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その男はせっかちだった。
常に二つか三つのことを同時に進行しないと気が済まず、息つく暇もなく生活していた。
「なるほど、先ずは口に手を当てて………腕をとってねじ伏せる………と」
付けっぱなしのテレビは騒がしくCMを流す。男はそれを聞きながら『制圧術』の本を読んでいた。
「2人を相手取る場合は先に倒した方を緊縛し………なんだこれは」
不親切な本だなとぼやきながらどこへやったかも分からない辞書を探してその意味を調べる。
「緊縛……あぁなんだ縛るってことか」
分厚い辞書は放り投げられて汚い部屋の一部に帰った。
「実戦向きじゃないな、1人を縛ってるうちにもう1人が大人しく指を加えて待ってるわけがない」
安っぽいソファの上で文句を言う男に答える形で次のページに『結束バンド』の使い方が載っていた。
「何!?こんなに便利な代物があるとは、これであの姉妹が体育会系だとしても安心だ」
実は男はこれからとある家に強盗に入る計画を立てていた。
計画と言っても昨日思い付いたばかりで男には強盗の知識などさらさら無い。
それで付け焼き刃とも言えるような『制圧術』を会得しようとしているのだ。
「イメージは完璧だ。今から腕が鳴ってきたぞ」
男はソファから立ち上がり汚い部屋の真ん中で腕を伸ばした。
秋林家は上流階級と呼んでも差し支えのない家だった。
大きな家の掃除を怠らない妻は床をまるで新築のように保っていたし、その夫は物欲があまり無く物を持たない主義であった。
浪費しないので必然的に金は貯まる。
強いて金の使い道を問えば2人の子供の養育費であった。
大学生の長女は空手をやっており日々鍛錬を怠らない。その腕前は相当なものであり、同じ空手をやっている大学女子に『秋林』の名を問えば誰もが彼女の顔を思い浮かべる。
高校生の次女は受験勉強の真っ只中で姉と同じ大学に進学しようと心に誓っていた。勉学においてもともと優秀な彼女は本番6ヶ月前には合格ラインを優に超えていた。
夜中の3時、懐中電灯を灯して『秋林』の表札を念入りに確認する男は明らかに挙動不審であった。
「間違いないな、しかし緊張して来たぞ」
数時間前までは手に入る予定の大金で豪遊する自分の姿を妄想していた男だったが、たった今からこの家に押し入ると思うと勇気が出ず足踏みしていた。
「ええい、こう言うのはさっさと済ましてしまうのが良いのだ」
男は『制圧術』の他に『緊縛術』の本を手に握り、大きな門を音を立てないように片手でゆっくりと開けた。そして庭の中を抜き足差し足で進み立派なドアまでたどり着いた。
「ふむ、やはり鍵がかかっているな」
針金を取り出してドアと格闘すること15分。
「だめだ一つも開けられん。これだから金持ちの家は嫌なんだ」
二つある鍵穴の上の方は既に傷だらけになっていたが開錠することはできなかった。男は庭の中を歩き始めて侵入できそうな場所を探し始めた。そして大きな窓の前で立ち止まり、あることに気付いた。
「なんだ、開いているではないか」
僅かに開けられた窓。そこから入り込む風は家の中のカーテンを揺らしていた。
「不用心だな」
窓から侵入した男は懐中電灯で部屋の中を照らした。すると様子がおかしい事に気付いた。部屋が散らかり放題だったのだ。普通の散らかり方ではない。まるで強盗が入った後のような荒らされ具合だったのだ。
「どういう事だ」
不審に思った男は思わず口から言葉が漏れる。
「んん.......」
「!?」
静かな夜中ではその小さな呻き声もはっきりと男の耳に届いた。
声のする方向にオレンジ色の光の焦点を合わせると、この家の母娘と思わしき人物が2人背中合わせに縛られていた。
「んんーーーーーっ!」
「んぅゔゔゔゔっ!」
驚いた男は懐中電灯を切り、素早く窓の方へ進んだ。
「「んんんんーーーーーっっ!」」
彼をなんとか呼び止めようと呻き声はひときわ大きくなる。
そんな母娘の努力も虚しく男は逃げようとしていた。
状況からして自分の前に強盗が入った後だという事は明確だった。
しかし、男はその脚を止めた。
窓の外、大きな庭に相応しい大きな犬が『のっしのっし』と威厳を振りまいて歩いていたからだ。
「なんてことだ俺は犬が嫌いなんだ」
「んんぅーーーっ!」
助けを求める声を背中で受けた男は少しばかり考える。幸いなことに両隣の家は留守、この家の主人は単身赴任している。少しぐらいの時間なら潰せるだろう。
部屋の電気をぱっと付けた男は改めて部屋の中を見渡した。机は倒れ椅子はひっくり返り、鞄やら化粧品やらが散らばっている。
高そうな遮光カーテンは部屋をしっかりと守っていた。
「これなら外から見られる事はないな」
一通り部屋の中を歩いた男は母娘のところまで戻ってくると2人の縛り方を観察してみた。
本格的な"縄"が使われていた。
母が娘を下敷きにするように仰向けに倒れている。娘はスリムといえど母の全体重を背中で受けるように床にうつ伏せに押し付けられていた。もともと貧乳と見える胸がさらに可哀想な事になっている。
「んんんん!」
自分の意思とは関係なしに娘を押し潰すしかない母がガムテープの奥からくぐもった声を出した。
「なるほどこうして緊縛すれば動けないのか」
「「うんんん!?」」
男は母娘の陥った状況を見つめるだけだった。やっと助けが来たと思った彼女らはその期待とは真逆の事態が訪れたことに気づく。
「2人を一緒に緊縛するとは、いい方法だな。余計に動き辛そうだ」
事実、母娘はお互いがお互いの枷になってしまい思うように連携が取れずにいた。
汗だくの身体や火照った顔は相当な時間もがいていることを語っている。時間があったにも関わらず母娘は助けを呼べていない。男の前に入った強盗は相当な腕前だったらしい。
娘の口に巻き付けられたガムテープは男の手によって剥がされた。
「んぐぅ........うぇぇ.....」
「やけに頬が膨らんでると思ったら、しかしコレはお前のじゃないだろう」
「はぁはぁ.........誰だか知らないけど早く助けを呼んで!」
「勝手に喋るならこのパンティはお前の口の中に逆戻りする事になるぞ」
「.......」
「よし質問する、俺の前に強盗が入ったんだな?」
「そう」
「金は全部持ってかれたのか?」
「分からない」
「何故そこにある固定電話で助けを呼ばなかった」
「縛られてて届かなかったの!それに............」
「それに、なんだ?」
「...........」
「答えろ」
「んんんんんんんん!」
「やめて!」
母の甲高い呻き声を聞いた彼女は従順に喋り出した。
「私の敏感なトコに振動する変な機会くっ付けられちゃったの、リモコンはスカートのポケットの中で手が届かない。猿轡されててお母さんに伝えられないから喧嘩になっちゃって........」
「目に浮かぶようだな。しかし今はその機会とやらは止まっているようだが」
「太ももを使ってやっとの思いで止めたの。ポケットの中のリモコンを床に押し付けてなんとかボタンを押して............!?」
「ちょ........うん...............くぅっ!」
「これか」
男は依然として母の下敷きとなっている娘のスカートの中に手を突っ込んでリモコンを取り出した。
「またスイッチを入れて欲しいか」
「や、やめてよ!」
娘は声が震えていた。
既に多少なりとも床を汚してしまっているが大洪水という程でもない。本来なら彼女の愛液を受け止めるはずのパンティは母の口の中だ。
「そういえば」
ここで男はある事を思い出した。
「この家には娘が2人いたはずだが」
それを聞いた瞬間、母娘は重なり合ったまま『ピクッ』と身震いした。
「お前は姉妹のどっちだ?」
「........妹」
「姉はどこにいる」
「知らない」
「ボタンを押すぞ」
「本当に知らないの!」
『カチッ』
「う.............くん.........」
微かな振動音とそれに合わせた我慢声が娘の口から漏れる。
そこから口を割るのは早かった。
「いふぅ!........たぶんお姉ちゃんは.......あっ..........2階のぉおおん..............部屋に............ひぃぃいいん!」
「偉いぞ、よく言った」
「と、と、止めて!早く!」
「俺の後に続けて言え、"私のイケナイお口をお母さんのぐちょぐちょパンティで塞いでください"」
「わわ、私のイケナイお口をお母さんのぐちょぐちょパンティで塞いでください!」
「気持ちがこもってないな」
「わわ、私のイケナイお口を............は、はむぅううう!?」
「塞いでやる」
「ほむぅううううう!(卑怯者!)」
外では大きな犬が依然として居座っていた。
「まだ彷徨いてやがる.......仕方ない」
男はこの経験を次に生かす事を考えた。
既にこの家に金は期待できないが知恵の宝庫であることは確かだった。
本物のプロの強盗が残したものだ。
これ以上、参考になるものはない。
男は母娘の悲鳴のような呻き声を無視してリビングから出て行った。
それから20分ほど
一通り家の中を探索した男は目から鱗が落ちるようだった。
まず、電話の配線が切られていた。
これでは1階のリビングで縛られて放置されている母娘が仮に電話を取ったとしても使うことはできない。
それを知らない彼女たちは今もなお躍起になって受話器を取ろうとしているだろう。
そして
「んむぅうううううう!」
この家で1番厄介と思われる上の娘。
名の知れた空手の実力者である彼女は2階で縛られていたのだ。
「んぅう!ふっ!ふぅううう!」
目が怒りの色に染まっていた。
しかしそれとは対照的に身体は胡座をかいたまま縮こまってしまっている。
縄で体勢を固定されているようでどうにもならないらしい。
「ふぐぅ!ふんぐぅううう!」
筋肉質な身体に縄が容赦なく食い込んで大きな胸をさらに強調していた。
下着姿で激しく藻搔く彼女はなりふり構わずと言った様子だった。
男は疑問を持った。
「なぜここにあるハサミを使わない」
ベッドの上に目立つように置かれているハサミを指差して言った。
「うんぐぅうううう!」
しばらくして男はその"ハサミ"が負けん気な性格の彼女にもってこいの挑発的な責めだと気付いた。
「そうか分かったぞ、お前は胡座のまま立ち上がれない。普段なら何も考えずに潜り込めるベッドの上に手が届かないんだな」
「ふぅうううんんん!」
図星のようだった。
そしてベッドの上にはハサミの他に携帯電話が3台置かれている。
彼女のに加え母と妹のモノだろう。
これ見よがしに置かれた脱出のための道具に指一本触れることすら出来ない。
体育会系の姉にとってこれ以上屈辱なことはないだろう。
しかも口を塞がれているために下の階の母と妹に伝える事すらできない。
胡座の体勢でしかも首から足首にかけて前屈させるように縄がかかっている。
自分で階段を降りるなんて出来るはずもない。
「やはりプロの強盗は考える事が違う。母娘3人がこうしてモタモタしているうちに逃げ切っただろうな」
「うううぅぅぅ!!」
「そんな目で見るなよ」
「ふぐぅううう!?」
男は洗面所にあったタオルで彼女に目隠しを施し、縄を両手で掴んで『グッ』と持ち上げた。すると彼女の身体は簡単に宙に浮いてしまった。
「んぅううううううっっ!」
「絶対に解けないだろうなぁ、それにコンパクトになっていて持ち運びやすい」
「ぐふぅう!........うっっ!」
男はバッグのように姉を担ぎ、階段を降り始めた。
「お姉さんを連れて来たぜ」
「「んふぅうゔゔゔゔゔゔ!」」
母と妹は背中合わせに座っているが相変わらず縛られたままだった。
2人で寝転がった姿勢から起き上がることはできたらしいが、縄を解くことはおろか立ち上がる事も叶わなかったらしい。
「さてお姉さん、目隠しで見えないだろうけどお母さんと妹はしっかり縛られてるからな」
「ゔゔゔゔゔゔ!!」
姉は動ける状態だったら殺してやるといった勢いで暴れ始めた。
「まぁ落ち着け、見えない分しっかり聞いておかないと後悔する」
「「「?」」」
男は母の方へ近付くと膝の縄を解いた。
「!?」
何が起きているのか分からない姉を含めて3人は困惑した。
今更助けてくれる気にでもなったのかと。
「まずはお母さん、首をよこして」
母は背中合わせで縛られている妹を気遣いながら男の指示に従った。
男は解いた膝の縄を母の首にかけ、足首を持ち上げると下半身が浮くように『ギュッ』と結んでしまった。
「んんぅううう!?」
「助けるとでも思ったか、下の娘さんにも同じことをする」
「んぅおおおおおお!」
バタバタと暴れるが、高々と持ち上げられな脚を動かすと首の縄が締まる仕掛けだった。
「付け焼き刃の緊縛術だけどな」
「かふぅっっ!?」
縄に首を絞められた母は苦し紛れに息を吐き出す。
男はその間に妹の方の足首も首の縄と固定してしまった。
「んぐぅぅ........ううっっ!」
「さてお姉さん、あの2人はもうその場から絶対に動けないから君が助けに行くしか無い」
「ゔゔゔゔゔゔゔっっ!」
「ちなみに君の後ろ3メートルくらいかな、携帯電話を置いておいた」
「ふぅぅ!?」
「お母さんと妹までの距離とだいたい同じくらいだな、先にどちらへ行くかは君が決めたまえ」
「んぐぉおおおおおお!」
「どんどん首の縄が締まって行くから早くしたほうがいい、それに妹の方は卑猥なオモチャに今もなお責められている」
「ゔゔゔっっ!?」
「頑張れば胡座で縛られたままでも亀のようにゆっくりと進めるだろう。なんにせよ俺が逃げるまでの時間は充分あるとみた」
「くぅうううううう!」
「いい"練習"になったよ、次に生かすことにしよう」
男は庭の外を見ると犬がいなくなっている事を確認し、窓から飛び出してしまった。
「んっ..........ふぅっ............うう!」
姉は微弱なローターの音と小さな呻き声をを頼りに一刻も早く母と妹の元へと必死に藻搔いていた。
汗でぐっしょりと濡れた髪の毛を振り乱して少しずつ少しずつ進んだ。
呼吸が荒くなり、ガムテープの隙間から詰め物が吸収しきれなくなった涎が垂れる。
「うんんんん!(お姉ちゃんこっち!)」
「あぅううううう!(早くして!)」
自分たちが出す音で姉を呼ぶことしか出来ない母と妹は力の限り獣のような呻き声を上げ、身を捩りることで縄をギチギチと鳴らしていた。
〜終〜