.
「くっそぉ!剥がれないっ!!」
身体中にへばりついたネバネバは私を公園の大きな木にくっつけたまま逃がそうとしない。
「あの子たち絶対に許さない!!」
「...という訳でこの子達と遊んであげてくれない?」
「嫌です」
「えぇ!?」
私、かえでは子供が嫌いだ。誰が好んで地獄へ顔を突っ込むだろうか。大体の子供は遊んでいても加減というものを知らない。最近の子達は特にそうだと思う。
「いいですよ」
「優子!?」
「ありがとう優子ちゃん!助かるわ!」
「いえいえ、任せてください!」
とまぁこのような流れで私は今日1日この4人の小学生の相手をする羽目となった。
「何だかんだ手伝ってくれるのね」
「まぁ友達だし」
私には優子以外の友達がいないのだ。だから優子が困っていたら流石に助けたいと思う。それがたとえ私の苦手な事でも。
「私だけで4人は世話しきれないから、本当に助かるよ」
「お姉さん達なにしてくれるの?」
「僕らゲームするからほっといていいよ」
ゲームという文明の利器を発明した大人はもっと賞賛されるべきだと思う。このピコピコがあるだけで面倒を見る方は大変助かるのだ。
「せっかくお姉さん達がいるんだから公園行こうよ!」
優子が持ち前の明るい声でそんな提案をする。
...この子達はほっとけば自分らで大人しく遊ぶのに。
「めんどくせぇ〜」
「お姉さん達だけで行きなよ」
こいつらめ、言わせておけば...
だんだん腹が立ってきた。
「そんなこと言わない!ほらっ、準備して!!」
「どんな方法でもいいからお姉さん達を捕まえて!そしたら小学生チームの勝ちで〜す!」
ひょっとして乗り気なのは優子だけなのではないか。子供達(ついでに私)はダラーッとした目をしていた。
「何してもいいの?」
「これ、使っていい?」
「捕まえたらどーすんの?」
「かえで姉さん、お胸ちいさ...」
ポカンッと音がする。広い公園だ、気にすることはない。
「何をしても構いません!じゃ、私とかえで姉さんは逃げるから60秒後にスタートね!」
「まぁ二手に分かれるのは無難だよなぁ」
固まっていては一網打尽にされる危険がある。私は優子と別れて、1人で広い公園を探索がてら歩き回っていた。木々が沢山あって隠れるところも多い。
(これなら見つかる心配は無さそうだなぁ)
小学生たちの声も聞こえないし、きっと優子が上手いことやってくれているのだろう。私は本当に優子という友達に恵まれた。中学に入学して、ずっと1人だった私にとって彼女の存在はとても大きかった。
ふと、今までの優子との思い出を振り返っていると...........
「......うぅ...」
「?」
微かなうめき声が聞こえた。
耳を立てないと聞き取れない小さな声だった。
「誰!?」
この辺りは木々があり茂みも多いので視界が悪い。
「.....んぅ.....」
茂みを掻き分け、声のする方向へ進む。すると驚きの光景が飛び込んできた。
「優子!?」
「んむぅううううう!!」
すごい量の縄で縛られている。まさにぐるぐる巻きという感じだ。芋虫のごとく地面を這いずり、不自由な身体を必死に動かしている。
「どうしたの!?」
「んぐぅゔゔゔゔ!!」
口に貼られているテープのせいで喋れないらしい。すぐにテープを剥がしてあげると、口の中から優子のハンカチが出てきた。
「かえで、逃げて!!」
「え?」
「...んっ...んっ.........これ剥がして!!」
「やだね、捕まえるのに何してもいいって言ったもん」
縛られた優子に気を取られていた私は茂みに隠れていた小学生達にトリモチで大きな木に拘束されてしまった。驚くほど強力なネバネバは私が全力で暴れても剥がれない。
「んぐぅゔゔゔゔ!!」
優子はぐるぐる巻きにされた身体で私の足元でもがいている。私が外した猿轡も元通りにされている。
「油断したね、お姉さん」
小さな女の子に似合わない巨大なバズーカを抱えながら言い放つ。
「反則だよそんなの!」
バズーカから放たれた弾は私に直撃して『ベチャッ』っと音を立てながら木に右腕を拘束した。その後、休む事のない連射攻撃で私の身体は顔から上を除く全ての自由を奪われてしまったのだ。
「うぅぅぅうう!」
「優子!」
苦しそうだ。私が見つけた時、既に汗でビショビショだったのだ。猿轡のせいで鼻からしか息ができないのだろう。
「はやく、これ何とかして!!」
ネチャネチャと私を捕らえる白いネバネバを剥がすように命令した。
「小学生チームの勝ちでいいの?」
「いいよもう!はやくして!!」
木にくっついたまま敗北を認め、小学生達を急かす。
「はいじゃあこれ、使えばとれるから」
男の子がスプレーを取り出して、地面に置いた。
「あたし達、先に帰ってゲームしてるから!」
4人ともゾロゾロと帰り始めてしまった。
「待って!手が届かないから!!」
私の言う事が聞こえないかのように、足を止める事なく去っていく。
「うむぅうううう!!」
優子も必死にうめき声をあげる。
「くっ!どうすれば...」
私は立った状態で木に拘束されていて地面に置かれたスプレーに手が届かない。優子はスプレーに触れるがぐるぐる巻きに縛られた身体では使うことができない。
「お願い!戻ってきて!!」
かえで!気づいて!届く範囲にカッターがあるの!!
女の子が脱出手段としてかえでが拘束されている木にカッターを引っ掛けていた。ネバネバで拘束された彼女でも十分に手が届くところにあるのだが、視界に入っていないのだろう。
かえで!そのカッターを落としてくれれば私が縄抜けできるのに!!
「あいつらタダじゃおかない!ごめんね優子、助けが来るまで頑張って」
「んむぅうううううう!!」
必死に伝えようとするが私の声は猿轡に吸収されてしまった。
〜終〜