんが……結局その依頼主やら依頼やらって何の事なんです? 私達は何に巻き込まれたんですか?」 「あんたが目を白黒させんのは当たり前の事よ……。だってこの計画はあんたにだけは伝えないって方針で進めていた事だから……」 「私には計画を伝えない? また私だけ除け者にしたんですか!?」 「今回は仕方がなかったのよ……。依頼主を騙すには“何も知らされていない人間”をカメラに映した方が効果が高いだろうと結論付けた結果なんだから……」 「それって……私って事ですか?」 「そう。あんたが一番いい自然なリアクションを取れると判断したから、ワザワザあんたにだけ今回の計画は秘密にして本番を迎えたってわけよ」 「それは……もしかして小夜子先輩が判断したという事ですか?」 「まぁ、そうね……」 「うぅ……なんか私って……そういう役回りばっかの様な……」 「そうは言っても、拷問をされる方じゃなくて良かったじゃない? 私は“拷問も明日香に受けさせた方が良いんじゃないか?”って提案したんだけどさぁ……」 「(うわぁ……やっぱりこの先輩はっ! そんな恐ろしい事を私の知らない所で平然と言ってるし……)」 「あくまで今回は小夜子先輩が名指しで指名されていた事もあるし、今回の拷問は“自分で体験してみたい”って小夜子先輩が言ったから……残念だけどその提案は却下されたわ」 「先輩が……体験してみたかった……って事は、もしかしてこの水責めの拷問って……」 そこまで私が理子先輩と話をしていると、横から割って入る様に異端審問研究クラブのリーダーが話に入ってきた。 「このやり方はうちのやり方ではないよ。彼女からの希望で……この教室でヤる事になったし、どうせやるならコレコレこういう拷問を自分に施して欲しいと細かく希望まで伝えて来てくれたんだ……」 「あんな苦しそうな拷問を……自ら希望してやって貰ったって事ですか!? 小夜子先輩が?」 「うちのやり方はもっとマイルドだし……少し怖がらせるだけで解放する事が殆どだから、提案されたやり方ではやり過ぎだと何度も言ったんだがね? 彼女はどうしてもこの拷問を受けてみたいと言ってきかなかったんだ……。何かあっても自分で責任を取ると……誓約書まで書いたんだよ? 彼女……」 「誓約書まで……?」 「まさかこんな……命をギリギリまで削る様な拷問を自ら受けるなんて言い出す人間がいるとは思っても居なかったから……こっちが罠じゃないかって疑いそうになったよ……」 「罠……? あ、そうだ! 結局その罠って……どういう事ですか? 依頼を出した人も謎のままだし……そもそもどうやってその罠を見抜いたのかも……まだ……」 未だに何が何やら良く分かってはいない状況だけど……どうやら、この拷問劇は小夜子先輩によって組まれたフェイクの拷問だったということだけは理解出来た。 先輩はあの死ぬかどうかのギリギリの拷問を受けたいと言って彼女らに依頼をしたらしい……それを私に見せて素のリアクションを取って貰うのを望んだようだ…… 私はまんまとそれに騙され……彼女の望み通りのリアクションを取ってしまった。 それをあの監視カメラとやらに見せるのが真の目的だったのだろうけど……まだ、そのカメラを見ていたという依頼主とやらの説明は受けていない。だから、結局誰に向けてこの拷問劇が行われる事になったのか……そこの所がはっきりしていなかった。 しかし、その説明は後から遅れて教室に足を踏み入れて来た彼女からされる事となる。 「依頼主……。その説明は私から……改めてさせて貰いましょうか……」 生徒会長の隣へと近づいた彼女は、説明に出ようとした会長の肩を取って代わりに自分がと言わんばかりに前へと歩み出し私の正面へと顔を見せた。 彼女の顔はよく覚えている。 初めて会ったのは……そう……丁度この生徒会長とPT研が初会合したあの日…… あの時生徒会室の端の方で……静かにPCを撃ち込む姿を見せていた彼女…… そして、風紀委員長の一件で……私の事を連れ去って拷問を受けさせた張本人…… 生徒会副会長の……『宮腰恵梨佳』さん……その人だった。
Comments
新たな逆転パターンとして明日香が責めるのではなく、責められるシーンを見てもらうというシチュエーションに挑戦してみました。今までの小夜子先輩を知っていればいるほどこの回はグッと来ますよね🎵 楽しんでもらえたのでしたら嬉しい限りです✨
ハルカナ
2023-10-19 20:16:47 +0000 UTC普段ドSで余裕のある小夜子さんがくすぐりで死ぬほど苦しそうにギャハギャハ笑いまくるところ最高すぎました…! 余裕が微塵も感じられないぐらい笑い苦しむギャップが素晴らしかったです! いつかまた見てみたい…!
ぱんぷきんぐ
2023-10-19 12:36:52 +0000 UTC