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新人女スパイ拷問③

3:拷問  指の関節だけをクネクネ動かし……さも何かをくすぐっているかのような仕草を取って待機していた人間の赤ちゃんの手よりも小さな機械式のくすぐりハンド達……  それらの中で最初にケイの身体に触れたのは枷によって固定されている足首の横に開いた穴から這い出してきた手達だった。  足首の真横で指をワキワキさせて出番を待っていたその手達は、プログラムの指示が下るとケイの足裏の方へと腕の代わりとなっているケーブルを伸ばし、足首の側から足裏を覗き込むように手を這い出させ、獲物を狙う蛇の様に足裏の状況を確認した後狙いを付けた箇所へ食らい付くかのように手を伸ばしてその部位を触り始めた。 ――コチョコチョ♥ コチョコチョコチョ♥  最初に足裏に手を伸ばしたのは左右それぞれ二本ずつだけの手だったが、その二本の手はお互いの触る箇所が干渉しないよう距離を空けてケイの足裏を指先が僅かに触れるくらいのタッチを維持しながらくすぐる行為を開始した。 「むぐふぅぅぅぅっっっ!? ぶふぅぅぅっっっ!!! ぐぶふふぅぅぅっっ!!」  片方の手はケイの足指の付け根付近を……もう片方の手は彼女の土踏まずの部位を……と、それぞれ足裏の中でも触られる感触がまるで違う箇所を同じような手つきで刺激し、足裏を隠す事も逃がす事も出来ないケイのそれに容赦のない刺激を送り込んでいく。  ケイはその刺激が送られるや否や身体に電気が流されたかのように大きく全身をビクつかせ、ボールギャグによって発声を制限された口からくぐもった悲鳴を吐き出し始める。 「あぁ……け、ケイさんの足が……必死に暴れようとしてる……。や、やっぱり……あの手のくすぐり……相当くすぐったいんだ?」  足指をパタパタ動かして嫌がる仕草を見せる事しか抵抗のしようがないケイの足を見てユウは、その機械によって動かされている手のくすぐりが自分の想像では補いきれない程こそばゆく感じているのだろうと察し、思わず自分の足裏に意識を向けて刺激を想像し身震いを起こしてしまう。  もしもあの手が……ケイではなく自分の足裏をくすぐっていたら……と、想像するとまだ何もされていない筈なのに足裏がムズ痒く感じられる。 ――コチョコチョコチョコチョコチョ♥ コチョコチョコチョコチョコチョ♥  虫が餌を求めて右往左往するかのように虫の脚程の小さしかない機械の指達はケイの足裏を縦横無尽に這い回って敏感な皮膚を触り回していく。   『むぅぅふッっふっ!! むぐっっふふふっっぅふふふふふっふふふふふふぅぅぅぅ!!』  足の指をどんなに曲げても、足全体を上下左右に動かして逃がそうとしても……機械の手のくすぐりから逃れることは出来ない。それが分かっていながらもケイはどうしてもその刺激から逃げたいと足に力を込め無駄な足搔きを続けていく。  そんな彼女の抵抗を見てからの反撃なのかは定かではないが、今まで足裏を狙いつつも静観するように待機していた他の機械の手達が突然、残された餌にかぶり付く魚たちの様に足裏へ貼り付くように距離を詰め、元々くすぐっていた2本の手を邪魔しないよう隙間を縫って足裏をくすぐり始めた。 『ぶほぉぉぉっっっほほほほほ、おごほほほほほほほほほほほほほほ、んぎびぃぃぃぃぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ、ぶぶぶぶばぁぁっっ!!?』  カカトのすぐ下に開けられた穴から這い出していた無数のくすぐりハンド……足裏を狙う為に出て来ただろうその手達は、合図が送られるや否や一斉にケイの無防備な足裏に群がり、我先にと隙間を埋める様に足裏の各所に配置されていき何の遠慮もなくケイの足裏をくすぐっていく。  足裏全体を同時に責められ始めたケイは、それまでの苦悶する反応とは異なりワントーン音階の上がった悲鳴を喋れない口から発し、今まで以上に顔を横に振り、髪を乱れさせながらもくぐもった声で大笑いを発し始める。  真上から見せられている映像である為、実際に足裏にどの程度機械の手が貼り付いているのか想像する事しかできないユウだったが、餌の入れ食い状態であるかのように蠢いているその手の数を見るに相当な数が足裏をくすぐり回しているのだろうという予測は出来た。 『ウフフ♥ こういう拷問……初めて見るでしょう? 見た感想はどう? スパイのお姉さんはこの楽しそうな拷問を見て……どんな風に感じたのかしらぁ?』   天井に備え付けられていたカメラに手を伸ばしそのように聞いてきた赤髪の女にユウは苦虫を噛まされたような顔を向け口を引き攣らせながら言葉を返す。 「た、楽しそうに……見える訳がないじゃないですか! 何なんですかっ! この拷問はっ! ふざけているんですか?」  カメラの留め具を外しそのカメラを天井から外した赤髪の女は、そのままカメラを自分の方へと引き寄せ改めてケイの全身を上から順にアップでユウに見せつけていった。 『ふざけてなんていないわよぉ? これは“くすぐり責め”っていう……れっきとした拷問よ? ほら……ケイちゃんの顔を見れば分かるでしょう? 楽しそうに笑っているように見えるけど……苦しそうにも藻掻いているみたいでしょう?』  ケイの顔にカメラを向けその笑いながらも苦しんでいる様子をアップにしてユウに見せつける赤髪の女は、徐々にそのカメラを下へと向けていきケイの身体を舐め回す様に撮影しながら言葉を続けた。 『ワキとか……足の裏とか……触られたら思わず笑いが込み上げてきてしまうような、人体の弱点とも呼べる箇所をこんな風に晒させる様に拘束して……抵抗も何もできない様にした身体を血の通っていないこの機械の手にくすぐらせるの♥ 機械の手は人間がやるのと違ってプログラム通りに動いてくれるから……時々刻々変化する弱点を正確に捉え……対象の女性を確実に笑わす事が可能なの♥』  所々切り裂かれた跡の見えるスニーキングスーツ……  そのスーツを上から徐々に降りていくようにカメラが映していくと、突然大きな二つの膨らみに映像が埋め尽くされる。  少しカメラを持ち上げるとその膨らみがケイの胸である事が分かり、彼女の胸部が自分の胸部とは別ものであるほど豊満である事をそれを見てユウは悟る事となる。 『貴女は……自分の意志とは関係なく、無理やり笑わされるっていう行為が……どれほど苦しいものなのか……想像できているかしら?』  胸の横や胸の下……そういう箇所に複数の切り傷が加えられているのを確認しながらカメラは更に下へと移動していく。 「そ、想像って……そんなの……経験したことありませんから……分かる訳が……」  穴が開くように広く切り込みが入れられた脇腹……様々な方向に線を入れられるように切られた腹部……そして股のラインに沿って入れられた長い切り込み……。それらを見て太腿……膝……とカメラが撮影した後、いよいよ複数の機械音が激しく鳴り響いている足の部位へとカメラが回り込む。 『そうよね? 普通に生活していればそういう経験なんて無いんだから……理解は出来ないわよね?』  キチンと両足を並べた後に足首の上に被せたであろう頑丈そうな鉄塊の枷……それらがケイの暴れ出したい欲求を込めた抵抗をしっかりと受け止め彼女の足を無抵抗状態に維持し続ける。 『だったら……少し教えてあげる♥ くすぐり責めという拷問が……いかに人間の正気を奪う拷問であるかを……分からせてあげる♥』  そしてカメラが足の甲を映しつつ足先へと進み……いよいよその裏側であるケイの足裏にカメラを移動させると…… 「ッっ!? ひっっひぃぃっ!?」  上から見ただけでは想像すらできなかった光景がユウの目の前に広がった。  もはやケイの足裏の肌が一切見えない程埋め尽くした、機械の手、手、手っ! 隙間さえも存在しないようぎっちりと埋め尽くされたその光景はユウを絶句させる。  一体いくつの手が蠢いているのか数えることも叶わない程大量の手が群がっているその姿は……手の白さも相まってさながら蠢く白い靴を履かされているようにも見えた。 『今までの拷問のデータから、ケイちゃんの足裏は常人の1.3倍ほど感度過多が見られたわ。つまりは普通の人よりくすぐったがり……って事よ♥』 「く、く、くすぐっ……たがり?」 『だからこの二日間私はケイちゃんの足裏をもっと敏感にすべく徹底的な性感調教を足裏に施したの♥』 「せ、性感? 調教?? な、な、何ですかそのいかがわしそうな言葉は!」 『性感調教って言うのは……その名の通り、その部位を性的に敏感にしてしまう調教の事よ♥』 「うぅ!? せ、性的に……敏感に?」 『本来なら……足裏を触れただけでイってしまう位性感を植え付ける作業を行うのが本当なんだけど……彼女の場合は“拷問にかける”っていう目的があったから……その調教もわざと中途半端に行ったわ』 「ちゅ、中途半端!?」 『触られても性的な快感を得られることなく……ただただくすぐったく感じるだけに留める……そういう調教を足裏に施したの♥』 「ただ……くすぐったく感じる?」 『そう! だから今の彼女は……常人の3倍程度足裏の感度が鋭くなっているわ♥ それが何を意味するか……想像できるでしょう?』 「3倍って……え? さ、3倍!?」   『彼女が今どう感じているかは彼女自身にしか分からないから正確に例えられないけど……まぁ、無理やり例えるなら……こういう服の切れ端から解けてる“糸くず”あるじゃない?』 「え、ええ……」 『少しの風にすらなびいてしまうくらい細すぎてひ弱なこの糸くずに触られても……その刺激を知覚できるくらいに敏感になっているわ♥』 「糸くずって……こういう糸くずの事ですよね? こんな吹けば飛ぶような……」 『そう。そんな糸くずでも……足裏をそれで触られればケイちゃんはゲラゲラ笑ってくれると思うわよ? そんな風になるように調教したから♥』 「ひぃっ!? そ、そこまで敏感にさせておいて……こんなに沢山の手にくすぐられたら……」 『そうよぉ♥ ケイちゃんは今地獄を見ている筈よぉ? 風が吹いてもこそばく感じるはずの足の裏を……これだけの数のコチョコチョマシンにくすぐられているんだから……』 「だ、だ、だめです! 今すぐ止めてあげてくださいっ!! 見てるだけでも……寒気が……」 『見てぇ? ほら……ケイちゃんの暴れっぷり♥ 凄いでしょ?』 「は、早く止めてあげてください! でないと……ケイさんが……」 『フフフ♥ 止めてあげたいでしょう? ケイちゃんだって止めて貰いたいって心の底から思っている筈よ?』 「だったら今すぐにッっ!!」 『でも止めてあげないの♥』 「ッっ!!?」 『可哀そうだから止めてあげたら……拷問にならないから♥』 「そ、そんな事言っている場合ですかっ!! このままじゃケイさん……本当におかしくなってしまいますよっ!」 『頭がおかしくなるまで笑わせ続けるのが“くすぐり拷問”の本懐よ♥ 徹底的に笑わせ続けて、もう二度とこんな拷問を受けたくないって思いを植え付けて……抵抗の意思も完全に削いでしまってから我々が聞きたいことを喋って貰う……。そういう拷問なのよ♥』 「うぅ! は、早く……止めてあげてくださいっ!! これ以上は……見てられません!」 『あらあら……目を背けちゃ駄目よ? これはまだ始まりに過ぎないんだから……』 「えっ!? は、始まりに……過ぎないって?」 『彼女に施した敏感になる調教は……足の裏だけに行った訳ではないのよ?』 「あ、足の裏……だけじゃ……ない??」 『ほら……女の身体って……沢山あるじゃない? こそばされたら……くすぐったく感じるトコが……』 「くすぐったく……感じる……場所っ!?」 『貴女だったら……何処をコチョられたら弱い? やっぱり……ワキ?』 「はうっ!? わ、ワ、わきっ!? ……ワキ……うぅぅ……」 『可愛いお胸の横とかも……コショコショ触られたら……こそばいわよねぇ?』 「ひっ!? 胸の横っっ!? い、いやっ!! 想像させないでっ!!」 『他にも首筋とかぁ~脇腹とかぁ~鼠径部とか……膝の裏とかもマニアックだけどくすぐったく感じるポイントなのよねぇ~~♥』 「ちょっ! やめて下さいっ!! 想像するだけでムズムズするっっ!!」 『フフフ♥ 中々良い反応を見せてくれるじゃない? これは後からの調教が楽しみね♥』 「うぐぅぅ……うぅ……」 『まぁ、ケイちゃんにはそういう調教を仕込んだから……ぶっちゃけ足の裏だけじゃなく何処の部位でもくすぐったく感じるようにはなっているのよね~?』 「足の裏だけじゃなく……何処でも!?」 『だって……足の裏だけじゃ物足りなくなるでしょう?』 「も、も、物足りなくって……誰が……そんな事を思うんですかっ!?」 『誰って……それは勿論…………』 『私に……決まってるじゃない♥』  手に持っていたカメラを再び天井の留め具に付け直し、映像を天井からの視点に戻した赤髪の女は手に持っていたリモコンの緑色に光ったままになっていた“開始”のボタンを素早く二度押した。  すると、その信号を受け取った寝かせ台は、彼女に“ピピピッ!”と返事の様な電子音を返し、ずっと待機状態にあった他のくすぐりハンド達にようやく「本番を行え」という指示を下し始めた。 「ひっ!? 嘘っっ!! 嘘でしょ!?」  電子音が鳴った直後、ケイの身体のラインに沿って待機していた無数のくすぐりハンド達が一斉に彼女の身体に狙いを定め……そして次の合図を待たずしてそれらがケイの身体へ次々と着地を始めた。  そして、それらの手はケイの肌に指先が触れると有無を言わさず指先をコチョコチョと動かして彼女の無防備な身体中をくすぐり始める。 『ぼがびゃっばぁぁぁっっ!!? ごががぁぁああぁぁぁぁあっあっあっあっあっあぁぁあぁあぁぁぁぁ!!』  身体の側面という側面を埋め尽くしたくすぐりハンド達! それらが一斉に指を蠢かせケイの体側部をくすぐり犯し始めたものだから、ケイは身体を大きく仰け反らせるように腰を浮かせ悲鳴なのか笑いなのか分からない程の壮絶な声を口枷の奥から吐き出し始める。  服を破られ剥き出しにされている腋や脇の下、そして脇腹……そういうくすぐりの刺激に滅法弱い箇所は勿論の事、胸の横やアバラ骨の付近……首筋や内太腿に至るまで……ありとあらゆる箇所に手が這い回りその小さな指を巧みに操って敏感な皮膚をなぞり犯していく。  その光景がどれだけおぞましい見た目になっているか……それはユウの恐れ慄く姿を見れば一目瞭然である。  手で身体を隠す様に守り、膝をガクガクと震わせて立っているのもやっとであるかのように壁にもたれかかる。  震えているのは膝だけではない。体中が寒さに震えるかのようにガタガタと震えており、その映像の凄まじさを身体で語ってしまっている。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!  体側部全体を隙間なく埋め尽くして、担当された箇所をくすぐり続けている機械の手達だが、それらの手は何も体側部だけに担当が割り振られているという訳ではない。  例えば、豊満な胸の膨らみの頂上付近……首下の鎖骨辺り……お腹の中心周り……太腿の上や膝の頭など……そういった箇所にも少数ではあるが担当する手が割り振ってあり、それらは他の手よりも更に腕を伸ばしてそういう場所に手を届かせている。 ――こちょこちょこちょこちょこちょこちょ、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ、こちょこちょこちょ……  それらとは別に特殊な命令をプログラムされた手も存在する。  磔にされているとはいえ裸ではなくスニーキングスーツを着せられた状態で拘束されているケイ……  直に触られるよりもスーツの厚みがある分そのスーツの上からくすぐられれば、刺激も僅かに軽減されるものだが……それら特殊な任を与えられた手はそのスーツの中へと潜り込み、スーツの中から彼女の肌を直接くすぐっている。  脇の下に大きく開けられたスーツの敗れ箇所から入り込んでいたり、所々に入れられているナイフでの切り傷から侵入してきたり……  きっとその為に空けられていたであろうスーツの破れ箇所を狙って手が入り込んできて、スーツに守られていないケイの素肌を内部からくすぐり回している。  それら内部からくすぐっている手の様子は、スーツの膨らみ方やその動きを見る事でどれだけ激しくくすぐられているかを知ることが出来る。  身体のラインギリギリに張り付くように密着していたスニーキングスーツの様々な箇所が蛇が侵入して来たかのように細く丸く膨れ、それがのたうつ様に動き回ってスーツ内部を動き回っている様子が見て取れる。  無論……動き回っているだけでなく、手がくすぐている様子も見て分かるものだから……ユウはその光景を見ただけでもその場に座り込んでしまう程の嫌悪感に苛まれてしまう。 『びゃぎゃあぁぁ~~びゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ、ぶぎひゃ~ふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!! やべでぇぇっっべべべべべべべべべべべべ、んげげげげぎびびびびびびびびびびびびびびびび、んごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!』  手や足を動かそうとしたり腰を浮かせて寝かせ台に叩きつけたり……首が折れるんじゃないかと思える程に横に振り回したりと、必死に抵抗の意思を行動で見せようとするケイだが、その行動を行ったからお言って身体中を埋め尽くしているくすぐりハンド達から逃れる事は出来ない。  腕を降ろして腋へのくすぐりを防御したいと思っても、足を振り乱して足裏へのくすぐりを振り払いたいと思っても……手も足も頑丈に拘束されている彼女はその欲求を満たす事は決してない。  ただただ……無防備な身体をくすぐられ続け……  笑いたくもないのに……無理やり笑わされる事を繰り返されるだけだ。  その光景を目の当たりにし、赤髪の女の言う“くすぐり拷問”という言葉のヤバさが十二分に伝わったユウは、このままこの部屋に居てはダメだと脚に力を込め再びその場に立ち上がった。  そして科学的な塗装がなされたその部屋を注意深く観察し直し、何処かに抜け道の様な物はないかと自分の脱出路を探し始めた。 『フフフ♥ やっぱり……拷問はくすぐりに限るわぁ~♥ だってこんなに綺麗で顔の整った女の子が……普段見せないような笑い方でだらしなく悶える姿を見れるのだもの♥』  冷静になり注意深く観察してみると、真っ白い天井の隅に取っ手のついた排気口らしき物が備え付けられているのが見えユウはそれを見つけるや否やその排気口の下へと歩を進め天井を見上げながら軽いジャンプを繰り返した。  天井まではユウの伸長では遥かに高さが足りず、排気口の取っ手すらもジャンプしても届かない。どうにか足場を作ってその取っ手へ飛びつきたいのだが……あいにく部屋には一人では動かす事も出来ない黒い機械と……今でも映像を流し続けているモニターしか置いていない。  これでは天井に手を届かせることは敵わない……とユウは諦めかけるが…… 「あっ!? モニターを置いてるテーブル!! コレを使えばっ!!」  モニターに高さを持たせるために置かれていたテーブル……それに目を付けたユウは早速モニターの前へと戻りモニターを払い除けようと手を添える。 『あぁ、そうそう。その部屋からは出ようとしない方がいいわよぉ? たとえその部屋を出られても……屋敷には罠を張り巡らせてあるし……さっきの貴女の行動でその罠の電源もしっかり入っているから、何処へ逃げても捕まるわよ?』  赤髪の女の忠告を耳に入れつつも、ユウはテーブルの上に置かれたモニターを勢いよく払い除けそれを床に落とす。  床に落ちたモニターはそのまま通信が不安定になるのを体現するかのように砂嵐を増やしつつ雑音を響かせ始める。その雑音の合間からは赤髪の女の不敵に笑う声が聞こえ、完全に通信が聞こえなくなる前にこの様な言葉を呟いてモニターは最後を迎えた。 『ザザ……ザザーーザッ……ケイちゃんも同じような事をしてこの部屋から出ようとしたわ♥ でも彼女は出られなかった。貴女は……果たして……この部屋から出られるかしらね? フフフ……ウフフフフフ……ザザ……ジジジジィィ! ザザザ!!』   ユウはその声を無視するように小さなテーブルを抱え込み、排気口の下へとそのテーブルを運び込もうと持ち上げた。  すると…… ――カチッ!  テーブルを持ち上げた瞬間、そのテーブルが置かれていた床の部分から何かしらのスイッチが入る音が聞こえ、ユウはそれが罠かもしれないと悟りすぐにテーブルを元の位置に戻す。 ――ブシュゥゥゥゥゥゥゥ!!   しかし、テーブルを元の場所に戻しても罠の進行は止められなかったようで、細かい穴の開いた壁から一斉に真っ白な煙が吹き出しそれがあっという間に部屋を覆い始めた。 『が、ガス!? まさか催眠成分の入ったガス!?』  その煙を見て瞬時にそのように悟ったユウはすぐに口を閉じガスを吸い込まないよう息を止める。  そして、その口を開けないよう気を配りながらテーブルを移動させ排気口の真下にそのテーブルを配置した。 『テーブルの上に乗って……ジャンプすればギリギリ届くかもしれない。息が続いている間に……それを行わなきゃ……』  息を止めている故に徐々に肺が息苦しさを感じ始め焦りの色を浮かべるユウだったが、ガスらしき煙はみるみる内に部屋へ充満していきもはや口を開けば必ずその煙を吸い込んでしまうという状況まで追い込まれていた。  すぐにテーブルの上に手を突き、上る途中で身体のバランスを崩さないよう注意を払いながらもその台の上に立ったユウは、踏みしめた足に力を込めすぐさまジャンプする体制を整える。そして…… 『届けっ!』  という内なる掛け声を放った後に脚に強い力を集中して踏み込んだユウは、その勢いのまま足を宙に浮かせ取っ手めがけて身体を投げ出した。 ――ガシッ! 辛うじて伸ばした右手だけがその取っ手の端に僅かに掛かり、ユウは自分の背丈の倍はあったであろう高さにあった取っ手を掴む事に成功した。 『よし! 次はこの南京錠の開錠だけっ!』  天井に備え付けられた排気口は掴めば自動的に開いてくれるような甘い仕掛けにはなった居なかった。  簡易的ではあるが裏口の扉と同じような南京錠が一つ付けられており、それを開錠しない限りは排気口の蓋は開かないよう施されていた。  ユウは右手で取っ手を掴みつつ反対の左手でポシェットの中にしまってあったにピッキングツールを取り出し、宙にぶら下がったままそのカギの錠を外そうと左の手をその錠の穴へと伸ばしていく。  軽いとはいえ身体の全体重を支えている右手……そして呼吸を指定はいけないという絶望的な制約が課せられた状態で……ユウは懸命に左手を伸ばしてピッキングを開始する。  無論……錠を手で支える事や動かないよう固定する事も片手では無理な状態であるが故、錠が動いてしまって上手くピッキングが捗らない。  そうしていく間にも体重を支える右手は痺れはじめ、呼吸も苦しくなっていく……  しかし、ピッキングの腕だけは自信が有ったユウは、この簡単な構造の錠を外すのに後数秒もかからないと自覚出来ていた。  数秒もかからずに鍵が外せれば、呼吸が限界を迎える前にこの排気口から脱出することが出来る! 右手の支えもまだ余裕がある……これはいける!  と、その様に確信を持った瞬間―― ――ムニョ♥ 『んぐひっ!? な、な、何?? 右の腋が……今、何かに触られたっッ!?』  体重を支えていた右腕の付け根付近にあまりにムズ痒い刺激が走り、思わず錠から目線を外して自分の右腕に目をやると……  そこには……何処から現れたのか分からないが、先程ケイの身体をまさぐっていたのと同じタイプの機械の手がユウの右腋部分をしっかりと掴んでいる様子が目に留まった。 『あうっっ!? 嘘っ!! こんな時にッっ!!』  腕の部分を辿ってその手の現れた元凶を探ると、その手はあのテーブルが設置してあった箇所に一つだけ開けられていた穴から這い出してきていた事が分かりユウは顔を青ざめさせる。  幸い……穴は一つしか開いていない様子である為これ以上手が増える事は無いとは思うが、それでもこの唯一の手が彼女の腋を掴んでいる事は変わらない。  その手が腋を掴んだ後に何をするか等……先程の映像を見ていたユウに分からない筈がなく……  その手がこれ以上動き出す前に錠の鍵を開けないと取り返しがつかないことになる……と考えを改めたユウはすかさず視線を錠へと戻しピッキングの完了を目指して左手を動かし直した。  このまま何もせずに見逃してもらえないだろうか……  と、心の中で願いを込めて錠を外しにかかるユウだったが……  機械の手はそのような彼女の願いを聞き届ける事は無く……  ユウが錠を外しに取り掛かったと見るや、その手も無慈悲な行動を開始した……。


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