救出劇 【完全版】
Added 2020-08-28 12:53:06 +0000 UTC「ねぇ」
「......」
「ねぇってば!」
「......なに?」
「一緒に帰ろ」
「......は?」
何人たりとも俺の睡眠の邪魔をする奴は許さない。
「......誰?」
「クラスメイトの顔も覚えてないの?」
「そうだな、お前の事は少女Aとしか認識してねぇよ」
俺は本当のことを言った。
唐突に下校デートに付き合わされる事になった。
「何で誘った?」
「追われてるから」
「悪の組織に?」
「そう」
どうにも少女Aの考えが掴めない。何なんだコイツは。
「私はかえで」
「かえでさん」
「何?」
「お前の家はこんな所にあるのか」
古びた空き家が並んでいた。俺たち以外誰もいない。
「ここに私の家は無い、私と貴方は今から廃墟に帰るの」
「地獄みてぇな事を言うんだな」
「言い方が悪かった、廃墟にお邪魔するの」
「大して変わってねぇよ」
今にも崩れ落ちそうな天井に冷たい床、酷い所に連れ込まれたものだ。
「蜘蛛の巣だらけだな」
「貴方を連れて来たのは理由があるの」
「なきゃ困るけどな」
「私の知り合いが捕まってる」
「俺には関係ないだろ」
「貴方の知り合いでもあるのよ」
拉致が開かない、話し下手かコイツは。
「同じクラスの女の子よ」
「それはお前がよく喋ってる少女Bか」
「少女Bじゃない、優子よ」
「そう言う事なら俺じゃなくて警察に頼め」
「それはダメ、彼女が傷つく事になる」
捕らえられた少女、写真でも撮られてるなら脅しの材料としては十分すぎるだろう。
「それに彼女のご指名なのよ」
「俺がか?」
「そう」
捕まってる少女B...優子とかいう奴の顔は薄っすら覚えている。彼女は目の前のコイツとは違って交友関係が広く友達も沢山いるのだろう、何せ俺が顔を覚えてるくらいだ。
だが、何故俺に助けを求めるのか。
「捕まってる友達は何故俺に目を付けたんだ?」
「知らない、けど優子は貴方の事を信頼してる」
買い被られたものだ。
「その友達は何処に捕まってる?」
「そこに階段が見えるでしょ、この廃墟の3階よ」
「んぅううううう!」
「残念だがお嬢ちゃん、オレたちの顔を見てタダで帰れると思うなよ」
「殺りますか、ボス」
「いや、なるべく穏便に済ませてやろう」
『カチッ........ブィィィィィィン』
「んぐぅゔゔゔゔゔゔ!?」
「オレたちの事を忘れるくらい快楽に溺れて貰うとするか」
「んぶぅゔゔゔゔゔ!!」
「ハハハ、太腿擦り合わせて外そうとしてますよ」
「無駄だ、椅子に縛り付けられてんだからなぁ!」
「んぐ......ぅぅううう!」
「それよりもう1人の女はまだ見つからないのか」
「はい呼び出しのメールは届いているはずです」
「そいつが来るまで耐えられるかな?」
「んっ!んっ!.....ふぅゔゔゔゔゔゔ!」
「優子.....!」
「待て!」
「でも......」
「少しの間耐えろ」
かえでは歯を食いしばって震えるように耐えている。
「会話から察するにあいつらの狙いはお前なんだろ。姿を見れば真っ先に飛んでくる」
「どうすれば...」
「携帯電話」
「え?」
「お前の携帯を俺に貸せ」
「何するの?」
かえでから受け取ったケータイを素早く操作してメールを打った。
「奴らにメールが届いたらすぐに妨害電波を流す」
「どうやって?」
「最近の携帯は便利になってるからな。俺がやった事は秘密にしとけよ」
「ボス、女から連絡が」
「内容は」
「この建物の1階にいる様です」
「んんん!?」
「お嬢ちゃん、お友達が来たみたいだぜ」
『カチカチ』
「んぐぅゔゔゔゔゔゔ!?」
「振動はそれで最大だ、いい子にお留守番しとけ」
「んゔゔゔゔゔゔ!!」
物陰に隠れて奴らが階段を下っていくのを息を潜めて待った。
「時間が無いぞ、急げ」
「分かってる!」
「んぅううう!?」
「優子!」
急いで縄を解きにかかる。
彼女は前屈みになって股をモジモジさせていた。太腿にピンクのスイッチが巻き付けられている。止めてやるとやっと力が抜けたみたいだった。
「かえで、そっちの縄を頼む」
「でも結び目が...」
とんでもなくきつい緊縛を施されていた。
「椅子と結び付けられてる部分だけでいい、後は抱えて走るぞ」
「んんんん!?」
「優子、あとちょっと我慢して...」
その時、下の方から怒号が聞こえた。男達の声だ。階段を駆け上がって来ている。
「ダメ...間に合わない...!」
数十ヶ所に渡る椅子と連結された縄は簡単には解けない。
「そこの階段から屋上に上がるぞ」
「優子は?」
「いいから!」
「やだ」
「今お前を失う訳にいかねぇんだよ!」
「いやだ!」
クソ、この女は...
「一度奴らに捕まって頭冷やしてろ」
俺は1人で屋上へ向かった。
「ふざけた事しやがって」
「やめて!触らないで!」
「暴れるんじゃねぇ!」
「はぐっ!?」
「友達と一緒に縛ってやるから大人しくしろ」
「んむむむむむむ!」
「んんぅぅ...」
(優子...ごめん.....)
「お前にもコレを付けてやるよ」
「!?」
「毎日通う高校の近くにこんな廃墟があったとは...」
屋上からはこの町を見渡す事ができた。
厄介な足枷女のせいで俺は今からパンドラの箱を開けようとしていた、否、パンドラの目と言った方がいい。生粋の悪人である親父から受け継いだ能力だ。
「んごごぉおおおお!」
「ハハハハ!もっとのたうち回れ!」
「ボス、最初からいた友達の方が暇そうですよ」
「そうだなぁ」
『カチッ』
「んぐぅぅぅぅうう!」
「んむぅう!(優子!)」
「この娘はもう出来上がってるからな」
「んんんんんんんんっっっ!!」
「また派手にイきましたね」
「まるで獣の様だなぁ!」
「おい」
「...!?」
「...誰だ、今は取り込み中だ」
「見ればわかる、その覆面は無意味だぜ?俺は既にあんたらの顔を見てる」
「んんんん!?」
縛られて転がされたかえでが困惑した様に俺を見ている。やっぱり捕まってるのか、面倒な女め。
「お前も殺されたいのか?」
「やってしまいましょう、ボス」
2人と目が合った。待ち侘びた瞬間だ。
「...っ!」
想像以上の痛さだった。涙か、それとも血か、赤い目から頬を伝うのがわかった。
「ぬぅ...?」
「...体が.....!」
「動かないだろ?金縛りだ。親父ほど強力じゃ無いから目を合わせている間の記憶は消せないがな」
「ぐ....お前は...?」
男達に歩み寄り
「コレは壊させてもらうぞ」
脅しの材料が入っているであろう男達の携帯電話を真っ二つに折った。
『ベリッ』
「かえで、少しは反省したか」
「...いいから....下の...早く止めて.....」
この女は礼の一つでも言ったらどうなんだ。後回しにしてやろう。
「優子.....さん?」
「んんぅ!」
彼女の口のガムテープを外してやり、詰め物を取り出してやった。
「はー...はー...苦しかった...ありがとう」
「君の方は話が分かる人みたいだな」
椅子に縛り付けられた彼女の縄を解き始めた。
「ちょっとアンタ!早くこれ止めて!」
横からギャーギャーうるさい奴だ。順番てものがある。
「優子さんはずっと縛られてたんだ、その点お前は自分から捕まった迷惑女だからな、我慢しろ」
「く〜覚えてろぉ..........あっ......」
「私からもお願い、かえでのローターを...」
「.....」
かえでの携帯を再び借りて妨害電波を消去し、通報した。
「警察が来る頃には徐々に動ける様になるだろうよ」
「てめぇ.....」
俺達は帰らせてもらうとしよう。俺も警察は嫌いだ。
「アンタ何でもっと早く使ってくれないのよ、その目!」
「うるせぇ、強力な力ってのはそれなりの代償があるんだ。俺は明日から1週間くらい学校休むから適当に理由つけとけ」
「...ねぇ......ありがとね、私の事もかえでの事も...」
耳打ちする様に優子さんは感謝の言葉を口にした。そういえば気になっていた、彼女は何故俺のことを知っていたのか。
「優子さん....」
「ん...なんでしょう....?」
「何故俺のことを...」
「アンタ私の携帯画面割れてんだけど!」
思わぬ横槍が入った。
「お前はこれを機にその口を治せ」
「は?」
「そんなだから友達が出来ないんだよ」
「アンタに言われたく無いわよ!」
話が逸れてしまった、取り敢えず重い脚を引きずって病院へ向かうとしよう。
〜その後〜
「優子、本当に無事で良かったよぉ」
「またその話!?」
「今月はそれで持ちきりなのよ」
「かえでも...よくやったねぇ」
「私は別に何も...」
夢の中で視線を感じたが、俺は寝てるのだ。邪魔をしないで欲しい。
だが、彼女に友人CやDが出来たのは素直に喜んでいい事だろう。
〜終〜