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The.UnderCover~潜入捜査官:神崎琉姫~10

10:始まり  あれから何時間経ったのだろう?   琉姫本人からしてみれば数十時間という長い間責められ続けたとさえ思えてしまうあの拷問……。正確に何時間やられたのかは時計がないこの部屋で知る事は叶わない。 「さぁて、結局“ワキが弱かった”と言う事に落ち着いたわけだけど……」  頭をうな垂れさせゼェゼェと喘息に近い呼気を短く荒く繰り返している琉姫の正面に回って、腕を組みながら勝ち誇った顔を見せる楓は先程の不条理な質問に答えが出た事に満足気であった。 「先輩がストップを掛けなければ自分の方が勝ってたっスよ……全く……」  いちお負けた体になっている春奈は頬をプクリと膨らまし納得がいかない表情で腕を頭の後ろで組んで拗ねる。 「まぁ、いつまでも終わりなく繰り返してては一向に次の段階に進めないじゃない?」 「むぅ……そんな事言って……勝ちたかっただけの癖に……」 「フフ……大丈夫。この様子だとまだまだ勝負できるタイミングはありそうですわよ♥」  下を向きながらも恨めしそうに目だけは鋭く楓を睨む琉姫。その表情に意思の強さを見た楓はまだ彼女が屈服した訳ではない事を悟る。 「どう? そんな目をしていて聞くのもアレだけど……私達の仲間になる気になってくれたかしら?」  首を横に振るのは分かり切っている。そういう敵意剥き出しの目を琉姫は向けている。  案の定彼女は首を振るより先に言葉で拒否の言葉を述べてきた。 「誰があんた達みたいな卑怯で下衆い集団の仲間にならなきゃいけないのよ! アホみたいな児戯で無理やり私の事笑わせたりして……いい大人がそんな子供染みた事して恥ずかしくないの? 馬鹿にしないでっ!!」  疲弊しきっているとは思えない、刃の様に切れ味抜群な拒否の返答。琉姫に反抗する余裕が残っているという訳ではないのだが、先ほど受けた辱しめが自尊心を傷付ける程に深く羞恥の感情を呼び起こしてしまったため、反抗する態度を取る事でしか自分を保てなかった。怒りに身を任せて当たり散らさないと自分が自分でなくなってしまう……そんな気さえしていた。 「あらあら……そんな事言っていいんですの? その子供っぽい事に苦しめられたのは……貴女でしょうに……」  分かり切った答えを聞きニヤリと笑みを零す楓は、1歩……また1歩……と拘束された琉姫の身体に正面から近づいていく。 「うっ…………苦しくなんて……なかったし……」  いやらしく笑みを浮かべながら近づいてくる楓のプレッシャーに負けすぐに顔を横に背けてしまった琉姫は、語気を弱めながらも自分を保とうとする言葉を出し続ける。 「本当~~? 本当に苦しくなかったんですのぉ~~?」  琉姫の目の前まで迫った楓は、片手で琉姫の顎を摘まみ彼女の顔を強引に正面を向かせる。  そして見ろと言わんばかりに反対の手を掲げ目の前でその指をワキワキさせて見せる。 「ひっっっ!? うくぅぅぅ……うぅぅぅ…………」  自分のワキを襲ったあの細指……それが目の前で妖しく蠢いている。その動きを見ただけで身体は刺激を鮮明に思い出し、背筋から首筋までをゾクゾクと勝手に震わせ始める。 「余裕がないのに……あんまり滅多なことは言わない方が身の為ですわよ? でなきゃ……こんな風に……」  虫の足のように蠢いていた手がその言葉と同時にゆっくり琉姫の左腋に近づき始める。  その様子を、嫌な予感を過らせながら琉姫は横目で追っていく。 「余計なお仕置きを……受ける事に……なりますわ……よ?」 ――コチョ♥  言葉が言い終わるが早いか指先が腋に触れるのが早いかは定かではなかったが、楓の手が琉姫の伸び切った腋の筋に触れるや否や再びその部分をコチョコチョとくすぐり始めた。 「はぎっっっひひっひひ!! い、いやっっっっ!! やめでっっっっ!!」  顎を摘ままれている為顔を逸らして悶える事が出来ない琉姫は、笑いそうになっている顔を楓に見られ更なる羞恥心を煽られる結果となる。 「素直に言いなさい? なんなら足の裏もヤって貰いますわよ? いいの?」  その言葉を聞いて自分の出番だと悟った春奈は、上司の指示を待つまでもなく琉姫の足裏に再び悪戯を開始する。 ――ツツツ~~♥  人差し指だけでカカトから足の指先までを一筆書きでツ~っと撫でる焦らす様な刺激。それを“自分もくすぐるぞ”という無言のメッセージとして琉姫に届ける。 「むひゃっっっ!!? わ、わ、わ、わ、分かったわよ! く、く、苦しかったっ!! 少しだけ……苦しかった…………」 「少し……だけぇ~?」 ――コチョ……コチョ♥ コチョ……コチョ……コチョ♥ 「っひぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!? はひひひひひひひひひひ、ち、違っっっっ!! 凄く苦しかったっっっっ!! これで良いんでしょ! 早くやめへっっひひひひひひひひひひひ!!」  先程よりは明らかに刺激の質は下がっているハズなのに、少しの刺激でも琉姫はくすぐったさに我慢が出来なくなっている。  あの地獄のようなこそばゆさを味わってしまった記憶が残っているから……。精神的にはこの刺激に勝てないと悟ってしまっているから……。身体が、もう許して欲しいと懇願をしているから……。様々な理由が琉姫の身体を駆け巡っている。  そして我慢をしようとする琉姫を阻害していく……「どうせ我慢しても無駄」という諦めの言葉を頭に浮かべさせて……。 「そうでしょ? もうこんな苦しい思い……したくはないでしょ?」 「は、はひっ!! あひひひひひひひ、や、やめっっ! こそぐるの……やめてっっっ!! んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「あんな思い……したくは、な・い……でしょ?」 「し、したくないっっっ!! あんな思いは……もう……はぁ、はぁ、はぁ……」 「ウフフ♥ そうでしょ? だったら……」  顎を摘まんでいた手を放した楓は、その手を近くにあった丸テーブルの上へ運ぶ。そこにはシルバー色のトレイに並んで置かれた注射器が3本あり、その中でも薬液が一番少なく入っていた注射器を選び取って琉姫の前に運んで見せる。 「この“ラフスタシィ”を味って見たくなったでしょ? 苦しいくすぐりから解放される……この魔法のお薬を……」  針の先からトロリと黄色い薬液が溢れ出す瞬間を見た琉姫は背筋からゾクリと嫌な寒気を感じてしまう。  あの薬はヤバイものだ……と、打ったことがなくても想像できてしまう。液体のあの色もあの粘り具合も全てが怪しくて仕方がない。きっと身体に摂取してはいけないものだと本能的にも拒否してしまう。 「や、や、やめて……それを……打たないで……」  拘束された自分には拒否権など無い……そんな事は分かっているが、少しでも情に訴えかけられないかと怯えるような目でその薬を拒否する琉姫。しかし、楓の返答は琉姫が危惧した答えを返しはしなかった。 「あら……そう? 折角楽になるチャンスだったのに……残念ね……本当に使わなくても良いの?」  てっきり、どんなに拒否しようと無理やり打ち込むという非道なやり方をするのだと想像していた琉姫だったが、拒否の言葉を聞くとあっさりとその注射器をトレーの中に戻し、いかにも残念そうな顔をして再び楓は琉姫の顔を覗き込んできた。  琉姫は彼女が心変わりを起こす前に拒否を強めておこうと頭を何度も横に振り「打たないで」と連呼した。 「そっかぁ……琉姫ちゃんってば実はドMさんだったのね? これからとっても苦しくなるっていうのに……コレを使わないなんて……」  クスクスと笑みを零した楓はキョトンとする琉姫をよそに軽く手を上げ頭上でパンパンと打ち手を行う。するとその合図を待っていたかのように奥の扉が突然開いてゾロゾロと複数人の女性が入室してきた。 「あっ……えっ?? この人たちは……??」  一人ずつ順番に入って来た為その数はきっちり6人である事を数える事が出来た。髪がロングだったりショートだったり、パーマが強くかかっていたりストレートだったり……色黒だったり色白だったり……いかにも意地悪そうな顔だったり、優しく清楚そうな顔だったり……様々な女性が順番に入ってきたかと思うと楓と入れ替わりに琉姫の周りをグルリと取り囲み一様に手を構えてニヤついた笑みを浮かべ始める。 「さぁ皆さん? この子が私達の新しい仲間になる予定の琉姫さんですのよ♥ でも彼女……まだ上手く笑顔が作れないみたいなの……。私達だけじゃあ彼女を十分に笑わせられないから……手伝って貰っていいかしら?」  そのように楓が言葉を零すと、皆それぞれのタイミングで返事を返していく。「はいよ~」とか「OK~♪」とか「お任せ下さい」とか「しょうがないわねぇ~」などそれぞれの個性を表すかのような言葉が飛び交い、琉姫を混乱させていく。  コレは何なのか? まだ何かをするつもりなのか?  というか、するつもりなのだろう……呼び出したのだから……人を。  何を? 自分に何を?? アレに決まってる……またアレを……自分に……。この人数で??  そこまで想像が巡ると琉姫の意識は奈落の底に落とされていく様な落下感を感じ始める。  何も考えたくない……何も想像したくない……現実から逃げ出したい……。そのような逃避思考が巡っていく。  しかし、現実は残酷なほど待ってはくれない。そんな逃避思考を浮かべている間にも6人の女性たちはそれぞれ持ち場につく様に琉姫の身体の横や背後や正面に立ってその担当の部位をジロジロと眺め始める。 「安心して、琉姫ちゃん? 今度はさっきみたいに“子供の戯れ”程度の刺激じゃ済まさないから♥ ここからは本当の訓練の始まりですのよ。訓練名はそうね……“笑わせ漬け”なんてどうかしら?」  楓が少しずつ琉姫から距離を離していく。それに比例して女性たちの手が琉姫の露出した身体の各部位に迫ってくる。   「ひゃめ……て……い、い、嫌……」  正面からも背後からも横からも迫ってくる無数の細い指達。それらが意思を持って蠢く姿を見ている琉姫は恐怖で言葉が上手く出せない。  声を張り上げて拒否の言葉を放ってしまいたいのではあるのだが、その瞬間全ての指が触れて来たら刺激に備える事が出来ない。せめて刺激に備えながら少しでも笑うのを我慢をしたい……そういう儚い思いがあるからこそ声を大きく出せない。  消え入るようない声で「やめて……」と懇願する言葉だけしか零せない。  しかし、そのような消えそうな声が吹き飛んでしまうくらいの大声の笑いが次の一瞬で吐き出される事となる。    楓の……「ヤって差し上げなさい」という言葉と共に……。


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