誘惑☆デート #4-①
Added 2022-08-03 13:22:06 +0000 UTC#4ー① あの告白から二年が経ち、同じ大学に通うようになったあなたと七穂…… 大学生となった彼女は高校の時よりも随分と大人っぽく成長しあなたと変わらずの関係を維持し続けていた。 子供っぽい印象を与えていたショートボブでパッツンな前髪だった髪もセミロングの長さに伸び、真珠の様に黒かった髪色も最近行ったという美容院で少しだけ茶色に染め、毛先に緩いパーマまで当てていたり…… 水泳部に居た時は、地の大人しい性格を隠すように顔の肌は活発そうなキツネ色に焼けていたのだが、受験のための勉強に専念する頃にはその肌も少しずつ白味を取り戻していき、今ではほんのり焼け跡を感じさせる薄茶色の肌に化粧で美白を乗せるという健康的で大人の女性らしいメイクも会得したようだ。 身長や身体つきは高校の時と大して変わっていない様に見えるが、あなたが彼女の身体の成長の事を弄ると「これでも高校の時より2cmも身長伸びましたし、胸もBに育ったんですよぉ!」と、何やら意地を張る様に訴えかけてくる。 そんな彼女とはほぼ毎日、大学やお互いの家などで会っていたりもしている。 講義が早く終われば一緒にショッピングを楽しんだりもするし、カラオケやボーリング、ゲームセンターなどで遊んで帰る事もこともしばしば。二人で会員になったスポーツジムに通い詰めてルームランナーをどれだけ長く走れるか競い合ったり、腹筋を何回出来るかで競ったり、一緒にまったりヨガのポーズをしながら談笑したり……高校生を思い出すように温水プールに入って部活の真似事をしてみたり…… 大学休みになれば、少し遠出して遊園地や水族館でデートしたり……更に遠出して温泉旅行を泊りがけでやった事もあったりする。 他にも……お互いの家に行きあって夜通しゲームをして楽しんだり、泊まり込みで大学の課題を手伝い合ったり、ちょっといい雰囲気になってイチャイチャしたり…… お互い独り暮らしになり自由な時間が出来た事にで七穂とはこれまで以上に濃密な時間を過ごせるようになった。 誰もが羨むラブラブな大学生活を七穂と過ごすようになり、幸せの絶頂を味わっていたあなただったのだが…… それとは相対的に募っていく飽くなき“癖欲”が日を重ねるにつれ……時間を共に過ごすにつれ、薄まるどころか強く深くなっていくのをあなたは感じていた。 彼女の為なら、この様な変態的な性癖など捨ててしまえる……と最初こそ思ってはいたのだが、 彼女とお互いの関係を深めていくにつれ…… 彼女の魅力を直に感じていくにつれ…… いつしかその想いは彼女に対する劣情を高める方向に傾き始めてしまっていた。 今の彼女なら……理解してくれるかもしれない……。拒否される事はきっとない……。アレをさせて欲しいと素直に言ったら……分かってくれる気がする。 と、頭の中では彼女に期待を寄せているのだが……やはり癖が特殊過ぎる為……言い出すのに躊躇が生まれてしまう。 言って楽になりたい……と思いつつも、言えず悶々と欲だけが高まっていく生活が数か月続いた4月の終わりのある日…… とうとう……恐れていた事態が起きてしまった。 その日は……何の変哲もない……いつもの平日なのだ……と、あなたは油断していた。 その油断が……普段なら犯す事のないミスを誘い……隠す物も隠さないまま家を出てしまうという失態を引き起こしてしまう。 あなたが午前の講義を受け終え、昼食を自分の家で食べようとコンビニの弁当を買って戻ったその日……そんな日に限って先に家に来ていた七穂が、あなたの油断から生まれた失態を暴いてしまう事となる。 合鍵を使って入ってきたのだろう彼女は、あなたとご飯を食べるために自分で作った弁当箱を持参していたが……台所にあるテーブルにはそのお弁当箱の他に見覚えのある“黒いビニール袋”が無造作に置かれている光景が広がっており、あなたは血の気を失う程の衝撃をその時受けてしまう。 箸も用意せず蓋も開いてすらいない弁当箱…… その横に……まるで“中を見られてはいけない”と言わんとするように中身が見えないよう怪しく真っ黒に塗りつぶされたビニール袋が置かれている。 七穂はそのビニール袋を片手の人差し指でトントンと小突きながら、もう片方の腕の肘をテーブルについて顎をその手に乗せ……軽蔑するようなジト目であなたを睨んでいる。 あなたはその黒いビニール袋の中身が何であるかすぐに悟り、慌ててそれを取り上げようと手を伸ばす。しかし、七穂はそんなあなたの行動を阻止するかのようにすぐに袋を持ち上げ、あなたに突き付ける様にそれを見せつけ始めた。 「せ~~ん~~ぱぁ~~い? コレ……ベッドの横に落ちてたんですけどぉ~~? 知ってますよねぇ~?」 あなたに取り返されないようにとしっかり袋を握りしめてそれを見せつける七穂だが……あなたはそんな彼女のジト目を直視できない。 あなたはその袋の中身を勿論知っている……。 その中身が、今まで隠してきたあなたの秘密を暴いてしまうものであるという事を……あなたは理解していた。 なにせ……昨晩もお世話になった“道具達”が入っている筈なのだから……。決して他人に見られる訳にはいけない、あなたの癖欲を満たす為の“かなりアレな”道具達がそこには入っている筈なのだから……。 「別に先輩がエッチなビデオを見る事に対しては……抵抗なんてありませんけどぉ~。まさか先輩がこんな“普通ではないジャンル”のエッチビデオを見てるとは……思わなかったんですよねぇ~~」 袋の中には3枚のDVDが入っている筈だ。 それが普通のアダルト映像であれば、別に慌てて隠そうなどとは思わないが(それもそれでデリカシーに欠けているとは思うが)……。 しかしあなたの持っているDVDは、漏れなくあなたの特殊な性癖を満たすためだけの映像が収められている特殊なアダルト作品だ。 当然、そのジャンルは普通の感覚では理解されない内容のものとなっている。 それを……よりによって彼女に見つかってしまったのだ。一番バレたくないと思っていた……彼女に…… 「こういうジャンルが有るなんて一ミリも知りませんでしたし……先輩がそういう“性癖”を持っていたなんて思いませんでしたからビックリしちゃいましたけど……」 軽蔑するような……蔑むような目でジッとあなたの事を睨む七穂は、おもむろに袋に手を掛けその中に入った三枚のDVDを一枚づつ取り出してテーブルに並べ始める…… 「……『THE・女スパイ尋問、3時間耐久拷問編』……」 そして、並べ終えたDVDのタイトルは一つ一つ濁さずに彼女の口から読み上げられていく。 「……『素人女子校生、大笑いの果てに失禁……絶頂……パート2』……」 聞いているだけでも恥ずかしくなるタイトルを無感情に徹するように冷たい顔で読み上げていく七穂…… このタイトルまでであればまだ、プレイの内容までは悟られないという儚い希望を持てるが……最後のタイトルはあまりにも直接過ぎていた為それだけは読まれる訳にはいかないと……あなたは再び必死に手を伸ばし抵抗を試みる。 しかし、七穂はそんな慌てるあなたの手を振り払って無情にも最後のDVDをテーブルに置き、一番読み上げて貰いたくなかった部分を敢えて強調するかのように力を込めてそのタイトルを読み上げてしまった。 「……『実録:ドM女子大生“くすぐり”調教日誌~“くすぐり”が快感に変わってしまうまで~その5』……」 額に冷や汗をかいて慌てふためくあなたを尻目に、タイトルを読み上げた七穂はジト目を崩さず言葉を続ける。 「裏の内容見たら……全部のDVDに“くすぐりプレイオンリー”とか“くすぐりフェチ専用”とかって文言が書かれていましたけど……エッチな行為よりもそういうプレイの方が好きって事ですかぁ? 変わってますねぇ~。こういうプレイを見て興奮しちゃうんだぁ? だからこんなDVD買ったって事ですよねぇ? せんぱ~い?」 責める様に次々とその様に聞かれあなたは必死に言い訳を口から捻りだす。 それはたまたま友人から借りたもので、見る様に押し付けられたものだと…… しかしその言い訳は彼女が次に提出した証拠によって簡単に論破されてしまう事となる。 「お友達さんから押し付けられたぁ~? へぇ~~~そうですかぁ? だったら中に入っていたこのレシートはどう説明します? これ……先輩の会員証の名前が載っちゃってますけど……」 それを聞きあなたは更に頭を真っ白に染めて更なるパニックを引き起こしてしまう。 行きつけのアダルトショップはレシートを取っておけば次の購入時に割り引くが効くシステムがあった為、袋の中にそのままレシートを入れていた。そして、行きつけである為会員にもなっていたし、なんなら会員割引も多用し毎度そのカードを出して購入もしていた…… まさか会員証の名前までレシートに載っているなんて思いもしなかったが……それが載ってあるという事はもうはや言い訳は立たない。そのDVDを購入したのは自分であると証明しているようなものなのだから…… 「あれ? もう言い訳はしないんですかぁ? 良いんですよぉ? もっと抵抗してくれても♥ 抵抗するんなら、さっき他の場所でも見つけた“別のDVD達”も引き合いに出してあげようと思いますけど?」 言い訳をしたくても……その様に詰められれば言い訳のしようもない。 きっと七穂は、この隠し忘れていたDVDを見つけた後探し回ったに違いないのだから……同じようなフェチ物のDVDが隠されていないかどうかを…… そして見つけた筈だ……彼女のどや顔はそれを物語っている。 「さてさて……先輩? 私に見つかって気まずいとは思いますけど……説明してもらってもいいですかぁ? なんでこんな“偏った趣向”のエッチビデオを……沢山所有していたのかを……」 恥ずかしくて気まずくて……今すぐにでも逃げ出したくて堪らない。出来ればこのまま穴を掘って隠れてしまいたいとも思う位死ぬほど恥ずかしい思いをしている最中だが…… しかし、七穂はそんな恥ずかしがるあなたに追い打ちをかけるべく顔を覗き込んで話をさせようと睨みを利かせて来る。 そうである……あなたは……彼女の言う“偏った趣向”の持ち主であり、通常の感覚では理解しがたいであろうフェチズムを常に抱えて生きてきた。 きっかけは覚えてすらいない……テレビか何かでそういうシーンが流れていて、それを見て興奮を覚えたのだろうと推察はしているが……物心がついた時には“ソレ”に興味を惹かれていた。 それが“くすぐり”である。 「最初見つけた時は、磔に拘束されてる女の子がパッケージに映っていたから……鞭とか蝋燭とか使ったハードなプレイのヤツかなぁ? って思いましたけど……先輩の持ってるエッチなDVDの殆どが“本番無し”とか、“挿入無し”とか“服を着こんだままのプレイ”とかが強調されてて、なんか普通のエッチビデオとは違ったんですよねぇ~?」 増えてきたとはいえまだまだマイノリティなフェチズムである“くすぐりプレイ”と言うジャンル……。これを何の予備知識も無しに告白されても、大体の一般人は頭に疑問符が浮かぶだけですぐには理解出来ない事だろう。 そんな狭いフェチズムである“くすぐり”というジャンルは、フェチ年月の深さやきっかけになった入り口の違いなどによって様々に好みが枝分かれする。 女子同士の百合くすぐり合いが好きだったり、くすぐりをプロレスの様なスポーツに昇華したジャンルが好きだったり……ストーリー仕立てのヒロピン物に仕上げられている映像が好きだったり……。 フェチの度合いによってその様に千差万別の好みに分岐していくわけだが……しかしあなたの好みはそのような“初心者向け”のプレイでは満足できない程歪んでいた。 動けないよう完全に拘束された女子をくすぐりだけで笑い狂わせ、窒息と疲労で意識も混濁する程限界まで責め立てて苦しめるプレイを見るのがあなたの好みであり……長年歪ませ続けてきた性癖のお陰で、現実でやれば犯罪になるのではないかと思えるような猟奇的なプレイでも平気で見れてしまう程に性癖は歪み切ってしまっていた。 「“全編くすぐり責めオンリー”なんて背表紙に書いてあって、女優さんも裸にすらなってないような写真が貼ってあるDVDもありましたけど……。先輩ってば女子の裸を見るより……こういうプレイを見るだけで興奮しちゃう感じなんですかぁ?」 くすぐりがハードであるならば女優が裸じゃなくても興奮できる……くすぐる部位さえ露出していればもはや実際にくすぐっていなくても想像だけで興奮できてしまう。 あなたの性癖は筋金入りに曲がっており、もはや修正など利かない境地にまでフェチの沼に沈み切っていた。 「こんなの見て……何が面白いんです? エッチな事せずにただくすぐられている女子がキャハキャハ笑ってるトコを見るだけなんでしょ? それで、興奮なんて……出来るものなんですかぁ?」 普通の感覚だとそう思ってしまうのは仕方がない。なにせ……くすぐりという行為は、あまりにも日常に蔓延っている行為であり、目にする機会も多かったはずなのだ。 それと比べれば、女子の裸を拝む方がよっぽど機会は少なく……興奮の度合いは裸を見た方が高くなるハズだと思う女子の方が大多数だろう…… しかしあなたは、七穂の裸を見たいと思うよりも前に“彼女をくすぐってみたい”と思う方が先になってしまう程の上級者である。ごく一般的な性知識しか持ち合わせていないであろう七穂には理解しがたい生物に映っているに違いない……。 「ふぅ~~ん。なんか……先輩って可愛いですね♥ 裸を見るよりも女の子がコチョコチョされて笑ってる姿を見るのが好きだなんて……。何というか……平和的といいますか……メルヘンチックと言いますか……悪戯が好きないたずらっ子みたい♥」 七穂はくすぐりプレイと聞いて……どうやらその程度の認識しか出来ていない様子。 “コチョコチョされて笑っている姿を見て興奮する”……それは表面上間違ってはいないが、ただそれを見て和むだけがあなたのフェチではない。 実際は、SMよりもきついプレイになる事を……あなたは知っている。 手足を縛られ身動き取れないよう拘束された女性の無防備になったワキやら足の裏やらをひたすらくすぐりって笑わせ続ける……ただそれだけの行為であるのだが、その“笑わせられる”という行為が長く続けば続くほどに女性は肉体も精神も疲弊させられ笑う事が苦に思い始める。 笑えば息を吐き続けなくてはならないし、腹筋やら胸やらの筋肉も使い続ける為身体も疲れ果ててしまう事となる。しかし、そう感じていてもくすぐったい刺激が止まらない限り笑わされ続けてしまう…… どんなにその人が「もう笑いたくない!」と強く願っても……刺激に対して反射的に笑ってしまうくすぐりという行為には逆らえず、嫌でも笑い続けなくてはならなくなる。 辛くて苦しくてもう嫌だと思っていてもくすぐりの刺激に抗えず笑い狂わされる……その様なプレイがあなたの好む“くすぐりプレイ”のそれであり、七穂が今思い描いている“子供の遊び”の様な悪戯プレイとは根本から違う。 笑いたくないのに無理やり笑わされ続ける……。それがいかに人間の尊厳を破壊する行為になり得るか……それがいかに苦痛と快楽を生む行為になり得るのか……恐らく七穂全く理解していない。 理解出来ていないから……この様に堂々と“可愛いですね♥”などと言えているのだ。 くすぐりという行為が好きなだけだろうと勘違いしているから、顔を歪ませずにそのように言い切って見せているのだ……。 まぁ、それが……普通の人の考え方というものなのだろう。 くすぐりという言葉を聞いたり見たりするだけでドキリとしてしまうあなたと違って……七穂はそういう行為に性的な興奮を覚えるような経験は無かったのだろうから…… 「なるほど……だから、あんなに頑張ってアピールしても無反応だったんですね? 私が恥を忍んであれ程アピールしていたっていうのに……先輩ってば涼しい顔で私の事無視して! そんなに私って魅力が無いのかなぁ? って……心配になってたじゃないですかぁ! ここ数日ぅ!」 七穂の言うアピールというヤツに……実はあなたは気が付いていた。 デートの最中にさりげなく腕を組んできてあなたの腕を自分の胸に当てるような仕草をしてきていたり……ショッピングの帰りにワザとらしくホテル街のある方に誘導したり……わざと胸の谷間の見えるシャツを着て時折その胸を強調するように上目遣いして来たり…… なんだか積極的に肌を見せようとして来ているな……という仕草は感じていたのだけど、あなたはその仕草を見て興奮度が底上げされる事はあっても、彼女を家やホテルに連れ込んで押し倒すなどという実力行使に出る事はしなかった。 なにせ……胸をチラつかされても……あなたの視線はその横でチラ見えするワキに向いていたし、サンダルを履いてデートしていた時は彼女の素足にしか意識が行っていなかったため、結局あなたの中では彼女と性交渉をしたいという欲よりも“くすぐりプレイをしてみたい”という欲の方が勝り、くすぐりたい欲だけが高まり続け……悶々とするデートを続ける事となってしまっていた。 それなら正直に“くすぐりプレイをさせて下さい”と交渉するのもアリだったのだろうが…… その様な特殊な性癖を打ち明ける事自体が恥ずかし過ぎて……こうしてバレてしまうまで言う勇気が持てずダラダラと時を過ぎ去らせてきてしまっていたのだ。 それはまるで告白する前の自分を再現しているようだった。自分の特殊性がバレれば嫌われるのではないかという恐れが先行し告白できない……あの時の自分をもう一度再現しているかのようなヘタレをあなたは発揮し続けてしまっていたのである。 恥ずかしいのも勿論あるが、変な趣味があると引かれて……嫌われるという結末だけは迎えたくない! その気持ちは強く持っており、性癖を告白する事を躊躇わせる大きな原因になっていた。 くすぐりが好きだなんて……気持ち悪い……。なんて彼女に言われればきっともう立ち直れなくなる…… そんな事を言われるリスクがあるなら……打ち明けない方がマシだ……と、いつも自分に言い聞かせ、彼女のアピールにも我慢の日々を送る結果となった…… その結果が……今のこの状況だ……。 「もしかして……私ってそんなに信用……ないですか?」 あなたが秘密を明かせなかった事情を語ると、七穂は真剣な目をしてあなたにそう問いかけた。 あなたは、彼女の言葉に首を横に大きく振って「そんな事はない」と反論するが…… 「だって先輩、これを知られると嫌われてフラれるかもって思ったんでしょ? だから隠していたって事でしょ?」 そのように言われ……あなたは首を縦に振る事しか出来ない。 信用していない訳ではなかったが……性癖が特殊過ぎるが故にどう思われるか分からない……それは確かに不安として胸に秘めていたことは確かなのだから…… 「それは悲しいなぁ……。私の先輩を想う気持ちって……そんな風に軽く見られていたんですね?」 あなたは必死に首を横に振る。 決して想いが伝わっていない訳ではなかった。 彼女との会話……彼女とのデート、彼女とのお泊り……その全てに彼女からの想いを受け取っていたし、彼女があなたとどうなりたいかという想いも伝わってきていた。 伝わって来ていたからこそ……この関係を崩したくないと思った。 この幸せな時間を終わらせたくない……と強く願っていた。 だから、言いたくても言い出せなかった……。怖くて……。 「……私は、付き合う前から先輩の事……好きだったんですよ? 最初は容姿が好みだったという理由だけで近づいたのは有りましたけど……先輩を知っていくうちに先輩の色んなトコが良く見えてきて……その想いは強くなる一方になりました……」 七穂の訴えかけるような言葉に、あなたは途端に申し訳ない気持ちで心が一杯に埋め尽くされていく。 「先輩のふと見せる真面目な横顔や、私の冗談を苦笑いで聞いてくれるあの表情や……いつもリードしてくれる心強さや……やんちゃそうに見えて繊細な心の持ち主だったり……実は怖がりで暗い所が苦手なトコとか……すっごく感受性が豊かでよく泣いてよく笑う性格だなぁって思った事とか……知っていくうちにどんどん私の想いは強く大きくなっていってたんですよ? 知らなかったでしょうけど……」 まさか彼女がその様に想っていてくれたとは……思いもよらなかった。 自分でも意識していなかった些細な事も彼女は好きになってくれていたのだ…… その様に思われていたなど……想像すらしていなかった。 この様な特殊な性癖を持っているが故にあなたは常に……世間から距離を置かれているかのような引け目を感じずにはいられなかった。 自分が他人とは違う……何か特殊で変な事にしか執着出来ない……普通じゃない人間なのじゃないかと……そういう考えで自分自身を卑下して見る癖を付けてしまっていた。 普通の癖じゃないのだから……普通の性格や普通の恋愛は出来ない……と、いつしか思うようになっていた。 でも、そんなあなたに……七穂は優しく声を掛けてくれた…… こんな変な趣味を持った自分の事を……七穂は好きだと言ってくれるようになった…… 嬉しかったし……稀有な存在だと最初は思った。 こんな曲がった性癖を持つ自分の事を好いてくれる人間がいるなんて……稀有であり貴重な存在だと……そう思うようになってしまった。 稀有であるが故この先の人生で彼女以上の女性が現れる保証はないと思うようになり……だから、彼女だけは絶対に手放したくないと強く思うようにもなった……。 だから……余計に……性癖の事を言い出し辛くなっていた……。 本当は自分の方から切り出さなくてはいけない内容だったはずなのに…… 「………………………………」 七穂の事は勿論好きだ。 稀有な存在だからとかそういう事は抜きにしても……自分には勿体ないと思える程魅力が詰まっている女性だと言える。 好きな部分を言えといわれれば数時間かけて語る自信が有る程……あなたにとって彼女は魅力の塊だと言っても過言ではない。 清楚そうな見た目の割に悪戯したり少し意地悪な事をするのが好きで、あなたの反応を見て楽しむ様な小悪魔的な性格が裏に潜んでいたり、かと思えば、子供や高齢の方を見かけたら積極的に挨拶したり会話を楽しんだりと、誰とでもすぐに打ち解けられる愛嬌を持っていたり…… でも本当の所は面倒くさがりで、料理は作ってくれるけど皿洗いやゴミ捨ては後に回して結局あなたにお願いするといった自堕落な面もあったり……大学から出される課題も期限ぎりぎりにしかやろうとしないし……先生の事を気に入らなければ裏では平気で「アイツ」とか言い出す始末だし……気に食わない女子仲間の話をあなたに愚痴って見たかと思えば、次の日には何事もないかのように仲良くしてあなたを困惑させるような裏表を出してみたり…… だけど、あなたとのデートとなると妙に張り切って弁当やらおやつやらを自作で用意したりしてくるし……何気ない会話でもホントに楽しそうにしてくれるし…… ヤキモチ焼きで……デート中によそ見をするとすぐに怒るし……すぐに不貞腐れて機嫌が悪くなるけど……甘いモノを食べさせるとすぐに機嫌をよくしてべったりとくっ付いて歩くようになったりするし…… ほんの一部ではあるが、今思いつく七穂の好きポイントはこんなにも日常から思いついてしまう。良いところだけじゃなく悪いところや欠点的な部分も思い浮かべたけれど……それも含めて……彼女が愛おしくて仕方がないのだ。欠点すらも彼女を好きだと思う気持ちに繋がっている。 その想いは性癖やなんやとは関係なく純粋に彼女を想う気持ちだ。 それは間違いない事なのだ。 「まぁ……こういう事……私も……素直に伝えていませんでしたから? 先輩だって色々不安に思う所はあったかもですけどぉ……」 彼女がそうであったように……あなたも自分の今の気持ちを彼女に素直に伝えられたのは、あの告白の時以外にない。 日々更新されていく好きという感情があまりに流動的過ぎて……今何を伝えればいいのかを掴めず、結局口に出すことなく日々を重ねてきた。 想いは強くなるが結局その想いは「好きだよ」という言葉に凝縮され……その言葉だけを囁くだけに留まってしまっていた。 今更口に出さなくても分かってくれているだろう…… その様にお互いが思ってしまったが故……あなたは性癖を告白する事に躊躇いが出てしまったし、七穂の方も好きの感情が軽く見らたのではないかと勘違いを起こす結果となった。 本当は想い合っていたのに…… 好きという感情は薄れるどころか……高まっていく一方だったのに…… 言葉にしないだけでかようにもすれ違う事になってしまうとは…… あなたはそれを痛い程痛感し、先程浮かべた彼女への想いや自分の性癖への想い……そして自分がどれほど七穂の事を好いているかを時間が許す限り余すことなく伝えていった。 あの告白以来となるが……今まで言う機会に恵まれなかった募りに募っていた彼女への想いを包み隠さず全て彼女にぶつけていった。 想いを伝えると……七穂は顔を赤く染めながらも何とも嬉しそうな表情を浮かべ、照れる様に小声になりながらあなたに言葉を返した。 「アハ……良かった……。先輩……そんな風に想っててくれたんですね? それは今聞けて……嬉しい……というか……安心? しました……」 “安心した”という言葉は裏返せば……不安に思っていた部分もあったという想いが読み取れる。やはり七穂も……あなたの態度に何かしらの不安を覚えていたのだ。あなたが思う様な不安とはまた違った不安を…… 「さっきも言いましたけど……先輩が私のアピールをスルーするもんだから……私……本当に心配になってたんです。もしかしたら……先輩はもう……私や私のカラダに対して……興味が無くなっているんじゃないか……って……」 彼女の不安はもっともだ。そう思われても……仕方がない。なにせ……彼女のアピールの仕方は……どんなに鈍感な自分でも気付けるほどに直接的で……魅力的過ぎた…… その魅力は……いくら性癖が歪んでいるあなたであっても、油断すれば襲ってしまいかねないほどに扇情的で……彼女の想いの強さが詰まっていた事を今更ながらに感じさせられる。 あなたは……そのアピールに煽られながらも、必死に自我を保とうと我慢しデートの終わりまで紳士で居ようと貫いた……。タガが外れれば自分は彼女に無理やりくすぐりという性癖を押し付けてしまいかねない……その欲求が高まり過ぎて抑えが利かなくなっては彼女を傷けてしまう……そう思い必死で我慢した。 しかしそれが逆に七穂を傷つけていたという事に繋がっていたとは……。 あなたは必死に説明した。 実は七穂のアピールには気付いていた事…… それを無理やり我慢して、気持ちを押し殺していた事…… 自分の性癖が原因で……七穂をがっかりさせたくなかったという事も…… 「ちょっ! 気付いていたとか言わないで下さいよっ! 恥ずかしい! まるで私が、性欲強いみたいに聞こえるじゃないですかぁ!」 あなたの懸命な説明に対して、七穂は頬を真っ赤に染めて恥ずかしがる。しかし、原因が彼女にあるのではなく、自分にあったのだと説明し切ると彼女の表情も次第に緩みが見え始めた。 「でも……先輩がそんな風に想ってくれていたって言うのは……嬉しいです。私の事……気に掛けてくれて我慢してくれてたんですよね?」 頬を赤らめながらそのように優しく零す彼女に、あなたは深く頷きを返す。 「だったら……隠していた事は、許してあげます♥ 先輩が言い易くなるような空気感を作れなかったのは……私の至らなさでもありますし……」 その言葉を聞きあなたはパッと表情を明るくさせる。 まさか、自分の性癖を聞いて“許し”が得られるとは思いもよらなかった……! まぁ、許しとは言っても“隠していた事”に関する事だけのようではあるが……とにかく、自分の想定していた最悪の結末を迎える事だけは避けられたようで……あなたは心の中で歓喜の声をあげる。 「でも! 先輩が私の事を“信用していなかった”という事に関してはまだ怒りが収まってません! そして、秘密を“言わなければいいや”って思ってたことも私の怒りに触れてます!」 柔らかい笑顔から突然睨むような表情になり、あなたは再びドキリと心臓を震えさせ思わず姿勢を正してしまう。 そして、彼女の怒りをどうにか鎮めようと何度も頭を下げ謝罪の言葉を零してしまう。 「こういう事を簡単に許しちゃうと、また違う事でも隠し事をしかねませんから……今回は厳しく罰を与えようと思います!」 ジロッと睨みを向ける七穂だが……その頬は朱色に染まっており、少し興奮している様子が見て取れる。あなたはその表情を見て何とも言えない不安を持ち始めてしまう。 「ところで……先輩はさっき……“くすぐり”が好きって言いましたよね?」 七穂の口から不意に“くすぐり”という言葉が飛び出しあなたは更にドキリと心臓を高鳴らせてしまう。そして、彼女の問いかけに「その通りだ」という意志を込め頭を縦に振る。 「じゃあ……私の事も……その……くすぐりたいとか……思っていたり……します?」 あなたはその言葉に激しく頭を縦に振って返事を返す。 そりゃあ……ずっとその様に思っていたのだから……そのように言われて否定するなどあり得ない。 「ふぅ~~ん、そっか……。私の事……くすぐりたいんだぁ? じゃあ……先輩にこの罰を与えるのは……効果的かもですね♥」 突然切り替える様に意地悪な笑みを浮かべ始める七穂……。 彼女はその様に言葉を零すと、突然テーブルの上に行儀悪く足を乗せあなたに靴下姿の足裏を見せつけ始めた。 「どうです? こういう……くすぐりを連想させるような部位を見せつけられると……先輩は興奮するんじゃないですかぁ?」 紺色の靴下の足裏が突然目の前に差し出され、あなたは瞳孔を見開くように目を広げその足裏を食い入るように見つめてしまう。 この靴下の下には……七穂の可愛らしい足裏がある筈だ…… 靴下越しとはいえ、その足裏を想像しない訳にはいかない。 テーブルを下から覗けば上げた脚のせいでスカートからパンティなどが見えるだろうが……今はそれどころではない! 目の前には触りたくて仕方がないと日々思い続けてきた七穂の足裏が晒されているのだ! それを見て興奮しない訳が無い! 「あっ! 触るのは駄目ですよぉ? 私はその……くすぐられるの……あんまり得意な方じゃないですから……」 それを聞くと尚更触りたい衝動が高まってしまう! くすぐられる事が得意でないのであれば余計にどんな反応を見せるのか触って確かめたくなってしまう! 触るなと言われれば触りたくなるのが特殊性癖所持者の性であるし、嫌がりが強まれば強まる程興奮が高まってしまうのもこの性癖持ちの特徴でもある。 「どうです? こうして……触って下さいと言わんばかりに差し出されれば……触りたくなるでしょ? 私の……ア・シ・ノ・ウ・ラ♥」 テーブルの上で足を組んだり、靴下越しに足指をクネクネ曲げて見せたり…… およそくすぐりフェチが見れば堪らなくなってしまうであろう行為を堂々と目の前で行ってみせる七穂…… 彼女の頬は興奮しているか恥ずかしさが高まっているのか定かではないが真っ赤に火照っており……あなたを見る目もトロンと惚けていて何かしらの気持ち良さを感じているかの表情を作っている…… 手を伸ばしてしまいたい! すぐに手を伸ばし、靴下を脱がせて……七穂の足裏を直に触ってみたい! 触られたら……どんな反応を返してくれるだろうか? どんな笑い方をしてくれるだろうか? その様な妄想が脳内を駆け巡り、手を出してしまいたい欲に拍車をかけていく。 そしてあなたはとうとう辛抱堪らず手をテーブルの上に出し誘われるように彼女の足裏に手を近づけていってしまう。触ってはいけないと注意されていたのも忘れてしまったかのように……その魅力的過ぎる足裏に手が勝手に誘われていく…… 「フフ……だぁ~め♥ 触らせてあげませぇ~~ん♥」 あなたの手が彼女の足に付くか付かないかのスレスレの所で、七穂は無情にも見せつけていた脚を素早く引き、意地悪な笑みを浮かべてあなたにアッカンベェ~するように舌を見せつけた。 「ウンウン……これなら先輩も懲りるはずですね♥ よぉ~~し、じゃあ明日のデートはこれをしましょう!」 足を引かれ心の底から残念な表情を浮かべるあなたに、七穂はしてやったりの笑顔を作りその様に零した。 そして改めて姿勢正しく椅子に座り直すと、あなたに向けてこの様な提案を持ちかけ始めた。 #4 ー②へ続く