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オペレーション・ブルーアルカディア♯3-⑪

11:命懸けの運搬 舞華 「これは……あいつらのドローン?」  舞華たちがいたメインホールのすぐ横の控室には茜のデスクトップ型PCが置かれていた。  そのPCのモニターには未だ指揮船の中でドローンに捕まってくすぐり拷問を受けている皐月の映像が垂れ流しになっているのだが、勿論この映像は皐月が用意したダミーのループ映像であり、ハッキングされたドローンは未だその偽の映像をこの端末に送り続けていたのであった。 皐月 「このドローンのアームは見ての通り私の身体を軽々と持ち上げる程強力です。しかも空も飛べる仕様ですので負傷した舞華さんや気絶した瑞樹さん……それに、後ろ手に拘束した茜さでさえも軽々と指揮船まで運んでくれるでしょう」  自分の笑い悶えまくっている顔を見られるのが恥ずかしくなったのか、皐月はキーボードに簡単なプログラムを打ち込んでその映像を自らの手で消し去る。すると、皐月の顔の代わりに吊るすもののなくなった空しい機械のアームだけが映し出され、掴んでいたはずの手に目標の人物が居ない事に気付いたドローンは慌てて目標を探すかのように右往左往を始める。 皐月 「さて……茜さん? 勿論このドローンの予備くらい用意されているんですよね? 何かがあった時の為を見越して……」  ギロリと睨みつける皐月の目に完全に怯えの感情を抱いてしまっている茜は、頭を縦に振って頷き小さな声で返事を返す。 茜 「そのドローンとは別に予備に5台……隣の倉庫に眠らせてありますわ……」  その言葉を聞くと皐月はニコリと笑みを零し茜の肩に軽く手を置く。 皐月 「では教えてくれますね? そのドローンの動かし方を……」 茜 「う……うぅ……」 皐月 「少しでも逆らったら……容赦しませんよ? 私だってハッカーの端くれです……貴女に教わらなくてもハッキングで動かす事も出来るんですから……」 茜 「わ、分かっていますわよ! も、もう……逆らう気力も湧きませんわ……」  そういうと茜は後ろ手に拘束された状態で隣の部屋へと繋がる電子式の扉に近づき、扉の横に設置された網膜センサーに顔を近づけてその認証を受け始める。  赤いレーザーが彼女の目を2往復しチェックをセキュリティ対象として問題が無い事を認証し終えると、自動的に横開きのドアが開いて部屋の中へと入れるようになる。 皐月 「うわぁ~悪趣味な部屋ですね~~」  部屋の奥まで自動で蛍光灯が点いていき、部屋の中に置かれている彼女達の数々の“研究成果”を目の当たりにし皐月は呆れた声でそのように零す。 茜 「その奥にある5台がそうですわ……。マシンの裏に電源のボタンがあるのでそれを全部オンにしてくださいまし……」  皐月は言われるがまま部屋の奥へと歩を進め、左右の棚に置いてあるいかがわしい拷問機器を呆れた表情で見ながら目的のマシンのもとへと到着する。 皐月 「これで……いいんですか?」  マシンの裏にある赤く丸いボタンを指で押すとUFO型のドローンは目の位置にあたるカメラをピカッと光らせ、駆動が開始したことを皐月に分かり易く伝える。 茜 「全部電源を入れたら……後はこっちのPCで操作ができるようになりますわ……」  全てのドローンの電源をつけ終えた皐月はいくつかの拷問機器を改めて見返しながら部屋を後にし、再び茜のPCの前に戻る。すると画面には5台分のドローンのカメラ映像が小さな小窓に分かれて現れており、ドローンとPCが電源を入れたと同時に同期したことを教えてくれる。 皐月 「私を捕まえていたあのドローン……本当は制御システムを乗っ取って味方につけてからこの船に持ち込もうと思ってましたけど……どうハッキングしても操作を奪うことは出来ませんでした。つまりはそういうプロテクトが掛けられていると考えて良いという事ですよね? この5基のドローンも……」 茜 「そう。このマシンはそういうハッキングに盗られないよう、操作だけはこのPCでしか出来ないようプロテクトをかけていましたの。まさかカメラの送受信システムの方をハッキングするとは思いも寄りませんでしたけど……操作自体はこのPCの命令以外受け付けない仕様になってますわ……」 皐月 「と、言う事は……私の持っているこの携帯端末でハッキングしても……動かせないという事ですね?」 茜 「えぇ……このPC自体もハッキング対策が施されていますから……どのみちこのPCでしか動かすことは出来ないと思っていただいて問題ありませんわ……」 皐月 「ちなみに……ハッキング対策が施されているのはこのドローンだけですか? 中には各種趣味の悪い拷問器具が置いてあったみたいですけど……」 茜 「……? え、えぇ……そのドローン達だけが特別固いプロテクトを掛けていましたので……他のには施していないはずだけど……」 皐月 「なるほど……つまりはハッカーである私の所へ差し向けるドローンだったからプロテクトを強化した……と、いったところですか……」 茜 「そうの通りですわ……。万が一にも貴女を逃がすわけにはいかないから……っていう美波さんの指示でしたの……」 皐月 「そこまで強固なプロテクトが掛かっているという事は……つまり誰か一人は確実に……マシンの操縦をするためにココへ残らなくてはならない……という事になりますよね?」 茜 「えぇ……そうなりますわね……」 舞華 「なっ!? ちょっ! ちょっと待って! このマシンを操るために……誰かを残すって事? この沈んでいく船の中に?」 皐月 「そういう事です……。ハッキングして操縦できない以上、誰かがこのPCでドローンを動かし続けていないと誰一人として指揮船へ辿り着くことが出来ません……。そして……マシンを操作する事が出来るのは私か……貴女だけという事になりますけど……」 茜 「ひっ!? い、嫌ですわ! こんな所で死にたくはないっっ!!」 皐月 「まぁ、貴女をまだ完全には信用してませんし……この状況で命を預ける程私も愚かではありません……」 舞華 「あ、あんたまさか! 残るとか言い出さないでしょうね?」 皐月 「誰かが残らなくてはこの船からは脱出できません……」 舞華 「冗談じゃないわ! 沈んでいく船にあんただけ残して私達だけおめおめ逃げ出すなんて出来ないわ! 他の脱出方法を探して————」 皐月 「その脚で……階段を駆け上がれますか?」 舞華 「……えっ!?」 皐月 「その腕で……梯子を掴んで登れますか? その折れた腕で……」 舞華 「そ、それは……出来ないかもだけど……。だったら私が操作する! それなら……」 皐月 「舞華さんにドローンを操作する技術があるんですか?」 舞華 「うぐ……うぅ……」 皐月 「現状……この方法が一番リスクが少なくて安全な脱出方法です……」 舞華 「そ、それでもあんたが犠牲になる必要なんて……」 皐月 「犠牲に? いえいえ……私も脱出を試みますよ。ただでは死にたくありませんし……」 舞華 「でも……私達を船まで運ぶ間はここから離れられないでしょ? その間も船は沈んでいくし……」 皐月 「大丈夫です。ちょっとだけ妙案があったりしますので……」 舞華 「妙案が? ある?」 皐月 「えぇ……だから舞華さんは指揮船へ戻ったらすぐに操縦席に座って、指揮船をこの船に巻き込まれない位置まで退避させていてください」 舞華 「た、退避って……あんたもだけど……千沙さんや岬は?」 皐月 「通信が回復していない以上安否は不明です……しかし、舞華さんたちを運搬しながらこのPCで出来うる探索はしてみようと思いますので」 舞華 「岬……千沙さん……」 皐月 「代理とはいえ……今は私がコマンダーの役を頂いています。作戦の不測の事態に対応するのは私の役目なんです! 一人でも多くこの船から脱出させるためにはこれが最適解だと私は思っています! 時間もありません……今は私の指示に従って貰えますか?」 舞華 「皐月……」  その小さな口から発せられた頼もしい仲間の言葉にビリリと電気のような寒気を背中に走らせた舞華は、やはり反論を唱えようと思って開いた口から次の言葉が紡げなくなった。  覚悟を決めた視線……結ばれた口元には決意の固さが見て取れる。  もはや彼女に何を言っても聞きはしないだろう……そう悟った舞華は、轟音と共に揺れる船室で静かに目を閉じフゥ……と一つ大きな息を突く。 舞華 「……策があるのよね? それ……信じても……いいんだよね?」 皐月 「……はい」 舞華 「私を納得させるために適当な嘘をついたとかじゃ……ないわよね?」 皐月 「えぇ……安心してください。私は必ず脱出します!」 舞華 「わかった、じゃあ……私達を送って? 船に戻ったら……巻き込まれないギリギリの所まで船を近づけておくから……」 皐月 「……えぇ。無事に届けられるよう……頑張って操縦します」 舞華 「……信じてるわよ?」 皐月 「任せてください♪ これでもドローンの操作は一級品ですので」 舞華 「ううん、そうじゃなくて……」 皐月 「……?」 舞華 「あんた達が揃って無事に脱出できるって……信じてるんだからね……」 皐月 「……えぇ! そっちの方も、任せておいてください♪」


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