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「口の中って、初めて見た」
「あがっ!?」
「小さいんだね、あ、八重歯はっけん」
「あぐぅ.........」
そんなにまじまじと見ないで........
恥ずかしさで死にそう.......
「舌弄っちゃお」
「んがぁ!?」
ちょっぴり冷たい感触が口の中を撫でまわした。私の口内の方が温かいからだろう、何時もは温もりをくれる彼女の手は変に冷たく感じた。そして私の舌を弄り回す。
「うごぉ!んごぉ!」
急に触られた舌は私の狭い口の中を逃げ惑う。
「こらっ、逃げない!」
「んっ...」
ピシッと鋭い口調で彼女は私に命令した。
逃げ場を失った私の舌は簡単に彼女の右手に捕まる。
「いい子....」
「んんぅ~//」
彼女は左手を私のほっぺに添えて支える。
私は脱力して身体を預けた。
「ねぇ花音(かのん)、ホテルがあるよ!」
「えぇ...」
強引すぎる誘いに私は半歩下がった。一度彼女に捕まると、さながら蜘蛛の巣にかかった蝶の如く、身動きできないまま踊り狂う哀れな少女になってしまう。
「また今度にーーーーうわっ!?」
そ~っと逃げようとした私をシュッと伸びた腕が捉えた。そのまま子猫を運ぶ要領で半分引きずる感じにホテルの中に連れ込まれた。
「一部屋お願いしま~す」
カラオケの部屋でも借りるかのテンションで彼女の場違いな声が響いた。
まぁ、何時だったかカラオケの最中でも.................ね?
「軽めなやつだからね?」
「わかってるよ、花音は心配しすぎ」
もっと私を信じてという彼女。今まで何度騙された事か、数えだしたらキリがない。
「じゃあ行きま~す」
「ちょっと待ったぁ!」
「え?」
油断も隙も無い。ベッドの上に座るように指示された後、ドサッと隣に置かれた茶色の縄。
その量の多い事!
二人くらいは平気でギチギチにできちゃう量だった。
「手首だけ、今日は手首だけ!」
「お願い、せめて足首まで!」
たぶん普通の揉め方では無いだろう。
「じゃあ手と足だけね....」
「やったぁ!」
心の底から喜んでる。
こういう素直で単純なところが好きだった。
「先ずは、足の方から」
「...うん」
ベッドに腰かけた私は両足を床に付いた状態でただ待つ。彼女はぐっと屈んで私の足を真剣に見つめた。私の位置からは彼女の頭のてっぺん、つむじが見えた。なんだか甘い香りがする。
そのまま15分。
「........縛らないの?」
我慢できなくなって聞いてしまった。
「縛られたいの?」
「ぅぅ...」
またやられた。
「いつ見ても綺麗な足だよねぇ」
シュルシュルっと足の周りを何回も縄が通る。時折ピクッと反応してしまう。それを悟られないように眼を瞑りながら歯を食いしばって我慢しているが、彼女にはお見通しのようで
「我慢顔もかわいい」
「ふぇっ!?」
急に耳元で吐息交じりのささやき声が聞こえた。
お尻がビクッと浮き上がり、瞑っていた眼がぱっと開かれて顔が真っ赤になって行くのが分かった。
「あらら、照れてる間に縛られちゃったね」
「!?」
長いこと意識が宙に浮いていたのか、気付いた時には足首はくっ付いたまま離せなくなっていた。
「手を前に揃えて頂戴な」
「.....はい」
私はどこまでも従順になっていた。
もう完全に彼女の手の中だった。恍惚とした表情を隠そうとすら思わない。半開きになった口から自然に言葉が漏れて両手を差し出していた。
「縛ってくよ」
「...」
フワフワした身体はたまに縄の音や感触に反応してそれに合わせるように動いた。
10分程で両手も身体の前で縛られてしまった。
「どう?」
「ん.........動けない..........」
彼女は心底満足したようで、私をぎゅっと抱きしめた。
「歯医者さんで~す、お口を開けてください」
どこへ行ったのかと思っていたが、ナース服に身を包んだ彼女がカーテンの向こう側から現れた。
「え、ちょ........んがぁ!」
彼女は半ば強引に私の口を開けて、その中を覗き込んできた。顔が至近距離まで詰め寄って来て、そのままくっ付いてしまうのではと思うほどだった。
「虫歯はないかな」
「おぁ....おあぁ....」
じろじろ見られている。
苦しくて顔が歪んだ。
「んあぁ...やえへぇ...」
まともな声が出せない。
「痛かったら手を挙げてくださいね~」
「あぐぁ...!?」
彼女は手首の縄の余った端を持ち、ぎゅっと下げて、イタズラっぽく笑った。
「お終い......今日はもうお終い!」
「つれないなぁ」
彼女は手首の縄を弄り始めた。
やっと解放されると思ったのも束の間、なんと彼女は手首から伸びた縄を掴んで私の頭の上にあげた。
「うえぇっ!?」
バンザイの姿勢になった私は急な出来事に狼狽えた。
彼女はそのまま器用に私の両手を頭の後ろに持って行く。
「解いて!」
咄嗟に叫び声をあげた。それを無視するように彼女は
「あれ、汗かいてるの?暑かった?それともーーーー」
無防備になった私の両脇を見ながら彼女は続ける。
「興奮しちゃった?」
「ぅぅ...」
縄を背中の後ろで『シュッシュッ』と動かしながら言葉責めをする彼女。それに連動して腕が『ピョコピョコ』と、強制的に欲しがっているような動きをさせられる。
「私が握ってるこの縄、足首に繋げたらどうなっちゃうかな?」
「!?...止め......うぐっ!?」
言い終わらないうちに私の身体は逆方向に仰け反った。
「解いて!解いてぇ!」
ベッドの上で跳ねるようにして藻掻いた。弾力のあるベッドが浮き沈みする。そんな抵抗もお構いなしに彼女は淡々と作業を続けた。
「流石に怒るよ!」
自分の頭付近の両手が邪魔で後ろが見えなかった私は彼女がいるであろう方向に向かって叫んだ。
「うわぁ!?」
急に下半身が浮き上がった。足首に新たな縄が足されているのが分かる。そのまま『ぐいっ』っと手と足が近づき、くっ付きそうなほど近くまで引き寄せられた。
「逆海老縛りの完成だよ~」
「解けぇぇぇえええ!!」
「さてと...うるさい子には......」
なにやら鞄へと向かう彼女。その間に抜け出そうとした私は危うくベッドから落ちかけた。
「じゃん!」
「絶対イヤ!!」
「なら抵抗するんだね」
「む.........」
取り出されたボールギャグを嵌められないように口をしっかりと結んだ。
「花音、縄解いてあげようか?」
「ん.........」
「このままでいいの?」
「ぐ..........」
「じゃあ私は帰るから」
「待っ.......おがぁあ!!」
変える素振りを見せた彼女に向って叫んだ瞬間を狙われた。口を開けてしまった私にカチャッっとボールギャグが嵌る。
「うご.......ほごぉ!」
すっぽりと収まったそれは南京錠を使って後頭部で止められてしまったらしく、舌で押し返す事も出来なくなった。
「んごぉ!おごぉ!!」
「あはは、お魚さんみたい」
「うごぉおお!ぉあ!」
「私はちょっと休憩」
暢気なことを言う彼女に腹が立ってベッドのシーツがしわくちゃになるまで藻掻いた。
「んふぉーー...んふぅーーー...」
『パシャッ』
「おぅうう!?」
「うーわっ!無様~~っ!」
「んぶぉおおお!」
(私にとっては)はるか遠くの椅子でくつろいでいる彼女がカメラ片手に笑っていた。
「見たい?」
「うぅうう!」
首をぶんぶんと横に振ったが彼女は私のところへ撮った写真を見せに来た。
「ほら、こんなに顔崩して暴れて...」
「んうぅ!?」
カァーっと熱と共に顔が紅潮していくのが分かった。
「こっちは動画」
『んぉー、んぉおおー』
髪をぶんぶんと振りながら無様に藻掻く私がいた。服がはだけて余計に艶めかしく見える。
「.......」
「あれ、藻掻くの止めたの?」
「....っ!?」
的確に私を責める彼女。
あんなものを見せられてはもう大胆に暴れられない。
視線を下に落として顔を隠そうとした。
その時
「......おおぅ!?」
『パシャッ』
「いただき~」
「ぉぉごぉおおおおお!」
やられた。
下を向いた瞬間に涎がつーっと垂れてしまった。その一瞬を逃さずに彼女はカメラのシャッターを切った。
「はい、囚われの花音」
「!?」
あれから目隠しをされてしまい、20分ほど放置された。
「おふぅーーー...んふぅーーーー...」
何も見えない。
しかも私の吐息の音以外何も聞こえなくなった。
まさか...帰った...?
「ぉぐぁああああ!!」
怖くなって必死に藻掻き、呻いた。
「ここにいるよ」
「ぅぐぅぅっ!?」
耳元に息がかかった。
安心する半面、至近距離で思い切り醜態をさらしてしまった事による恥辱の感情が爆発しそうだった。
「さて縄抜けのラストチャンス」
目隠しは外されて薄暗いオレンジの明かりが目に入ってきた。
「あそこにボールギャグを止めている南京錠の鍵が置いてあるから、緊縛されたまま、もがもがと移動して自分でギャグを外して。両手は頭の後ろで縛ってあるから頑張れば南京錠に届くはず。自由になった花音の可愛いお口で"縛られてるの、誰か助けて!"と言えたら私が駆け付けるから!」
早い口調で説明を終えた彼女はそそくさと私の視界から消えてしまった。
やるしかない、終わった後でこの埋め合わせはして貰おう。
先ずはボールギャグを外すための鍵...
「んぅおぉぉ........んぐぉっ!?」
鍵はベッドの隅に置いてあった。これは時間をかければ何とか取れるだろうが、問題はその鍵の近くに小さな三脚を使って固定されたカメラだ。しっかりと"撮影中"のライトが赤く光っている。
鼻息を荒くしながら、ふがふがと芋虫のように無様に進む姿を"正面"から撮られてしまう位置だった。
「んんんぅ........」
だんだんと近づいて来る惨めな私の藻掻き様を後でゆっくりと堪能しようという腹づもりか。許せん。
「くふぅ.........むふぅ...........」
なるべく吐息を抑えてカメラから目を逸らすように、『もがもが』と移動する。
おへその周りだけで進んだ結果、体力をかなり消耗して鍵に辿り着いた時には息が『ふゔぉー、ふゔぉー』となっていた。
「んがぁっ!」
その場で横向きに倒れて何とか鍵を手にする。
「おっ.....おっ......」
見えない南京錠に苦戦すること15分、やっとの思いで口枷を外すことに成功した。
「はぁはぁ...疲れた............」
で、何だっけ、『縛られてるの、誰か助けて!』だっけ?
あれ?考えて見るとなかなか恥ずかしいセリフ...
でも叫ばないと終わらないし...
葛藤すること10分、意を決して私はボリューム最大で助けを求めた。
「縛られてるの、誰か助けて!」
頬がカッカッと燃えるように熱い。
待つこと1分
彼女はやって来ない。
「縛られてるの、誰か助けて!」
さらに1分。
すでにびしょ濡れの髪からつーっと大粒の汗が額を通って、顔の横を流れる。
「うそでしょ..........」
何らかの理由で私の元へ来れなくなったのか、だとしたらずっとーーーーーーーーーーー
「誰かぁあああああ!助けてぇええええええ!!」
ベッドの上で藻掻き跳ねた。
縄が軋む音と私の乱れた呼吸が部屋の中に響く。
その時部屋がバッと開かれる音が聞こえた。
「どうされました!?」
「あ............えと.............その.................」
海老ぞりのままベッドの上で縛られた状態。
大量の汗や、間抜けな叫び声。撮影中のカメラに、はだけた服。
荒くなった呼吸はボールギャグを通過するものでは無くなっていたが、私を赤面させるには十分だった。
「やりすぎだよっ!!」
「ごめんごめん」
彼女の頭をポカポカと叩きながら帰り路を歩いていた。
「それにしても髪の毛.........びしょ濡れだよ?」
「縛られてたからだよ!!」
「でも興奮したんでしょ?」
「はぅっ!?」
ポッと赤くなった顔を彼女は見逃さなかった。
「これがその時の動画」
「あ.........あっ...........」
「可哀想にベッドで藻掻く姿、かわいいねぇ」
「うぅ.......返して!!」
やだよ~と言いながら走って逃げる彼女を追いかける。
この後、彼女の家で大画面のスクリーンに次々と投影される私の無様で間抜けな写真や動画を二人でゆっくりと観賞する事となった。
~終~