ショーダウン(リメイク)⑩
Added 2021-10-08 13:52:05 +0000 UTC10:課せられる仕置き 「さて……鈴音ちゃ――さん? 準備は整ったようですのでそろそろお仕置きの説明をしてもらいたいと思っているのですけど……」 危うく鈴音ちゃんと言いかけ慌てて訂正する智恵理だったが、その失言を聞き逃さなかった鈴音は再び不機嫌そうな顔を浮かべて智恵理の方を睨みながら、スタッフから手渡されたヘッドセット式のマイクをカチューシャ代わりに頭に装着する。 まるでアイドルライブの時に付けるかのようなそのヘッドセットを小慣れた手つきで音量調節し、鈴音は改めて智恵理のマイクに言葉を返す。 「あんたワザとやってんでしょ? 私の方が年上だってのに……(ブツブツ)」 マイクのヘッドと口の距離を微妙に調節しながらそのように返した鈴音は、音声がしっかりとスピーカーから出ている事を確認すると智恵理の方を見直してブツブツと文句を零しながら最後には諦めるようにハァと溜息を吐く。 「で、で? 今日はどんなお仕置きを……椿嬢に行うんでしょうか? そろそろ皆さんも知りたい頃だと思うのですが……教えて貰えますか?」 智恵理の催促に鈴音は再び息を大きく吐き、仕方ないわねと言わんばかりの笑みを綾香に向ける。 「まぁ……教えてあげなくもないけど……時間もまだまだ沢山あるし……折角だからココは仕置きを受ける彼女に応えて貰おうかしら?」 「えっ? わ、私に?」 突然の指名に素で驚かされた綾香は突然の展開に失い、戸惑いと驚きの入り乱れた複雑な表情を浮かべて足元に居る鈴音の顔に視線を落とす。 「私がこれからあんたにどんな仕置きを施すと思うか……今から3つヒントを出してあげるから当てて見せて? もし答えが合っていたら……まぁ、最初だけは手加減してあげても良いわよ? これも余興だと思って気楽に応えて頂戴ね♪」 「あっ……へ? は、はぁ……」 どうやら仕置きの内容を自分に当てさせたいと彼女は思っているらしい……と思考が巡った綾香は途端に仕置きを受けるという緊張が抜けていってしまう。 何を言い出すかと思えば、仕置きの内容を当てさせるクイズ大会を開こうとし始めるではないか…… 確かに元来この時間はショーの時間であるからそういう趣旨の遊びをしても問題はないのだが、これからどんな酷い目にあわされるのかと不安と緊張を強いられていた綾香にこんなお遊びの様な提案がなされればそりゃあ張った気も抜けてしまうのが当然だ。 その提案で綾香は思わず力が抜ける程の息を吐く事となる。 『なんだ……迫力はあっても結局見た目通りのお子様発想しかできない子なのね……』 と、綾香は自分が過剰に不安がっていたのを馬鹿みたいだと感じ始め、いつもの強気な姿勢を取り戻していった。 「いい? じゃあヒントを出すわよ?」 自分の出すヒントで果たして分かって貰えるか楽しみだ……と言わんばかりに無邪気な笑顔を浮かべる鈴音に、綾香は目を瞑って「どーぞ」と無関心そうに返事を返す。 「私はこれからあんたの身体に……“とある刺激”を加えて、あんたの事をと~っても楽しい気分にさせようと思ってるの。その刺激を受けたあんたは……それはもう、キャラが変わったんじゃないかってくらい楽しそうに振る舞うと思うから、お客さんもあんたの普段見せないそんな姿を見て凄く新鮮に楽しんでもらえると思うの♥ 勿論それを見て私も……楽しませてもらうつもりよ?」 最初のヒントという事で具体的なワードが出て来るんだろうと期待していた綾香だったが、鈴音の口から出された言葉はあまりにも抽象的過ぎて答えの想像が進まず、逆に煙に巻かれるように謎が増えてしまう始末だ。 「楽しい気分にする? 何よそれ? 馬鹿じゃないの? そんな気分になるわけないじゃない! こんな拘束されて……」 「ううん、なるわ……必ず。まぁ……私はあんたじゃないから実際楽しい気分になっているかどうか本心は分かりかねるけど……でもあんたは少なくとも楽しんでるって“思わせるような態度”を取る事になる」 答えの本質には沿ってはいるだろうが最初のヒントとしてはあまりに隠された情報が多すぎて綾香の想像の中では真の答えとは真逆のプレイが頭に浮かんでしまう。 「い、意味わかんない! 私がそんな態度取るわけないでしょ? 楽しくもないのに……(楽しい気分に~とか言ってるけど……まさか、結局アレじゃないでしょうね?)」 嫌な予感を感じながら自分のパックリ開いた胸元に視線を落とす綾香……その顔はほんのり赤みを帯び、自分で想像してしまったその罰のいかがわしさに激しい恥ずかしさが込み上げる。 「ヒント二つ目……靴を脱がして裸足にさせたのには意味が有るわ。本当は上の方もコッチの方で何かしら露出させるような服を着せたかったんだけど……でも、あんたが着てる服が十分に露出してるから上着はそのまま着せてあげたの♥」 「露出……? フン! やっぱり……そういう趣旨で私をここに縛ったってわけね?」 二つ目のヒントが服の露出の話題に至った瞬間綾香は自分の想像した答えに確信を持った。 「あらぁ? もしかして……分かっちゃったぁ?」 「こんな……手とか足を拘束してヤることなんて一つじゃない! あの変態女はさっきはそういう事はシないって言ってたけど……変態の言葉なんて宛にならないわね! 変態なうえに嘘つきなんて最低じゃない!」 「まぁ……お嬢が変態である事は否定しないけど……。でもあんたは何か勘違いしてそうね? まぁいいわ……ヒント3つ目を出すわよ?」 「勝手にどうぞ! 想定の範囲内過ぎて答える気も失せそうだわ……」 綾香は呆れるような息を横に吐き、興味を失ったような表情を作る。その顔を見て鈴音は何やら不穏な笑みを浮かべながら次のヒントを口にし始める。 「ヒントその3……。あんたはこれを子供の時にも受けた記憶がある筈よ? 親からとか……同級生からとか……そこの恋人さんから……とか?」 「うぐっ! 恋人って……夏姫の事を言ってるのかしら? そういう事も調べてるのね……あんた達……」 「あら……やっぱり恋人関係だったの? 怪しいと思ってたのよねぇ~~♥ 甲斐甲斐しく介抱したりしてたし……。あ、でも……私はそういう関係……否定はしないわよ? お似合いじゃない♥ そっちの子も可愛いし……」 「う、うるさいわね! 関係ないでしょ! そんな事……」 「フフフ……まぁ、そういう親しい関係の人しか行わないような事しか……私は強要しないわ♥ だから……ちょっと安心したでしょ?」 「何が安心よっ! 子供の時からそんな事してれば犯罪じゃない!」 鈴音の出した3つ目のヒントは綾香の想像した答えで当てはめると恐ろしい勘違いを生んでしまう。それは他人でなくても親子関係でも行えば犯罪になりかねない行為である。真の答えを知っている者からすればただのスキンシップだと思うのがほとんどだが、答えを知らず勘違いしている綾香はそのヒントを出す鈴音が異常そのものに思え声を荒げてしまう。 「そう? 私は親とか友達に散々されたわよ? そこのお嬢に至っては逆に私にアレをされたくて、いつも私の事ワザとらしく煽ってくるの♥ 私が……泣くまでやめてあげないくらい容赦ないって知ってるくせに……ホント変態よね?」 鈴音の言葉に麗華は顔を真っ赤にして慌てて手をアワアワさせた。そして自分の顔を扇子で隠し恥ずかしさに悶えるように身体をくねらせ始める。 「あんた達の変態話なんてどうでもいいのよ! いいからさっさと答えを言いなさい! もう覚悟は出来たからっ!」 綾香は、この幼女にしか見えない鈴音と麗華が外でイチャイチャしている姿を想像し何とも言えない気恥ずかしさを覚える。自分も夏姫と同性同士でそういう事をしているのだから咎める事など出来ないが、それでも他人同士のそう言う絡みを想像するのには抵抗があった。 それは綾香が潔癖であるが故…… 自分たち以外の絡みは基本的に不潔だと思ってしまっているが故の弊害だった。 「へぇ……覚悟できてんだ? ふぅ~ん……」 「な、何よ! 私が人の前でそう言う事されて恥ずかしがるとでも思ってるわけ?」 「かなり恥ずかしい思いをすると思うんだけど?」 「逆よ逆っ! あんたみたいな子供がやるお遊びの様な手技に私が少しでも感じるとでも思ってる? 何の反応も引き出せなくてあんたの方が恥をかく事になるわよ!」 「反応も引き出せない? へぇ~~中々強気に出ちゃったわね……。でも私の手技がお遊びだって言われたのには我慢ならないわ。まだ受けてもない癖に……」 「あの夏姫のテクニックを受ければあんたの技なんて大人と子供くらい差があるって気付かされるわよ! きっと秒でイかされるわ、あんたみたいな生意気なお子様は特にねっ!」 綾香のあまりの過激発言に、傍で胸に手を組んで見守っていた夏姫が慌てて違う違うと手を振って焦る様を見せる。それを見た鈴音はフンと鼻から息を吐いて言葉を続ける。 「私は……ヤられる方は得意ではないからそれは遠慮させてもらうけど……でも、あんた達ってやっぱりそういう関係だったのね? あぁ……いやらしい♥」 「あんたの方が不潔な事言ってんじゃない! 何が、親にも同級生にもされた経験があるんじゃないか? よ! そんな経験あるわけないでしょ! この淫乱女!」 「淫乱? なんで淫乱って事になるのよ? アレは誰でも経験する事でしょう?」 「はっ……はぁ? 誰でも経験するって……そんなことある筈が……」 「もしかして……あんたってば……私のヒントでいかがわしい事……考えてたりしない?」 「……なっ!? え? ち、違う……の?」 「じゃあ聞くけど……あんたは……これからこの私に……何をされるって想像しているわけ?」 「そ、そ、それは……アレ……でしょ?」 「アレってなに? ハッキリ言ってみなさいよ?」 「え、エ、エッチな……事……でしょ?」 顔を真っ赤に染めながら綾香は小声で自分の答えを鈴音に伝える。その答えを聞いた鈴音は、やはり予想通り綾香が勘違いをしていたという事が分かり、思わず吹き出すような笑いを彼女の前で見せた。 「ぷっ! プハハッ! やっぱりそんなこと考えてたんだぁ! アハハハハ、どんだけ頭ピンクなのよ全く……くはははははははは……」 思いがけない鈴音の吹き出しに綾香は目を白黒させて戸惑ってしまう。 ヒントの内容からも話の流れからもそのような雰囲気が漂っていた為、綾香はてっきりそういう関係の仕置きを行うのだと覚悟を決めていた。 「な、何? え? 違うの?」 そもそも麗華の煽り方もいけない。拘束された綾香をあのような色欲にまみれた目で見たのだから勘違いを引き起こしても仕方がない。 それに加えて服の露出だの楽しい気分だの言われたものだから……この答えに行きついてしまうのは当然と言えば当然だ。 「仕置きだって言ってんのに、あんたってば私にエロい事されるって勘違いしてたわけ? そんなのあんたを気持ち良くさせてしまうだけじゃない! あんたの欲求不満をなんで私が解消してやんなきゃなんないのよ? 馬っ鹿じゃない? プハハハハハハハ……ヒィヒィ……」 「だ、ダ、だ、誰が欲求不満よっ!! このクソガキっ!! あんたのヒントの出し方が悪すぎて分かりゃしないのよ!」 自分が口走ってしまった恥ずかしい勘違いを胡麻化す為に大声を張り上げてそのように言ってしまった綾香だったが、その言葉を聞いた鈴音の方は大笑いから一転して再び影を帯びた睨み目へと表情を変化させてしまう。その殺意を感じさせる睨み目を見た綾香は、思わず次に用意していた言葉たちを呑み込むことを余儀なくされる。 なにやら雰囲気の変わった彼女の態度に冷ややかな不安が押し寄せ始める。 「ふぅ……今の暴言は後で謝らせるとして……。まぁ良いわ、本当はヒントは3つまでって決めてたけど……面白い勘違いをしてくれたあんたに免じて答えがわかるまでヒントを出し続けてあげる♥」 殺意のこもる目はすぐに収められたが、鈴音の目はまだ妖しく睨んだままだった。綾香はその目に未だ不安を感じつつも表情が和らいだことにホッと息をつき直した。 「いい? じゃあ続けるわよ?」 鈴音の言葉に綾香は無言で頭を縦に振り再び緊張を纏う表情を作って彼女の言葉を待った。 「ヒントその4……さっきはエロい事はしないって言ったけど……人によってはこの行為自体をエロだって思う人もいるわ……。まあ私はそう思っていない方のまともな人間だけどね?」 「えっ……? エッチな事じゃないけど……エッチに思う人もいる? な、何? 言ってる意味が全然分からない……」 さっきと言っている事が真逆なのでは? と言いたげな綾香に鈴音はヒントを次々に被せて出し始める。 「ヒント5……この行為自体は普通なら拘束なんてしないで行うわ。特に親とか友達とかにされる時は不意にされる事の方が多いわよね……」 「不意に? 普通は拘束しない?」 「ヒント6……拘束をして行うのであればほとんどの場合こんな風に“腕を上げさせて”拘束しなくてはならないわ……そうでないと弱点を責められないし……」 「じゃ、弱点? 何の??」 「もう! これだけヒント出してるのにまだ分からないの? そろそろ核心に迫っちゃうわよ?」 「そ、そんなこと言われても……」 中々答えに辿り着けない綾香に鈴音は苛立つように声を上げる。しかし彼女の口元は何故か笑みを浮かべていて、まるで彼女が困惑している姿を楽しんでいるかのように振る舞っている。 「じゃあ、ヒント7っ! アレを行う上では足の拘束も行うのがベターよね? 逆に足だけしか拘束しないって人も居るだろうし、腕だけの拘束だけで楽しむ人も居るだろうから一概に完全拘束が正義だとは言えないけど……でも、あんたの場合は“どっちも”責めるつもりだからこういう拘束になったのよ」 「どっちもって……何処と……何処の事? 腕だけとか足だけとか……何が言いたいの?」 「ヒント8っ! アレは主に手で行う事が多いけど……用意していれば道具を使って責める事も有るわ。どんな道具か言っちゃったらすぐにバレるから詳しくは言わないけど……例えば、こういう……服の切れ端なんかを利用してヤる人もいるそうよ?」 「は、はぁ? 服の切れ端を使って何をするの? えっ? もっと意味が分かんなくなってきた……」 このヒントを言いながら鈴音は自身の着ている長いスカートの端を摘まんで見せ“こういうのを使うの!”と言いたげにその生地の端を綾香に見せつける。 足元まで隠すほどに長くて真っ白いスカートの生地は端に行くにつれ生地が薄くなっていて、端を摘まめば反対の指が透けて見える程に薄い。そんな薄い生地をワザとらしく自分の腕の上で上下になぞらせて見せ、綾香にこういう行為よと言わんばかりの動きを見せつけていく。 しかし当の綾香の方はその手の動きを見るのではなく、目の前ではしたなくスカートを捲り上げている彼女の下半身の方に目が行ってしまう。 捲られたスカートからは僅かに彼女の黒いレース生地のショーツが垣間見え、綾香はその大人びた下着を彼女がどんな気持ちで穿いたのかを勝手に妄想し何とも言えない同情の念を覚えた。 『きっと……子供に見られたくないからこういうのを背伸びして穿いたのね。でも……こうしてワザとらしくスカートを捲り上げて大人のアピールを無理やりする感じが……痛々しいわ……』 綾香の視線がスカートの中に行っている事と、何とも残念そうな表情を作っている事にこの上なく侮辱されたような気分を味わった鈴音は、すぐにスカートを下げ不機嫌そうにヒント出しを続けた。 「ヒント9! コレをされるととっても息苦しくなるわ!」 「い、息苦しく……なる?」 「ヒント10! なぜ息苦しくなるかというと……それは、笑うからよ!」 「は? わ、笑う?? 誰が?」 「ヒント11、笑うのは……あ・ん・た!」 「わ、私が……笑う?? こんな状態にさせられているのに??」 「ヒント12、笑いたくなるようにするの! 私がね!」 「笑いたくなる? 可笑しくもないのに?? ど、どう言う事? 頭が混乱してきた……」 「ヒント13、言い方を変えれば分かり易いかしら? つまりは私が無理やり笑わせるのよ! 笑いたくも無いと思ってるあんたの事をね!」 「む、無理やり? 笑わせる?? 私を?」 「あぁもう! まだ分かんないの? じれったいわねぇ~~! じゃあ、ヒント14! こんな風に拘束されて……肌も露出してるあんたは……私に何処を“触られれば”笑いたくなるかしら?」 「さ、触られたらって笑いたくなるって……それって…………ま、まさか!?」 このヒントを出された瞬間、綾香の脳裏に手を構えて迫る鈴音の姿が映し出された。 手をワキワキさせながら自分の胸めがけて迫って来る鈴音……。しかし彼女が触ろうとしているのたわわに実った二つの熟れた性果実の方ではない。 もっとその先の…… その先の…… 鈴音の手のビジョンがそこに行きついた瞬間、綾香は今までに経験したことのない強烈な寒気を全身に巡らせた。 そして……彼女が言いたいことが全て理解できてしまった。 「もう分ったでしょ? これが最後のヒントよ……」 「ちょ、待って! 嘘でしょ??」 「嘘じゃないわ♥ これからする事はあんたが今想像している通りの……コト♥ よ♪」 「こんな大掛かりな台を……そんな馬鹿な事をするために用意したって言うの?」 「最後のヒント……というか質問になるけど……良い?」 「あり得ない……馬鹿としか言いようがないわ……」 「あんたはぁ~“足の裏”と“ワキ”ぃ~、どっちを触られたらぁ……我慢できずに……笑ってしまうのぉ……かぁ・しぃ・らぁ?」 鈴音の最後の言葉によって綾香の想像した“仕置きの内容”はもはや間違いないものとして認知された。 まさか……こんな子供の悪戯の様な行為を仕置きにするなんて思いもよらなかった。 だから綾香はヒント出されても全くピンとはこなかった。 何せ……鈴菜の言う仕置きというのが…… 「ま、ま、まさか……私の身体を“くすぐって笑わせる”のが……仕置きの内容……とか言わないわよね?」 こういう類の仕置きだとは想像できていなかったのだから。 「ピンポーン♪ 正~解~~♥ やっと分かってくれたわね。ここまで導くのに苦労したわぁ~~♥」 無邪気に満面の笑みを浮かべて拍手など送る鈴音に、複雑な表情を浮かべる綾香だったが…… 答えが分かった事で改めてヒントの内容を思い返すと、それは確かに“くすぐり”の内容であった事が理解できる。 綾香が最初に勘違いをしていた“親や友達にされる事がある”というヒントも、答えがくすぐりであれば合点がいく。確かに……幼少期の頃とかは友達と悪戯でやられた覚えがあるし、なんなら夏姫とも前戯の兼ね合いでやり合った事もある。 綾香はその記憶が鮮明に思い出され、今の自分の格好がソレを行うのに最適化されているという事に改めて気付く。 手を万歳の格好で拘束……布面積の狭いディーラー服からはくすぐりに対しての急所であるワキの部位が晒されるように露出させられている。 この万歳の格好もそんなワキの部位を隠したり逃げたり出来ないよう配慮された拘束であろう。 そしてくすぐりと言えばもう一つの急所である足の裏……こちらも、靴や靴下を脱がせて裸足にすることで触られる感覚を高めている。 最初こそ疑問に思っていたこのカカトしか乗らない“足乗せ”も仕置きがくすぐりだと分かれば納得がいく。 地面に足を付けたままだとくすぐれないからだ……。だからカカト以外の足裏の部位が宙に浮くようにワザと小さな足置きにしてあったのだ。 仕置きがくすぐりだと分かり……そして自分の拘束された姿がくすぐりに無防備にさせられるよう仕組まれていたと感じ取った綾香は、何かを期待するかのようにいやらしい笑みを浮かべて見上げる鈴音の顔に意外にも小馬鹿にするような息を吐き捨てて答えが分かった最初の感想を彼女に伝えた。 「仰々しくクイズ形式にまでして不安を煽ったかと思えば……やる事はくすぐりなの? はぁ……焦って損したじゃない……」 てっきり内容を聞いて恐怖するだろうと思っていた鈴音は、その子供を見るかのような笑みに不快感を露わにし笑顔を再び睨み顔へと変化させていった。 「なるほどね……だからこういう拘束をしたって訳ね? 中々小賢しい事するじゃない……」 鈴音を見下ろしてフフフと笑って見せた綾香は、睨みを利かす鈴音に安堵の息を吐いて見せる。 「そりゃあ私が勘違いする筈よね? だって……仕置きだって脅すように言うから、もっと酷い事を強いられるんじゃないかって思っちゃってたわよ……実際……」 「へぇ? くすぐりが“酷い事”だとは思わないんだ?」 「当たり前じゃない。そんなお子様のコチョコチョ遊びで私が苦しむと思う? 本当は鞭とか蝋燭とか使って責められるんじゃないかって不安に思ってたところだったのよ? それがまさかのくすぐりだなんて……流石、子供にしか見えないあなたが考えるような事ね……安心したわ♥」 「なるほど……。あんた……どうやら……くすぐりを舐めてるわね?」 「舐める? 何を言ってんのよ? 舐める舐めない以前にそんな子供騙しな仕置きを恐れる方がおかしいでしょ?」 綾香のその言葉に鈴音の顔が再びニヤリと笑みを浮かべなおす。 「そう……か……じゃあ、始める前にこの仕置きの怖さを……少しだけ想像させてあげましょっか……」 「はぁ? 想像? 別にいいわよ……どうせ怖くなんて無いし……。時間の無駄なんじゃない?」 「いいから黙って聞け!」 「………………っ!」 突然の命令口調に綾香はドキリと心臓を高鳴らせてしまう。 鈴音の顔はすぐにニコリと笑顔を取り戻したが、彼女のその突然の態度の変化は綾香の不安の種に僅かに火を灯す事となった。 「私達が何でこんなにあんたの手足をしっかりと拘束したか……分かる?」 そのように告げられ自分の手足を改めて見直した綾香は、隙間なく巻きつけられたエナメルの枷が振っても動かそうとしてもビクともしない事を改めて窺い知る。 「そんなの……くすぐり易くする為に決まってるでしょ? さっき言ったワキとか足を触る為に……」 自分の腕が下ろせない事を不快に感じながらも、綾香は渋々その質問に対する自分の考えを彼女に返す。 きっとそれしか答えはないだろう……と想像していた綾香だったが、鈴音からは意外にもそれ以上の理由が有るという旨の答えが返って来る。 「勿論それもあるけど……でもそれだけじゃないの……」 「えっ? それだけじゃない? どういう事よ? それ以外に理由なんてある?」 「勿論あるわ。むしろこっちの方が大事だもの……」 「何よ! 勿体ぶらずに教えなさいよ!」 綾香が声を荒げると鈴音は綾香の胸付近に向けて手を伸ばし、指をくねらせ、まるでそこをくすぐっているかのような仕草を取り始める。 「例えば……あんたが今、こんな風に私の手にワキをくすぐられたら……どんな反応をする?」 そのいかにもこそばゆそうな指のくねりが、直接触られてもいないのに想像だけでこそばゆく感じてしまった綾香は、顔を引き攣らせながら彼女の指に答えを返す。 「そ、そりゃ……気色悪くて……暴れる……」 「うん? 今……暴れるって言った? そんな事できたっけ? そんな状態で……」 「…………っ!?」 「暴れられないわよね? 手枷が付けられているんだから……」 「そ、そうね……そうだったわ……」 暴れようとしても手枷が手を固定していて暴れられない……綾香はそれを実際に体感しもどかしい気持ちを持たされる。 「でも……やっぱり暴れたり逃げたりしたくなるわよね? 気色悪いから……」 「あ、当たり前よ! くすぐられて……そう思わない人なんていないし……」 「だけど……そう思ったとしても……あんたは逃げられない……」 改めて枷を引っ張ってみようと力を込めるが、綾香の力ではしっかりと台に固定された枷はやはりビクともしない。 「ッっ!?」 「逃げたくても逃げられない……あんたは、私にどんな触られ方をしても腕を降ろす事も出来ない……」 「うぅ……うっ……」 「あんたのワキは何があっても私の手から逃れる事なんて出来ないの♥ 枷が外れない限りは……ね」 「…………………………」 「そんな無防備にさせられたあんたのワキを……私は好き勝手にくすぐることが出来るわ。あんたがどんなに嫌がっても……」 「くっっ!! 何よそれ……それがどうしたって言うのよ!」 「あんたのその無防備に伸びきったワキを、あの手この手でくすぐろうとする私の攻撃にあんたは耐え切れずに笑うとするじゃない?」 「そ、そりゃ……笑う事も有るわよ……くすぐりなんだし……」 「その笑いを……あんたは……自分の力で止め切る自信は……あるの?」 「えっ?」 「私は絶え間なくあんたのワキをくすぐり続けるわよ? 引っ掻いたり……揉み込んだり……優しく触ったりとかしながら……とってもこちょばゆい刺激を送り続けるつもりよ? そんな刺激に笑わされてるあんたが……気合だけで笑いを我慢して止める事なんて出来ると思う?」 「そ、そんなの……出来るに決まってるじゃない!」 「本当にぃ? あんたってば……そんなに強いのぉ? くすぐりにぃ?」 「し、知らないわよ! でも、貴女の事を憎めば笑うどころじゃなくなるんじゃないかしら?」 「憎めば怒りで笑いなんて止められる……と?」 「現に今もムカついてるから笑う事なんてあり得ないわ!」 「ムカついてたら笑わなくて済むって……本当にそう思ってる?」 「……っ!?」 「そんな生易しい刺激を……私が送ると思う?」 「な、なんですって?」 鈴音のくすぐる振りをしていた指が不意に動きを止める。 それと同時に彼女の表情にも更に暗い影が差し込み始める。 綾香はその影の出来た表情に嫌な圧を感じ額に冷や汗を浮き出させてしまう。 「私がわざわざ仕置き人としてここに立っているのには勿論理由が有るのよ? それは理解してる?」 「は、初めて会ったあんたの事なんて……知るわけないじゃない!」 「そう? じゃあ教えてあげる♥」 「……?」 「私はねぇ……コレで……人をひとり……狂わせちゃったコト……あるの♥」 「……な、なんですって?」 「幸い……命は落とさなかったけど……彼女には深い傷を負わせることになっちゃったわ……」 「傷って……何?」 「重度の……トラウマ♥ 彼女ね、私の指を見るだけで勝手に笑い出すようになっちゃったの……それくらい私のはヤバイのよぉ?」 「う、嘘よそんなの! ただくすぐって遊ぶだけなのに……そんな事になる筈が……」 「なるわよぉ? 私……出来ちゃうもん……そういう……コ・ト♥」 「ふ、ふざけるのも大概にしなさい! 信じないわよ? そんな話……」 「別に信じなくてもいいけど……でも一つだけ教えておきたかったのは……実はその彼女はね、拘束なんてしておらず暴れまわる事が出来た状態で……そうなっちゃったの」 「拘束……していなくて……ですって?」 「そう♥ 最初は抵抗してたけど……あまりに私がしつこくヤるものだから、途中から身体に力が入らなくなっちゃったみたいでね? それからは抵抗も出来ずに笑わされていたわ……気が狂うまで……」 「……き、気が狂うまでって……そ、その話……う、嘘……よね?」 鈴音の話を聞き不穏な空気を感じ取っていった綾香は、何やら自分の考えていた“子供の悪戯程度の仕置き”とはかけ離れていくのを感じ焦りの感情が高まっていった。 もしかしたら……彼女の言うくすぐりは……自分の思うそれとは違う何か別のものなのかもしれないと思うようになってしまう。 「さぁ……? どうかしらね? フフフ♥ まぁ、あんたが信じるかどうかは別にどうでもいいんだけど……この拘束の意味は何となく理解出来てきたでしょ?」 「……えっ? 拘束の……意味?」 「簡単に想像できるでしょ? 私は……そういう“くすぐり”をあんたに施すのだから……」 「ま、待って! 気が狂うとか……そういうのは嘘よね? 貴女の言うくすぐりって……アレなんでしょ? ほら……子供たちがじゃれ合うような……ワキとかをコソコソ~って触るだけの……アレ……よね?」 「ううん、私のヤる“くすぐり”はそんな遊びとは全く次元が違うわ♥」 「えっ……?」 「笑っても笑ってもまだ無理やり笑わされ続けるっていう……言ってしまえば拷問に近いものよ♥」 「ご、ご、拷問っ!!?」 「“くすぐり拷問”とか“笑わせ漬け”とかって……聞いた事ない? 結構有名だと思うけど……」 「くすぐり……拷問?? 笑わせ漬け?? 何よそれ? そんなの……聞いた事もないわっ!」 「あらそう? 日本でもその昔行われていたって記述があるんだけど……まぁその様子じゃ知らないわよね?」 「た、ただくすぐるだけでなんで拷問とかっていう物騒な言葉が出てくるのよ! ま、まさか……そんなに酷い事に……なるの? それって……」 「くすぐり拷問はその名の通り……身動き取れない人を散々くすぐり回して情報を聞き出したり屈服を要求する拷問方法よ。笑わせ漬けは……目的もなくただただ笑わせ続けてその人が壊れていく様を見て楽しむだけの……ただの趣味嗜好かなぁ♥」 「こ、こ、壊れるまでって……そんな事……あるの? あんたの言っているのはくすぐりよね? あの“くすぐり”なのよね?」 「そうよ? あの“くすぐり”よ? でも……こんな風に身動き取れなくされた人に行うソレは、凶器以外のなにものでもないのよ?」 「きょ……凶器?? くすぐりが……?」 「想像してみたら分かるでしょ? 無防備な身体をひたすらくすぐられるのよ? 最初は我慢できたとしても……何分も……何時間もくすぐられたら……あんたでもいつかは笑い出しちゃうでしょ?」 「そ、そりゃあ……笑う……かもしれないけど……」 「くすぐりっていうのはね……すぐに止めて貰えればただのじゃれ合い程度になるけど、長時間ヤられるとくすぐったさが蓄積していってどうしても笑わずにはいられなくなるの……」 「笑わずにはいられなく……なる?」 「くすぐったいって思えば思うほど笑いは止められなくなるし、息苦しくなっていくわ……」 「息苦しく? なる?」 「当然よね……笑うという行為は肺の酸素を吐き出しながら行う運動なんだから、笑いが続けば続くほど肺の酸素が少なくなっていって苦しくなる」 「うっ!? うぅ……」 「あんたは息を吸いたくて呼吸をしようとすると思うけど、その呼吸を私は満足にさせてあげないわ♥」 「……ッっ!?」 「呼吸をしようと苦しんでるあんたの身体を……これでもかってくすぐってやるの♥ もっともっと大笑いさせてあげる為にね♥」 「………………」 「拘束されてるあんたは私のくすぐりに無防備にさせられてるから絶対に逃げられないの♥ だから笑い続けるしかない♪ 例え酸素が足りなくて苦しんでいたとしても……馬鹿みたいに笑い狂わされるのよ……私に♥」 「そ、そんな事……ある訳ない! 私があんたのくすぐりごときに無様に笑い狂うなんて……」 「そう思いたいんならそう思ってればいいわ。でも……覚悟はしておいた方が身の為よ? どんな刺激が送られてくるか……まだ理解できていないでしょうからね……フフフ」 「く、くすぐりごとき私が狂わされるなんて……あり得ない! 絶対に……」 「っで、話は戻るけど……呼吸が出来なくて苦しくなったあんたは次にどうするか……それはもう想像できるでしょ?」 「はぁ? 出来る訳ないでしょ! そんな在りもしない現実を……」 「あらそう? だったら教えてあげる♥ あんたはそのあまりの苦しさに思わず……大暴れをしようとし始めるはずなの♥」 「大暴れ? 何よそれ……」 「意地でもくすぐりから逃げようと力の限り腕とか脚を振り回そうとするはずよ?」 「私が……そんな馬鹿みたいな暴れ方をすると思ってるの?」 「すると思ってるわ♥ 誰でもそうなるもの……」 「誰でもって……そういうのに私まで当てはめないでもらえる? 私はまだくすぐりなんて言う子供騙しに笑う事さえしないかもしれないんだから?」 「普通に暴れられたらくすぐるどころではなくなるし、コッチも手や脚が当たって怪我をするかもしれない……」 「ちょっと! 聞いてるの? 私は……暴れないって……」 綾香が反論をしようとした瞬間鈴音は止めていた手を素早く綾香の口元に運び、彼女が次に発そうとしていた言葉を無理やり呑み込ませた。 「だ・か・ら、拘束してるのよ♥」 「んぐッっ!?」 口を塞がれた綾香はその突然の行動に焦り、必死に顔を横に振ってその手から逃れようと試みる。しかし、柱に押し付ける程の力で塞いだ鈴音の手は力では振りほどけず、彼女が力を抜くまでその手を払う事が出来なかった。 「ほら……たったこれだけの事でもあんたは暴れようとするじゃない。こんな風に本能的に暴れてしまうような人間をしっかりと縛り付けて抵抗できない様にしておく事がこの拘束を施している本当の理由よ」 不意に手の力を抜いて綾香の口を解放してあげた鈴音は、そのように言葉を零すとしたり顔で綾香の顔を見上げた。 「本能的に暴れる人間を……抵抗できない様に……する為……ですって?」 口を塞がれ呼吸が乱された綾香は口が解放されるや否やハァハァと荒い呼吸を繰り返し鈴音に言葉を返す。 「くすぐりは本人の意思とは関係なしに笑いを生んでしまうわ。言うなれば身体の刺激反応によって反射的に笑わされるというのが正しいとは思うの……」 「反射的に……笑う?」 「まぁ、笑いたくないのに笑うんだから……それはもうあんたの意志なんて無視しちゃった反射的な行動になるわよね? 笑うのが反射的に起こるのなら……当然抵抗しようとするのも反射的に行いそうなものじゃない?」 「私があんたのくすぐりを嫌がって暴れるかもしれないから……拘束したって言いたいの?」 「そうね……まぁ、あんたに限らず私がコレをやるときは必ずするんだけどね……拘束♥」 「結局何が言いたかったのよ! 偉そうなこと並べていたみたいだけど、ただあんたがくすぐり易くしたいってだけの事なんでしょ?」 「分かってないなぁ……」 「な、何がよ!」 「まだ想像できてないでしょ? 逃げたくて逃げたくて仕方がないのに……どう足搔いても逃げられないよう拘束されていると感じた時の絶望を……」 「は、はぁ??」 「体中が震えるほどのこそばゆさに晒されても、腕の一本も下にさげれず足を曲げる事すらさせて貰えない狂おしい程のもどかしさを……」 「な……何よ……その脅しは……」 「脅しじゃないわ。あんたがこれから実際に体験することを教えてあげてるの♥」 「そ、そんな怖そうに言っても……私は怖気づかないわよ!」 「それはそれは素晴らしい威勢だと思うけど……でも、あんたはきっと後悔する事になるわ……」 「な、何をよ?」 「あの時……なんでこの枷を……素直に付けさせてしまったんだろうって……。あの時抵抗していればよかった……って♥」 「そんな事思う訳ないでしょ! どっちみち……無理やりにでもこうするつもりだったくせに!」 「ま、そうなんだけどね♥ ウフフ♥」 さも楽しそうに笑顔を見せる鈴音に対して親の仇だと言わんばかりに睨みを強める綾香。 結局綾香には彼女の言う“拘束をする本当の意味”とやらはよく理解できなかったが、彼女の口ぶりから察するに要は“私のくすぐりにあんたは耐えられないから絶対に暴れる……だから縛り付けて自由を奪ったんだ”と言いたかっただけだろうと感じ無性に腹が立った。 余程の自信が有るようだが……所詮やる事はただの“くすぐり”だ。それ以上でもそれ以下でもない。 どんなに大袈裟に言おうが、どんなに難しく説明されようが、とどのつまりワキとか足裏を触ってくすぐるだけなのだ…… 言い方が大袈裟すぎて少し緊張を強いられたのは確かだが、それだけの事であれば別に怖くなどない……やはり子供お遊戯程度の仕置きなのだ……これは……。 「どう? 少しはくすぐりの怖さと拘束の意味……伝わったかしら?」 綾香はそのように考えを改めたため鈴菜の言葉に顔を横に振って強気な言葉を返してしまう。 「舐めないでよね! 私があんたの“指遊び”なんかを恐れる訳がないでしょ? 馬鹿も休み休み言いなさい!」 「指遊び? フフ♥ 成程ぉ~? 良いわね……その表現……」 「言っとくけどね! 私にくすぐりは効かないわよ! 昔から……そういうのにはめっぽう強かった方だし!」 「へぇ? そう……。だったら探すのが楽しみだわぁ♥ あんたの弱点……」 「じゃ、弱点なんてないわよっ! ある訳ないでしょ! そんなものッ!!」 「弱点がないんだったら……作ってあげるまでよ♥」 「は、はぁ? 作る? 弱点を? 何言ってんだか……馬鹿馬鹿しい……」 「嘘じゃないわよ? そう言う事も出来るんだから♪」 「でたらめよ! そんなの……」 「でたらめかどうかはすぐに分かるわ♥ 私が触れば……あんたなんて数分もしないうちにゲラゲラ笑うようになるわよぉ♥ それこそ……子供のように……ね♥」 「こ、子供みたいにって……あんたに言われたくないわよ!」 「折角手加減してあげようって思ってたのに……そんなこと言うんだったら……最初から本気出しちゃうゾ?」 「本気だろうが何だろうが私は絶対笑わないっ!! あんたの思惑通りになんて絶対にならないわよ!」 「ホントに笑わない自信あるぅ? 私のこの指に触られて……ホントに笑わないで済むと思ってるぅ?」 「あ、ある! あるわ! あるに決まってる!」 「そう? だったら……この……人差し指一本だけの刺激にも当然耐えられるわよね? 指一本だけなんだし……」 「指一本だけ? ば、馬鹿にしないで! 指一本で何が出来るって言うのよ!」 「馬鹿になんてしてないわ♥ 指一本でも色々できるのよ? 実際……」 「そんな一本だけの指に私が笑うとでも思ってるわけ?」 「笑わせる自信が有るわ……。だから、この仕置きの前に……ちょっとしたゲームをしましょう? 」 「げ、ゲームって……何よ?」 「ルールは簡単よ? あんたは私のこの指に絶対声を出して笑っちゃ駄目! 笑ったらその時点でゲームオーバーで罰を受けて貰うわ♥」 「ば、罰? 仕置きが罰じゃないの?」 「確かに仕置きも罰だけど……でもこのゲームはあんたが耐えきれればちゃんとご褒美を用意するわよ?」 「ご褒美?」 「もしも……私がこの指だけであんたを笑わせられなかったら……それ以降のあんたの仕置きは私が代わりに受けてあげる♪」 「な、なんですって?」 「その代わり……この指に少しでも笑いが零れたら、罰として智恵理と二人がかりであんたの事本気でくすぐるわ♥」 「笑わなかったら……本当に交代してくれるの? この後の仕置きとやらを……全部?」 「えぇ……なんだったらあんた達が私の事好きにしたらいい……」 「その言葉……後でひっくり返すなんて事ないわよね?」 「ないわ……。ちゃんと観客にも聞こえるようにマイクを通して宣言したでしょ? ズルしたら私の方が皆に責められれちゃうだろうし……」 「ふ、フフ……そんな簡単な事で立場を逆転してもらえるの? そんな条件を勝手に付けたりしちゃって……あんたやっぱり馬鹿なんじゃない?」 「あぁ……ちなみに指一本なんて言っちゃったけど……実際は左手の人差し指も使わせてもらうつもりだから……」 「つまり指二本で勝負するって事ね? 別に三本だろうが四本だろうが私は構わないけど……」 「じゃあ決まりね? 私はこの左右の人差し指だけを使ってあんたの事を10分以内に笑わせて見せるわ……あんたはその10分間一言も言葉を発しちゃ駄目。例え笑っていなくても言葉を発した時点で負けよ? 良い?」 「10分!? たったの10分?」 「そうよ。たったの10分……。どう? 簡単そうでしょ?」 「か、簡単どころか余裕じゃない! 何よそれ? あんた……やっぱり私の事馬鹿にしてんでしょ?」 「だからぁ~馬鹿になんてしてないってばぁ♥ それにね……さっきも言ったように……私は自信が有るの。これだけであんたを笑わせられるっていう自信が……」 「大した自信家ね。でも……そんな勝手な遊びなんて提案しちゃって大丈夫なの? あんたのご主人……怒るんじゃない?」 「あぁ……大丈夫大丈夫♥ このゲームをやる事は事前にお嬢にも伝えておいたし……」 「事前に……伝えてた……ですって?」 「そうよ? 私はこの指だけで笑わせる自信が有るから、最初は余興ついでにコレで遊ばせてくれって頼んでおいたの♥」 「それで……こいつもオッケーしたの? その馬鹿な申し出に……」 「二つ返事でオッケーを貰ったわ♥ お嬢ってば私の事信頼してくれてるから……」 「は……ハハ……揃いも揃って馬鹿ね……何が余興ついでに……よ」 「余興は余興よ? 本番は勿論その後に用意してる……」 「その本番とやらはあんたが受ける事になるわよ?」 「大丈夫……ならないから♪」 「……ッっ!?」 「言ったでしょ? 私は……この指だけでも……あんたの事……笑わせられる自信があるって♥」 「くっ……その根拠のない自信……何処から来るのよ……」 「じゃあ……話もまとまったようだし、ついでにお仕置きの内容も発表できたし……早速始めましょうか? 余興を……」 鈴音はそのように言葉を残すとクルリと観客の方を向き直して笑顔を向けなおした。 そして説明は終わりですと言わんばかりにペコリと頭を下げると、あっけに取られていた智恵理が慌ててマイクに声を乗せ直す。 「あっ、えと! 色々と回りくどく説明はして貰いましたが……と、とりあえずこれが仕置きの内容です!」 麗華との間で交わされていたこの余興という名の我慢ゲームを智恵理は一切聞かされてはいなかった。それもそのはず……この条件を提案したのはつい先ほどの事であるから、バニーとして働いていた智恵理は知る由もない。 「えぇっと……彼女が申しました通り、この仕置きの最初は余興という事で椿嬢とゲームを行う様です! どうやらそのゲームの勝敗次第では、まだ椿嬢にも挽回のチャンスがあるという事になりますが……」 智恵理の慌てる様子を片目に見ながら鈴音は小さく伸びを行う。そしてその伸びの姿勢のまま綾香の方へと顔を向けなおしてニコリと子供らしい純粋な笑顔を浮かべて見せる。 そしてその笑顔に影を落としながら綾香に宣戦布告のような言葉を掛ける。 「私の行うくすぐりが……いかに抗い難いものなのか……これからたっぷりと身体に教え込んでいってあげるわ♥」 「だからお姉ちゃんも……せいぜい頑張って耐えて見せてね?」 「私のくすぐりの事……手遊びって言って馬鹿にしちゃった……お姉……ちゃん♥」