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留守番中に襲われた女の子




ぽかぽかとした陽射しが窓から差し込み、屋敷のリビングをやさしく照らしていた。

外は静かで、風の音さえ聞こえないほど穏やかな午後。


そして、そんな昼下がりの中心に、ひとりの少女がいた。


マリア・ラーネッド。

金色の髪は腰まで届くほど長く、陽の光を受けてきらきらと輝いている。

柔らかいウェーブのかかったその髪には、鮮やかな赤いリボンが大きく結ばれていて、どこか絵本の中の登場人物のような華やかさがあった。


服装はいつものお気に入り、ピンクのドレス。

ふんわりと広がるスカートに、胸元には白いフリルが並び、リボンとレースの装飾が可愛らしさを引き立てる。

軽くパフのかかった袖が二の腕を包み、全体的にふわりとした、少女らしい可憐なシルエットを作っていた。


そんなマリアが、ふわふわのクッションに頬を預けながらソファに寝転んでいる。


「……ひま〜……」


ぼやくような声が、部屋にぽつんと響いた。


義兄のリヒターは、今朝早くに出かけていた。

またどこかの町で吸血鬼退治の依頼を受けたらしい。

最近では「伝説のバンパイアハンター」と呼ばれるほどになっている兄を、マリアは尊敬していた。


でも――


「置いていかれたの、やっぱ納得いかないかも……」


ソファの上でゴロゴロと寝返りを打つ。

スカートの裾がふわっと広がり、ひんやりした空気が脚に触れた。


「だって、私だって強いし。ね? こう見えても!」


手を握って見せるが、誰も見ていない部屋の中では虚しいだけだった。

ため息をついて、もう一度うつ伏せになる。


そのとき――

ふと、背筋に“ぞくっ”とするような違和感が走った。


「……ん?」


何も聞こえない。何も動いていない。

けれど、ほんのわずかに空気の流れが変わった気がした。


「……気のせい?」


マリアは起き上がり、ゆっくりとリビングを見渡す。

さっきまで感じていた安心感が、どこか遠くに行ってしまったような、微妙な違和感。


それでも彼女は首をかしげながら、明るくつぶやいた。


「まぁ、いっか。お兄ちゃんが帰ってくるまでに、お茶でも入れよっかな〜♪」


そう言って、マリアはふわりと立ち上がった。

ピンクのドレスが揺れて、裾が花びらのように舞う。


彼女はまだ知らなかった。

自分の留守番が、誰かに“見計らわれていた”ことを。

そしてすでに、この屋敷の中に“侵入者”がいることも――








リビングの扉が、ギィィ……と不自然な音を立てて開いた。


「……ん?」


マリアはクッションから顔を上げ、扉の方を向いた。

そこに立っていたのは――二人の見知らぬ女だった。


ひとりは黒いスーツに身を包み、もうひとりは白衣のような長いコートを羽織っている。

どちらも、どこか冷たい目をしていた。


「……誰?」


マリアはソファからすっと立ち上がり、物怖じせずにまっすぐ二人をにらんだ。


「このお屋敷に勝手に入るなんて、悪い子だよ。なにか用?」


女たちはにやりと笑う。


「あなたには関係ないわ。だけど――“リヒターの妹”っていうのが、どうにも気に入らないのよね」


「……お兄ちゃんのこと、知ってるの?」


マリアの目がきゅっと細くなる。


「そっか。じゃあ、やっぱり悪い子たちなんだねっ!」


そのまま跳ねるように後退し、両手を構える。


「来なさい!」


「させると思って?」


ひとりの女が、一瞬で距離を詰めた。

手首をつかまれ、召喚の構えが崩れる。


「うわっ、ちょっ……はなしてぇっ!」


もう一人の女が回り込むようにしてマリアの肩を押さえつける。

スカートがふわりと舞い、床に踏み込む足がもつれてしまった。


「このっ……あたし、負けないからねっ!!」


暴れるマリア。

細い体をいっぱいに使って、ねじって、蹴って、必死に抵抗する。


「本当に元気。でも――そろそろ黙ってもらうわね」


女がポケットから薄紫の布を取り出す。


「なに、それっ!?」


マリアが叫ぶより早く、ぽんっという音とともに、その布が口元にぴたりと貼りついた。


「ん゛っ!? んむぅぅっっ!!」


柔らかな魔法布が、口元だけでなく鼻の上あたりまでぴったりと覆っていく。


「ふぅーっ! ふぅーーーっ!! んんんーーっっ!!」


マリアは顔を左右に振って抵抗するが、布は吸いつくように肌に密着し、外れる気配はまったくない。


「さぁ、これで召喚も、叫び声も、ぜーんぶおしまい」


「ふむっ、ふぐっ……んんっっ!!」


なおも暴れるマリアを、女たちはあざ笑うように押さえ込む。


「お兄ちゃんによろしくね、可愛い妹ちゃん?」


「んむぅっっ!! んーーっ!!」


目に悔しさと怒りを浮かべながら、マリアは激しく身をよじらせる。

髪がばらけ、スカートが乱れても、それでも力を込めて体を捩る。


「(お兄ちゃんっ……はやく、帰ってきて……っ!)」


彼女の叫びも願いも、今はただ、こもったうめき声として、布の奥で震えているだけだった。







「んぐっ……んんんっ!!」


魔法の布で口と鼻を塞がれたまま、マリアは必死に首を振って暴れた。

でも、押さえつける女たちの力は強くて、身体をうまく起こすこともできない。


「さぁ、まずはその腕。ちゃんと後ろに回してあげて」


「んぅっ!? ふぐぅっ……!」


片方の女がマリアの両手首を無理やり背中へと引き回す。

マリアは全身をくねらせて抵抗するけど、押さえつけられた肩が動かない。

そのまま――きゅっと冷たいロープの感触が走った。


「んぐっ……っ!? んんーっ!!」


背中で、マリアの手首がぴったりと束ねられていく。

一巻き、また一巻き。

ロープが肌に擦れて、すぐにぎゅうっと締め上げられた。


「ふむふむ、なかなかいい体のラインしてるじゃない。ちゃんと見えるように……」


もう片方の女が、マリアの前に回り込んだ。


「次はここね」


言うが早いか、ロープが胸の下にぐるりと回された。

そのままぐいっと引かれて――


「んっっ!? んむぅぅうっ!!」


マリアは体をよじって逃れようとするけど、ロープは容赦なく締まっていく。

胸のすぐ下に食い込むように、しっかりと巻かれ、そして次は――


「もちろん、上にも通さないとね」


上――?


「ん゛っ……やだっ、やめ……っ!」


言葉にならない悲鳴が、布の下で震えた。

今度は肩の上からロープが回され、胸の上部に沿うようにぴたりと巻かれていく。


上下から持ち上げられるように、形を押し出されるように――

胸はロープに挟み込まれて、勝手に主張を強めてしまう。


「んんんっっ!! ふぐっ、んんーーっっ!!」


マリアは体を大きくくねらせた。

けれど手首は背中で縛られ、胸の上下も締め上げられているせいで、ほとんど身動きできない。


「ねぇ、どう?ちゃんと見えるように縛ってあげたわよ?」


「リヒターのお兄ちゃん、こういうの見るのかしらねぇ?」


「んむぅっっ!!」


胸がぎゅうっと締められているせいで、息をするたびにロープが肌に擦れて……

汗ばんできた布の中が、熱くて苦しくてたまらない。


「(やだっ、こんなのっ……こんな姿……っ!)」

「んぅぅっっ!! んんーーっっ!!」


マリアは決して諦めず、暴れ続けていた。







「ふふ、上半身は完成ね。次は……脚、いっちゃおうか」


「んむっ!? んんんーーっ!!」


マリアは頭を振って必死に拒絶の意思を示す。

でも、魔法の布で口も鼻も塞がれている今、そんな声はこもった息の音にしかならなかった。


「大丈夫、優しくしてあげるから♪ でもしっかりね」


一人の女がしゃがみ込み、私の太ももに手を添える。

そのまま滑らせるようにして、ロープを巻き始めた。


「んんっ……んぐぅぅうっ!!」


ぐる、ぐる、と。

ロープが生地の上からでもわかるほどにぴったりと食い込んでいく。


「(やだ……やめて……そんなところまで……っ)」

「(足、逃げられない……っ!)」


腿の高い位置で数回巻いたあと、結び目をぎゅっと締められる。

太ももがくっと絞られ、肌の内側が熱くなるような圧迫感が走った。


「はい、次。膝いくよ〜」


「ふぐっ!? んんんーっ!!」


続いて膝の上。

ドレスのスカートがたくし上げられ、女の手が迷いなくロープを回していく。


マリアは膝をバタつかせて抵抗するけど、両手は背中で縛られてるし、胸の上下も締めつけられてて、うまく力が入らない。


「動かないの。逆に締めたくなっちゃうじゃない」


「んんっっ!? んむーーっっ!!」


膝上のロープがぐいっと締まり、脚の曲げ伸ばしが制限される。

脚全体が、じわじわと自由を奪われていく感覚に、マリアは体をくねらせるしかなかった。


「はい、最後は――お待ちかねの足首ね」


「ふぅーーっ!! んんんんっっ!!」


両脚を揃えたまま、足首にしゅるっとロープが絡む。

そこから一気に、きゅっ、きゅっ、ぎゅうっ……!


「(やだっ……足まで完全に……!)」


結び終えた女が、わざとらしくマリアの足を軽く持ち上げて見せた。


「これで逃げられないねぇ。見て、ピンクのお姫様が、ロープでぜーんぶおとなしくなっちゃった」


「んぅっっ!! んんーーーっ!!」


マリアは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、必死に全身をくねらせる。

でも――


手首は背中の後ろでしっかり縛られ、胸の上下はロープに挟まれ、太もも・膝・足首はすべて固定されていた。


もう、動こうとするたびにロープが軋み、身体がきしむ音しか響かない。


「(こんな……こんなのって……っ!)」

「(お兄ちゃん………助けに来て……っ)」


そんなぐちゃぐちゃな感情を抱えながら、マリアはなおも声にならないうめき声を上げて、暴れ続けていた。








「ふぅん、しっかり縛ったし、もう暴れられないわね」


「じゃあ、せっかくだし……お姫様にはお姫様のお部屋でお休みいただこうかしら?」


「んんっ!? んむぅぅうっ!!」


マリアは声にならないうめき声を上げながら、全身を捩らせた。

けれど、背中で縛られた手首、胸の上下を締め上げるロープ、ぴったり揃えて縛られた太もも、膝、足首――

どこにも力が入らない。どれだけ体をよじっても、きゅうきゅうとロープが軋む音がするだけだった。


「動くたびにロープがきつくなるでしょ? 可愛い〜♪」


「さ、持っていこ。リヒターの可愛い妹ちゃんのお部屋へ」


「ふぅーっ! んんーっ!!」


マリアは全力で抵抗しようとした。

けれど――


女たちは、ひょいっとマリアの体を担ぎ上げた。


「んむぅうっ!? んんっ、んんーーっ!!」


体が浮く。

縛られたままの姿勢で持ち上げられたマリアは、肩に背中を預けられた状態で運ばれていく。

髪がだらりと垂れ、ドレスの裾が揺れ、ロープの締め付けが強調されるように身体がぐにゃりと傾く。


「ほらほら、静かにね〜。お姫様が騒ぐと、ご近所迷惑でしょ?」


「んぐぅっ!! ふぐっ……っふぅーっ!!」


マリアは必死に足をバタつかせる。

でも足首はがっちりと縛られていて、ただ“揺れる”だけ。

手も動かせず、顔は布に覆われて声も出せない。


廊下を進む間、悔しさと羞恥がこみあげてくる。


「(あたしの部屋に……連れてかれる……っ!)」

「(あそこ……ぬいぐるみとか、お兄ちゃんとの写真とか……!やだっ、やめてっ!!)」


やがて、部屋の前に着いた。


「この部屋ね。中、可愛い〜♡」


「んんーっ!! んむーーっ!!」


マリアは頭を振って必死に拒否を示した。

だけど――


どさっ!


「んぐぅっっ!!」


女たちは、ベッドの上に、そのままマリアを放り込んだ。


ロープに縛られた身体が布団に跳ね返り、きゅうっと締め付けが強まる。


「おとなしくしてなさい、マリアちゃん。今からが本番なんだから」


「……たっぷり楽しませてもらうわよ」


二人はくすくすと笑いながら、静かにドアを閉めた。


バタン――


部屋に静寂が戻る。


「んっ……んんんっっ……!」


マリアはぐしゃぐしゃに乱れたドレスのまま、ベッドの上で全身をよじらせる。

自分の部屋。なのに、安心どころか――一番見られたくなかった空間に、こんな姿で放り込まれたという現実が、さらに羞恥を煽ってくる。


「(お兄ちゃん……こんな、こんなの……っ)」

「(助けて…っ!!)」


揺れる視線、揺れる心。

口を覆う布の中で、熱い息がまたひとつ、詰まっていった。







「じゃあ、リヒターが帰ってくるまで――大人しくしてなさいね」


そう言い残して、女たちはくすくすと笑いながら部屋を後にした。


バタン……


扉が閉まる音が、心の奥まで響いた。

マリアは、縛られたままベッドの上に取り残された。


「んぐぅっ……! んんーっっ!!」


全身をくねらせる。

ロープに包まれた体を、なんとか少しでも動かそうと、懸命に身じろぎした。


背中でぎゅうぎゅうに縛られた手首を、捻るようにこすり合わせる。

けれど結び目には指先すら届かず、ロープはびくとも動かない。


「(くそっ……解けない……っ!)」


胸の上下を締め付けているロープが、呼吸のたびにぎゅうぎゅうと肌に擦れてくる。

汗ばんだ布地の中で、鼓動と一緒にロープが脈打つみたいに感じる。


「んむっ、ふぐっ……っふぅーーっ!!」


鼻まで覆われた魔法の布は、まだぴたりと口元に張り付いたままだ。

息を吸おうとするたび、こもった空気がむわっと顔の中にこもる。


「(誰かに見つかったら……こんな恥ずかしい姿……っ!)」


マリアはベッドの上でゴロンと転がり、膝を持ち上げようとする。

だけど、太もも・膝・足首に巻かれたロープがぴたりと脚を固定していて、自由にならない。


「んーっっ! んんんーっ!!」


なんとか少しでもずらそうと足をバタつかせる。

すると、その反動で胸のロープがまた締まり、息が詰まるような感覚が襲ってくる。


「(動けば締まる……でも、じっとなんてしてられないっ!)」

「(絶対に縄を解かないと……!!)」


マリアは再び暴れ出した。

両脚を揃えたままぐいっと跳ねさせ、背中のロープを少しでもずらそうと肩を捩じる。


「んっっ……んぅっ、んーーーっ!!」


だがロープは動かない。

きゅっ、きゅっ、と肌を擦る音だけがむなしく響く。


自分の部屋。

ぬいぐるみも、写真立ても、全部見慣れた安心の空間のはずなのに――


今のマリアは、ここがいちばん見られたくない場所になっていた。


「(お願い……見つかる前に……自分で、ほどいて……っ!)」

「(私、絶対に……お兄ちゃんにこんな姿、見せたくない……っ!!)」


悔し涙がこぼれる。

それでもマリアは、全身をくねらせて、必死に藻掻き続けた。


ロープの軋む音と、こもったうめき声だけが、静まり返った部屋に響いていた。








「んんーっっ!! ふむっ、んぐぅっっ!!」


マリアはベッドの上で、全身を激しくくねらせていた。

背中でぎゅうぎゅうに縛られた手首を擦り合わせ、なんとかロープを緩めようと力を込める。

だが、肌にぴったりと吸いつく魔法の縄は、びくともしなかった。


「んぐっっ!! んっ……ふぅっ、んむむーーっ!!」


口と鼻を覆う布に声を封じられながらも、マリアは叫ぶようにうめいた。

悔しさと怒りをぶつけるように、全身で暴れ続ける。


呼吸のたびに胸を締め付けるロープが擦れ、息苦しさが増す。

汗ばんだドレスの中は蒸れて熱く、それでも彼女の動きは止まらない。


「ふぐっ、んんぅうっ!! んーーっっ!!」


脚をばたつかせようとしても、太もも・膝・足首すべてが縛られていてほとんど動かせない。

それでもマリアは、拘束された身体でベッドの上を転がりながら抵抗を続ける。


「んんっっ! むーっ! んぐうううっ!!」


ロープがきゅっ、きゅっと肌を擦る音と、くぐもったうめき声だけが部屋に響く。

ほどけた赤いリボンが髪から滑り落ち、ベッドの端に転がった。


「(くっそぉぉぉ……っ!)」

「(ほどけ……ほどけってば……っ!)」

「(私、こんなもんに負けないんだからっ!!)」


マリアは肩に力を込め、背中を持ち上げるようにして、縛られた手首に全力を注ぐ。

ぎちぎちとロープが鳴る。

布越しの息が荒くなり、再び全身をひねるようにして跳ねる。


「んんーーっっ!! んっ、んむむーーーっ!!」


ロープは動かない。

だが、マリアは止まらない。


「んっ、んぅっ! ふぐっっ! んーーーっ!!」


どれだけ苦しくても、どれだけ汗が流れても、彼女の動きが止まることはなかった。

全身を縛られ、声も出せないその姿で――マリアは、ただ必死に、ひとりで闘っていた。








「んむっ……んんーーっっ!!」


マリアはさらに激しく身体をくねらせた。

ベッドの上で転がりながら、縛られた手首をなんとかずらそうと背中に力を入れ、足を揃えたまま跳ねるように暴れる。


「んっ! んぅうっ! ふぐぅっ!!」


ロープが軋む。

胸の上下を締め付ける縄がぎゅうっと食い込み、息をするたびにきゅっ、きゅっと擦れて苦しさが増していく。


「(もう少し……もうちょっとだけ動ければ……っ!)」


拘束されたまま、マリアはベッドの端へとじりじりと転がっていく。

足も腕も自由はない。けれど、体重をずらし、勢いをつけるように腰をひねる。


「んんっ! んむーーーっっ!!」


ぐらっ。


視界が傾いた――


そして、


ドサッ!!


「んぐぅっっ!!」


マリアの身体が、ベッドから床へと転げ落ちた。

背中から絨毯に落ちるように倒れ込み、クッション性はあったものの、反動で体が跳ねてロープの締め付けがさらに強まる。


「んっ……んんんっっ……!」


一瞬、息が詰まりかける。

けれど、マリアは止まらない。

倒れたままでも、再び背中を動かし、腕を引き、脚をよじらせようと全身をうねらせる。


「ふぐっ……ふぅっ! んーーーっ!!」


髪が顔にかかり、ドレスは乱れてめくれ、汗ばんだ身体にロープが貼り付く。

それでも――


「(私は……絶対にあきらめないっ!!)」

「(負けない……負けてやるもんかっ!!)」


床の上で、ぐしゃぐしゃに縛られたまま、マリアはなおも抵抗し続けていた。


ロープは緩まない。

口の布は外れない。

だが――その心だけは、何ひとつ屈していなかった。







ドアの外で、コツン、コツン……と、ヒールの音が近づいてくる。


「……ねえ、聞こえた?」


「うん。随分と元気に暴れてるみたいね」


部屋のドアがゆっくりと開いた。


マリアは、床の上でうつ伏せのまま必死にもがいていた。

手首も胸も、足も、すべてロープでがんじがらめ。

それでも動くことをやめず、ロープの軋む音とくぐもったうめき声を響かせていた。


「ふぐっ……っんんーっっ!! んむぅうっっ!!」


ドアを開けた女たちは、少し呆れたように、そして楽しげに笑った。


「ふふ、そんなに暴れちゃって」

「おとなしくしてなさいって言ったでしょ?」


マリアは顔を上げ、必死に首を振って抗議のうめき声を上げる。


「んんっっ!! んんーーーっ!!」


「仕方ないわね……。ちょっとだけ、お仕置きが必要ね」


「ふぅーっ!! ふぐぅっ!!」


女のひとりが、ロープの端を手に持ってマリアに近づいた。

それは、マリアの足首を縛っている縄の一部――

もう一方の手には、背中側の手首のロープから伸びた結び目が握られていた。


「これをこうして……はい、できあがり♡」


キュッ……パチン!


「ん゛ぐぅぅっっ!?!?」


マリアの体が、びくんと震える。

次の瞬間――


ロープがぐいっと引かれ、足首と背中が繋がれた。


身体が無理やりのけぞる形に固定される。


「んんーーーっっっ!! ふぐっっ!! んんむぅううーーーっ!!」


床にぴたりと押しつけられたまま、マリアは激しく身を捩った。

だが逆えび縛りにされた体は、反るほどに苦しさが増し、動きはますます制限されていく。


「うふふ、すっごく綺麗に反ったわねぇ」

「もう一声、いい声聞かせて?」


「んぐっっ!! ふっ……ふぐぅっっ!! んんんーーっっ!!」


マリアの身体はロープに引かれ、まるでくの字に弓なりになったまま、もがくたびにギチギチと音を立てる。

胸のロープが突き上げられ、肩に力を入れるたび息が詰まり、顔は熱く、息は荒くなっていく。


「(くそっ……ぜったい、負けない……!!)」

「(私、こんなもんじゃ……っ!!)」


ロープが締まり、体がのけぞり、布に覆われた口からはひたすらにくぐもった叫びが溢れ続ける。


「んんっっっ!! んーーーっっ!! ふんむぅぅぅっ!!」


それでもマリアは――なおも、必死に、全力であらがっていた。








「リヒターへの恨みも……この子に仕返ししちゃう?」


「いいじゃないそれ。お兄ちゃん想いの妹さんに、た〜っぷり伝えてあげなきゃね」


「んんっ……んむぅっ!? ふぐぅぅっ!!」


マリアは激しく首を振って抵抗を示したが、逆えび縛りでのけぞった身体は、もはやぴくりと動くだけで精一杯だった。

背中と足首を繋ぐロープがきつく締まり、胸も腕も完全に拘束されたまま。

顔は真っ赤に染まり、鼻からの呼吸だけで必死に息を整えている。


「それじゃあ……リヒターがどんな気持ちになるか、想像しながら楽しませてもらおうかしら?」


女のひとりが、マリアの足の裏にそっと指を這わせた。


「んむっ……!?」


ぴくん、とマリアの身体が跳ねた。

くすぐりに対する反射――だが、逃げることはできない。


「こっちも。せ〜の……くすぐったぁ〜い?」


女たちの指が、両足の裏を同時にくすぐり始めた。


「んんんっっ!? ん゛ん゛っ! ふっ……ふぶぅっっ!!」


マリアの鼻から、荒い呼吸が漏れ始める。

くすぐったさを押し殺そうと必死だが、鼻息がどんどん荒くなるのを抑えきれない。


「ふーっ! ふぅーっ! ふっふぅっっ!!」

「んんーっっ!! んっ、んんんーーーっっ!!」


「くすぐったい? ほらほら、指の間も〜♪」


「ここなんかどう? 土踏まず……ふふ、すっごい反応♡」


「ん゛ぐっっ! んむむぅぅっ!! ふぅーっ! ふぅーーーっっ!!」


マリアの足がびくびくと痙攣する。

だが、足首はロープでぴったりと揃えられていて、自由にはできない。

身を捩ろうとしても、逆えびの姿勢では腰が引けず、くすぐりから逃れることができない。


「(やめてぇっっ……! くすぐったい……息が……っ!)」

「(でも、笑えない……苦しいだけ……!)」

「(お願いっ……ロープ、外れて……っ!!)」


うめき声と、鼻息。

ロープの軋む音と、女たちの笑い声。

部屋の中は、異様な熱気に包まれていく。


「んっ! ふぶっ、ふぅーーっっ!! んんんーーーっ!!」


それでもマリアは、拘束されたまま、全身を震わせて――あがき続けていた。







「ふふっ、もう足の裏だけじゃ物足りないわね」


「この子、身体じゅうくすぐったそうなタイプだし?」


「んむっ!? ふぅーっ! んんんーーっ!!」


逆えびにされた体勢のまま、マリアのくねる身体に、女たちの指先が這い始めた。

柔らかな脇腹に、くすぐりの魔の手が忍び込む。


「こっちも、くすぐっちゃおうか」


女の指が、マリアの脇の下を優しく、しかし執拗に撫で回す。


「んぶぅうっ!! んんんっっ!! ふぅーーーっっ!!」

「んむーっっ!! ふぐぐっ!!」


鼻から絞り出される、荒い呼吸。

マリアの体はビクンビクンと跳ねるが、縛られた手首も、締め上げられた足も、びくとも動かない。

ただ無様に、くすぐられるがまま。


「くすぐったい? どう? お姫様は♡」


「ねえ、召喚術は? どこにいったのかしらぁ〜?」

「――あ、そうか。召喚術が使えなきゃ、ただの女の子ね?」


「んむーーーっっ!! ふっ……ふぶぅぅっっ!!」

「ふーっ! ふぐっっ! んんーーっっ!!」


女の爪先が、マリアの肋骨の間を軽くなぞる。


「ここもくすぐったいんだぁ? ふふ、可愛い反応♡」

「お兄ちゃんが見たら泣いちゃうかもね〜、妹がこんなにされてるの」


マリアの目からは涙が滲んでいた。

それでも、声をあげることはできない。

布で口をふさがれ、鼻呼吸だけで必死に耐えている。


「(やめて……くすぐったいの、苦しいのっ……!)」

「(召喚術……使えれば……こんな女たちに……っ!)」

「(お兄ちゃん、はやく……帰ってきて……っ!!)」


しかし願いは届かず、くすぐりはなおも続いた。









「はぁ〜、楽しかったぁ……♡」

「ねぇ、また来ようよ。お兄ちゃんが帰ってきたら、もっと面白いことができるかもよ?」


「ふふっ、じゃあ今度こそ……大人しくしてなさい、マリアちゃん♡」


そう言い残すと、女たちは満足げに笑いながら部屋を出ていった。

扉が「バタン」と閉じられる音と共に、部屋は再び静寂に包まれる。


「んむぅっ……! んんーーっっ!!」

「ふぅーーっ……ふぐっ……ふっ……」


マリアは逆えびにのけぞったまま、荒い鼻息を漏らしていた。

顔は汗に濡れ、頬にはうっすら涙の跡。

胸を締め上げる縄が呼吸のたびにきつく締まり、足首と背中を繋ぐ縄は容赦なく身体を反らせたまま固定している。


「(はぁ……はぁ……また、置いていかれた……っ)」

「(くすぐったいの、もうイヤなのに……まだ身体が震えてる……っ)」


静まり返った部屋に、聞こえるのはマリアの鼻息とうめき声だけ。


「んぐぅっ……ふっ、ふぅーっ……!」

「んんっ……むぅぅぅっ……!」


動こうとすればするほどロープが軋む音がする。

だが逃れられる隙はどこにもなかった。


マリアは無様に縄に囚われたまま、ただただ無力にもがくしかなかった。








玄関の扉が、静かに、しかし確かな力で開かれた。


「……妙だな。鍵をかけて出たはずだが」


ゆっくりと家に足を踏み入れるのは、マリアの義兄・リヒター。

漆黒のコートを翻し、腰にはホーリークロス、銀の鞭を携えたバンパイアハンターである。


部屋の空気がいつもと違う。

殺気と魔力の残滓が混ざったような、不穏な気配が漂っていた。


「……いるな」


その一言と同時に、背後の影から現れた二人の女――先ほどマリアを襲った侵入者たちだった。


「ふふっ、遅かったね。お兄ちゃん?」


「マリアにはもうたっぷり楽しませてもらったよ」


リヒターは静かに目を細めた。


「貴様ら……。マリアに、何をした」


「知りたい?だったら──」


ドンッ!


女のひとりが魔法陣を展開しようとした瞬間、

リヒターの動きが一瞬だけぶれた。


その直後、彼の拳が女の腹部を直撃し、壁ごと吹き飛ばした。


「……騒ぐな。壁が壊れる」


「くっ……!このっ!」


もう一人の女が襲いかかる。だが、リヒターは軽く腕を掴むと、そのまま床に叩きつけるようにして失神させた。


たった数秒。

それで、すべてが終わった。


「……マリア」


リヒターは、足音を立てずに廊下を歩いた。

その足が止まったのは、マリアの部屋の前。


ドアを開けると──


「んんっ!? んんーーーっ!!」


そこには、ピンクのドレスのまま、逆えびにのけぞる体勢で縛られたマリアの姿があった。

大きな赤いリボンが揺れている。鼻まで覆う布が声を遮っていたが、涙目でうめきながら暴れる様子は、明らかに助けを求めていた。


「……すぐに、解く」


リヒターは静かにそう言うと、ポケットから短剣を抜いた。







「もう大丈夫だ、マリア……動かないでくれ」


リヒターは短剣を慎重に使いながら、背中に繋がれたロープを切っていく。

ギチギチに食い込んだ縄がようやく緩むと、マリアの身体がベッドに崩れ落ちた。


「んっ……ぷはっ!」


鼻まで覆っていた布を取り外すと、マリアは大きく息を吸い込んだ。


「お、お兄ちゃんっ!やっと来てくれたぁ〜!」


涙を浮かべながら、マリアは両腕をぐるぐると振り回した。まだ体は少しぎこちなかったが、解放された喜びは隠せない。


「ありがとうっ、ほんとに……!」


「怪我はないか?」


「うんっ……でもね、聞いてよお兄ちゃん!」


マリアはぷくっと頬をふくらませながら、ベッドの上に正座して、まるでお説教でもするかのように語り始めた。


「いきなりね、変な女たちが家に入ってきて、召喚しようとしたら、口ふさがれて!ぎゅーってロープでぐるぐるにされて、胸もきゅーって! 足も、手も、もう動けないくらい縛られちゃって!すっごく、く、くすぐられてぇ〜〜!」


「……くすぐられた?」


「そう!足の裏とか、脇の下とか、もう、くすぐったくて涙出そうだったんだからっ!」


マリアは両腕をばたばたさせて訴える。リヒターはしばし黙った後、深くため息をついた。


「……よく耐えたな、マリア」


「でしょ? 私、すっごく頑張ったんだから!」


「……でも、次はもう少し冷静に――」


「むぅ〜、真面目なこと言わないでよ〜!女の人たち、私が可愛いからいじめたんだよ、絶対!」


「……そうかもしれないな」


リヒターは静かに頷きながら、部屋を見渡した。

縄の残骸、魔力の残り香、マリアの涙ぐんだ瞳――

確かに、彼女はよく頑張っていた。






ー終ー


小説の依頼はこちら(skeb) https://skeb.jp/@puyo_damsel


リクエストありがとうございました!


マリアの部屋に何があるのか、リヒターはどんな格好なのか、どれくらい強いのか、バンパイアハンターという言葉から想像で補いました。


必死に藻掻くマリアちゃんが可愛い!!


よろしければまたマリアの物語を書かせてください!



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