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メイド・イン・アンダーグラウンド⑦~目覚めと共に~

7:目覚めと共に 「ぶはっ! ゲホゲホ!! はぁはぁはぁはぁ……」  肺が締め付けられるように苦しく……胸が焼けるように熱い……。  全身の筋肉が弛緩しているかのように力が入らず……それでいて勝手に緊張したり痙攣したりを繰り返して私の言う事を聞いてくれない。 「どう? ねぇ、どうだった? 私達二人によるくすぐり責め! 苦しかったでしょ? 死ぬんじゃないかって思えて滅茶苦茶怖かったでしょ?」  目を覚ましてもぐったりしている私にお嬢様が子供のようにはしゃぎながら顔を突き付けて来る。 「はぁはぁ……ゲホゲホ! はぁはぁ、はぁはぁ……」  前髪から滴れ落ちる冷水の雫をぼんやり見つつ、先程の地獄の様な苦しみを思い出した私はブルリと身体を震わせつつお嬢様の問いに頭を頷かせて見せた。 「でしょねぇ~♥ 今回は瑞穂さんの二の舞にならないよう最初から徹底的に責めてみたの♪ そう感じて貰えたんなら今回こそはちゃんと調教が進められるってものよね?」  お嬢様が何を言っているのか分からない。  瑞穂先輩の名前が出て来たかと思えば、ちゃんと調教が出来る云々と意味不明な言葉も飛び出し……朦朧とした私の頭では彼女の言葉は何一つ理解が及ばない。 「だとしても、やり過ぎではないですかぁ? 由加里さん……力を使い果たしてグッタリしてますよ?」  お嬢様の言葉を受けて代わりに私の様子を見ようと顔を覗き込ませてきたのは、私の責められをずっと遠くの方で眺めていたメイド長の佳苗さん……  彼女は私の疲弊し切った顔を見るとクスリと笑みを浮かべ、軽く私の頭を撫でて慰めてくれた。 「そうかしら? でも……綾ちゃんの仕置きの時はこれくらい責めたと思うんだけど?」 「綾さんの時は明らかにドMだって分かったから徹底的に責めたんでしょ? 由加里さんは別にMでもなんでもないじゃないですか……可愛そうに……」 「あう! そ、それは……まぁ……ほら…………彼女って……魅力的な……身体……してるし……その……」 「全く……。亜理紗は好みの女の子が無抵抗になると見境なしに責めようとしちゃうんですから……。そんな事だから好みとは違う瑞穂さんへの調教が雑になって上手くいかないんですよ?」 「にゃっ!? ち、ち、違うわよ! 私だって……瑞穂ちゃんの事は……嫌いじゃないのよ? 出来ればこっち側に来てもらいたいって……思っているけど……」 「瑞穂さんは今時の子って感じが全開ですもんね? 肌の色も褐色だし……いかにも遊んでそうな軽い印象……。スタイルは良いけど胸はあまり主張しない程大きくはない。亜理紗の好みとは真逆だものね? フフフ……♥」 「こ、好みとか言うなぁ! 確かに私は……母性が強い女の子をイジメるのが……好きだけどさぁ……」 「私や、綾さん……そして由加里さんの身体は亜理紗と違って母性に溢れていますものね? 自分に無いグラマラスな身体に嫉妬して責め欲が上がるのかしらぁ?」 「だ、だ、誰が嫉妬してるですって! そんな事思って責めてなんかいないわよ! 馬鹿ッ!」 「はぁ~い、はい。相変わらず……亜理紗は可愛いわね~♥」 「あぁもう! 頭撫でるなぁ! 子ども扱いもするなぁ!!」  私の目の前で繰り広げられている母と娘の戯れの様な光景に、私は先程までの緊張は何だったのかと思える程普段の日常に戻されたような感覚を味わう。  佳苗さんがからかって……お嬢様が子供のように怒る……。日々繰り返されているその微笑ましい日常がまた戻ってきたかのように錯覚した私は、手足を拘束されているという現実を忘れているかのように心からの安堵の息を吐いてしまう。 「さて……。それはまぁ良いとして、由加里さんの方ですが……」  すっかり二人の微笑ましい戯れを見て気を抜いてしまっていた私に佳苗さんが視線を戻し私の顔を覗き込みながら不敵な笑みを浮かべて見せる。  私はその視線の妖艶さにドキリとしてしまい、弛緩していた身体が再び緊張に苛まれる感覚を思い出す。 「正直な話……どうでしたか? 二人のくすぐり責めを受けて……」  口に浮かべていた笑みを消し、私の目を真っすぐに真顔で見つめそのように確認の言葉を発した佳苗さんに、私は口元を引きつらせながらも正直に今の感想を彼女に伝えた。 「とっても……苦しくて……怖かった……です……」  そのように伝えても、佳苗さんは眉ひとつ動かさず私の目を見つめ続ける。  私は見られる事に気まずさを覚えつつ続きの感想を零していった。 「こ、こ、こんな風に……拘束されて……くすぐられた事が無かったから……まさか……ただのくすぐりが、こんなにくすぐったくなって笑わされる事になるなんて……思ってもみませんでした……」  私のその言葉を聞いて顔を離し目を閉じて腕を組み始めた佳苗さんは、ひとしきり考える仕草を見せると「ふむ」と一息ついて再び私の顔を真顔で覗き込みに来た。 「じゃあ……くすぐりから解放された今はどうです? 仕置きが終わった今は……くすぐりに対して……どんな気持ちを持つようになりました?」  そのように聞くと私を見る佳苗さんの目が睨むように細まり……私はその真剣そのものな視線に再び緊張を強いられる。  この問いかけにどう応えるべきか?  その答え如何によって彼女の次の行動が変わるような……そんな気がしてならない。  彼女たちの会話の中で「調教」などと言う物騒な言葉が飛び交っていたのを覚えている。だから下手な回答を返すと……その調教が酷いことになりかねない……。  でも……どう答えるのが正解なのかも察しがつかない。嘘を使って彼女達が喜びそうな事を言っても良いのだけど……佳苗さんの真剣な目に対して嘘をつくのは……恐れ多くて……、というかすぐに嘘だと見破られそうで気が乗らない。  だから私は自分の今の気持ちを正直に彼女に伝える事にした。この後どんな酷い目に合わされるか想像も出来ないが……でも、自分の言葉は正直に伝えるべきだと判断してしまった為私は言葉を選ぶ事なく正直な感想を彼女に伝えたのだった。 「も、もう……嫌……です……。この様な仕置きは……もう……受けたく……ありません……」  これが私の答えだった。  実際……身体が拒否しているのが自分でも分かる。  思いつくどのような仕置きよりも……この笑いを強要される仕置きは心の底から怖いと思っている。  綾先輩は……この仕置きを受けたいと言っていた……。  お嬢様は“こっち側”に来てもらいたいと思っている……などと発言していた。  佳苗さんだって、お嬢様とこういうプレイをして楽しんでいると……言っていた……。  だから、彼女達の事を思えば……この仕置きを受け入れて“そちら側”の嗜好に傾いたという発言をするのが望ましい事なのだろうけど……  やはり……どう考えても、私はあの仕置きを好きになれる素質の様な物があるようには思えない。  あの気絶に追い込まれるほど徹底的に笑わされ続ける苦しみは……私が経験したどんな苦しみをも凌駕するほどに強烈で恐ろしいものだ。  このまま笑い続ければ……きっと頭がおかしくなるか……最悪死んでしまうのではないか? と思える程苦しくて……その不安が常に私の心を震え上がらせていく。  いつ止めてくれるか分からない……。いつ許してもらえるかも分からない……。そして私の苦しみを本当に理解して責めているのかも分からない彼女達の態度に……私は常に身の危険を感じながらも止められない笑いに苦しめられた……  そんな状態を思い出し……嘘でも“お嬢様たちのくすぐりプレイに興味が湧きました”なんてどの口が言えよう? 死ぬほど怖い思いをした後に……その様な嘘を付けるだろうか?  身を案ずるならそのように発言する方が時間は稼げるだろうけど……嫌なものを嫌と言わないままに無理して“彼女達の側”に入っても……きっと良いことなど一つもない。  嘘をついた事がバレないよう次の嘘をついて……その嘘を守るために次の嘘をついて……という悪循環が巡るのが目に見えている。  だから私は素直に……今の心境を告げた。  きっと残念そうな顔で私の事を見るだろう……と、恐れながらも……そのように告げたのだが…… 「フフフ……良かった♥ もしかしたら由加里さんも瑞穂さんみたいに“嘘”をついて取り入ろうとするかもって思いましたけど……そうではなかったようですね?」  私の正直な発言に佳苗さんは緊張した表情を解きいつものにこやかな笑顔を取り戻す。  それと同時にお嬢様も綾先輩も表情を和らげホッと息をつき始める。 「え? あ、あの……」  てっきり残念そうな表情をするだろうと予想していた私の考えとは裏腹に、それとは真逆の反応を見せた三人に戸惑いを隠しきれない私……。顔をキョロキョロさせて未だ警戒を解こうとしていないそんな私に佳苗さんが優しく説明を加え始めた。 「瑞穂さんの時は仕置きを緩めにしてしまったが為に彼女は嘘をついて私達のご機嫌を取ろうとしてしまいました。結果……彼女の真意は今も分からず……今日にいたるまでダラダラと真意を確かめるべく責めを繰り返す羽目になっていたんです……」  佳苗さんの説明に横から顔を出しお嬢様も説明を加え始める。 「瑞穂ちゃんってば簡単に嘘ついちゃうから……彼女の本当の好みとか本当の気持ちとかが分からなくてどんな風に調教すればいいのか分かりかねていた所なのよ……」  お嬢様の言葉に出てきている“調教”という言葉……それが、私が覗き見た時に行っていた瑞穂先輩への責めだとするなら……と考えると、私は再び身震いを起こす。 「強くやっても、優しくやっても彼女は苦しさに負けてすぐに嘘をついてしまう……その嘘を信用して次回以降も同じように責めたら、実はその責めも好きではなかったことを知らされる……そんな事を繰り返して今に至っているって感じで、何の進展も無しで諦めようかとしていた時に貴女がココを覗きに来てくれたの♥」 「まぁ……瑞穂さんのずる賢い考えが由加里さんをここに導いたというのは、いかがなものかとは思いますが……それでも、いつかは貴女にもこのプレイを理解して頂こうと考えていた次第ですから、その手間が省けて良かったとも言えますかね?」 「由加里さんは私が雇ってきたメイドの中でも私の好みど真ん中よ! だから……早くプレイ仲間に入れたいって思っていたわ♥」 「ちょ! あ、あの! わ、私……感想を言っただけで……別に仲間になるとか……言ってないんですが……」 「えぇ。今は……でしょ?」 「……へ?」 「別に無理して入って貰わなくて大丈夫よ? ただ……調教はさせて貰おうと思ってる♥」 「ちょ、ちょ、調教って!? な、何を……するつもりですかっ!」 「あぁ……調教なんて怖い言葉を使って言ってますけど……実際は、プレイを徐々に好きになって貰えるよう段階的に体験してもらってるだけですよ?」 「へ?? 段階的に……体験??」 「綾ちゃんみたいにドギツイ責めが好みであれば、それをもっと好きになって貰えるように責めてあげるし、佳苗みたいに笑いと性感の割合いが五分五分くらいが好きであればそのように調節してあげるし……」 「要は……由加里さんの好みを探しつつ、イイと思えたプレイを皆で行ってより良く好きになって貰おうって考えているだけなんです♥」 「え?? で、でも私……くすぐりは嫌だって……」 「そりゃそうよ! だってそう思うように仕向けたんだから……」 「へっ!? 仕向けた??」 「あんな責め……余程のドMでなけりゃ好きになる訳ないじゃない! そこの変態の綾ちゃん以外は気絶するまでやられて好きになれるような人間はいないわよ?」 「お嬢様……それは……言い過ぎです。私でも……辛すぎて嫌になる事くらい……あるんですよ?」 「あぁ、はいはい。まぁ、仕置きだからとことんまで苦しんで貰って“くすぐりは怖い”っていうイメージを植え付けたのは綾ちゃんの時と同じよ。彼女だって最初は怖がってたんだから……」 「あ、綾先輩……が?」 「でも彼女は最初のその強烈な印象が忘れられなくて……優しい責めでは満足出来ない身体だったという事に途中で気付いたの♥ だから今では一番ハードな責めを好む性癖に曲がっちゃってるわ♥」 「ち、ちがっ! 私は……別に……ハードなのが好きとかではなくて……。その……」 「綾さんは……“笑い狂わされている自分”を自覚するのが好き……なのですよね? 普段、自分から笑ったり出来ないから……」 「……は、はい。そう……です♥」  綾先輩は確かに普段の仕事の最中でも食事中でも笑顔を見せる事は少ない。  口角を僅かに上げるような仕草を見せる事はあるけれど……それを笑っているとみなすかどうかで言うと微妙だ。  そんな彼女が笑わされている姿……それは想像も出来ない。  しかも、自分で笑うのではなく他人に笑わされる事を好きになったと言うのだから増々彼女の人物像が自分の感じていた人物像とかけ離れているように思え、頭が混乱しそうになってしまう。  まぁ……それを言えば、あの佳苗さんもくすぐりに笑わされているイメージなど湧かないし、お嬢様だって…… 「人それぞれ……シチュエーションや好みは違うものだから、コレと言ったプレイを決めつけるつもりはないんですけど……」 「瑞穂ちゃんの場合は嘘をついちゃうからどんなプレイを好むか未だに掴めてないの。だから……色んなシチュで回してみてるんだけど……」 「その点、由加里さんはちゃんと嫌なものは嫌だと言ってくれました。だから……由加里さんの嫌になるような事は……極力しないよう段階を踏んで好きになって貰おうかと思ってます」  仕置きでの徹底的な責めを体感した私は、くすぐりというもの自体をもう二度と受けたくないと思える程にトラウマを植え付けられたのだけど……。彼女達はどうやらまだ、私にそのくすぐりを行おうと画策している様子だ……。  勿論、これ以上の責め苦を受けたくないと思っている私は、その調教とやらを受けたくないと反論するのだけど…… 「あ、あの! わ、私は……その……くすぐりを好きになれるとは……思えなくて……その……」 「あぁ……大丈夫♥ みんな最初はそうよ?」 「で、でも! もう……あんな苦しみは……したくないというか……何というか……」 「でも、禁を犯して覗きに来たのは確かでしょ? 貴女への罰はまだ完全に終わったという訳でもないし……」 「えっ!? さっきので……許してもらえるわけじゃ……無いんですか!?」 「アレは“22時以降に部屋を出た”っていう罪に罰を与えただけよ? この部屋を覗いたっていう罰はまだ下してないわ♥」 「そ、そ、そんなっ!! あんなに苦しんだのにッっ!?」 「ココを覗いた罰は……もう分っているでしょうけど、これから行う段階的な調教に嫌がらずに参加する事よ。もしもそれを拒否したら……鉄の掟の3つ目にも抵触する事になるから……瑞穂ちゃんの様にその罰も加えなくちゃならなくなるわ……」 「掟の……3つ目って……」 「お嬢様の“命”を決して蔑ろ(ないがしろ)にしてはならない。ですよ? 覚えているでしょう?」 「っっ!?」 「本当は、1つ目と2つ目の掟を破ってる時点で自動的に3つ目の掟も破ってるんだけど……まぁ、いいわ……今は目を瞑ってあげる♥ ただし、ここからは貴女に拒否権は与えないわ! この罰は必ず受けて貰う……」 「そ、そ、そんなっ!?」 「あぁ、でも安心して? 由加里さんがこれから嘘をつかずに正直に感想を言ってくれるのであれば、一通りのプレイを経験させた後……それでも嫌なら無理に誘わないつもりだから。あくまで体験してもらいたいっていう想いで強要しているだけに過ぎないんだから……」 「正直に……嘘をつかずに……?」 「そ♥ 嫌がる相手に無理やりプレイを強要するって言うのも……嫌いじゃないけど、でもやっぱり最後は了承のうえで皆がプレイするのが一番だと思っているの。だから、気に入らなかったら無理強いはしないわ……逆に、嫌であれば私達の昼間の抑止力として睨みを利かせて貰いたいって思ってる」 「抑止力?? な、なんですか? それ……」 「佳苗からも聞かされたでしょう? 私達が定めてる裏の2つの掟の事……」 「あ、あぁ……そういえばさっき……」 「興味が無いのであれば別に強要はしないわ。でもくすぐりの事を何も知らずに一方的に拒否されるのは私は嫌なの。責められる側の色んなシチュを体感して貰うのは勿論、責める側も体験してもらって……それでも嫌だと言うのであれば私は別に無理強いはしないわ。その時は逆に私達のプレイしたい欲を抑える側に回って貰いたいの。放っておいたら……朝から晩までやりたくなっちゃうから……」 「く、くすぐりが……嫌いでも……私の事……辞めさせたりしないんですか? 理解出来なくても?」 「辞めたいというのであれば仕方が無いとは思うけど……そうじゃないのであれば、出来ればこの屋敷に留まって欲しいと思ってるわ。理解されないのは残念だけど……でも、当初の目的は私達のプレイ欲を抑える抑止力として新人を雇うっていうのが本筋だから……」 「わ、私は……てっきり……理解出来ないなら辞めさせられるのかと……」 「そんな訳ないじゃない♥ これはあくまで私達の勝手な押し付けに過ぎないプレイなんだから……。それが理解出来ないのは当然だろうし……無理に理解してもらう必要も無いの。ただ……禁を犯した罪は償って貰うっていう体でくすぐりプレイの事を知ってもらいたいって思っているだけの事よ♥」 「じゃ、じゃあ……好きにならなくても……ココに居させてもらえるんですね? 今までと変わらずに……」 「えぇ。追い出す気もないがしろにする気もさらさら無いわ。むしろ欲を抑えられる人が居てくれて重宝するくらいよ♥」 「そ、そうですか……それは……良かった……」 「実際……くすぐられて分かったでしょ? こんな風に拘束されてくすぐられる事が……どんなに辛い事なのか……」 「……は、はい。とっても……苦しかった……です……」 「今はどう? 苦しさから解放されて……これからの説明も受けて状況だけは理解できたと思うけど……」  お嬢様にそのように聞かれ私はハッとなり自分の今の感情が先程とは違う感情を持ちつつあることに気付かされる。  これからどうなるのか? どんな責め苦が続けられるのか? 何を言えばいいのか? 自分のこれからはどうなってしまうのか……  そのような不安と緊張を強いられていた先程までと違い……今では気持ちは落ち着いてしまっている。  まだ拘束されたままだというのに……なぜかお嬢様や佳苗さんの言葉を聞いて安心してしまっている自分が居る。  そして……その緊張が解けた状態で先程の責めを思い返すと……なぜだか、胸の奥がウズウズと物欲しそうに疼いている事が自分でも感じ取れてしまう。  あの時、あんなに嫌だと思えた刺激が……時間を置いて休ませて貰った今……心に安心が生まれた今は……なぜか物足りなさを覚える程に腋や足の裏が疼きを見せ始めている。  これは一体何なのか? 今でもくすぐられるのは心の底から嫌だと思っているのに……  彼女の話を聞き終えた途端に緊張が抜け……途端に、体中が熱く疼きを帯び始めている。  意識すれば意識する程にその疼きは顕著になっていき……私の“拒否したい”と思っている感情に揺さぶりを掛けて来る。  “本当は……くすぐられたいって思っているんじゃないの?”   そのような声が聞こえてきそうになる……  でも私はその言葉を掻き消す様に首を横に振り、お嬢様の問いに素直じゃない言葉を返してしまう。 「か、変わりません。やっぱり……くすぐられるのは……怖いというか……不安というか……」  決して嘘をついたわけではない。不安というのは言葉通りであるし、怖いとも思っている……  しかし、言葉の真意は実はさっきとは微妙に違っていた。  さっきまでは……身の危険を感じての“怖い”であったが、今言った怖いは……自分が本当はくすぐりの事をどう思っているのか知ってしまうのが“怖い”であり“不安”でもある。  そんな思いを込めた言葉だったが……お嬢様をはじめ綾先輩や佳苗さんには、その真意が見透かされているようで…… 「そう? じゃあ今度は……怖がらなくて良いような“気持ちの良いくすぐり”っていうのを……私達が味合わせてあげようかしら♥」  そのように告げると3人は示しを合わせる様に私の前に立ち、それぞれが手を目の前に出して私に迫る様にその手をくねらせ近づき始める。  私は……その姿を見て「ヒィ!」と小さな悲鳴を上げるのだけど……  なぜか胸の奥底では緊張とは別の……期待めいた何かが鼓動し始めている事に気が付かされる。  またあの指達に……無防備にされた身体を……くすぐられる……  それを恐ろしいと思う一方で……  お嬢様の言う“気持ちの良いくすぐり”というのがどんなモノなのかを期待してしまっている……愚かな自分が居る事に……気付いてしまうのだった……


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