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ラスト・デー

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赤黒い空を見上げた。

相手は一瞬の隙ですら見逃さないとでも言うように音速で私に切りかかってきた。すぐさま視線を前に戻し、重くそして速い攻撃を受け止める。

紙一重

間一髪

九死に一生

また私は生き延びた。

それはどうしようもなく無意味で、ただの時間稼ぎのようなものであった。ただの"会話"のための時間稼ぎ。


「ナナ、言葉はどうした!」

「.....」

降り注ぐ流星群の轟音にかき消されたのか、それとも最初から何も言わなかったの私には分からない。

「返事をしろぉおおおおおお!!」

私の全力の一太刀を彼女は最小限の動きで受け止める。鉄がぶつかり、火花が舞う。その火花は割れた地面の隙間、マグマの中に吸い込まれていった。


「......」



誰もが老衰で死ねるわけじゃない。事故や病気、或いはその他。変則的な理由で生きるはずだった未来を無くしてしまう事だってある。残酷すぎる現実。

そして、

そしてそれはーーーーーー

人間に限った話ではない。

動物に限った話でもない。

生物に限った話ですらない。


つまり星。

誕生した瞬間に定められた何億年という寿命を手放す可能性が少なからずあるのだ。


「私の話を聞けぇぇえええええ!」

「.....」


悲しいかな、この世の終わり、最後に生き残った二人は殺し合いに没頭するしかない。たとえ相手が親友だろうが、恋人だろうが






「.....」





溺愛する妹だろうが。















"妹"で無ければ結末は変わっていたのかもしれない。しかしT星、最後の一日は壮大な姉妹喧嘩で幕を閉じる事となった。

最後の一日。

エックス・デーとでも呼んでおこうか、否、エックスデーならぬ文字通りのラスト・デーなのだが。



既に終わった日に名前をつける意味などない。無駄話はできるだけ避けたい所なのだがこう見えて(どう見えて?)私はお喋りな方なので、余計な事も平気で話してしまう。というか、これから話すことの全てがどうしようもなく余計な事であり、私の失態だ。私の胸の中だけにそっとしまって置こうと思っていたがそうも行くまい。








7日前。


いつも通りの朝だった。東から昇り始めた陽の光は眠っていた私を容赦なくたたき起こす。夏真っ盛りで暑い日が続いていた。早く夏が終わればいいと思った。(この時の私はまさか星が終わるとは思っていないので勘弁してほしい)

"いつも通りの朝"と言ったけれど、強いて違う点を挙げるのならばエアコンが壊れていた事だろうか。暑さで目を覚ましてしまった私は自分の部屋からノソノソと出て行き、リビングの冷蔵庫へと向かう。冷たい飲み物を求めて冷蔵庫を開けると中で気持ちよさそうに寝ている人がいた。

「はっ!?お姉ちゃん!?」

「何してるの?」

「いや.....涼しいから....」

認めたく無いが、これが私の妹だ。小さな身体を丸めてすっぽりと冷蔵庫に収まっている。

あえて優しい姉が、このどうしようもない馬鹿妹のフォローをしよう(本当はしたくない)

妹のナナは私と同じ部屋で寝る。先にも言ったようにその部屋のエアコンが壊れていたのだ。熱帯夜を過ごすには彼女には厳しすぎたらしい。彼女はあり得ないほど暑がりなのだ(私は寒がりだから温度で喧嘩になる)。


故に妹は冷蔵庫に逃げ込んだ。Q.E.D


「さすがお姉ちゃん!数学以外の場所でQEDを当たり前のように使うなんて!」

「まあね」

姉というのは何時でも妹に対して見栄を張りたい生き物なのだ。








私が外出用の服に着替えていると妹がピョコッとやってきた。


「あれ、何処行くの?」

「エアコン買いに行くのよ」

「まじ?それは助かる!!」


この夏を乗り切るためには必須アイテムだ。毎日のように冷蔵庫に入られてはたまらない。


「行ってくるねー」


しっかりと鍵をかけて置くように妹に念押しした。









「あっつーー」

暑さには比較的我慢の利くほうなのだが、最近の猛暑は災害の域に達している。殺人的な暑さとはよく言ったもので熱中症には気を付けたい。それにしたって冷蔵庫の中に入りたいとまでは思わないが。

「そこのキミ、大丈夫か」

見知らぬ男性に後ろから声をかけられた。

「何がですか」

心配されるようなことは何も無いはずだが。それともまさか冷蔵庫のくだりを独り言のように呟いていたとか。だとしたら恥ずかしいことこの上ない。

「血が出てるぞ」

「?」

どこかで擦りむいたのか確かに右足から少しだけ出血していた。大した怪我ではないが教えてくれた事は有難い。

「ありがとうございます、大丈夫ですよ」

「...........」

「まだ何か.....?」

私の体は強張った。というのもその男性が私の出血した右足にくぎ付けになっていたからだ。

「やっと見つけた」

「?.......ぐもぉぉ!?」

『あっ』と空いた口に手拭いのような物を押し込まれて私は声が出せなくなってしまった。

「んもぉぉうううううう!」

「乗れ」

「んんんんんんん!」

近くに止めてあった車に無理やり乗せられた。

「んぐぅうううううう!」

私は車内でも暴れ続けたがすぐに力が入らなくなってしまった。どうやら手拭いに睡眠薬が染み込まされていたらしい。私はそのまま眠った。








目覚めると薬品のにおいが漂う冷たい灰色の床に横たわっていた。薄暗くてほとんど何も見えず、頭もはっきりとしなかった。体がだるくて暫く行動できなかったがいい加減起き上がろうとした時、自分の置かれた状況に気づいた。

「んんんっ!?」

私の身体は縄で乱雑に縛られていたのだ。焦った私はここに至るまでの記憶を探る。

私に声をかけた男性の事を思い出した。そのあと車に乗せられてーーーーーー

「ふぅうううううう!」

やっと事の重大さに気づいた私は出来る限り大きく藻掻いた。

「んんっ!....ふぅっ!」

静かな部屋に思わず出てしまう私の呻き声と縄の音が響く。両方ともやけに大きく聞こえた。縄の音は別に気にならなかったけど、つい漏れてしまう呻き声は妙に間抜けで恥ずかしかった。シンとした音楽ホールのステージの上で藻掻いてる自分をイメージした。やけに大音量で自分の声を無理やり聞かされている感じだ。

「んふゔぅっ!」

恥をこらえた呻き声を引き換えにしても縄は解けなかった。それどころか肌に逆に食い込んでくる。

(イライラする...........!)

「ふぅーーーーーーーーんんんん!?」

息を大きく吐いて冷静になった事で、より厳しい状態である事をを悟った。なんと天井から伸びた縄が縛られた足首の縄に繋がっていて私の下半身を浮かしていたのだ。おへそから下が全く床についていなかった。

つまりーーーーーー

(移動できない..........)

その場から一歩たりとも動けないのだ。床についている上半身だけ無様にウネウネと動かして何とか移動しても、ある所まで移動すると足首を吊り上げる縄に引っ張られて元の位置に戻されてしまう。


「んんんんんんん!!」

闇雲に暴れだした時、彼らは監禁部屋に入ってきた。





口元を覆う手拭いは外され口内の詰め物を吐き出していいと言われたが、量が多すぎて出せなかった。他人に口元を弄られる事は屈辱だったが私は懇願するように彼らを見上げた。


「おぇっ...けほけほっ.......」

ようやく口答えする自由を与えられた。

「我々は負けるはずだった、しかしキミがこちらに着けば勝つ」

「意味が分からない、だいたいーーー」

「血液だ」

「は?」

「数十年、先代やその前も含めれば数百年という月日を費やしてやっと完成したと思われた薬は失敗作だった、いやこの表現は正しくないな」

「我々の仲間では誰も扱えない"負"のモノだった。端的に言って適合者が居なかったという事だ」

「.....」

「しかしキミの血液からはこの薬と同じ類稀なる"負"の気配を感じるのだ」


その言葉に思い当たる節が無いわけじゃない。

「それで......私にどうしろと......」

「"負"のモノが"正"に転じる唯一の乗算があるだろう、キミには協力してもらう」





かつて己が作り上げた箱船で人々を洪水から守り抜いた神の物語がある。しかし、実際はどうなのだろうか。起きたのはただの人と人との争い、すなわち戦争。負けた側を洪水として、英雄に倒されるべき悪として後世に語り継いだだけなのではと私はあえて苦言を呈したい。

勝者がノアで敗者が洪水なのだ。


私を誘拐した"彼ら"は洪水を起こした上でノアになろうとした。

現代においてそれは革命と呼ばれる。






6日前。


「いい加減.........縄を解いて.....」

寝転がされた私は彼らを見上げるようにして強気を装いながら言った。私は未だに縛られたままだった。藻掻き疲れて声にも力が乗らない。

「また口枷が欲しいのか」

「ふざけるなーーーーーーはむぅっ!?」

「しっかりと噛んでおけ」

「んむんむーーーー!」

詰め物は押し込まれなかったが、結び目付きの手拭いを噛まされてしまった。口の両端からはみ出る手拭いは頬を引っ張るくらい強く頭の後ろで結ばれた。

「ううううう!」




5日前。


怪しげな検査を受けることになった。

大の字に開けっ広げになった四肢を拘束台に縛り付けられ、男達に囲まれていた。

「んぉおおおおおお!」

目を見開いて身体に力を込めるが、状況はちっとも好転しない。

抵抗の手段はなかった。少しでも多くの呻き声で威嚇した。実際はなさけなくただ涎を垂れ流すだけの時間だった。




4日前。


「.....縛られたままでどうやって」

「....」

「くそっ........」

私は地面に置かれた果物の缶詰を犬のようにかぶりついて食べた。またしても足首が天井から伸びる縄に繋げられていた。缶詰は私の動ける範囲でギリギリ届くか届かないかのところに置かれたので時にはおでこで缶を倒し、舌を伸ばして果汁を舐めとるような恰好を強いられた。


ここから先は検査の待ち時間と称して屈辱的な時間をたっぷりと過ごす事となった。













前日。


「準備はできた、覚悟はいいか」

私は力を振り絞って最後の抵抗をする。

「んんんんんんんんん!」

左腕に迫る注射器から身を捩って逃げようとするが大の字に拘束された四肢は全く動かない。鉄の枷が私をガッチリと捕まえて離さなかった。

「んぉうううううう!!」

声にならない呻き声が穴の開いたボールの隙間から放たれる。涎も一緒に口の中から溢れてきた。

「安心しろ、負の血液を持つキミなら自分を失う事はない」

「んぐぅううううううう!!」

ダメだ、身体に力が入らない。どんなに暴れようとしても『ガタガタ』と拘束台が少し音を立てるだけで逃げる術は無いと思われた。



(誰か.........助けて............)



願った事を後悔した。

祈りが通じた事に後悔した。

いくら自分を責めても足りないほどの失態だった。


「なんだお前は!?」


「お姉ちゃん!!」

「んんぅ!?」

朦朧とした視界の隅に妹の姿を捉えた。幻覚、それとも走馬灯というやつか、と思ったがどちらも違った。妹は確かにそこに存在した。来るべきでは無かった。しかし彼女は私の元へ辿り着いてしまった。


そして

私を狙い澄ました注射器はあろう事か妹の腕を刺した。

「ふぐぅおおおおおお!!」


一瞬の出来事だった。

妹はその小さな体を黒く、そして暗く変えて行った。

それはまさに"負"の姿であった。









私が監禁されていた施設は瞬きした後には破壊されていた。爆音と共に私は外に投げ出された。その時の弾みで手足の枷は外れ、わたしの身体は自由になった。

投げ出された先は森の中のようだった。


「おぉあ......んぉえ...........」

後頭部で固定された口枷は両手を使うと簡単に外せた。

「ごほっ......ぅぅぅ.......」

顎にとんでもない違和感を感じる。しかしそんな事はどうでもいい。


「ナナ.......ぁぁ...........うわぁあああああああああああ!!」


私のせいで妹が、ナナがーーーーーーーー

彼女は私とは反対の"正"の血液を持っていた。あの薬を喰らうべきは"負"の私だったのだ。



悲しみの感情に支配され、その場に蹲った。

「ナナ.......ごめんね.........ごめん......」

謝ったって遅いのに、口から溢れでる言葉は止まらない。どうにもならない、過ぎた時間は取り戻せない。もうナナはナナでは無いのだ。

その時、蹲っていた地面が揺れ始めた。揺れに気づいた時には地にヒビが入り始めていた。疑いようのない、疑う余地のない事だった。これは妹が起こしている地割れだ。






地割れに呑み込まれないように、私は走った。森全体が揺れている。風が吹いている訳でもないのにザワザワと、まるで迫りくる終わりの未来を察知しているかのように慌ただしく唸る。

「くそう..........くそう.....!!」

泣きながら走った。行く当てなどなく、ただ現実から逃げるように、目を逸らすように走った。

どうする事もできない、妹は戻らない。

終わりは着実に始まっていた。








当日。


疲れ果てた私は森の中で見つけた洞窟で眠りこけていた。およそ一週間にわたる監禁生活は私に確実にダメージを与えその体力を削っていた。洞窟の中は真っ暗で時間帯がまるで分からない。どれくらい眠っていたのか予想もできなかった。

眠って起きたらそれは夢であったと、全ては私一人の悪夢であったと、そんな淡い期待を持ってフラフラと体を引きずって洞窟の外に出た。

思わず息をのんだ。

期待はいつだって裏切られる。


「そんな...........」

空は赤黒く染まり大量の隕石が降り注いでいた。

世界のにおいが変わっていた。吹き出るマグマのためか空気がとんでもなく熱い。そして洞窟の入り口付近、大きな樹の下には軍隊のものと思われる戦闘機の残骸が転がっていた。

「おしまいかな........」

私はその場にへたり込んで涙を流した。自然と笑みがこぼれた。人間本当に絶望した時は笑うものなのかと初めて知った。

こういう時に頭に浮かぶものを人は走馬灯と呼ぶのだろう。


"お姉ちゃんお姉ちゃん"

"何よ"

"教えてよこれ"

"中学で落ちこぼれた私に何を........"

"マイナスとマイナスのかけ算ーー"





閉じかけた目は開かれた。視界が開けていくようだった。

「あぁそうか.........妹を止められるのは.....」



私だけだ。











残る力を振り絞って森の中を走る。走りながら考える。私の中に流れる"マイナス"の血液は今日この時のためにあったのだ。暗くて黒く変貌し、制御できない力で暴走する妹を止めるこの時のためだけに。



監禁されていた施設を目指して走る。あの薬を求めて。酸素は薄くなっていて肺が悲鳴を上げる。今足を止めたら再び走り出す事は出来ないだろう。一心不乱に目的の場所へ走る。





妹が最初に破壊した建物、研究所、あるいは実験施設。今となってはただのがれきの残骸であるが、それは同時に希望の残骸でもあった。

「どこ........どこなの.........!」

自然と言葉が漏れる。無我夢中で片っ端からがれきをどけ始めた。たしか薬には色という色はなかった。無色透明であったはずだ。大量にあったはずだが全てこぼれて地面に吸収されてしまったのか。いやその前にこの暑さで蒸発したのかもしれない。それとももっと前に建物が壊れた時に.........

「やめて!!」

何故こういう時に人は負の思考しか出来ないのか。自分にイラついて思わず叫んだ。一人の人間の叫びなど、世界にとってはどうでもいい事だと、そうあざ笑うように気温は上がり、空は赤黒くその色を濃くしていった。


降り続ける隕石の一つが私の頬をかすめた。

「うぐっ.......」

まともに当たっていたら死んでいたかもしれない。だが、あろうことかその隕石は大きながれきをいとも簡単に吹き飛ばし数十本と山積みになって埋もれていた注射器を露わにした。


「!」

私は躊躇うことなく注射器を一つ手に取り自分の左腕めがけて刺した。

「ゔゔっ......」

体の中の血液と反応しているのが分かった。私の"負"の血液は"負"の薬を待ちわびていたかの如く"正"に転じ始めた。それは科学を"超越"した、或いは"無視"した単純な掛算だった。













体が急激に軽くなった。傷はたちどころに治っていき、体力は嘘みたいに回復した。妹の場所さえも分かった。頭に浮かぶのだ、これは言葉では説明できない。

進むたびに強大な力を実感した。そんな私を狙うように隕石が落ちてきた。

「邪魔しないで!」

私は何も無いところから鉄の剣を創造してそれを真っ二つに切った。まるで最初から知っていたかのように体が動いた。驚く暇などない、そんな時間があるのなら一刻も早くナナの元へーーーーーーー



「!?」


見る前にもう知っていた。


「グゥゥゥ.......」


狂おしいほど愛おしい妹は向こうから出向いてきた。









「ナナ!私!分からないの!」

自分を失ったナナは迷うことなく私に攻撃してきた。そのスピードは速く、目で追うのがやっとだった。私は何も出来なかった。彼女と戦っているのは私の中に流れる血だ。妹を救わんとする救済の血。もしくは自分を許せないという激昂の血だろうか。

「正気に戻って!」

私の剣はナナに届いた。しかし、それは暗い腕で受け止められ、カーン!と甲高い音が鳴った。人間の身体から出る音じゃない。

体が熱い。自分の動きに耐え切れず、燃え上がりそうだった。

「ヴァァア!」

「がはっーーーーー」

ナナの蹴りが私の脇腹をとらえた。20メートルほど吹き飛ばされた。しかし動きを止めるわけにはいかない、着地と同時に両足に力を込めてジャンプした。

その時

「ヴゥゥ!?」

隕石が落ちた

巨大なものだった

気を取られたナナ

千載一遇のチャンス


「おらぁあああああ!」

間合いを急速に詰めて剣を振りかぶる。

「あれ........!?」

妹を殺そうとしている自分に気づいた。体は無意識にブレーキをかけた。

「がぁあっっ!」

スピードを殺してしまった結果、私の攻撃は簡単に弾かれてしまった。

「えっ......?」

体勢を立て直そうと右腕を地面に付いて前を向くとそこには"竜巻"があった。妹はほんの一瞬で災害を起こした。本来は自然災害である"竜巻"を人工的に起こした。

間一髪のところでそれをかわして再び攻撃に転じーーーーーーーーー



「できない......」

ナナに向けていた鉄の剣をおろした

姿形が変わっても妹だった

そこには面影があるのだ

理屈じゃない

ナナが見えてしまうのだ

殺してまで止められるだろうか

少なくとも私には出来なかった



「ギィアアアア!!」

一息つく間もなく妹は私に襲い掛かってきた。私は反射的に剣を盾に作り変えて身を守った。物凄い力で押され、今にも体が壊れそうだった。

「ナナ、お願いだから.......もう止めて.....」

「ヴヴゥゥゥ.....」

マグマがどっと噴き出す。生身の人間では耐えられないであろう高温だった。

落ちてくる隕石の量が激増した。それは流星群と呼ぶに相応しいものだった。

「ナナ.......」

「ヴヴゥゥゥ.....」

「お願い........」

「ヴヴゥゥゥ.....」



「お姉ちゃんの言うことを聞きなさいっ!!」

「!?」

妹の表情が変わった。憎しみと憎悪にあふれる顔からふっと力が抜け、安堵したような顔。いつも見ている可愛い顔になった。

だけど直ぐにその顔を崩して泣き始めた。


「お姉ちゃん...........逃げて................................うぐっ!!??」


「一本余分に持って来て本当に良かった...............」


一瞬力が抜けた妹には同時に隙ができた。無理だと思っていた私の最後の策は成功したようだ。


"正"から"負"へと妹を変えた注射針は今度は彼女を"負"から"正"に戻した。














ここから先は私は気絶してしまったので覚えていない。

しかし意識を取り戻した時には妹に抱えられたまま人々に囲まれ、緑生い茂る草原に横たわっていた。万事解決していた。いや、この言い方には語弊がある。T星は確かに消えてなくなった。ラスト・デーを最後に寿命を迎えたのだ。





妹の話によると

彼女は闇に体を支配される前に新たな星を"つくった"という。いわば宇宙に浮かぶ"箱船"の創造。そして新星に私を除くT星の生命を飛ばし、避難させたと。

本当かどうか怪しいけれどあの時は私も何も無いところから鉄の剣をつくった(規模が違いすぎて参考にならないか)

私だけ残したのは妹に言わせれば『お姉ちゃんが助けてくれると信じてた』などと買い被りすぎな理由だった。


星を消して星をつくった。

1を引いてから1を足したようなものだ。

完全に無駄で余計な事。

とんでもないお騒がせ姉妹。


しかし人々は私たち姉妹を英雄としてその記憶に刻んだ。






最後に私の自己紹介をして物語を締めよう。


A型のふたご座。

誇り高きアールエイチマイナスの血液。


名前はノエル。

妹のナナと二人合わせてノア。








~終~


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