「はぁ……っ、んっ、あぁ…………んぁッ」
甘い声と共に、少女の身体が暗がりの中でびくりと跳ねた。
部屋の照明は消され、少女の姿を照らしているのはパソコンモニターの光だけ。
はだけた胸元から露出する豊満な乳房。
大胆に開かれた肉付きの良い健康的な太腿に力がこもり、少女の息が浅くなる。
震える身体と連動して軋む椅子が音を立てなくなったのは、ほんの数秒後のことだった。
外したヘッドホンを無造作に机へと置き、ベッドに身体を投げ出した少女の意識は、幸福に包まれたままゆっくりと深く沈んでいった。
◇
翌日。
午後の授業が始まる直前になって、少女―中野三玖は保健室へと向かっていた。
寝付けずに夜更しをした彼女が眠りについたのは、深夜三時。
八時半に問題なく登校した三玖の睡眠時間は普段よりもかなり短く、全身の気だるさを我慢したまま授業を受けていたのだが、昼食を取ってすぐに彼女の睡眠欲求は限界値を迎えてしまった。
夜更しに費やした時間も有意義なものではなく、身体を休めるどころか疲労させてしまったために、余計体力を消耗しているのだ。
養護教諭にただ寝かせて欲しいと説明して理解を得られるとも思えないが、優しいと評判の先生ならば、多少のわがままは聞いてくれるかもしれないと淡い期待を胸に歩を進めている。
だが眠気に包まれた三玖の頭は、目の前に現れた少女によって冷静に覚醒した。
「あれ、三玖じゃない。どうしたのよこんなところで? もしかして具合悪いの?」
保健室の戸を締めて出てきたのは、中野家の次女―二乃だった。
「ちょっとだるくて、少しベッドを使わせてもらおうかと思ったの。二乃も保健室に用事?」
「あ、えーと……用事っていうか……、えっと、そう! く、クラスの奴が体調悪いって言うから連れてきたのよ。そしたら先生いないから、とりあえず書き置きして戻ろうとしてたところ」
「そうなんだ。クラスの人は今寝てるの?」
「え、ええ。だからアンタも静かに寝てなさいよ?」
「保健室で騒ぐわけない」
「うるさいわよっ、ほらさっさと行った」
落ち着かない様子の二乃が立ち去り、入れ替わりで三玖が保健室に入る。
二乃の言うとおり養護教諭の姿はなく、カーテンが締め切られた奥のベッドには二乃のクラスメイトが寝ているのだろう。
具合が悪い旨をメモに残し、手前のベッドが空いているのを確認した三玖は布団の中に潜った。
◇
三玖が目を覚ましたのは、午後四時を回った頃だった。
授業が終わり学生たちが帰宅する時間になってしまったが、彼女に焦る様子はない。
身体を起こしてカーテンを開けるが先生の姿は見当たらず、『職員会議のため外します』と書かれたメモだけが残されていた。
二乃と三玖が用意したメモには兎を象ったスタンプが押されており、それを見た三玖の口元は思わず綻んでいた。
「優しい先生で良かった……」
授業に出席しなかったことに対する罪悪感はほとんどなく、クラスメイトと比較して勉強が遅れてしまうという焦りを、三玖は微塵も感じていなかった。
状況を確認するためにスマートフォンを取り出すと、つい数分前に四女―四葉から『部活が終わったら迎えに行くよ』とメッセージが届いていた。
いつの間にか三玖の荷物がベッドの横に置いてあるのは、クラスメイトや姉妹たちに状況が伝わって四葉が届けてくれたものなのだろう。
三玖はベッドに腰掛け、眠い目をこすりながらふと隣のベッドに意識を向けた。
(誰がいるんだろ……)
カーテンは閉じられたまま、穏やかな寝息を立てている様子を見るに、もう一人の利用者もまだ就寝中のようだ。
二乃が連れてきたクラスメイトということしか知らないが、そっとカーテンを覗き込んで中を見ると、そこには一人の男子生徒が背中を向けて横になっていた。
(男子……だったんだ……誰だろ……)
保健室のベッドとはいえ、知らない男子生徒が隣で寝ていたことを考えて微かな羞恥心がこみ上げてくるが、許容できない範囲ではない。
異性の寝ている姿を覗くのは何かと問題があると思い、そっと顔を離そうとしたとき、
「ぅ……っ」
男子生徒が声を漏らしながらこちらに向かって寝返りを打ち、その拍子に掛けていた布団がばさっと剥がれて床に落ちて、仰向けになった状態で再び寝息を立て始めた。
布団が剥がれる光景に気が付かないふりをするのも気分が悪いと考え、三玖はそっとカーテンの中へと入った。
だが視界に飛び込んできたその光景は、彼女にとって衝撃的なものだった。
思わず口元を塞ぎ、声を押し殺してなお、丸い目をより大きく開いて姿を凝視してしまう。
ワイシャツのボタンが大きく開かれて胸板から乳首までが露出しており、ジャージを履いている下半身は、股間が大きく盛り上がって窮屈そうに天井を向いていた。
(これ男子の……勃起……っていうんだよね……?)
三玖は男性の性器は興奮状態でなくとも様々な生理現象で固くなるという知識を持ち合わせていたのだが、それでもなお、初めて勃起した性器を見て彼女の思考は停止してしまう。
会話こそしたことはないが、三玖はこの男のことを知っていた。
(この人……いつも学年上位の成績で有名な人だ。そっか、二乃のクラスだったんだ)
成績優秀者であり、クラスメイトの女子が色恋話で噂しているのを聞いていたくらいだが、容姿も性格も、人伝に聞いて知っている。
どんな人なのかと詳細を詮索することはなかったが、三玖自身、多少気にかけたことはある男だ。
その同級生の男子の勃起。こんな光景を見ることはそうはないだろう。
ふと三玖の脳裏に、昨晩の記憶が蘇る。
モニターに映し出された男女の姿、熱く重なる肌の色。
(どうなってるんだろ……?)
自分の赤面した顔に気が付かないまま、三玖は持っていた布団を自分のベッドに置き、男の服に手をかけた。
◇
人の気配。
養護教諭が来たのだろうとぼんやりとした頭で考えた男は、ようやく意識を覚醒させた。
『昼休みなら保健の先生居ないから、ちゃちゃっと済ませるわよ』という二乃に連れてこられたのは何時間前のことか。
三十分にも満たない時間で二回も強引に射精させられ、ぐったりとした身体をベッドに預けていたら眠ってしまったのだ。
口元に付いた精液を拭き取りながら、『全くだらしないわね、先生には私が言っておくから休んでなさいよ』と出て行った二乃の姿を確認したところまでは覚えているのだが、それ以降の記憶は少しもない。
(授業さぼっちまったな……)
目を開け、全身に意識が伝わり、男は自分の置かれた異常な状況をようやく認識した。
「ぁ、ぇ、え?」
隣に座る少女の姿が一瞬だけびくっと震えた。
誰なのかと考える暇もなく、自分の肉体が一糸まとわぬ状態になっていることに驚愕する。
「あ、起きた?」
「起きたよ……じゃなくて、え、誰? っていうか何これっ、つか……それ……やば……っ」
「つ、辛そうだったから……。乳首もちゃんと濡らしたから大丈夫でしょ?」
「そういうことじゃ……なくて……ぁ……」
少女の指が右の乳首をこりこりと弾きながら、柔らかく温かい手が我慢汁で濡れた肉棒を扱いている。
日常的に開発され続けてきた男の身体はその愛撫に抵抗できず、連続する刺激によって拘束されていた。
「小さいのに……敏感な乳首だね。ちょっと試しに触っただけなのに、おちん◯んがビクビクしてたから……気持ち良いのかなって……」
美少女だ。
長い髪の毛で顔が隠れてしまっているが、それでも整った顔立ちをしていることはすぐに分かった。
それどころか、この顔を男は見たことがある。
毎日のように何度も濃厚な時間を過ごしてきた同級生たちの顔立ちにそっくりだ。
(もしかして……)
少し照れたような表情で見つめる少女の不慣れな愛撫に、男は我慢の限界を迎えていた。
◇
「三玖~、迎えに来たよ~体調はどう?」
「あ、うん。ありがとう四葉。心配かけてごめんね、もう元気になったから大丈夫」
帰り支度を整えていた二人の許に、部活の助っ人を終えた四葉がやってきた。
幸い、既に衣服を着終え、あらゆる痕跡を片付けたあとだったので何事もなく対応できたが、数分早かったら間に合わなかったかもしれない。
「そっか良かった良かった! で、そちらの方は?」
四葉の問いかけが、向かいの席に座っていた男へと向けられる。
「この人は二乃のクラスメイト、私もさっき知り合ったばかりなんだけど」
「あーなるほど、隣のベッドで寝てた人ですね? あなたも、もう具合は良いんですか?」
「あぁ、俺も大丈夫だよ」
この快活な少女も姉妹だと聞かされており、男は自分が深く関わっている同級生たちが全員姉妹であるということを改めて認識する。
促されるまま帰路につき、自己紹介を交えた他愛のない会話をしながら途中の道で別れた。
二乃と五月の姉妹であるということに半分驚き、半分は予想通りの結果で納得する。
そんな自分の異常性を受け止めながら、スマートフォンのアドレス帳に並ぶ三人の『中野』という名前に思考を巡らせていた。
初対面の女子にいきなり愛撫され、射精してしまった羞恥心は確かにある。
だが、二乃や五月とも既に関係を持ってしまっている男にとっては今更なことだった。
魔が差したと三玖は言っていたが、緊張して勃起が収まるどころか、絶頂までいってしまった男の変態性にも問題はある。
連日代わる代わる別の女性に身体を開発されながら、抵抗しようという考えを全くもっていない。
いつから自分は歪んでしまったのかという考えと、幸せな生活を送っているという考えが混じり合って更に意識を滲ませる。
少なくとも今はこれで良いのだと、男は快楽を優先して考えることをやめていた。
【Side:S 三女-ゴブンノイチ- つづく】
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次回:12/11(土)21:30公開予定
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※このお話はIF世界線です。五つ子が某家庭教師と出会わなかったら、という前提のストーリーです。その他細かい設定はエターナルフレイムで焼き払いました。