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緊縛された不良の女の子〜戦闘縄師〜





「うおおおおおお!」

「どいつもこいつも馬鹿みたいに突っ込んで来やがる」


私は"回し蹴り"を顔面にぶち当てると相手の男は紙切れの如く吹っ飛んだ。

夜の住宅街にまた1人犠牲者が出る。


「いいか、私に"遭った"てめぇが悪いんだよ」


気絶した男のポケットから財布を盗むとその場を後にした。












ーーーーーーーー




とある夏の日

陽はとっくに落ちて月が出ている。

その日の夜は公園のブランコに乗っていた。


先に目を逸らした方が負け。

喧嘩のルールブックがあるならば一頁目の一行目に書かれているだろう。

お互いにそれを知っているから"メンチを切り合う"などという事態が生まれるのだ。


「………?」


こいつは私から目を逸らした。


「ヤる前から決着してんだよぉおお!」

「!」


私は躊躇なく右ストレートを繰り出す。


「いきなり殴りかかるなんて野蛮ね」

「!?」


赤い充血したような目に底しれぬ不気味さがある。黒のレインコートを身につけてもなお素早く動けることから格闘技か何かやっているようだ。

今までヤッて来た雑魚どもとは比べ物にならない覇気がある。


「お姉さん、なんかやってんのか?」

「怪獣かとおもったら会話もできるの」

「はやく答えろよ」

「私は戦闘縄師よ」


女はレインコートの中から束になった縄をいくつか取り出し『シュルシュル』と解くとまるで生き物のように操って見せた。従順に飼い慣らされた空飛ぶ蛇……………とでも言えばいいのだろうか。その動きには彼女の意思さえ宿っているように見えた。


「エモノ使うのかよ」

「急に殴りかかるような怪獣相手には必要ね」


心底腹が立つ喋り方に嫌気がさした。気が短い私にとっては天敵だ。


「一発で終わらせるつもりだったけどボコボコにしてやる」


相手の女からは得体の知れない不気味さを感じるがレインコートからすらっと覗く足を見るに細い印象だ。力勝負になれば絶対に私が勝つ。私は自慢の脚力で右に左に体を動かし、女の繰り出す縄をかわしながら間合いを詰めた。そこで繰り出す渾身の右ストレート。


「うおらぁあ!」

「うぐっ!………丸腰で私の縄をかわしながら詰めてくるなんて………すごい動き、おおよそ人間とは思えないステップね」

「喋ってる暇あんのかよ」


受け流された

あたったとはいえ常人にはあり得ない体の捌き方…………こいつは………誰なんだ?


「......」

「接近戦はきつそうね」


女は即座に縄を束ねるや否や公園の滑り台の方へかけて行った。雨なんて降っていないのに黒のレインコートを着ているのは闇に紛れるためだろうか。


「まちやがれぇえ!」

「!」


すぐさま後を追いかけた私はまたしても右手の拳を強く突き出す。子供がちょうど滑って遊ぶ部分に私の拳は衝突した。

『ゴウン』と音を立てて滑り台が揺れる。驚いたのかバランスを崩して落ちてきた女の顔を狙った回し蹴り。


「ッッッ!!」


間一髪といった感じで女は体をそらして私の回し蹴りをしのいだ………………だけでなく


「おっ!?」

「捕まえた」


私の右脚に女が持っていた縄が一巻き………そしてそれを引っ張られると


「ぁああっ!」

「怪獣さん捕獲!」


私は仰向けにすっ転んでしまった。

女はすぐさまそこに覆いかぶさって来る。


「このまま私に縛られて頂戴な」

「………らぁっ!」

「う゛っ」


公園の土を掴んだ私はそれを女の赤い目にぶっかけた。一瞬怯んだ隙に相手を引き剥がす。


「いたた………流石に喧嘩慣れしてるわね」

「な……これ………取れな……」


女が目を擦っている間に右脚の縄を解こうとするも結び目が硬いのか、はたまた私が不器用なのか解けない。

「うっ……くっ……!」

喧嘩中に縄がびよびよと……邪魔でしかない。しかもその縄の先は相手の女が握っているのだ。


「簡単に解けるなんて思わないでっ!」

「うぐっ!」


同じ手は喰らわない。

女が私の右脚の縄を引っ張って来たが『グッ』と体重を乗せて抗う。


「すごい力…………でも重心がぶれぶれよ」

「っ!?」


足元に気を取られているうちに『ぶわ』っと空中から間合いを詰めて来た縄が私に襲いかかる。

右脚の重心を変えられない私は屈んでかわした。

そして縄の一つを掴むとそれを思い切り引く。


「っ!?」

女の体が私の方へ『グン』と引き寄せられた。

やはり力勝負は私に分があるようだ。

私も女を迎えに行くように小移動し、鷲掴みにして繰り出す技


「おおおおお!!」

女の体は軽々と宙に浮きそのまま反転して地面に叩きつけられた。

"バックドロップ"


「ふぅ………当分起き上がるのは無理だろうな」

「……」


女の意識は彼女の覇気とともに消え失せていた。













「てか……これ固..………」


私は公園の真ん中で右脚に巻きついた縄を弄っていた。周りが暗いせいもあって手元が見づらい。

公園の端にあるベンチ、その横にある街灯の所まで行こうとした時


「!!?」


脚が急に重くなった。

はっと後ろを振り返ると女が倒れたまま縄の先を握り締めていた。

冷や汗をかいた私は直感的に警戒態勢に入るも一足遅かった。

気づけば体は横転し『ずさぁ』とうつ伏せのまま引きずられていた。


「しぶとすぎんだろ!!」


右左合わせて10本の指をガツンと地面に突きつけて女との綱引きは拮抗状態になる。


「はっ…はっ……貴女とは永遠に………戦っていたいわぁあああああアアアア!!」

「く、狂ってやがる」


背後から聞こえる嬌声に冷や汗が止まらない。指がプルプルと震えだした。

そこに輪っかを作った縄が飛んでくる。


「!?」


急所である"首"を守ろうと両手を差し出したところを狙われた。縄の輪っかは私の両手を絡め取り『キュ』っと結ぶと上の方に捻じ上げた。


「おわぁっ!」


両手をねじ上げられてしまった私はいとも簡単に女に手繰り寄せられる。


「今度こそ捕まえたわね」

「てめぇ離せこのっ」


女の胸のあたりに蹴りを入れる私の左脚は唯一自由だった武器であるが、それだけでは到底戦える相手ではない。


「おやすみなさい」

「........かはっ……」


『クン』と縄で堕とされ……………………












夜の公園で『キィキィ』と鉄の錆びつく音が聞こえる。それに合わせるように漏れ出るのは私の無惨な呻き声。


「...........ふぅ……ふぅ………」


「うくん………ふう゛っ……」

何も喋れない…………何も見えない…………

私は子供の遊具である"ブランコ"に縛り付けられてしまった。

万歳したまま両手を頭の後ろで固定されて下半身は胡座をかくように乗せられている。


「うう゛っ……う゛っ!」

私が身をよじる度にブランコが『キィ』と音を立てる。


(この私がこんな無様な姿で…………っ!)


悔しくて身体を無理やり藻搔かせようものならブランコが大きく揺れて私を遊ばせようとする。

『キィキィ』

(…………きつぅっ!)

本来両側の鎖を持ってバランスを取る遊具なのに両手を縛られているので腹筋でなんとか姿勢を保つしかない。

一応落ちないように縄で半分吊られているようだが.............

「んぐふぅっ!」

思わず口元からか弱い声が漏れる。三重に巻かれた縄は私の唾液を吸って感触が変わっていた。


(誰か………誰か助けて…………)


「ングっ!……ングっ!」







〜終〜


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