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"この人形に起きたことは全て貴方の身に降り注ぎます"
こんなキャッチコピーの人形が仕事の帰り道に唐突に現れた怪しい夜店で売られていた。つまりこの人形を縛れば私は苦労して自縛をする必要はなくなるわけか。
私には人様にはとても言えない趣味がある。自分で自分を縛ることだ。ギチギチに緊縛されて何もできない身体にされてしまう。どんなにもがいても解けない縄。妄想するだけで秘部がそわそわする。女優並みの美人と持て囃されながら彼氏がいないのはこの特殊な趣味のせいである。
ということで、怪しいお店の怪しい老婆からこの人形を買ってきたわけだ。そして今、準備は整っている。傍に人形を縛るための縄そしてガムテープ、縄抜け用のハサミを用意してベッドの上で考え込んでいた。
「呪いの人形じゃあるまいし」
変なキャッチコピーにつられてまた衝動買いをしてしまった。私の悪い癖だ。
「いや、もしかしたら...!」
本物の可能性だってあるのだ。そう思った私は好奇心と被虐心が入り乱れ、勢いあまって人形を縛り始めていた。
自縛が趣味の私は昔から人形を縛って練習していたので割とスムーズにできた。手首から始まり足首まできっちりと縛り胸に縄をかけることも忘れない。そして閂だ。これがあるだけで縄抜けの難易度は格段に上がる。最後にガムテープで小さいお口に蓋をすると見るも哀れな緊縛された人形が完成した。
そして心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしながら両手を後ろに回して待った 。しかし何時間経っても何も起こらない。
「くそぅ...やっぱり騙された」
当たり前だ。衝動買いで痛い目を見るのはこれで何度目だろうか。私は縛られたままの人形を入れてあった箱に戻し、用意した縄、ガムテープ、ハサミも片付けてベッドに潜り込んだ。仕事の疲れもありスッと眠りについた。
「う〜ん」
夜中に苦しくて目が覚めた。何時頃だろうと机の上にある時計を確認しようと身体を...起こせない。
「んっ!」
この感覚...
なんと私は緊縛されていた。口にはガムテープまで貼られている。口内が布でいっぱいなのは舌の感触からわかった。
(あの人形...本物だったんだ!)
少し焦った私だが、大丈夫。縛られ慣れている私は縄抜けも得意なのだ。まず肩を揺らしながら手首を固定する縄を外そうとモゾモゾと動かした。しかしギッチリと固定されている縄は外すことができない。ならば足首だ。
「うっ!ふぅ!」
必死にもがき続けること20分、解ける様子はない。
(くぅ、なんでこんなにきつく縛ってあるのよ!)
なんとも理不尽なことを思いながら仕方なくハサミを使おうとベッドの上を探したが見つからない。
(あれ?どこにやったっけ?)
私は眠りにつくまでの記憶を辿り、ハサミをしまった場所を思い出し青ざめた。
(しまった!タンスの上だ!)
今の私の状態ではなんとか立ち上がってもハサミのある位置までギリギリ手が届かない。
「んぅぅううう!!」
焦った私はめちゃくちゃにもがき始めるが縄がミシミシと唸るだけでむしろ食い込んでくるだけだった。
「むぅう!(あの人形!)」
私はベッドから転げ落ち、イモムシのように這いつくばりながら人形を入れてある箱の元までたどり着くと不自由な両手ををなんとか使い中身を取り出した。すると一緒に説明書らしきものが出てきた。
私はさっと目を通し"解除方法"の欄を見て絶望した。
"効果の解除は簡単で人形に向かって「おしまい」と語りかけてください"
なんてことだ。今の私の口は完全に封じられている。大量の詰め物が言葉を封じ、ガムテープのせいで吐き出せない。
「ほひまひぃっっ!」
自分ではおしまいと言ったつもりでも人形は感知してくれない。
「ほひまひぃーっっ!!」
必死に人形に向かって語りかけるが呻き声にしかならず、私は皮肉にも人形の小さなお口に貼ったガムテープのせいで唯一の縄抜け方法を奪われてしまったのだ。
「んんんんぅぅ!(助けて誰か!)」
涙目になりながら助けを呼ぶ。果たして彼女の小さな呻き声は夜の住宅街に届くのだろうか。
〜終〜