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ディストピア・プラント:2920~⑬消耗責め~

13:消耗責め  その刺激は羽根とは比べ物にならない程おぞましいモノだった。  ゴムを思わせる触り心地の樹脂で作られた人間の指を模して作られた細い指……その指を巧みに操り私の身体中に強くしっかりとした刺激を与え始めた。  触るか触らないかのもどかしい刺激を加えていた羽根とは違い、樹脂で作られた指先は触られた感触がハッキリと分かる痛痒さを私に与え、先程よりも更に強い擽痒感を感じられるよう刺激の質を更に凶悪に仕立ててきた。 「あぁーーーーーっはははははははははははははははははははは、やははははははははははははははははははははは、ぃぎぃひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、やべぇっっへへへへへへへへへへへへへへ、やべでぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、びゃはははははははははははははははははははははははははは!! わはははははははははははははははは!!」  その刺激はもはや暴力と言っても過言ではない。  羽根の刺激が思わず身体を動かしてしまいたくなる程のムズ痒い刺激を与え続ける責めだとしたら、この実際の指で触られているかのようなくすぐりは“思わず身体を動かしたくなる”では済まないくらいの……“勝手に身体がその刺激を拒否してしまう”程のくすぐりだと言える。 「おほねがひぃぃひひひひひひひひひひひひひ、お願いィぃやめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、こんなの耐えらんないぃぃひひひひひひひひひひひひひひ!! 耐えられる訳ないいぃぃぃぃ!!」  先端の尖った樹脂製の指先が私の抵抗できない足裏にビッシリと張り付いて一斉にコチョコチョとくすぐってくる。 「オホギャ~~ッッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、やだぁっははははははははははははははははははははははははは、あじのうらぁぁぁあぁぁぁっっっはははははははははははははは、あじの裏がくちゅぐりに埋め尽くされてるぅふふふふふふふふふ、ぎひ~~っひひひひひひひひひひひひひひひ、あがははははははははははははははははははははははは!!」  ワキの窪みから脇腹にかけての“ワキライン”にも無数のその手が配置されているのだろう……隙間なく覆われたそのサイドラインは無刺激な場所が無いと言ってもいい程指先に嬲られており、私の笑いを限界以上に引き出し続けている。 「ギャ~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やははははははははははははははははははは、えひ、えほっ! ゲホゲホ!! ゲホひひひひひひひひへっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、えへえへ! わぁぎぃぃひひひひひひひ、ワギのラインがヤバイぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ、全部こそばいぃぃぃっっっ!!」  背中とベッドの間にはどうやら博士の時と同じように隙間が開けられているらしく、これらの手は私の背中の筋や肩甲骨、脇腹の裏やお尻と言ったマニアックな箇所にも攻め手を伸ばしており私に耐え難いくすぐったさを与えて来る。 「おごほほほほほほほほほほ、うぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ヒィヒィっ! 背中やめでぇぇぇぇぇ!! 背中ジョクジョクするぅぅぅふふふふふふふふふふふふふふ!! お尻もダメっっ!! 羽根より刺激が強くなってるぅぅぅふふふふふふふふふふふふふ!!」  足の甲も脛も……腹上も臍の中も……胸の周囲も胸自体も……二の腕にも手のひらにも……首筋から顔の頬に至るまで……  露出した皮膚という皮膚を余すことなくくすぐっているその手は、もはや私に“呼吸をさせる”という配慮を一切行わず私の事を笑わせ責めに掛けていく。  廃棄処分=処刑と同じ意味である為それは当然の行為ではあるのだが……まさかくすぐりなどと言うふざけた責めで死を意識する程苦しめられる事になるとは……誰が想像するだろう? 「ギャ~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハ、やははははははははははははは!! ゲホゲホゲホッっほほほほほほほほほほほほ、くひゃめへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! うぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぃえへへへ、んへへへ、ぅへへへへはははははははははははははははははははははははははははははは……」  咳き込めばそれ相応の酸素が肺から吐き出される為余計に苦しくなる。しかし、全身を襲うくすぐったさが私を笑わせ、咳き込みが終わっても笑いという呼吸の吐き出しが続けられる。  笑いの間に僅か程の呼吸のチャンスは有るには有るが……それで吸える酸素の量はせいぜい吐き出す量の2割程度……  2割くらいしか吸えない酸素を私は笑う事で吸った分以上を吐き出していってしまう……  計算上は全く酸素が足りていない。  吐き出す量の方が多すぎて……身体に酸素が行き届かなくなっていっている。  特に脳に酸素が供給されないのが痛い。酸素が足りないと考える力も曖昧になっていき……正気を保つ事が出来なくなっていく……。  自分を自分で保てなくなっていく恐怖……それは、人間として自我を持って生まれてきた私に最大級の絶望を植え付けてやまない。 「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、えはははははははははははははははははははは!! んひひひひひひひひひひひひひひ、かはぁ~~っはははははははははははははははははははは……」  このまま笑い続けたら……数時間と言わず……数分で私の頭は正気を失いかねない……  笑ってはいけない……  せめて……肺を満たせる程の酸素を吸う時間を……稼がなくてはならない……  だけど…… 「ギャ~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハ、えひゃ~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いひっっひひひひひひひひっひひひひひひひひひひひひひひひひ、あはあはあは! かはははははははははははははははははははははははは、くひひひひひひひひひ!!」  笑いを我慢する事など出来ていたら……とっくにそれをやっている。 「えひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、あ、あ、あじぃぃひひひひひひひひひひひ、あじの裏がぁぁはははははははは、また足の裏がくしゅぐったくなっでぎだぁぁははははははははははははははは!!」  羽根の時よりも雑で力任せにくすぐってきているとも思えるこの機械指でのくすぐり責めだが……いくらくすぐり方が雑になったとしてもこの“ガス”が噴射されている限り私はこの責めに笑わされ続けてしまう。  それだけこのガスは……私の全身の神経を敏感にさせ続け“くすぐる”という刺激に対しての抵抗力を極限まで下げ切ってしまう。 「はぎゃはははははははははははははははははははは、うへぇへへへへへへへへへへへへへへ……ワギもダメ! 脇の下も無理ぃ! お腹もお尻もぉぉほほほほほほほほほほほほほ、背中もダメぇ~~~っへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  普通なら同じ箇所をしつこくくすぐられればある程度の“慣れ”を覚えるものだ。  人間の“慣れる”というシステムは脳の学習機能とよく似ていて、この手の刺激に対する人間の生まれ持った防衛手段だと言っても過言ではない。  注射は最初こそ痛いと感じるが、差し込まれた後は最初程の痛みは続かない……それも慣れの一種であり、くすぐりに慣れるメカニズムもそれに近しいものがある。  同じ箇所をずっとくすぐられれば……脳はその刺激に対する対処法を勝手に覚える為最初のくすぐったさを越える刺激を感知することはない……だから、くすぐりはランダムに場所を変えてくすぐる方が効果を発揮するものなのだ。  普通はそうなのだが……このガスが使われたなら話は変わってきてしまう。  このガスは……肌を敏感にするだけでなく、刺激への慣れをも無効化にしてしまう効果も持っている。  この“肌を敏感にさせる”という効果があまりに強力なため……吸えば吸う程に肌の神経過敏がリセットされ、触られる刺激が全て新鮮な刺激へと書き換えられて行ってしまう。  吸えば体中が清涼感に満たされ、瞬時に神経が敏感になっていく……そんな敏感な肌をくすぐられれば笑わずにはいられなくなる……そしてまたガスを吸ってしまう……  その永遠ループが出来てしまっている為、くすぐったさに慣れる事もなく永遠とこの鬼畜なガスを吸い続けるという輪から抜け出せなくなっている。 「ぃひぁははははははははははははははははははははははははは、くはははははははははははははははははは、ゲホゲホゲホ!! ゲホッッほほほほほほほほほほほほほほほ、えほほほほほほほほほほほほほほ、ひぃ、はひぃぃっ!! ぃひひひひひひひひひひ、くくくくくくくく……だぁ~はははははははははははははははははははははは!!」  だからくすぐり方は雑でもいいのである。  私の身体は“慣れない&敏感”になるようガスに弱らされているのだから、もはやくすぐり方は雑でも触られるだけで笑い狂ってしまえるのである。  むしろ……的確なくすぐりを少数精鋭で行うよりも、多少雑でも身体を埋め付くほどの数で刺激する箇所を増やした方が効率的であると言える。  どうせ触られたら笑ってしまうのだから……  だったら、体中をくすぐり回して刺激を体中に植え付けていった方が私を死に追いやるには効率がいい筈だ。  実際……全身を隙間なくくすぐられている私は……どの刺激に笑わされているのか脳が追い付いてはいない。  足裏がくすぐったいと思った次の瞬間にはワキがくすぐったく感じてるし、ワキがくすぐったいと感じれば今度は脇腹や胸がくすぐったいと感じてしまうし……  自分でもどこがくすぐったいかを感じ取れなくなってきている。  頭の中は次々に更新され続けていく“くすぐったい”という感覚に対応が追い付かない……。追いつかないが故に考える事を諦めてしまっている……  『とにかく触られたら笑え……』などという知的な動物にあるまじき本能に準拠したような命令を脳は私の口に指示し私を笑わせる。 「ギャハァハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、げほげほ! ィギョホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ、うぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ゲホッッゲホッ! オエ……へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぐぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ……」  笑う事が続くと……次第に口内に溜まった唾液が飲み込めなくなっていく。  例え飲み込めたとしてもそれは痙攣するように収縮を繰り返している気管の方に流れていってしまい、咽る原因を作る事となってしまう。 「えへえへ、えひひひひひひひひひひひひひ、ふへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、あひっ!? あひひっ!? だひゃっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……」  飲み込めなくなった唾液は私の口元から零れ落ち涎となって頬を伝って首裏へと流れていく。  その涎も……時間の経過とともに流れる頻度が多くなり……私の口周りは自分の涎でビチョビチョにり見た目にも悲惨である事を示す事となる。  涎に負けないくらい全身からは汗が噴き出し続けている。  部屋の中や周りは人間が暮らしやすい適温に保たれている状態である筈なのに、私の身体は灼熱のサウナの中に入っているかのように汗にまみれている。  首筋やワキ……脇の下……胸……腹……そして足の裏……そういった主要汗腺の通っている箇所は特に汗をかき過ぎていて……機械の手達はその汗を潤滑油に利用し更なるくすぐったさを私に味合わせようと責めを強めて来る。  酸欠に加え脱水の危険も私の身体に負担をかけるが……幸か不幸か、吸わされているガスに気化させたであろう水分が僅か程に含まれている為、多少の発汗では脱水の危険は訪れたりはしない。  しかし、ガスに含まれている水分などたかが知れている為……いずれこの責めが長引けばガスの水気だけでは足りなくなってくる事だろう。  まぁ……脱水の危機が訪れる前に……私の身は笑いによって壊される事になるだろうが…… 「ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、いししししししししししししししししし、ヒィヒィ! うひぃ~~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、もう限界ぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! もうホントに……限界っっひひひひひひひひひひ!!」  ……何時間……笑わされ続けたのだろうか?   2時間? 3時間? それとも……もっと?  実際はそれよりも短い時間である事は薄々気付いてはいるのだが……私の身体はそれだけ長い時間くすぐられたような感覚になる程疲弊させられていた。  笑いに力がこもらなくなってきている……。  先程まで抵抗を続けていた手足にもいよいよ力が入らなくなってきている。  笑うたびに痛みを覚える横腹と喉、収縮運動をし過ぎて疲弊してしまった肺と横隔膜……関節という関節が痛みを発し、手足の一本でも動かそうとすれば全身の筋肉が悲鳴を上げそうな勢いで鋭い痛みを発し始める  もう限界だ……これ以上は……正気を保つ事が出来なくなる……  あと数十分でもこれが続けられれば……私は自分の意志で言葉を発する事も出来なくなってしまうだろう……  もう無理だ……このままでは本当に私は…… ――ウィィィィィン……プシュゥゥ……  私がそのように自分の命の危機を悟りかけると、なぜかタイミングよく機械達の責めが止まり何事もなかったかのような静寂を私に与える。 「はぁはぁはぁ、ゲホゲホゲホ! はぁはぁ……な、なに? はひ、はぁはぁ……なんで……急に動きが? ケホケホケホ!!」  しかし、ガスはまだ噴霧を続けている……  という事はこの静寂は単に私に休みをくれるという慈悲などではなく……次のステップへと続く機械達のインターバルでしかないのだろう。  その証拠に、止まってすぐに機械の駆動音がまた物々しく鳴り響き始め、羽根や樹脂製の指とはまた違った手が這い出てきたことを私の敏感な肌は感じ取った。 「ひっ!? や、やだっ!! 何か硬いのが脇の下に当たった!?」  樹脂製の指と入れ替わりで私の脇腹や脇の下に触れてきたそれは……今までのどんな責め手よりも硬く、しっかりした力強さがある事を私に皮膚を通して伝えてきた。  この硬い物体は何なのか? 樹脂の指よりは少し太めで……指の数も二本くらいしかないように感じるが……  その手は二本の指を使って私の脇腹や脇の下などを挟むように掴んで待機を始めている。  挟んだ指にはまだ力が入れられていないが……もしもこの指達に力が入り始めたら、想像を絶するくすぐったさを生み出す事になるのは目に見えている。  何せ……これらが待機している場所は……私の脇腹や脇の下の奥に眠る“ツボ”の真上に位置する場所なのだから……  羽根や力の弱い細い指では決して潜り込むことは出来ない……皮膚の奥にあるそのツボ……そこは、強い力で揉み解されれば発狂し得るほどのくすぐったさを生む禁忌の場所だ。  機械の賢いコンピュータは今までの責めのデータを分析して……私のそういう“笑いツボ”を見つけていたのだろう。そこに指が置かれているだけで私はこれから送り込まれるであろう刺激を想像してしまい勝手に身体の震えをきたし始める。 ――ウィィィィン、カシャカシャカシャ……  脇腹と脇の下に太い指が配置されると、今度は足の裏の方にも新たな責め具が当てられる感触が足裏の皮膚に伝わってくる。 「ひっっ!? この感触って……ま、まさか……」  一瞬……さっきの樹脂製の指が戻ってきたのか? と思えるような弾力のある細い手先の感触を味わったが、今度触れてきたのは指のよう太さの感触ではなく……もっと細くもっと沢山の毛のような物が生え揃ったかのような感触をそれには感じた……  これは……そう、私が想像し得る物で例えるのであれば“ヘアブラシ”だと言えばしっくりくるか……  髪を解かす為に使うヘアブラシ……その毛を樹脂で作り変えて持って来たかのような感触だ。  造りとしては安っぽさを感じるし髪を解かすにはお粗末なブラシだろうと想像できる物ではあるが、こと“足裏をくすぐる道具”と考えればそれがいかに恐ろしい処刑道具になり得るか簡単に想像がつく。  反り返った足裏を反発性の高い樹脂で作られた毛先で擦られれば、どれだけくすぐったく感じるかはなど簡単に想像がつく。  指よりも細くしなやかで柔軟な毛先が……足裏の皮膚を撫でながら動き回る刺激を思い浮かべれば、それがいかにこそばい刺激を生み出すかやられていなくても理解出来るだろう。  ただ撫でるだけなら……まだ指の刺激とそう変わりはないだろうが、ブラシの毛は反発力があり力を加えると元に戻ろうとする力が働いて動かすだけで引っ掻く動くような刺激も与える事が出来る。  細くてしっかりした毛先に触られるだけじゃなく……そのように引っ掻かれる刺激を与えられたら……もう笑いを我慢出来るなどという自信は頭に浮かんでこなくなるだろう。  ただでさえガスの効果で敏感にさせられているのに……その様な強烈な刺激に晒されればどうなってしまうか……自分でも想像できない。  これだけでも十分にヤバいと思えるのに、機械達はどうやら徹底的に私の事を笑わせたいと思っているらしく……私の無防備な腋の窪みにも新たな責め手を用意しそれを向かわせた。 ――ゴゴゴゴ……カシャ、ガシャガシャガシャン! 「ひっっ!? こ、今度はなに? 何がワキに……触ったの??」  最初……窪みの丘陵に触れたソレが何なのか理解出来なかった。  触れた物体はさっきの樹脂製の指よりも先端が細くて小さく……足裏を狙っているブラシの毛先よりも1本1本は……小さい?  小さいけど、その小さい毛の先端には更に小さな毛先がウネウネ動いている感触が伝わる……これは……?  っと、感触だけではすぐにはその正体には気付けなかったが……  ある程度その物体がワキを包囲するように密集し始めてようやく理解が追い付く事となる。  コレは恐らく……物凄く小さく作られた“機械の手”の集合体だ。  手を支える腕の太さは恐らくブラシの毛ほど細く小さいモノなのだろう……その先端には更に細く作られた指が3~4本ほどくっ付いているようだ。爪楊枝ほどか……それとももう少し細いかくらいの物凄く細くて小さい指……それが複数ワキの窪み周辺に集まってきて構えているようだ。  細くて小さいが……確かに触られている感触は伝わってくる。  刺されれば痛いかもしれないが……きっとこの指達は私の皮膚を刺してきたりはしない……細い指先を素早く動かしてワキの敏感な皮膚を集団で触り回すつもりなのだろう。  感触としては指というよりも爪の先端で軽く引っ掻かれる刺激になるとは思う……伸びきったワキの皮膚をそんな爪の様な細いもので触られたら……どれだけくすぐったく感じるかもはや想像も出来ない。  きっと死ぬほどくすぐったい刺激を生み出すモノだろうと不安は募るばかりだが、ワキに集まってきているそれらを私にはどうする事も出来ない。  私の手首をしっかりと固定している枷は……私の腕を強制的に万歳の格好にして抵抗できないようにしている為これから何をされようとも私は一切逆らえないのだ。  分かり切っていた事だが……それが一番辛い。  くすぐりに抵抗させて貰えないというのが……これ以上になく私を苦しめている。  腋も、脇の下も脇腹も、足の裏も……全て機械達の精鋭部隊に構えられてしまった……  他の羽根やら樹脂製の指やらは、これらの精鋭たちを援護するように背中や内太腿や膝裏などのマニアックな箇所に集まり直している様子……。  もう……これらの責め手のどれ1つをとっても私は耐えられる自信がない。  これが動き出せば……たちまちにして私は呼吸の事など忘れてしまう位に笑い狂ってしまう事だろう……  それはどんな刺激になるのだろう?   私の酸欠の頭では思考が追い付かず……想像すらできないから……怖い……  滅茶苦茶……怖い…… ――ピィィィィィィ! ガガガ…… 『第二段階……消耗責メ……終了。続イテ、最終段階デアル……“窒息責メ”ヲ開始致シマス!』  私の不安はこの機械音声の発言によって更に極限まで高められる。  機械の音声は廃棄処分の最終段階……窒息責めなるものを……これから執り行うと私に宣言してきた……  最終段階というのだから……それ以上先は……きっともう無いのだろう。  これが最後の責めであり……私が果てるまで……このようなインターバルは挟むことも無くなるのだろう……  つまり、ここからが本当の処刑だ。  今までの“準備段階”を踏まえて、確実に私を笑い死にさせようとする責めが……これから執行されるのだ。  怖い……怖い……  嫌だ……こんな無様な死に方は……やっぱり嫌だ!  ミシャさんの手前カッコつけて“贖罪”だとか“死を受け入れている”だとか言ったけれど……本心はやっぱり怖い……怖くて……堪らない。  覚悟なんて出来ている訳が無かった……。なにせ……ほんの数日前までは自分だけ逃げ出そうと……施設を調査をしたり情報を集めたりしていたくらいなのだから……。  私はこの辛さから逃れようとして……脱出をしようとしていたのだ……  だから……覚悟何て出来てはいるはずがない!  ミシャさんの事だって……  ……もしかしたら助けを呼べる“何か”を彼女が行ってくれるんじゃないかと期待して助ける事にしたんだ……  今でもそれを期待してる……  ミシャさんにお姉さん振ってあの様に言ったけど……本心はそっちを期待してしまっている。  自分だけは助かりたいと……心の底では常に思ってしまっている。  なんて弱いのだろう……私はなんて……心が弱いのだろう……  マリア博士を逃がしたあの日だって……本当は、私の方が先に……逃げたいと……思ってた……  研究所が機械に襲われ……脱出ポッドで逃げられるのが一人だけと分かった時……私は真っ先に手を挙げてそれに乗らせてもらおうと主張するつもりだった……  でも……博士が“妹だけでも逃がしたい”と言うから……私は渋々その席を譲ってしまった……  他の研究員の人は博士を脱出させるべきだと言い張っていたけど……博士は最後まで自分の妹の事を案じて反論し続けていた……  結局……博士が妹さんをポッドに乗せる前に妹さんは機械達に先に捕まってしまって……妹さんは諦める事を余儀なくされた。  その時博士は“だったら代わりに”と、私をポッドに入れようと動いてくれたけど……解除キーを作れるのは博士だけだという理由で他の職員に半ば無理矢理押し込まれる形で博士は脱出ポッドに入って脱出していった。  残った私は捕まり、この施設へ入れられる事となったけど……そこでの仕打ちに耐える度に私は博士を恨んでしまっていた……  自分だけ……脱出しやがって! と。  私はこんなに苦しんでいるのに……何で博士は助けに来てくれないんだ! と。  博士は最後まで自分ではなく他者を重んじてくれていたのに……私ときたら……自分の不遇を嘆く事しか出来ないでいた……  そんな自分勝手な私に……贖罪だの罪を償うだのを言う資格はきっとない……  心の底から罪を悔い改めようなどと思っていないのだから……きっと贖罪には……ならないだろう……  今だって……悔い改めるよりも、助かりたいという想いで一杯だ。  どうにかミシャさんが記憶を取り戻し……何かしらの助けをもたらしてくれることを願ってしまっている。  私という女は……ここまで追い込まれても弱さを捨てきれない……所詮そういう女だったのだ……  自分が助かる事だけしか考えていない……最低の女なのだ。  だから……この死に方が私には相応しいのかもしれない。  人を嘲笑うように……大笑いしながら死んでいくのが……当然の罰なのかもしれない。  受け入れるしかない……  私の行いは……それほどまでに業の深い行いだったのかもしれない。  死ぬのは仕方がない……それが当然の報いなのだから……。でも、タダで死んでいくのは私のプライドが許さない! このまま何もしないまま死んでいく訳にはいかない!  私にはまだやらなくてはならない事がある!  そう……ミシャさんに約束した“アレ”をやらなくては! 私に残された最後の仕事をやり遂げなくては……私が捕まった意味が無くなってしまう!  死を恐れている場合ではない! 私の威信にかけて……この最後の仕事は必ずやり遂げて見せる! ――ピィィィィ、ゴゴゴゴゴゴゴ……  機械が本格的に稼働し始めた! まだ指やブラシは動いてはいないが……機械達にパワーが送り込まれているのが雰囲気で伝わってくる!  カメラは……回っているだろうか? それとも……まだ……公開放送されていないだろうか?  分からない。目隠しをされていると真っ暗で……何も見ることが出来ない。  博士の時と同じであれば……意識を失っている段階からFuel全体に公開されていてもおかしくはない……  おかしくはないけど……でも、同じであるとは限らない。  博士が放った言葉によって混乱を招いたのは確かなのだから……もしかするとその二の舞を避けるために放送すらされていない可能性もある。  そうであれば私には対処のしようはなくなるのだけど……もしかしたら“遅れて放送を行う”などという対処を取る可能性だってある!  なにせ……この廃棄処分は……機械にとってはFuel達の反抗の意思を削ぐ強烈なメッセージになり得るのだから……  逆らえば同じ目にあわせゾという……精神的な枷を嵌めることが出来るのだから……  だから放送はするはずだ。公開して見せつけるはずだ……私の無残な最期を……。  今もリアルタイムで放送されているかもしれないけど……もしかしたら、まだ放送されていないかもしれないという可能性もある。だとするなら……やっぱり、限界ギリギリまで“アレ”はやらない方が賢明だろう。放送もされていないのにアレを伝えるのは……全く意味のない行為になってしまうのだから……  つまりは……私はもう少し頑張らなくてはならないという訳だ……  確実にコレを皆に伝えて……もう一度混乱を……引き起こさなくちゃ駄目なんだから……。  死ぬほど辛い役目になる事は分かってる。  でも死ぬ前に……これだけはやり遂げて……死んでいきたい……  せめて……これだけは…… ――ガチャン! 『準備完了…………』  どんなに酷い責めでも……意地でも耐えきってみせる!! 『最終段階……窒息責メ……』  それが人の足を引っ張り続けてきた私にできる私なりの贖罪の仕方なのだから! 『……開始!』  ……必ず……必ずッっ!! やり遂げてみせるッっ!!  ……これだけは……


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